ニュースリリース

2022.06.22

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ  最適生産ソリューション採用事例――サクラグループ オフセット/デジタル共存運用で枚葉機に余力を生み、内製化を推進 現場の意識改革、部門間の協力体制強化などで生産基盤をより盤石なものに

 名古屋を拠点に、印刷を中心とした販促支援ビジネスを展開するサクラグループ(代表取締役社長:野々村昌彦氏、本社:愛知県名古屋市南区千竈通6-35)は、FFGS、富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)のサポートのもと、オフセット印刷とデジタル印刷の最適な運用体制を確立し、内製化率向上、利益アップを果たしたほか、現場の意識改革や、部門間のコミュニケーション改善などの社内改革も実現している。最適生産環境の構築に着手した背景や具体的な取り組み内容、現時点での効果などについて、株式会社サクラホールディングス 専務取締役・小鹿晃義氏、製造部 生産管理課 課長・鈴木秋弘氏、株式会社サクラアルカス制作部 グループリーダー ディレクター・大西征二氏に伺った。

■オフセット機のオペレーター確保が喫緊の課題だった
サクラグループは、製造(刷版・オフセット印刷・加工)および生産管理を担う「株式会社サクラホールディングス」、デザイン・制作および営業をメインとする「株式会社サクラアルカス」、デジタルメディアを活用したプロモーションの企画・制作を手がける「株式会社ボーダー・アンド・ポーター」の3社から成り、企業の販促活動を多角的にサポートしている。

同グループの強みの一つである制作部門は、約60名のスタッフを擁し、スピードが求められるチラシの制作や、紙メディアとデジタルメディアを組み合わせた販促施策などにも柔軟に対応。撮影スタジオも完備する。印刷部門には、オフセット輪転機(B2両面4色機)2台と枚葉機(菊半裁4色機)1台、フルカラーデジタル印刷機(IridesseTM Production Press2021年導入)2台を持ち、チラシやPOP、カタログなどの商業印刷物から、封筒・帳票類まで幅広く手がけている。

そんなサクラグループが、印刷工程を中心とした生産改革に着手したのは、2019年のこと。人材確保の難しさや作業の属人化などにより、印刷設備を柔軟に活用できていないという課題が、その背景にあった。

オフセット機については、輪転機・枚葉機ともオペレーターの高年齢化が進んでおり、一方で、新しい人材を募集してもなかなか応募が集まらず、人材の確保が困難な状況でした。加えて、枚葉機については、1ジョブあたりの平均通し枚数が3,000弱になっており、生産効率の面からもデジタル印刷への移行が必要だと感じていたのです」(小鹿専務)

しかし、当時(Iridesse導入前)使用していたデジタル印刷機は、POP出力の専用機として経済性優先で導入したものだったため、他の用途で生産機として使うには、安定性などの面で課題があったという。さらに、大西氏は「デジタル印刷機の運用体制も見直す必要があった」と語る。

「デジタル機によるPOP出力は、一人のオペレーターが専任で行なっていたため、小ロットジョブをデジタル機に移行するにも、その余裕がなかった。そのため、もっと柔軟にオペレーションできる体制をつくり、属人化を解消する必要がありました」

こうした課題を解消するため、同グループでは、オフセットと同等の生産機として使えるデジタル印刷機を新たに導入することで小ロットジョブのデジタル移行を進め、オフセット機(枚葉機)とデジタル機のより効率的な運用環境を整えようと考えた。

■ジョブ分析に基づくオフセット/デジタルの分岐点は2,000通し
オフセット/デジタル共存運用の構築にあたっては、枚葉機のジョブ内容や運用状況などの現状分析、デジタル移行による効果のシミュレーションなどを、富士フイルムBI(当時の富士ゼロックス)・FFGSと共に実施。印刷工程の課題をあらためて明確にするとともに、どれだけのジョブをオフセット印刷からデジタル印刷に移行できるかを検証した。

