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第6回 電子書籍へ取り組む印刷会社によるパネルディスカッション

まずは始めてみること。そこから見えてくるものがある。

 

日本グラフィックコミュニケーションズ工業組合連合会(東京都千代田区、小林博美会長)GC東京マーケティング部会は、84()、株式会社モリサワ東京本社(千代田区飯田橋)で、小笠原治氏(GC東京「マーケティング部会」専門委員・前JAGAT常務理事)を講師・モデレータに迎え、メンバーによるパネルディスカッションを開催した。同パネルディスカッションは「“デジタル・コンテンツ制作集団をめざして”『電子書籍』各社の取組み」をテーマに開催されたセミナーのメインプログラムである。パネラー4社が電子書籍に取り組んだ事情、電子書籍ビジネスの展開の仕方、事業としての考え方・課題など発言し、今後の電子書籍事業の参考にしていくというのが主旨になっている。
  
電子書籍は「優れた最終商品を創る」という視点で
 

まず初めに、小笠原治氏が、「電子書籍への取り組みと課題」をテーマに講演を行った。電子書籍関連業務の在り方から、ビジネスモデル、国際電子出版EXPOの傾向、電子書籍のワークフロー、今後のビジネス領域などについて、調査・取材、アンケート分析した内容と共に話をした。

冒頭「印刷物はプリプレスで加工することが仕事の主体ですが、電子書籍では作ったモノがそのまま最終商品になるという点が、印刷と電子書籍の大きな違いになります」と、印刷と電子書籍の相違点を挙げて、優れた商品を作成することがポイントになると指摘した。

続いて「電子書籍では品質の良い最終商品を作っていく視点が求められますが、使いやすさの追求であるとか、どのように商品化すれば売れるのか、など、ノウハウを持つことが重要になります」と、ビジネスを進める上での心構えを説く。

現在、どのような電子書籍関連業務があるかというと、「紙媒体をスキャンしてJPEGPDFにして、パラパラめくれる電子ブックにするデータ加工」、「サンプル・フリーの制作」、OCRテキストにして電子書籍を作成する仕事」、「各社デバイスのフォーマット作り」、「ライセンス取得」など、冊子づくりを挙げる。

 次に、配信に関する仕事では「従来の書店と同様のサービスをオンラインストアで行う場合、申請・配信・課金・決済などの業務をネット上で行うビジネスが成り立ちます」と、言及。しかし「オンライン書店を開設しただけでは、大して売上を上げることはできません。サイトやSNS、ブログなどで宣伝していくことが必要であり、広報宣伝のためのプロモーションが不可欠です」と、アクセスを増やすためのマルチ展開の施策が必要であるという。

その他、学会誌を例に挙げて、「ネット上で関係者による共同編集を行う仕組みの提供や、データベース化の構築業務も考えられます。検索できるようにデータにタグ付けする仕事もあるでしょう。新しい利便性や楽しみがますます出現してきますから、新しいアプリを開発していくこともビジネスとして考えられます」と、ネット上でビジネスを展開するノウハウの重要性を説明する。

小笠原氏は、電子書籍ビジネスと音楽のダウンロード・ビジネスの類似性を示し、「儲けるためには、アグリゲータ、プロモータ、アフィリエイトなどを、総合的に扱っていくオンラインビジネスを展開していくことも考える必要があります」と、音楽ダウンロード・ビジネスがヒントになることを示した。

 

顧客のコンテンツをマルチに広報宣伝することが大切

 

また、オンライン書店だけで電子書籍を売っていくのは困難とのことから、「電子書籍のファンづくりや、著者によるイベント、さまざまなプロモーションを仕掛けて、オンライン書店の周辺ビジネスを進めていくことがポイントになります」と、広報宣伝のマルチ展開で集客することが不可欠であることを述べた。

続いて、昨年GCJで行った電子書籍等に関するアンケート結果から、iPhoneiPadに対応している会社がまだまだ少ないことを指摘。その背景には、データ加工までが仕事の領域でストップしているのが理由とし、最終商品を作っているという感覚が希薄であることから、最終商品を意識する必要があると説いた。

また、従来のDTP的な制作工程だけがワークフローではなく、クラウド型電子出版が方向性として考えられることを強調した。

「原稿を送信すると、そのままオンライン書店で販売できる仕組みが主流になります。もはやInDesignで電子書籍を制作する必要は無くなりますが、ただし、画像や図版を組んでデータ加工する際は、InDesignを使っての作業は残っていくでしょう。顧客のニーズによって、DTP的な電子書籍制作を行うものと、あるいは顧客のデータをそのまま出版・管理する業務とに分かれていくと思います」と、DTP型とクラウド型に大きく分けられることを示唆する。

