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2019年12月4日
◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ「JAPAN PACK 2019」セミナーレポート 多様な要望への対応、人手不足の解決策としての『Jet Press 540WV』 ニットーパックの活用事例に関心集まる

 富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(以下FFGS)は、1029日から111日までの4日間、千葉県の幕張メッセで開催された『JAPAN PACK 2019』に出展。『PACKAGE Style Innovation-時代を切り拓く、新たな包装のカタチ』をテーマに、デジタルプレスや水現像フレキソ版を中心としたパッケージソリューションを紹介するとともに、その活用事例としてユーザーサンプルを豊富に展示し、今後のパッケージビジネスのヒントを示した。
 

 最終日の111日には、セミナーも開催。100名以上が聴講に訪れ、会場は満席となった。セミナーは2部構成で、第1部では、パッケージ市場の最新動向や課題、UVインクジェットデジタルプレス『Jet Press 540WV』の特長とメリットなどを解説。第2部では、実際に同機を活用しているニットーパック株式会社の五味敦史社長が登壇し、導入の経緯や活用戦略などについて講演した。

 以下に、セミナーの要旨を紹介する。

【第1部】

富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社

特殊印刷事業部 担当部長 菅沼

 

  菅沼部長
●軟包装市場の現状と課題

 商品があれば、それを包装するニーズがある。紙の印刷媒体は、コンテンツの電子化に伴って市場がシュリンクしていく傾向にあるが、包装の分野は状況が違う。内容物だけを店頭に並べることは少なく、何らかの形で包装する。さらに、包装には、消費者の購買意欲をそそる役割も求められる。こうしたことから、軟包装印刷の市場は堅調に推移している。

 ただ、印刷面積で見ると堅調だが、その内容は、変化してきている。背景にあるのは、社会環境の変化。すなわち人口の減少および都市部への集中、少人数世帯の増加などだ。また、環境配慮などの観点から、社会全体の価値観も変わってきている。消費者の嗜好が多様化し商品構成も変化している。包装印刷はこうした状況の影響を受けている。

 軟包装の場合、大量につくるものに関しては、現在グラビア印刷が主流になっている。グラビア印刷は、技術としては完成しているし、産業としても成熟している。ただ、今後ますます増えてくるであろう少量生産においては、課題もある。小ロットのジョブが増えれば増えるほど、工場の生産性は低下する。これは多くのコンバーター様が共通して持たれている問題意識だと思う。グラビアの版替え作業は1色につき10分ほど。見当合わせなども含め、1回のジョブチェンジに60分弱かかる。一方、印刷自体は、小ロットでは2030分で終わってしまう。つまり準備時間の占める割合が大きくなっていく。当然、オペレーターの負荷も増え、離職率も高くなってしまう。人材がなかなか集まらず、オペレーターの確保が難しいというのも皆さんが共通して挙げる課題だ。ほかにも、材料のロスが増えるなど、小ロットになるといろいろな課題が出てくる。

 

●デジタル印刷はクライアントにも大きなメリットをもたらす

 こうした課題の解決策の一つとして、FFGSはデジタルプレスをご提案している。

 従来工程とデジタル印刷の工程を比較すると、従来工程では、印刷に入る前の準備に多くの時間がかかっている。印刷に入ると、立ち会いが必要になることも多い。それに対しデジタル印刷では、データを作成したらそのまま印刷に入ることができ、途中の工程が省略される分、効率が上がる。

 印刷現場のメリットとしては、まず「工場運営の効率化」が挙げられる。デジタル印刷では製版から版替えまでの工程をカットできるため、小ロットをデジタル機に振り分けることで、グラビア印刷機の稼働率向上が図れる。また、UVインクジェットは非常に安定性が高い。モックアップをクライアントにお見せしてOKが出たら、その通りに製造できるということが保証できるため、立ち会いも不要になる。さらにシリンダーなどの管理の負荷も軽減されるなど、現場のメリットは大きい。

 デジタル印刷は、クライアントにもメリットをもたらす。これまでは複数の商品企画があっても、そこから一つに絞り込んで印刷しなければならなかったのが、デジタルでは、たとえば3種類のアイデアをすべて印刷してから検討することも可能。非常にフレキシブルに運用できる。

 デジタル印刷が包装業界にもたらす可能性についてまとめてみる。

①小ロット・多品種・短納期要求へのフレキシブルな対応

 納品までの日程を短縮できるのはもちろん、パーソナルなニーズの掘り起こしにもつながる。また、必要な量だけ印刷することが可能になるため、在庫管理の負荷軽減も図れ、工場全体の効率化に寄与する。

