ニュースリリース

2026.07.10

◆富士フイルムグラフィックソリューションズ  FFGS QC Navi導入事例――株式会社ミユキ印刷(後編)  色の変動が抑えられ、シビアなクライアントからの評価が大きく向上  高品質を当たり前に提供できる生産体制が確立し、営業の提案力も高まった

■色の安定化が信頼を生み、新規受注にもつながっている

 オフセットの色の安定化、デジタル機を含めた色の統一化は、さまざまな形で効果をもたらしている。とくに、色の修正や刷り直しなどの負荷は大幅に減少した。山地部長は実感をこう語る。

「以前は、量産中に色が変動しないかをお客さまが細かくチェックされることもありましたが、いまは印刷中のブレがほとんどなく、安心して任せていただけるようになりました。現場だけでなく、お客さまの負担も減っています」(山地部長)

 キャラクターグッズのように色にシビアな仕事では、わずかな色のブレがクレームにつながることもある。しかし現在は、用紙や絵柄、印刷条件にもよるが、色校正と本刷りの差は多くの案件でΔE2を目安に管理できるようになり、色に関するクレームや再調整は大幅に減少し、安定した品質への評価につながっている。石川部長は「お客さまからの信頼が高まっており、営業面での効果も大きい」と強調する。

「営業が色校正をお届けする際に、自信を持って『この色で量産できます』と言えるようになりました。これによってお客さまの不安をなくすことができたのは大きいですね。営業の精神的な負荷もかなり軽くなっていると思います」(石川部長)

 厳しい品質要求に確実に応えられるようになったことで、「ミユキ印刷なら大丈夫」という信頼が定着し、紹介による新規受注も増えているという。

 オフセットとデジタルの色が揃ったことで、営業の提案力も向上した。

「たとえば、初回はオフセットで印刷し、売れ行きに応じてデジタルで少量ずつ追加、といった柔軟な提案がしやすくなりました。品質差を気にせず最適な機械を選択できるようになったことは非常に大きなメリットです」(石川部長)

 とくに、推しグッズのようにロットの変動が大きい商材では、印刷方式やロットが変わっても色差を抑え、基準色に近い状態で安定して再現できる環境が、同社の強力な武器になっている。

 

   

    同社が手掛ける制作物には特殊原反を使用したものやパッケージなどの立体物も多い

■生産効率が向上し、1日のジョブ数も増加

 色の安定化は、現場の生産性にも直結している。量産時の色の調整時間が短縮され、トラブルによるチョコ停も大幅に減少。湿し水管理の改善や温湿度管理の見直しなども効果を後押しし、「刷りやすい環境」が整ったことで、1日にこなせるジョブ数も増加した。

「以前は刷り出しに時間がかかり、生産性に影響することが多々ありました。いまは色調整が格段にスムーズになりましたし、万が一、印刷中に色が変動した場合でも、立ち戻れる基準ができたことで、素早く修正をかけることができます。作業効率は明らかに向上していますね」(山地部長)

 また、色が安定したことで、刷り直しによる時間や資材などのロスがほぼ発生しなくなった。これはコスト面だけでなく、現場の心理的負担の軽減にもつながっている。

 

■この品質水準を維持することで、お客さまを縁の下で支え続ける

 色基準の策定から数年越しの取り組みを経て、“効率的かつ安定した印刷環境”を実現したミユキ印刷。色の安定化は、クレームの削減や生産効率の向上だけでなく、営業の自信、クライアントからの信頼、そして新たな提案の可能性へとつながっている。今後は、この理想的な状態をいかに維持していくかが重要なテーマになる。

「ドットゲインの変化が出やすい夏と冬を中心に、FFGSさんに定期診断をお願いし、品質の安定維持を図っています。これは、お客さまに対する品質保証において有効なだけでなく、色の状態が数値で確認できるため、現場の意識向上にもつながっています」(山地部長)

 また、鈴木社長は、「今回確立した色管理体制を当たり前に継続していくことによって、お客さまの信頼を積み重ねていく」と今後の姿勢を語る。

「印刷はいわば黒子の仕事であると捉えています。お客さまを縁の下で支える存在でありたい。今回の取り組みは、そのための品質基盤づくりという位置づけです。これからもつねに高い水準の品質を維持していくことが、ミユキ印刷の隠れた強みになり、お客さまの評価にもつながると思っています」(鈴木社長)

 同社は今後も、「価値ある印刷物を、確かな品質で届ける」という姿勢を貫きながら、オフセット印刷とデジタル印刷それぞれの長所を最大限に活かし、小ロット・高付加価値の分野でさらに強みを発揮していく考えだ。

 