 今後は、顧客が自社でデータ加工し電子出版するデータの再活用を望むようになるため、データの囲い込みが難しくなること。一方で、データ更新が不可欠なことから、データの管理を委託されるようになること。さらに、事業会社がメディアを持つオウンメディアが増えてくること。などが、ビジネスを難しくさせるとし、顧客のニーズによってビジネスの在り方が変わってくると締めくくった。


 パネルディスカッション
『電子書籍』各社の取り組み


 株式会社二葉写真製版--------小林 博美 氏
マーケティングを兼ねて
韓国向け日本語を学ぶため
の電子書籍発売へ

 

当社は、マンガ制作を専門にしていますが、お客様の出版社では国内販売だけでは厳しいということで、海外に市場拡大していく動きが出ています。そんな出版社の海外戦略に対して電子書籍の提案を行っているわけですが、これからはマンガをコマ単位で表示するのではなく、ページ単位で表示する、タブレット型の大画面で読む時代になることが予想されます。

今やマンガでいろいろな事を学ぶ時代になりました。マンガを使えば外国語も自然に覚えられるのではないかと、エデュケーションコミックという「学習+娯楽」のコンセプトで、ページで見せるマンガの提案を考えています。

それで最初に、電子書籍のマーケティング調査を含めて、韓国語のマンガを販売することにしました。これは韓国人が日本語を学ぶためのマンガを制作しました。それでこれからこのマンガを売っていくために、検閲が簡単なキオスク書店という、電子ブックストアに申請しています。

 同ストアは、アップルストアのように1冊ずつ検閲するのではなく、一度新刊本を検閲し通れば、次からは検閲なしで次々と販売できるのが特徴です。アプリの機能としては、ブックストア機能の他に、ブックビューア機能、同時翻訳機能、日本語読み上げ機能、単語帳機能を持たせることができます。

 今年はこの韓国語対応のマンガを販売していくことが目標ですが、次には英語、中国語への展開も構想しています。当社は制作の専門会社できましたが、紙の時代はそれでも良かったのですが、電子媒体の普及によって制作だけでは

制作から配信・管理までするビジネスモデルを確立していく必要があると考えています。その1つが今進めているマンガになります。

電子マンガは、電子化戦略の1形態に過ぎません。思うようにビジネスが進まないかもしれませんが、当社としてはノウハウを蓄積できますから、将来のためには必ずためになると思っています。とにかくやってみなければ先は分かりません。自社の手の届くところから始めてみることが大事だと考えています。

 

株式会社グラフト------------宇田川裕孝 氏
食品カロリー本の
電子書籍の制作を
出版社に提案し受注を

 

得意先の出版社様が食品のカロリー事典を出版していたので、その電子書籍化の提案をしたところ、低コストを前提に発注していただき、電子書籍の制作を開始いたしました。

電子書籍を作るためのオーサリングツールを提供している数社の企業については調査を済ませてありましたので、その中から導入コストと今回の出版物との適合性を考慮し、ポルタルト様の「モビリボスタジオ」というPDFデータを利用した電子書籍オーサリングツールを採用しました。

他社からすでに同様のカロリーに関する電子書籍が販売されていましたが、PDFデータを収録しただけの内容で450円という価格でした。電子書籍を購入するお客様はこの内容で満足するのかと疑問に思いました。そしてもっと良い内容の商品を作ろうと、約1,200点の写真をタップすることで拡大表示、全文検索などの機能を搭載した電子書籍を提案し、お客様からОKの返事をいただき製品化しました。当社はあくまでも制作業務のみを受注させていただきましたので、アップル社への申請業務などはお客様に行なっていただきました。

最初の電子書籍販売のため、市場動向を知るために、ある程度の価格(500円程度)で販売していただきたかったのですが、定価は350円と決定しました。また、当初1ヶ月間は期間限定にて115円という低価格で販売することになりました。

当初の1カ月で約1,500ダウンロードと、電子書籍としての販売数としては大きなダウンロード数となり、しばらくの間はカテゴリー部門で1位でした。カスタマーレビューではコンテンツの量が多い割には安価であるという評価などをいただきました。レビューに投稿された内容をフィードバックして、制作に活かしていくこともポイントになるでしょう。

今までとは異なる視点から見ることで、ユーザーから評価されたりする場合もありますので、いろいろな企画・提案することが必要だと思います。また、電子書籍は紙の本とは違う新しい媒体である点を頭に入れて、取り組むことが重要ということが解りました。

