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第9回 電子書籍の「見る」「売る」「作る」の3つの側面を知ることがポイント

東京グラフィックコミュニケーションズ工業組合(GC東京)では、213()313()の両日、マーケティング部会による電子書籍関連セミナーを開催した。株式会社Tooパブリッシング営業部テクニカルサポート課の前田勝規氏を講師に迎えて『DTP制作現場から見た電子書籍』をテーマに講演が行われたが、ここではその講演内容をまとめてみた。

 

紙の書籍とは違って
見る環境は定型ではない

 

前田氏の2回のセミナーでは、「見る」「売る」「作る」という3つのキーワードから電子書籍についてのポイントが解説された。

まず「見る」ことについては、電子書籍の閲覧ツールがかなり出揃ってきた感があると言及。しかし「電子書籍市場は規模や仕組みはまだ熟していません。ビジネスは現時点では、紙のビジネスにプラスアルファといったところであり、電子書籍だけで成り立っているビジネスは非常に少ないのが実態です。ただ儲かるための仕組みは作られつつあります」と、市場の印象を述べる。

閲覧ツールに関しては携帯電話からスマートフォン、タブレット、パソコンと多様化していてそれぞれОSが異なるということ。電子書籍を作るに当たって重要なことはどのツールに対応していくのか、あるいは全てに対応していくのかを明確にすること。そして「それぞれの画面サイズ、解像度、ОS、書体、ブラウザのバージョンなど『紙の書籍と違って見る環境が定型ではない』ということがかなりサービスする上で肝になります」と説いた。制作では紙のようにA4判やB5判でやり取りするようにはならないことを強調した。

アップルは電子書籍を普及させたいためかA4(1.41:1)の比率に近い画面サイズになっている。それ以外のアンドロイド系のスマートフォンやタブレットは動画を観るのに主眼を置いているのでテレビ画面(地デジ対応テレビ16:9)の比率に近いという噂が業界にあるという。

つまり例えば、iPhoneのサイズ(比率1.5:1)にぴったりの電子書籍を作った場合に他のスマートフォンで読む場合はどこかに余白ができることになる。これはiPadと他のタブレットについても言えることである。「画面の大きさ(比率)に合わせて制作しなければならないことが起きてくるでしょう」とのことだ。

 続いて前田氏は、電子書籍を『売る』ことについて言及した。「電子書籍では作るだけでなく、販売も手懸ける必要が出てくるかもしれません。あるいはクライアントさんから有望があって、販売するための電子ストアにデータを届ける役割を担うことになるかもしれません」と述べる。

 

ストアは乱立していて流動的
淘汰されていく可能性が

 

 電子書籍の販売形式はさまざまで、アプリケーションとして単体にまとめて配信する方法。あるいは書棚といわれるアプリケーションをまずお客さんの手元に届けておいて、その書棚に電子書籍を配信する方法。あるいはデータだけをやり取りしていく仕組みで販売する方法がある。そして、それぞれ課金の仕組みが異なっていること。「私個人の感想なのですが、いくつかツールを持っていて、電子書籍を購入して読んでいるのですが、沢山の電子ストアが存在するのに、欲しい書籍があっても一体どこで売っているのかさえも分からないのが実態です。グーグルなどで電子出版とタイトルをわざわざ検索して売っているストアを探すということをやっています。もちろん複数のストアの横断検索サービスは存在しますが、販売サービスが乱立していて読者にとっては優しくない状況です」と、電子書籍を購入する際に探し方に難がある指摘する。

 

データはさまざまなチェックが
求められ適切な方法で制作を

 

ストアに関しては非常に流動的で今後淘汰される時代が来るかもしれないとのこと。いずれアマゾンが参入してくると市場は大きな影響を受けると説いた。「どこのストアで販売するかによって値段設定や課金の仕方が違ってくるうえ、明日になったら業界マップは変わっているかもしれませんから、電子書籍の販売を考えている企業さんは、ストアの動向について注力していく必要があるでしょう」と説く。

電子書籍を『作る』に当たっては、どんな書籍を作りたいのかを明確にしておくことが大事だという。「ADPSもクォークもどちらこというと、グラフィカルな書籍作りに向いていて、文字物にはまだ適していない面があります。それは全文検索ができないからです」と指摘する。

要は電子書籍を作成するソフトにはグラフィック分野向き、文字物向きと分かれていることがあり、それを理解しておくことが重要なのである。そこで前田氏はクライアントからの要請であり自社企画であり、電子書籍を作るに当たって次の事項のチェックをしておくことを掲げている。①グラフィカル?文字中心?②インタラクティブな仕掛け(リッチ化)は必要?③既存データを流用?新規で作る?④手間や時間をかける?急いで作る?⑤最終的に必要なデータ形式は?⑥ターゲットとなる市場・環境は?⑦制作にかけられるコストは?⑧発行部数(ダウンロード数)の目安は? 以上の事項について確認してから制作に臨むことが大事である。

文字物はリフロー系が中心になっていくでしょう。画面の文字を大きくして読むようになり文字が画面から溢れて次に移行し、ページ数が固定しないから、目次には定形の数字を入れる必要がないと指摘する。

そして、文字や組版が中心の電子書籍制作で、今年からキーワードになるのがEPUBであると前田氏は強調する。「3.0の国際規格になって日本語への対応がかなり強化されて、縦書き、禁則処理、ルビ、縦中横、圏点などがそのまま指定できるようになりました。EPUBHTMLのホームページの技術を多分に使っています。ですから印刷業界から見れば取っつきにくい面もありますが、最新のInDesignやクォーク、一太郎等からは書き出しが可能になっていますから、HTMLの技術を解っていなくてもEPUBに簡単に変換できるようになっています」という。また、アマゾンは昨年10月に電子書籍端末アマゾン・キンドル向けの新しいファイルフォーマット『Kindle Format8』を発表した。このフォーマットの形式はHTMLCSS3に対応しているとのことで、EPUBとほぼ同じであるが、3.0の日本語組版へは現時点では対応していないという。

ところで電子書籍を作るに当たっては、「PDFJPEGなどの既存データを電子書籍のフォーマットに変換していく方法が取り組みやすいでしょう」と前田氏はいう。

カタログ、プレゼン用、営業用資料としての社内資料を配信するにはどうすれば良いのか。今後、この社内配信へのニーズは高まっていくであろう。iPadiPhoneで社内配信するにはアップルと契約しなければならない。その方法としては、まずビューワアプリにデータを配信しデータを閲覧できる「ビューワアプリ内配信」。次に最大100台の端末にアプリケーションをテスト用に配信できる「Ad Hoc配信」(iOS Developer Programへの参加が必要)。さらに端末の個別IDなどは不要でアプリを社内配信のみができる「エンタープライズ配信」(iOS Developer Enterprise Programへの参加が必要)3つの方法がある。

また、電子書籍を作る前には「肖像権」「著作権」「商用利用」の確認をとっておくことが重要で、また使用するフォントについても使用目的を明確にしてメーカーに許諾を得ることが必要になってくると指摘する。

またカラーベースはCMYKにするのかRGBにするのかという問題が出てくるが、印刷ではCMYKが使われているためもう1RGBに変換し直す必要が出てくるので、何度も変換することで画像が劣化してしまう恐れがある。最初のRGBデータをそのまま電子書籍に使うことを推奨する。「ツールの画面はRGBであるため、電子書籍のデータもRGBで運用すれば、より狙い通りの色を届けることができます」と、前田氏は説く。

  

 

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