2026.07.10

■富士フイルムグラフィックソリューションズ  FFGS QC Navi導入事例――株式会社ミユキ印刷(前編)  色の変動が抑えられ、シビアなクライアントからの評価が大きく向上  高品質を当たり前に提供できる生産体制が確立し、営業の提案力も高まった

 キャラクターグッズなどの高付加価値・小ロット印刷物を幅広く手がける株式会社ミユキ印刷(本社:東京都八王子市東浅川町554-23、代表取締役社長:鈴木將大氏)は、富士フイルムグラフィックソリューションズ(以下 FFGS)の印刷品質管理ソリューション『FFGS QC Navi』(以下 QC Navi)を活用し、色基準の策定からオフセット印刷の色の安定化、さらにはオフセット機・デジタル機を含めたデバイス間のカラーマッチングまで、“色品質の統一化”の取り組みを続け、着実に成果を挙げている。色管理の強化に着手した背景や、現時点での効果などについて、代表取締役社長・鈴木將大氏、製造部部長・山地英也氏、営業部部長・石川竜也氏に伺った。

   

 

3種の印刷方式を柔軟に使い分け、幅広いニーズに対応

 ミユキ印刷は、1972年の設立以来、取扱説明書や約款などのモノクロ印刷物をメインに手がけ、編集・DTPのノウハウを強みとして成長してきた。2000年代に入り、メインクライアントの主力商品であったカメラの需要変化に伴い、取扱説明書の受注が減少傾向に転じてからは、キャラクターグッズ、高級ブランドの招待状、御朱印帳など、「印刷物そのものに価値がある」分野へと事業を拡大。現在は、シール・ラベル、パッケージ、ディスプレイ・POPDM、アセンブリなどへ対応領域を広げながら、丁寧にニーズを汲み取る営業力と、内製化による一貫生産体制を強みにしている。価格だけに頼るのではなく、品質・対応力・提案力によってクライアントと直接向き合い、多様な小ロット・高付加価値ニーズに応えている。

 設備面では、オフセット機3台(UV5色機・4色機、油性2色機)に加え、Jet Press 750SIridesse Production Press、さらには静岡県の沼津事業所にRevoria Press PC1120(以下 PC1120)を保有。紙だけでなくフィルム系などの特殊原反も含めた幅広い対応力を備え、クライアントの要望に応じて最適な機種で生産できる体制を整えている。

「オフセット、インクジェット、トナーと、3種類の印刷方式を揃え、柔軟な対応ができるのが大きな強みになっています。どの機械で生産するかは基本的に営業が判断していますが、いずれの印刷機もつねに高い稼働率を保っており、特定の機種にジョブが偏ることはありません。受注内容と生産設備が上手くバランスしている状況です」(鈴木社長)

 

      

    左から鈴木社長、山地部長、石川部長

■色管理を根本から見直し、商業印刷での品質安定化を実現

 一方で、「色」に関しては、数年前まで体系的な管理が確立されておらず、課題も多かったという。明確な色基準がなく、ジョブごとに“クライアントから求められる色”に合わせて調整するという運用が中心だったため、色を出すのに多くの時間と労力を費やすことも珍しくなかった。

「当時は、色に対する知識や管理の仕組みが充分とは言えず、オペレーターが色の再現に苦労することが多々ありました。どうしても色が合わない場合は、データに戻って修正し、刷版を再出力するケースもあり、大きなロスになっていました。また、飲食店さんのメニューなどの仕事で、『全体的に色が浅い』『青みが強い』といった指摘を受けることもあったため、対策の必要性を強く感じるようになったのです」(鈴木社長)

 こうした状況を受け、同社は色管理を根本から整備し直すべく、色基準づくりに着手する。FFGSのサポートのもと、オフセット印刷機のうち1台を基準機とし、Japan Colorに準拠した色基準を策定。刷版カーブや濃度管理を見直すことで、基準の色を安定して再現できる状態を整え、他のオフセット機にも水平展開していった。

 この基準づくりと並行して、現場環境の整備も進められた。色の再現性に影響を与える要因として、温度・湿度の変動や湿し水の状態がある。そこで同社では、印刷現場の温度・湿度を一定に保つよう管理を徹底。さらに、湿し水ローラーの交換サイクルを従来の半年から3カ月へと短縮するとともに、最新のろ過装置によって湿し水タンク内をつねにクリーンな状態に保つなど、印刷環境そのものを安定させる取り組みを進めた。こうした基盤整備により、商業印刷物における色の課題は大きく改善していった。

 

   