②精度の高い試作品の製作

 気になるアイデアを、最終製品に近いレベルで確認することができる。複数の候補を少量ずつデジタルで印刷し、マーケティングを行なったうえで最終候補を絞り込んで大量生産する、という戦略が可能になる。つまり、意思決定のプロセスを変える可能性も秘めているということだ。将来的な可能性としては、ロットごとにバーコードなどで生産情報を付加することによってトレーサビリティの向上を図ることができる。あるいは、QRコードなどを印刷することで、包装を情報媒体として活用することも考えられる。単に包装するだけでなく、さまざまな情報をタイムリーに付加することができるようになる。また、一部で言われているのが、ファクトリー4.0。印刷機をデジタル化するだけでなく、生産管理システムから印刷機をコントロールしたり、生産状態を管理したりする、一歩進んだ工場の制御システムが実現する。

③工程管理の質の向上

 単なる生産現場の効率化だけではなく、全体的な工程管理の質の向上が図れる。この点にこそ、デジタルプレスの価値があると考える。

 

UVインクジェットならではの4大特長

 続いて、Jet Press 540WVについてご説明する。

   Jet Press 540WV
ミヤコシ製『
MJP20W』のプリントエンジンをベースに、富士フイルムのEUCON(ユーコン)技術を搭載したUVインクジェットデジタルプレスである。EUCON技術を構成する要素は3点。富士フイルムが独自に軟包装印刷用に処方したUVインク、インクの滲みを防止する下塗り技術、UVインク特有の臭気を低減させる窒素パージ技術である。Jet Press 540WVUVインクは、高い安全性を確保しているのも特長である。厚生省告示第370号に適合し、印刷インキ工業連合会のNL規制に準拠。また、欧州の規制であるSwiss Ordinance(スイス条例)のポジティブリストに掲載されている素材のみを使用している。

UVインクジェットならではの特長としては4点挙げられる。

一つは、品質安定性。インクジェット方式では、微小なノズルからインクを吐出するため、色の濃度はノズルのサイズによってほぼ固定される。言い換えれば、色の変動要因が少ない。したがって、ロット内・日内・日間の変動が抑えられる。このことは、とくにリピート生産などでは大きなメリットになる。

 二つめは、高い膜物性。UVインクは硬化すると、熱や水などの外部からの物理ストレスに対して優れた耐性を発揮する。これは、加熱を必要とする後加工では大きなメリットになる。その応用例として、医薬品のPTPがある。これは300度近い高温で熱圧着する工程を経るが、Jet Press 540WVUVインクはこの加工にも耐えられる。

 三つめは、基材対応力。軟包装では、プラスチック基材への裏刷りが一般的だが、Jet Press 540WVはそれ以外の用途にも対応する。たとえば表刷りも可能だ。裏刷りしてラミネートをかけるとなると、印刷工程の「効率化・小ロット対応」というメリットが薄れてしまう。そこで、最近事例として出てきているのが、あらかじめラミネートした原反を用意しておき、そこに表刷りしてすぐに後加工する、という方法。このように、工程全体を変えてしまうこともできる。他にも、PTPのアルミ基材や、和紙の風合いを持たせた基材、環境配慮型の紙製バリア素材『シールドプラス』(日本製紙製)などにも対応できる。非接触で表刷りができるというメリットを活かし、さまざまな提案が可能になる。

 四つめは、シームレス印刷。ヘッドの下を原反が連続的に搬送されるという機構を活かし、絵巻物のような長尺の印刷物も製作できる。パッケージではないが、サイネージなどの用途にも活用できる。

 

※錠剤やカプセルをプラスチックとアルミで挟んだシート状の包装。press through packの略。

 

●小ロットへの対応、印刷現場の課題解決に有効な技術

 最近は社会構造が大きく変化しており、逆戻りすることは考えられない。その影響はいろいろな産業に及んでおり、軟包装分野もこうした流れの中で戦略を考えていかなければいけない。とくに、小ロット・多品種化にどう対応していくかというのは大きなテーマだ。包装分野におけるデジタル印刷はまだ黎明期と言えるが、これからさらに有効な生産技術になっていくと考えている。増加する小ロットニーズに応えると同時に、印刷現場の構造的課題を解決する技術として期待されている。

 Jet Press 540WVに興味を持たれた方、「この仕事に使えないだろうか」「こんな基材に印刷できないか」などのご質問があれば、どんどんお声がけいただきたい。テスト印刷のご要望にもお応えし、皆さまと一緒に新たな可能性を拓いていきたい。

 

 

【第2部】

ニットーパック株式会社

代表取締役社長 五味敦史氏

 

 五味社長

●多様な要望への対応、人手不足などの解決策として導入

 当社は昭和9年(1934年)に創業、今年で85年目を迎えた。コンバーターとしては歴史が長い方かと思う。当初は紙袋などの製造からスタートし、後にセロファンやプラスチックなどへと徐々に範囲を拡げていった。一貫して包装材料を手がけており、製版から印刷、ラミネート、スリット、製袋までの一貫生産ラインを持っている。

 お客さまは食品メーカーが多く、約8割を占める。最近では海外のお客さまからも引き合いをいただいており、レトルトパウチなどの受注が増えている。拠点は関東に集約しており、本社が東京・日本橋、工場が茨城県と埼玉県にある。2017年に食品安全管理の規格FSSC22000認証を取得。安全性については社内の勉強会などを通してつねに研究している。

