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第4回 デジタルとアナログ併用の統合型マーケティングを

株式会社インテグレート 代表取締役CEO 藤田康人

日本に初めてキシリトールを導入し、ゼロから2000億円市場規模まで成長させた藤田康人さん。外資系食品素材メーカーでありながらキシリトールブームを巻き起こしビジネスを立ち上げた仕掛け人である。業界への貢献度は計りしれないものがある。現在は株式会社インテグレート・代表取締役CEОとしてPRADSPWeb等を統合し、プランニングから実践までワンストップサービスのIMC(Integrated Marketing Communication)を実践している。「雑誌はPRメディアとして価値があり、当社では大いに活用しています」という藤田さん。PRマーケティングの手法、紙媒体の重要性などについてお話を伺った。

----   御社の事業についてお聞かせください。
藤田 当社はIMCという統合型マーケティングコミュニケーションを展開するプランニングブティックを標榜しています。ビジネスコンサルティング機能と情報クリエイティブ機能を持ち、Webから紙媒体、映像、TVCMまで手掛けており、広告からPRまでトータルにプランニングから実践まで、ワンストップでサービス提供しています。ですから、インターネットを中心にした事業展開をしていると思われるかもしれませんが、実は雑誌や新聞をマーケティングに大いに活用しているのが特徴です。特に雑誌は重要なメディアと位置付けています。実のところ、インターネットはあまり信用していません。()

---- と申しますと…。

藤田 いま日本の書店やコンビニで売られている雑誌は数百誌もないと思うのですが、しかし、インターネットは数十万、数百万の数のWebサイトがあり、広告費の売上では雑誌を追い抜きましたが、分け前はかなり違います。インターネットは百万単位で割りますが、雑誌は多くても数百単位ですから、1つのWebサイトの広告収入は雑誌と比べますと相当少ないわけです。Webサイトは集まるとものすごい数になりますが、単体のメディアの力としては雑誌には全く敵わないのが実態なのです。

 

編集記事を編集部にプロデュースし、
記事で顧客や商品をPRしていく

 
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 では、まだまだマスメディアの時代ということでしょうか?

藤田 ええ。ただ従来のように広告だけのアピールでは効果はなく、ビジネスモデルを変えなければなりません。雑誌で価値があるのは編集記事であって、従来の広告には残念ながらほとんど価値がなくなっています。ですから、当社では雑誌の編集記事を上手くプロデュースして、クライアントをPRしていくことを戦略にしています。広告枠というスペースを買う方法ではなく、記事の中でクライアントの商品を直接宣伝するのは単なる記事広告になってしまいますから、そうではなく、個々の商品の価値を引き出すための話題作りであるとか、使い方や価値を新たに創造するような間接的なアピールの仕方で、プロダクションとして編集記事を作成しています。情報をクリエイトすることで、行く行くは商品価値を高めて販路の拡大へ繋げていくのが狙いです。

そのためには、雑誌の編集者と緊密な打ち合わせをして記事の制作に当たっています。雑誌の編集コンテンツをWebサイトにも展開し、メディアを統合したPRを仕掛けています。新聞や雑誌の最大の力はメディア力よりもコンテンツ制作力にあります。でも、編集記事は特定企業の特定商品は、中立、公平性の立場からなかなか扱うことはできません。いわゆる提灯記事は書いてくれませんから、編集部がその商品について扱いたいと思ってもらえるような情報を、ターゲットに合わせて私たちが戦術的に提案していくことがポイントになります。そこでは読者も満足できて雑誌の売上が伸びるようなコンテンツを提供できるかが鍵になります。それがPRマーケティングであり、「エディトリアル」と呼ばれる手法です。

---- 雑誌社は、雑誌コンテンツとWebコンテンツの両方を作って併用するケースが増えていると思うのですが…。

藤田 そうですね。ただ、雑誌社ではWeb専門の編集部を持っているところはまだまだ少なく、紙の編集部がWebコンテンツも作って担っていることの方が多いです。雑誌のWebメディアで広告収入が上がっているところは少ないですから、紙の編集部の方がまだまだ力を持っているのが実態です。雑誌の良いところは、読者のターゲットがはっきりしている点です。Webの場合はどんなにアクセスしてきても誰であるか分からない匿名性がありますから、ターゲットがはっきりしませんし、こちらとしてもターゲットを絞った編集記事を作れないわけです。あくまでもアクセスの数だけしか認識できないわけです。その点雑誌は女性、男性、年代、ライフスタイル等、ターゲットを絞った編集方針で制作しますから、広告にしても編集記事にしても企画しやすい面があるわけです。