    基準に基づく数値管理、温湿度管理の徹底などにより、色の安定性が大きく向上した          


■オフセット、インクジェット、トナーの高精度なマッチングへ

 しかし、同社がキャラクターグッズやアイドル関連の商材を本格的に手がけるようになると、さらなる色管理体制の強化が求められることに。

 これらグッズの分野は、版元の色に対する評価が極めて厳しく、わずかな色のブレも許されない。また、色校正から量産(本刷り)までに数カ月程度、期間が空くことも多いため、印刷機の色が安定しないと、校了の色を量産で再現することが難しくなってしまう。

「キャラクターグッズの分野は、一般の商業印刷物とは品質要求レベルがまったく違います。しかも、小ロット多品種のものが多く、使用する生産機も原反の種類も多岐にわたります。ですから、QC Naviを活用してオフセットだけでなくデジタル機も含めて高精度に色を揃える必要がありました」(石川部長)

 ただ、必要性を感じつつも、昨年にPC1120を導入するまでは、具体的な取り組みの実施には至っていなかったという。

「オフセットの色とデジタルの色を高精度にマッチングさせることは、ほぼ不可能だと思っていたのです。Jet Pressは限りなくオフセットに近いですが、トナー機を合わせるのはかなり難しいだろうと。しかし、PC1120の仕上がりを見て、これなら実現できそうだと感じました」(鈴木社長)

 

    オフセット印刷とトナー機、JetPressをシームレスに運用できる環境が実現

 こうして、同社はオフセット機とJet PressPC1120Iridesseのマッチング作業に着手。すでにQC Naviの定期診断を通じて色の安定化を図っていたオフセット機を基準として、各デジタル機の調整を進めていった。現在は、色校正と量産でどのプロファイルを使用するか、リピート案件でどの条件を採用するかなど、細かい運用ルールを詰めている段階だ。

「ようやく、すべての印刷機を同じ基準で活用できるという、理想的な環境が整ってきました。ここから詳細な運用方法を固めていくことで、お客さまの期待に応えられる品質を、さらに効率よく安定的に提供できるようになると思います」(鈴木社長) 
(後編に続く)

 

2026.06.08

◆富士フイルムビジネスイノベーション   プロダクションプリンター26機種がJBMIAの環境ラベル「Digital Printマーク」に適合  商用デジタル印刷による環境負荷低減効果を環境ラベルで識別

 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:浜 直樹)は、このほど、JBMIA(一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会)が公表した、商用デジタル印刷機により作成された少部数印刷物に表示できる環境ラベル「Digital Printマーク」において、同社のプロダクションプリンター26機種1が適合したことを発表した。同ラベルの表示により、商用デジタル印刷機により環境負荷低減に寄与した印刷物であることを明確に示すことができ、印刷会社のユーザーが自社の環境負荷低減への取り組みを効果的に発信することが可能となった。

   

 デジタル印刷は、刷版が不要で、必要な時に必要な部数だけ印刷できることから、印刷資材や損紙、余剰在庫を抑制することができる。2Digital Printマーク」は、デジタル印刷機の基本要件に加え、資材の削減機能やリサイクル阻害要因の回避など認定基準を満たした商用デジタル印刷機により作成された、1紙面当たりの印刷が5,000部以下の少部数印刷物に表示することができる環境ラベルである。このラベルの表示により印刷物の受領者は、デジタル印刷が持つ環境負荷を削減する機能や価値を一目で認識できる。

同社は、デジタル印刷分野におけるインクジェット方式およびトナー方式のプロダクションプリンターに加え、アナログ印刷分野においてもリサイクル版や無処理版などの環境負荷低減に貢献する刷版材料を提供している。印刷会社のユーザーが、印刷物の部数や用途に応じて、適切な印刷方式を選択できるよう支援している。

今後も、同社では2030年度を目標とする富士フイルムグループのCSR計画「Sustainable Value Plan 2030」のもと、環境負荷低減に貢献する商品・サービス提供を通じて社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。



1同社の「Digital Printマーク」適合商品は以下の通りである。

       Revoria Press™ PC2120

       Revoria Press™ PC1120

       Revoria Press™ EC2100S / EC2100

       Revoria Press™ EC1100

       Revoria Press™ SC285S / SC285

       Revoria Press™ SC180 / SC170

       ApeosPro C810 / C750 / C650

       Revoria Press™ E1136 / E1125 / E1110 / E1100

       Revoria Press™ E1136P / E1125P / E1110P

       Revoria Press™ CF191 / CF168

       Revoria Press™ CF135

       Jet Press 750S

       Jet Press 2160CFG

       Jet Press 1160CF

       Iridesse Production Press 販売終了商品

2 JBMIAが実施したA4両面チラシ作成時の試算では、5,000部以下の少部数印刷では、商用デジタル印刷機の方がオフセット印刷機に比べて、印刷工程におけるCO₂排出量が少ないとされている。一方で、大量印刷の場合には、オフセット印刷機の方が、1枚当たりのCO₂排出量が少ない場合もある。