 

株式会社ローヤル企画--------松浦睦桐 氏
電子出版だけでなく
販促ツールとして
新たなビジネスモデルを

 

電子書籍に関しては、得意先に出版社が多いこともあって、昨年辺りから既に200タイトルの電子書籍を制作してきました。書籍系の本が中心で、実際に流通している書籍を電子化するもがほとんどになります。

制作する際のデータ形式や制作システムに関しては、お客様のほうから指示がありますので、それに従う形で制作に臨みました。おもにモリサワさんの「MCBook」やXMDFで制作するケースが多かったです。

実際に制作して感じたことは、1冊作るのに1日、2日掛かるにも限らず、いただける制作費は数万円のレベルです。1本数万円の仕事を何日も掛けていたら割が合いません。下請では儲かるものではないと思いました。

また、売れたらキックバックするレベニューシェア(成果報酬型)の契約の相談もあったのですが、しかし、この方式は電子書籍が売れれば儲かりますが、売れない場合は回収できないコンテンツになります。ですから、制作側としては、電子書籍のコンテンツをよく見極めて、受注するかどうかを判断する必要があると感じています。

現在、電子書籍の市場は形成されていません。また、普段新聞や雑誌、本を読んでいる人が、いきなり電子書籍に転向することも考えられません。人の習慣というものはそんなに簡単に変えられないものです。

ですから、デジタルコンテンツに慣れ親しんでいる若い世代を対象にしていくべき仕事なのかなと思っていますが、これから端末がどんどん市場に普及していけば、ビジネスとし成り立つでしょうが、この1、2年はまだまだ難しいでしょう。しかし将来は、何かのタイミングで急速に伸展していくビジネスであるとは思っています。

現状では儲からないから始めないというのではなく、将来のために研究し、いろいろな技術を身につけていくことが大切だと考えています。実際に取り組んでみないと、技術の変化が解りませんし、課題も見えてきません。当社では電子書籍は出版だけでなく、販促ツールとして新たなビジネスモデルを模索しています。

 

株式会社アズワン------------枠元孝夫 氏
IdDesignCS5.5を使って
付加価値の高い電子
ブック制作が可能

 

当社は編集、デザイン、DTP組版、画像処理を本業にしています。3年前に、スターティアラボさんの電子ブック制作ツール「アクティブック」を導入しました。それを使って得意先の出版社さんの付加価値を高めるために、月刊誌の電子書籍化を提案し、作った電子書籍を出版社に買っていただくことを考えました。見本の電子書籍を作って編集長に提案したわけですが、コスト面や費用対効果の話で思うように受注できなかったわけです。

それで受注できたのは、出版社のホームページにアップし、読者に読んでもらって、気に入ってもらえば紙の本を買ってもらうという立ち読みページの方法でした。

それで今後どのような方法で電子書籍の仕事で儲けていくかを考えているのですが、InDesignCS5.5を使って社内のDTPオペレータに作らせたものですが、テキストや画像は当社の会社案内のデータを使って作成しました。これをサンプルとして発表します。(サンプルはURL  http://az1.co.jp/company_flash/index.htmlへアップ)

まず、写真はくるくると回転させました。次にビデオを貼り付けてみました。全画面にも動画を拡大することができます。2秒ごとに画像をスライドさせるのも簡単に可能です。アイデア次第で面白い見せ方ができるわけです。これら全ての作業はCS5.5で簡単に可能です。

皆さんの会社でもDTPオペレータの方はCS5.5を使えば、このような作業が可能だということは、ご存知だと思います。ただ実際にそういう仕事をしていないだけで、そのような仕事があれば、すぐにできると思います。

例えば車の雑誌であれば、車の色の変更や360度撮影してスライドショーとしても見せることができます。また、走っている動画を貼り付けることも可能ですから、是非とも皆さんの会社でも作成してみてはいかがでしょうか。

これからは3次元の世界を見せる時代になってきますから、紙の延長線上として、PDFデータを単に電子書籍化するだけでは、お客さんはなかなかお金を出してくれません。

いかに高い付加価値を与えていくかがポイントになります。これらの仕事をDTPオペレータたちによって実現できる時代になったわけです。電子書籍時代になれば、私たちの仕事の出番が増えていくと確信しています。

 

 

モデレータを務めたマーケティング部専門家委員の小笠原氏、パネルディスカッションに参加した小林GCJ会長、宇田川社長、松浦社長、枠元社長(左から)

 

 

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