---- なるほど。PRする上で雑誌はWebよりも優位なわけですね。

藤田 ただし、お話しましたように、広告単体ではもはや大きな効果が出ませんから、編集記事と広告が連動しなければ、広告の価値は出てきません。これまでのPR会社はコンテンツ制作に踏み込んでいきませんでしたし、コンテンツ制作は編集部の聖域でしたから、踏み込めなかったわけです。当社は単に広告を出す広告代理店とは違って、雑誌コンテンツを理解してコンテンツを編集部と共に作っていますので、編集部としても当社をパートナーとして見てくれるようになりました。雑誌から話題を発信していろいろなムーブメントを起こすようにしています。それが従来の広告代理店やPR会社と大きく異なるところでしょう。

 

印刷業界もアナログとデジタルの
統合型のマーケティングでビジネスを

 

 

---- 雑誌から流行することもあるわけですね。

藤田 ええ。雑誌のブランド力は大変大きなものがあります。例えば、光文社の月刊誌「マート」の愛読者のことを「マート族」というのですが、そのマート族がいろいろなライフスタイルを作っていて、彼女たちが推薦する商品がヒットしたりしているのですが、それによって、マートから出てきたトレンドや取り上げられた商品は市場に広がっていきやすいわけです。新しい手法の雑誌、新しいコンテンツの雑誌が求められていて、そのように雑誌にはまだまだ商品をヒットさせる力があり、販売部数を伸ばすことができます。ですから、一概に雑誌は売れないとうわけではありません。

---- 同じ紙媒体でもチラシやPOP、什器などの販促物はいかがでしょうか?

藤田 今後はさらに重要になってくると思います。これだけWebに情報が氾濫してしまいますと、より戻しの動きとして、リアルな物、アナログな物が見直されるようになってきます。Webは興味のある人が自分からアクセスして情報を入手するものですが、興味のない人に情報を伝えるのは苦手です。でも、チラシや店頭の販促物は興味のない人にプッシュすることができますし、新たに興味を持たせて出会わせることができます。そこがポイントになります。

---- 印刷業界は一部の大手以外はまだまだ紙媒体が主体ですが、どのようにPRマーケティングと関わっていけば良いのでしょうか?

藤田 とくにチラシの領域はモバイルとの相性が良いとされています。チラシ自体は表裏に掲載されている情報しかありませんが、チラシにQRコードを付けることでWebにアクセスされ、その場でモバイルになり、相当な情報量を埋め込むことができるわけです。印刷会社では、そのような新しいマーケティングを提案し展開していくことが大事です。そうすれば、印刷物は衰退するどころか、まだまだ伸びていくと思います。「紙媒体とWeb」「紙とモバイル」あるいは「デジタルとアナログ」という統合型のマーケティング展開を目指していくことが重要だと考えています。しかし、中小の印刷会社がワンストップで展開していくのは難しいでしょうから、ITやWebに詳しい専門会社と組んで、印刷会社はこれまで培ったアナログの経験を活かして、デジタルとアナログを上手く組み合わせていくことが求められるでしょう。しかし、今はまだ両者を上手くかみ合わせることができるコーディネーターがあまりに少ないためにできていないのが現状ですが…。

---- では、広告に関しても統合型で臨まなければならないとわけですね。

藤田 そうです。広告は広告、チラシはチラシというように、別々に考えて取り組むのではなく、1つのストーリーやキャンペーンとして有機的にミックスし、立体的にコミュニケーションしていくことが大事だと思います。それが今注目されている「次世代IMC統合型マーケティング」と呼ばれる手法です。ただし、コンテンツ作りでは、Webは自らアクセスしてくる人たちに向けてのコンテンツが求められますし、チラシには受け身用のコンテンツでなければなりませんから、メディアによってコンテンツの切り口を変えていく必要があります。その用途ごとに適したコンテンツを作り分けられることが大事であり、それがこれからのPRマーケティングの在り方だと思っています。

 

 

YASUTO FUJITA

1964年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部人間関係学科卒業後、味の素株式会社に入社。甘味料事業部で低カロリー甘味料アスパルテームの開発・営業、ダイエットコークの製品開発等を担当。92年、フィンランド人の社長と2人ザイロフィン ファーイースト社を設立。97年日本に初めてキシリトールを導入。素材メーカーでありながらキシリトールブームを仕掛け、キシリトール製品市場をゼロから2000億円規模まで成長させた。05年日本PRアワード・グランプリを食品素材メーカー史上初めて受賞。07年統合型マーケティングを展開する株式会社インテグレートを設立し、代表取締役CEOに就任。著書に『99.9%成功するしかけ』(かんき出版)、編著として『漂流する広告・メディア』(日経BP企画)がある。

 

 

12人のキーパーソンに広告の未来について藤田さんがインタビューした『漂流する広告・メディア』

 

キシリトールを日本に導入した苦労とサクセスストーリーを綴りながら、これからのマーケティングの在り方を指標した著書『99.9%成功するしかけ』

 

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