関連情報
JBMIA(一般社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会), デジタルプリントマークとは
https://cdp.jbmia.or.jp/dp-logo-home/
環境省、環境ラベル等データベース、 Digital Printマーク
https://www.env.go.jp/policy/hozen/green/ecolabel/a04_81.html
富士フイルムビジネスイノベーションプロダクションプリンターの紹介
https://www.fujifilm.com/fb/ja/products/graphic
富士フイルムビジネスイノベーション、デジタルプリントマークの紹介
https://www.fujifilm.com/fb/ja/solutions/industry/printing/dpmark

 

◆同件に関する問い合わせ先は以下まで


デジタルプリントマーク(DPマーク)の申請について

https://www.fujifilm.com/fb/ja/form/solutions/industry-printing-dpmark-inquiry

 

 

2026.06.05

◆富士フイルムグラフィックソリューションズ  Revoria Press PC1120導入事例――とうざわ印刷工芸株式会社  現場の創造力が引き出され、付加価値提案への取り組みが加速効率化と差別化の両輪でさらなる成長を目指す

 

富山県で80年近くにわたり総合印刷業を展開するとうざわ印刷工芸株式会社(本社:富山県富山市婦中町広田5210、代表取締役社長:東澤善樹氏)は、20236月に富士フイルムのカラープロダクションプリンター『Revoria Press PC1120』(以下PC1120)を導入し、小ロットジョブのオフセットからデジタルへの移行を進め、生産体制の最適化を図るとともに、オリジナル商品の企画開発により高付加価値ニーズの掘り起こしにも力を入れている。こうした取り組みの背景や現時点での導入効果などについて、代表取締役社長・東澤善樹氏、取締役営業統括部長・澤橋大介氏、制作部 制作管理課・中村祥二氏に伺った。

 

    

   左から東澤社長、澤橋取締役、中村氏

ジョブ分析の結果をもとに、生産体制の見直しへ

 1947年創業のとうざわ印刷工芸は、富山県に拠点を置き、長年にわたり地域に根差したサービスを展開する総合印刷会社。県内の官公庁、製造業、新聞社・出版社、広告代理店などをクライアントに持ち、商業印刷を中心に手がける。企画・デザインから印刷・加工までの一貫体制を備え、社内にカメラマンも在籍。観光ポスターやイベント関連のパンフレットなどでは写真撮影から印刷物制作まですべて内製できる点が強みとなっている。近年は、印刷物とARや電子ブックなどを組み合わせた提案や、生成AIを活用したコンテンツ制作にも取り組み、新たな需要の創出を図っている。

 設備面では、活版印刷から始まり、オフセット印刷、DTP、デジタル印刷と、時代の変化に応じて新しい技術をいち早く取り入れてきた。デジタル印刷については、小ロット・短納期対応の一環としてトナータイプのPOD機を約20年前から活用している。しかしながら、オフセット印刷と比較した際の品質面には、長らく課題を感じていたという。

「導入当初から比べれば、トナー機の品質も大きく進化し、単体で見れば問題ないレベルまできていましたが、オフセットの印刷物と並べると差が出てしまう。そのため、オフセットからの切り替えには慎重でした」(東澤社長)

 そんな中、2020年からのコロナ禍により印刷需要が急激に変化。小ロット化が一気に進み、オフセット印刷では頻繁なジョブ切り替えによるオペレーターの作業負荷増大、生産効率の悪化が顕著になってきた。

「早急に生産体制を見直す必要があると強く感じました。そこで、FFGSさんにジョブ分析をお願いし、通し数や作業時間などを可視化した上で、具体的な方策を検討することにしたのです。分析の結果、3,000通し以下のジョブが全体の約8割を占めており、その大部分をデジタル印刷に切り替えるのが合理的だということがわかりました」(東澤社長)

 こうして、同社は新たな生産機として使えるデジタル印刷機の検討を開始。その際に最も重要視したのは「オフセットに匹敵する品質」だった。

「富士フイルムさんのショールームで、当社の会社案内を兼ねた写真集をPC1120で出力していただいたところ、その仕上がりはオフセットの印刷物と並べても判別がつかないレベルでした。スピードも、従来機より格段に速い。『これしかない』と確信しました」(東澤社長)

 

 

    同社の会社案内を兼ねた写真集。PC1120の卓越した再現性が遺憾なく発揮されている

■小ロットジョブのデジタル移行で、「利益を出せる体質」に

 PC1120の運用を開始して間もなく、オペレーションを担当する中村氏が実感したのは、出力品質とその安定性の高さだった。色再現性はもちろん、表裏見当精度も極めて高く、ロングランでもその品質が安定して維持されることから、見当ズレなどに対する不安や確認作業が大幅に軽減された。