  小鹿専務
「当時Excelで管理していた枚葉機の稼働実績データを4カ月分、富士ゼロックスさんにお渡しし、分析していただきました。その結果、500件あまりのジョブのうち、2,000通し以下のジョブが3割以上を占めており、そうした小ロットのジョブや、両面印刷のジョブが集中すると残業時間が発生していることなどが、あらためて把握できたのです。以前から、各日の通し数・ジョブ数・版数などは日報上で確認しており、1ジョブあたりの平均通し数が3,000弱まで下がっていることなど、大まかな傾向はわかっていましたが、この分析によって、現状の課題をより正確に認識し、社内共有することができました」(小鹿専務)
枚葉機のジョブ分析結果をもとに、サクラグループでは、枚葉機とデジタル機の新たな運用方針について検討。当時POP専用機として使用していたデジタル印刷機3台の代わりに、より汎用的に使用できる生産機として『IridesseTM Production Press』を2台導入し、枚葉機で非効率になっていた小ロットジョブをIridesseに移行する形で、印刷工程の最適化を図ることにした。

「富士ゼロックスさんからご提案いただいた“オフセット印刷とデジタル印刷の振り分け基準”は、約2,000通しでした。それまで私どもは1,000通し前後と考えていたので、意外と分岐点が高いなという印象でしたが、時間やコストのシミュレーション結果を見せていただくと、『なるほど』と。明確な根拠となるデータを示していただけたことで、現場も『これならデジタル印刷に切り替えた方がいい』と納得感を持つことができました」(鈴木課長)

新規のデジタル印刷機としてIridesseを選んだのは、「品質・生産性・稼働安定性を高いレベルで兼ね備えていると判断したから」と大西氏は語る。

「実は以前、同じ富士ゼロックスさんの『Color 800 Press』を使用していたことがあり、品質安定性や堅牢性の高さはそこで実証済みでした。その後継機であるIridesseなら、無駄な機械停止時間が抑えられ、オペレーターの負荷も減り、デジタル印刷機ならではのメリットが最大限に得られると考えたわけです」(大西氏)
                                  
4カ月分の枚葉機稼働実績データの分析結果
                            

■現場の意識改革を促すことで、デジタル移行をスムーズに

 ところで、サクラグループでは前述の通り、サクラアルカスが主にデザイン・制作・営業を、サクラホールディングスが刷版以降の製造工程を担っており、印刷設備に関しても、デジタル印刷機はサクラアルカスの制作部門、オフセット印刷機はサクラホールディングスの製造部門がそれぞれ所有している。そのため、単純にオフセット印刷からデジタル印刷への移行を進めるだけでは、製造部門(サクラホールディングス)の仕事量が減り、売上も下がってしまうことになる。この点について小鹿専務はこう説明する。
枚葉機の担当者は定年に近い年齢のため、今後雇用契約を継続していくには、これまでよりも作業負荷を減らし、残業も極力なくしていくことが必要でした。ですから、小ロットジョブをデジタル印刷に移行することは、より働きやすい環境になるという意味で、目的にかなっているわけです。また、枚葉機に余力が生まれれば、これまで外注に出していたロットの大きい仕事を内製化することができますから、デジタルへの移行を進めても枚葉機の仕事がなくなるということはありませんし、足の長いジョブが集まることで、付帯作業の軽減が図れます

加えて、現場の意識改革も促すことで、デジタル移行をスムーズに進めたという。

「当グループでは部門採算性をとっているので、製造部門では自分たちの売上だけを考えると『仕事をデジタル印刷に渡したくない』という意識が働いてしまいます。そこで、現場には、枚葉機に余力が生まれることで内製化率の向上につながること、平均ロットが大きくなることで回転数を上げられること、各部門の評価指標として『売上』だけでなく『回転数』も重視することなどを説明し、最終的に会社としてのメリットにつながるということを理解してもらいました」(小鹿専務)

さらに、サクラグループでは、最適な設備運用を実現するために、生産管理のあり方も見直した。

今年に入ってから、ジョブの振り分けをすべて生産管理部門で一元的に行なうことにしました。それまでは、受注時に営業がお客さまとの間で印刷方法を決めてしまうことが多く、現場もそれに従って流していたのですが、そのやり方ではコストや効率の面で必ずしも最適とは言えないケースも出てきます。ですから、生産管理部門の“統制”を強化することで、ジョブをより適切に振り分ける体制に改めたのです」(鈴木課長)