 デジタルプレスの検討を始めたきっかけは、2012年のdrupaで実機を見学したことだった。それは他社の機械であったが、従来のグラビア印刷に対しさまざまなメリットがあり、大きな可能性を感じた。最終的には、インクの耐熱性や印刷品質などから、Jet Press 540WVを選択した。

 導入の背景としては、一つは、お客さまから「新しくこういうことをやりたい」とご相談をいただくことが増え、そうしたニーズに応えたいという思いがあった。消費者が求めるものが多様化してきたこともあり、新商品を短いサイクルで出したいというニーズ、あるいは、いろいろなバリエーションを一度に出したいというニーズもある。こうした中で、グラビア印刷では対応が難しいものも増えてきた。

 また、人手不足という問題も大きかった。求人を出してもなかなか応募が集まらない。その解決策の一つとして、小ロットの仕事をデジタル印刷に切り替えることにより、グラビア印刷の効率化を図るということを考えた。

 こうした背景から、Jet Press 540WVの導入に至った。オペレーターは現在1名。画像処理や製版などを経験してきた者が担当している。本人も「新しい機械にチャレンジしてみたい」という意思を持っていたことから、起用が決まった。Jet Press 540WVは、男女問わず誰でもオペレーションできると思う。

デジタル印刷は、まだ完全に確立された技術だとは思っていない。課題も多々ある。しかし将来性は非常に感じる。また、デジタルとは言え、単にデータを送ってボタンを押せば印刷できるというものではなく、ある程度のノウハウは必要になる。したがって、早い段階でデジタル印刷に取り組む意味はあると思っている。

 

●新製品サンプルや限定品など小ロット・多品種の仕事でメリットを発揮

実際にJet Press 540WVで手がけている仕事としては、食品包装が多い。たとえば、国内向けに大量生産している商品と同じものを、海外向けに小ロットで製造するというケースや、中身が異なる商品を少量ずつつくり、多くのバリエーションを展開する例、新製品発表会や展示会用のサンプル製作などがある。

Jet Press 540WVによるパッケージサンプル

今年4月からJet Press 540WVの運用を開始し、最初にやらせていただいた仕事が新製品のサンプル製作だった。秋冬もののサンプルを30種類ほど、それぞれ100200部ずつという、まさに小ロット・多品種の仕事であった。

海外のお客さまからも発注をいただいている。Jet Press 540WVで印刷して納品後、印刷品質に対して高い評価をいただき、「ぜひまたお願いしたい」というお言葉をいただいた。

食品包装のほかにも、たとえば、保険証を入れるカードケースをJet Press 540WVで印刷したこともある。これまで単色・2色でつくっていたが、今回、フルカラーでキャラクターものをつくりたいというご要望だった。カードケースは、数量は多くても、一つひとつの商品が小さいため、印刷のロットとしては小ロットになる。また、エンドレス印刷が必要で、その点でもJet Press 540WVのメリットが活かされた。

 このほか、キャンペーン商品や地域限定商品などのご要望も多くいただいている。これらは、いままでご要望をいただいてもロットの関係で対応が難しかったが、デジタル印刷なら可能になる。「これまで諦めていたものにチャレンジしてみよう」というお客さまの動機づけになればいいと思う。それによってお客さまが成長していけば、弊社の売上アップにもつながり、一緒に成長していけるのではないかと期待している。

 

●デジタルプレスは軟包装印刷を大きく変える可能性を秘めている

最後に、課題と今後の展開についてお話しする。

 デジタルプレスは、実際には入れればすぐに簡単に使えるというわけではない。たとえば色再現も、やはりグラビアとのマッチング作業が必要になる。これは当社でも現在進行形で取り組んでいる部分。ただ、一度色をつくってしまえば、安定して再現できる。また、お客さまからいただいたデータに対し、たとえば白版のデータを作成するなど、印刷するための処理も必要になる。

 生産性については、現状、Jet Press 540WVで最高毎分50m。他社の機械に比べると速いが、デジタルプレスが軟包装印刷の主力機になるには、もう少しスピードが必要だと思う。

 人手不足への対応という観点で見ると、老若男女誰でも操作できるデジタルプレスは魅力的だ。小ロットのジョブをデジタルプレスに切り替えることで、グラビア印刷機の生産性を高めることもできる。

 また、Jet Press 540WVのインクは耐熱性にも優れるので、将来的にはレトルトパウチなどにも活用していきたい。すでにそのテストを始めている。さらに、将来的には、印刷前の画像処理から後工程まで含めた工程全体を自動化することで、人手をかけないパッケージ製造ラインが実現するのではないかと思っている。

 今後、さらに生産性の高いデジタルプレスが登場すると、グラビア印刷を続ける必要がなくなるかもしれない。これまで何十年もの間、グラビア印刷が軟包装印刷の主流となってきたが、それがガラッと変わる可能性もある。したがってこれからもデジタル印刷技術の動向に注目していきたい。非常に将来性のある、面白い技術だと思っている。

 

 

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