「一度見当を合わせたら、あとは安心して流すことができます。途中で機械を止めて再調整する必要がなくなったのはありがたいですね」(中村氏)

 作業時の安心感は、現場にとって非常に重要なファクターだ。また、出力中の確認・調整作業が不要になったことは、生産効率にも大きな効果をもたらしている。

「別のジョブの後加工なども並行して進めることができるようになり、より効率的に仕事を回せるようになりましたね。体感的には、生産性が従来の23倍に上がっている感覚です」(中村氏)

 乾燥待ちがなくなったことによるメリットも大きい。出力後すぐに製本工程に入れるスピード感は、リードタイム短縮に直結している。

本刷りの時間だけ見ればオフセットの方が早いこともありますが、刷版出力や印刷準備、乾燥待ちなども含めて考えると、小ロットジョブの多くはPC1120の方が有利。サイズなどの物理的な制約のあるもの以外はできるだけPC1120にシフトしていきたいと考えています」(澤橋取締役)

 現状、オフセット機は8色機と4色機の2台体制だが、従来4色機を使用していた小ロットジョブは着実にPC1120への移行が進んでいる。これにより、4色機でのジョブ切り替えの頻度が抑えられ、付帯作業時間の割合も確実に減少しつつある。東澤社長は「時間やコストの無駄がかなり削減でき、会社として利益を出せる体質に変わってきている」と手ごたえを語る。

 

    生産効率化と付加価値創出の両面で中核を担うPC1120

 

■独創的な“勝負名刺”でクライアントの心をつかむ

 現在、PC1120とオフセット機の分岐点(使い分け基準)は約2,000通しに設定しているが、実際にPC1120で出力するジョブは、500通し以下のものが多いという。チラシやパンフレット、冊子類、名刺などのほか、官公庁の報告書や学校の広報誌など「ページ数はあるが部数が少ない」印刷物にも積極的に使用する。

 一方、同社のPC1120は、生産効率を高めるだけでなく、現場の創造力を引き出すツールとしても機能している。

「特殊トナーやさまざまな用紙を組み合わせ、レーザーカッターやプロッターなどの加工機も駆使しながら、より付加価値の高い印刷物の提供に向けて、訴求力の高いサンプルづくりに取り組んでいます」(中村氏)

 PC1120の色再現性や用紙汎用性を活かした表現の追求。この取り組みは、PC1120の安定稼働によって生まれた余白時間を活用し、現場主導で自発的に行なわれているという。

「空いた時間で『ちょっと試してみよう』とすぐにテストできるのも、PC1120の大きな魅力の一つですね」(中村氏)

 そんな研究成果の一つが、社内で「勝負名刺」と呼ばれているオリジナル名刺だ。重要な商談や初対面の場面で使用することを想定し、特殊トナーやレーザーカットを組み合わせた、極めて凝った加工が特徴で、視覚だけでなく触覚にも訴える仕上がりを実現している。

「この名刺をお渡しすると、ほぼ100%、嬉しい反応をいただけますね。そこから会話が広がっていきますし、お客さまに覚えていただける。営業的に非常に有効だと感じています」(澤橋取締役)

 この勝負名刺は、相手の記憶に残り、話題を生み、コミュニケーションを円滑にする営業支援ツールとして効果を発揮している。実際、同業者や取引先から「同じ仕様でつくりたい」という要望が寄せられるなど、新たなビジネスのきっかけにもなっているという。

 

■生成AIPC1120の活用で、推し活ツールにもチャレンジ

 一方で同社は、新たな市場へのアプローチにも力を入れている。その一つが、推し活の分野だ。生成AIを活用してキャラクターなどのイラストを制作し、PC1120の特色再現などを活かしてさまざまなグッズに展開する。昨年12月、東京の展示会でサンプルを出展したところ、多くの来場者から関心が寄せられたという。

  

  新たに「推し活向けPRツール作成サービス」を展開

「推し活向けPRツールとして、メタリックカラーを使った缶バッジや、長尺ポスターなどをご紹介したところ、さまざまな分野のお客さまが興味を持ってくださり、あらためて需要の大きさを実感しました。『このキャラクターでノベルティを制作してほしい』というご依頼もいただき、予想以上の反響でしたね」(澤橋取締役)

 この“推し活向けPRツール作成サービス”は、とうざわ印刷工芸にとって、自社ブランディングの観点からも効果のあるものになっている。

「依頼されたものをつくるだけでなく、自分たちで商品を生み出し、お客さまの要望に応じてアレンジして提供する。こうした能動的な提案・ものづくりを推し進め、『とうざわ印刷工芸はこんなお手伝いができます』ということを、もっと広く知っていただく必要があると考えています。PC1120を活用した商品開発は、そのための重要な取り組みと位置づけています」(東澤社長)