こうして、ハードだけでなく、人の意識や社内体制などのソフト面でも、オフセット印刷機・デジタル印刷機を柔軟に共存運用できる環境をつくり上げていった。

            小ロットジョブ用の生産機として、品質・安定性に優れたIridesseTM Production Press』を2台運用。
■枚葉機の余力を活かし、中~大ロットの仕事を内製化
 オフセット/デジタルの共存運用により、現在、小ロットジョブの多くはデジタル印刷に移行している。基本的に、各ジョブのコストと、納期やサイズ、紙種などの条件を加味して生産管理部門が振り分けを判断しており、概ね2,000通し前後が分岐点になっているが、場合によっては、3,000通しのジョブでもIridesseで出力するケースがあるという。
    
鈴木課長
3,000通しというと、システム上のコスト計算ではオフセットの方が安くなりますから、以前なら間違いなく枚葉機で印刷していたと思います。しかし、トータルの運用原価で見ると、デジタル印刷の方が安く抑えられるケースもあるということがわかりました」(鈴木課長)

インキやトナーなどの材料費だけでなく、印刷の前後工程も含め、人や時間などの要素まで加味して原価を算出することで、実質的な経営コストに基づいた「最適な振り分け」が可能になっているのだ。

一方、デジタル印刷への移行が進んだことにより、枚葉機においては稼働に余裕が生まれ、狙い通り、中~大ロットジョブの内製化が実現している。しかも、印刷だけでなく後加工の内製化にも寄与しているという。

「枚葉機のオペレーターは、折りや断裁も兼務しているので、印刷の作業に余裕ができると、その分、後加工に充てる時間を増やすことができます。加工設備の更新も併せて行ない、いままで外注に出していた全判のジョブの後加工も内製化しました。社内でこなせる仕事の幅が広がっているわけです」(鈴木課長)

デジタル印刷機の運用体制も大きく変わった。従来、専任者が一人で担当していたオペレーションを、現在は、プリプレスのスタッフも含めて5名ほどで分担している。

「属人化の解消に向けた第一歩が踏み出せたと感じています。『皆でやろう』という意識が高まり、部門を超えた協力体制ができつつある。また、複数名がオペレーションを担当することで、若いオペレーターの教育に時間を割くことも可能になり、人を育てる環境も徐々に整ってきました」(大西氏)

そして、小鹿専務が最適化の効果として最も実感しているのが、意識面の変化だ。

ジョブ分析やシミュレーションの結果を社内で共有したことによって、『設備や時間の余力を生み、その余力を他の作業に充てる』という考え方が定着してきたと感じます。枚葉機の仕事をデジタル機に回したことで、『売上が減る』ではなく、『空いた時間を何に使い、何を生み出すか』という発想ができるようになった。こうした意識改革があったからこそ、生産改革がスムーズに進められたのではないかと思います。また、オフセットとデジタルの使い分けについても、『各ジョブを経営コストの観点で見たときにどちらが最適か』という考え方ができるようになってきました。それぞれの部門が、自分たちの売上だけでなく『会社全体の効率化』に向かって取り組むという意識にシフトできたことは、非常に大きな成果だと思っています」(小鹿専務)

■この生産基盤を活かして、紙の価値を高めていく
 今後は、この生産改革の成果を、いかにしてサクラグループとしての成長戦略につなげていくかが課題だ。その方向性について、大西氏は「本業である“紙の印刷”を、いままで以上に大事にしていく」と力を込める。

大西氏
「約1年前、50期を迎えたのを機に、“デジタルシフト”をテーマに掲げてさまざまな取り組みを始めたのですが、その中で気づいたのは、やはり印刷物には他に代えがたい価値があるということ。もちろん、デジタルの方向にも領域を拡げていきますが、紙の印刷も、もっと盛り上げていきたい。そのための具体策について、いま、私たち制作部門と製造部門、さらには営業部門も巻き込んで議論を重ねているところです」
鈴木課長も、「デジタルシフトに取り組んだことで、『印刷』の重要性にあらためて気づいた」と語り、こう続ける。

「紙媒体の需要は下り坂というのが業界の共通認識ですが、その常識を覆すために何ができるか、皆で意見を出し合っています。今回の最適化の取り組みで、印刷物の生産環境はかなり強化できました。この基盤をどう活かし、どんな価値を創り出していくかが、これからの会社の成長のカギになると考えています」

紙を大事にしながら、デジタル分野にも領域を拡げていく。まさに、紙とデジタルの両メディアに自在に対応できるサクラグループならではの強みを活かした戦略だ。今後、さまざまなビジネスアイデアを具現化していく過程では、生産改革の中で醸成された「部門を超えた協力体制」が、如何なく発揮されるに違いない。

 

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