 

  

     多彩なサンプルを用意し、PC1120の表現の幅広さを訴求している

■部数は少なくても“ワクワクできる印刷物”を提供し続けたい

 同社がPC1120の導入を通じて見据えているのは、従来型の大量印刷モデルからの転換だ。いまや情報伝達そのものはデジタルで完結する時代。「紙に求められる役割は変化している」と澤橋取締役は語る。

「単に情報を届けるだけなら、必ずしも紙である必要はない。だからこそ、紙には体験価値が必要だと考えています。私どもが目指すのは、“100人に向けた80点の印刷”ではなく、“1人に強く刺さる印刷”。部数は少なくても、手に取った人の記憶に残り、捨てられず、次の行動につながる印刷物を提供していきたいと考えています」(澤橋取締役)

 東澤社長もこう続ける。

「紙の風合いや匂い、他にはないデザインで、ワクワクできるものをお届けできる存在になりたいですね。その結果、お客さまが喜んでくだされば、私たちも嬉しいですし、仕事がもっと楽しくなると思います」

 この思いを具現化していくことは、他社との差別化にもつながり、とうざわ印刷工芸のブランディングになる。そしてこの差別化戦略を進める上で、PC1120の表現力と機動力は欠かせない要素になっている。

 また同社は、社外との交流・連携にも積極的だ。学生や若手クリエイターなどに対し、実験や試作の場としてPC1120などの設備を開放し、新たな表現の可能性を探る取り組みも視野に入れている。

「試したい表現、アイデアがあれば、ぜひ声をかけていただきたいです。印刷の可能性はまだまだ広がるはずですので、一緒に面白いものをつくっていければと思っています」(東澤社長)

 同社にとってPC1120の導入は、生産体制の最適化にとどまらず、印刷の価値そのものを見直し、企業としての方向性を明確にするための投資でもあったと言える。現場の創造力とPC1120との相乗、そして社外との化学反応で、これからどんなワクワクが生まれるのか、期待が高まる。

 

2026.05.19

◆富士フイルムビジネスイノベーション株式会社   プロダクションカラープリンター3機種が世界的に権威のある「レッドドット・デザイン賞」を受賞

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:浜 直樹)は、このほど、ドイツ・エッセンを拠点とする「ノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンター」主催の「レッドドット・デザイン賞プロダクトデザイン2026Red Dot Design Award: Product Design 2026)」において、プロダクションカラープリンターの「Revoria PressTM PC2120」および「Revoria PressTM EC2100S / EC2100」「Revoria PressTM SC285S / SC285」が、「レッドドット・デザイン賞2026」を受賞した。

「レッドドット・デザイン賞」は、1955年に設立された国際的なデザイン賞です。デザインの革新性、機能性、人間工学、エコロジー、耐久性などの基準から審査され、優れた製品に贈られます。「レッドドット・デザイン賞」は、ドイツの「iFデザイン賞(iF design award)」、アメリカの「IDEA賞(International Design Excellence Award)」と並び、世界三大デザイン賞のひとつに数えられる権威ある賞である。

 


   「レッドドット・デザイン賞2026」のロゴ


【受賞内容について】

プロダクションカラープリンター「Revoria PressTM PC2120

Revoria PressTM PC2120は、ハイエンドプロ市場向けフラッグシップモデルのプロダクションプリンター。水平基調のシンプルで洗練されたフォルムとモノトーンの配色により、印刷現場に調和するデザインを採用している。メタリック調のダークグレーをベースとした作業台と視認性に配慮したユーザーインターフェイスを備えたプリントサーバーとの統一感のある構成により、オペレーターが作業に集中しやすい操作環境を実現している。

Revoria PressTM PC2120には、独自のAI技術により用紙設定や画質設定、画像補正を最適化し提案する機能を搭載しており、専門的な知識がなくても効率的に高品質な印刷が可能である。用紙設定では、「用紙プロファイラー」により、用紙をセットするだけで、センサーで取得した情報をもとにAIが用紙特性を解析し、最適な設定を提案する。普通紙に加えフィルムやメタリックなどの特殊紙にも対応し、用紙の種類・色・坪量などの基本情報に加え、画質に影響する転写出力調整値も自動で設定することが可能である。この転写出力調整値の自動設定技術は業界初1である。

画質設定では、プリントサーバーに搭載したAIが入稿データの特長を解析し、文字や細線の強調・調整など、データ特性に応じた最適な画質設定を提案。さらに、画像補正では、AIが入稿データに含まれる写真や画像のシーンを自動的に判別し、人物や風景などの色味などに応じた最適な画像補正を行う。

CMYK4色トナーと2色の特殊トナーによる1パス6色印刷では、特殊トナーのグリーンを新たに追加し、ラインアップを全9種類2へ拡充。特殊トナーのグリーンは、ピンクと組み合わせることで色域をさらに拡大させ、モニター上で見る鮮やかなRGBデータの色彩に近い出力が可能になっている。

 

1 当社調べ。用紙物性をセンシングし、転写出力調整値を自動で算出・設定する技術は業界初。(2025121日時点)

2 特殊トナーのラインアップ:グリーン、ピンク、ゴールド、シルバー、クリア、ホワイト、カスタムレッド、テクスチャード紙、圧着

 

プロダクションカラープリンター

Revoria PressTM EC2100S / EC2100

 


Revoria PressTM SC285S / SC285
 

Revoria PressTM EC2100S / EC2100」および「Revoria PressTM SC285S / SC285」は、CMYK4色トナーに加え、特殊トナー3を搭載し、1パス5色印刷を可能にしたミドルレンジモデルのプロダクションプリンター。独自の縦型現像技術4LEDプリントヘッドの採用により、設置面積を抑えたコンパクトなマシンサイズを実現した。コンパクトな筐体でありながら、多彩な表現力と高い生産性を凝縮し、操作性と機能性を最大限に生かしたデザインが特長である。

2400dpiの高解像度出力と業界最小クラスのトナー粒径を有するSuper EA-Ecoトナーにより、高精細・高画質印刷が可能である。印刷業などプロ市場向けの「Revoria PressTM EC2100S / EC2100」は毎分100ページ5、企業内印刷やオフィス向けの「Revoria PressTM SC285S / SC285」は毎分85ページ5の高速印刷を実現している。薄紙から厚紙、長尺用紙6まで幅広い用紙に対応し、多様な印刷ニーズに応え高い生産性を発揮する。

また、オプションとして、印刷中の色濃度変動や表裏ズレを検知するユニット7を組み合わせることで、色濃度や表裏レジのリアルタイムな自動補正が可能となり、作業効率を維持しながら、印刷品質の安定化を実現している。こうした特長により、多品種・小ロット・短納期での作業が求められる場合でも、高品質の印刷物を迅速に仕上げることが可能である。

なお、今回の「レッドドット・デザイン賞2026」において、富士フイルムグループでは、ミラーレスデジタルカメラ「Xシリーズ」、インスタントカメラinstax™“チェキ”シリーズ8、医療機器など計27製品が受賞した。なかでも、レンズ一体型デジタルカメラ「FUJIFILM GFX100RF」が、同賞の最高賞である「Best of the Best賞」を獲得した。

 

3  特殊トナーのラインアップ:ゴールド/シルバー/ホワイト/クリア/ピンク/カスタムレッド/テクスチャード紙

4 当社の特許技術。搬送槽を縦に配置し、現像材を循環させて搬送する空冷タイプの現像器を採用することで、一色当たりの現像器サイズを縮小させ、1パス5色印刷を実現。

5 用紙の厚さ52400gm2A4非コート紙走行時、CMYK4色使用時。

6 長尺用紙に対応した給排紙トレイのオプション商品が必要。

7  オプション

8 instaxチェキは、富士フイルム株式会社の登録商標または商標です。

 

詳細は、富士フイルムホールディングスの公式ホームページより確認を。

URLhttps://holdings.fujifilm.com/ja/news/list/2119

プレスリリースに掲載されているサービス、商品名などは各社の登録商標または商標である。

 

Revoria PressTM PC2120」、「Revoria PressTM EC2100S / EC2100」および「Revoria PressTM SC285S / SC285」に関すお問い合わせは、下記まで。

 

富士フイルムビジネスイノベーション(株)グラフィックコミュニケーション事業本部

デジタルプリンティング事業部 デジタルプリンティング第四統括部 プロモーショングループ

Mail: dgi-fb-GC-DP-PromotionG@fujifilm.com

 

 

2026.04.30

◆モリサワ  台湾における事業再編および新体制「MORISAWA ARPHIC Inc.」を始動


    

株式会社モリサワ(代表取締役社長:森澤彰彦 本社:大阪市浪速区敷津東2-6-25 Tel:06-6649-2151 代表、以下モリサワ)は、このほど、台湾における事業の再編を行い、2026430日より「森澤文鼎股份有限公司(MORISAWA ARPHIC Inc.)」として新たな体制へ移行したことを発表した。

Arphic Technology Co., Ltd.(董事長:森澤武士 本社:台湾 台北市、以下ARPHIC)は1990年に設立後、2022年にモリサワの子会社となり、モリサワグループの一員として日本語・中国語を軸とした多言語フォントを開発・提供してきた。このほど、モリサワの台湾現地法人とARPHICは台湾における事業を統合し、MORISAWA ARPHICとして新たな体制に移行した。

同体制では「Arphic Types」の書体ブランドを維持し、ARPHIC30年以上にわたり培ってきた中国語フォントデザインにおける高い技術力を継承するとともに、モリサワグループのグローバルなネットワークと多角的な視野を融合させている。「文字を通じて社会に貢献する」というモリサワの社是を共有し、中国語・日本語フォントを核として、多彩なスタイルと高品質を備えた多言語フォントソリューションを提供していく。

今後、組込みフォント、カスタムフォントからクラウドフォントサービスに至るまで、充実したフォント資産と先進技術の提供体制を強化していく。これを出発点として、グローバル企業およびデザイナーの皆様と連携しながら、新たなブランド価値の共創と、豊かなビジュアル体験の実現を目指していく。

なお、ユーザーおよびパートナーの契約や利用中のサービスは、従来通り継続して利用できる。同社では、引き続き安定したサービス提供に努めるとともに、安心して使用できる体制の維持に取り組んでいくとしている。

 

新体制の概要

◆商号

中国語社名:森澤文鼎股份有限公司

英語社名:MORISAWA ARPHIC Inc.

◆開始日

2026430

◆所在地

台北市中正區八德路156

◆代表者

森澤武士

◆事業内容

クラウドフォントサービス iFontCloud

iFont 組込みフォントソリューション

フォントとコードのサービス(台湾)

多国言語のフォントライセンス

カスタムフォント開発

 

MORISAWA ARPHICの公式Webサイトは以下より閲覧可能。

https://www.morisawa-arphic.com.tw/

 

同件に関する問い合わせ先

株式会社モリサワ ブランディング部 広報課

E-mail: pr@morisawa.co.jp

●MORISAWA ARPHICに関する問い合わせ先

E-mail: service@morisawa-arphic.com.tw

 

SNSでも最新情報を公開している

X(旧Twitter):@Morisawa_JP

Facebook@MorisawaJapan

Instagram@morisawa_jp

 

記載されている内容は、予告なく変更する場合がある。

記載されている会社名・商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標である。

 

 

 

2026.04.23

◆富士フイルムグラフィックソリューションズ   Revoria Press PC1120導入事例――株式会社アートプロセス いままでにない表現力を活かし、「価値で選ばれる存在」を目指す 生産環境も営業スタイルも大きく変化し、価格で無理せず差別化が可能

熊本を拠点に、プランニングからコンテンツ制作、印刷・加工までを手がける株式会社アートプロセス(本社:熊本県熊本市中央区春竹町春竹495、代表取締役社長:本田和敬氏)は、小ロット・パーソナライズ・高付加価値ニーズの高まりを見据え、2024年、新たな主力生産機として富士フイルムのプロダクションプリンター『Revoria Press PC1120』(以下PC1120)を導入。同時に、それまでオフセット機とデジタル機の併用体制であった社内の印刷設備を、デジタル機へと一本化した。これは、会社として事業構造や価値提供のあり方を見直した上での経営判断だったという。代表取締役社長・本田和敬氏、専務取締役・山本武史氏に、この決断に至った経緯や現時点での効果などについて伺った。

  

 

■筐体のつくりから確信した「生産機としての圧倒的な信頼性」

 アートプロセスは、1975年、現会長の工藤元隆氏により製版会社として創業。効率化を追求した設備投資を積極的に進め、時代の変化に即した事業基盤を構築するとともに、高度な画像処理技術・カラーマネージメント技術を活かしたサービス展開で、九州エリアのクライアントから厚い信頼を得る。95年に企画・デザイン部門を新設し、上流工程をトータルに手がける業態に。97年には他社に先駆けてデジタル印刷機を導入し、一般企業向けの営業を開始。これを機に、受託型から課題解決型へとビジネスモデルを転換していった。その後、商業印刷からサイン&ディスプレイ、デジタルコンテンツ制作へと事業領域を拡大。「革新と創造によって未来を開拓する」を理念に掲げ、市場の変化に応じて柔軟に業態変革を図りながら成長を続けている。

   
   
本社社屋

 そんな同社がPC1120の導入を決めた背景には、単なる老朽設備の更新ではなく、会社の将来を見据えた大局的な経営判断があった。オフセット印刷機の稼働率が徐々に低下し、価格競争が激化。オフセット向きの仕事がなくなったわけではないものの、「自社で刷る必然性」が薄れていく状況に、経営として強い違和感を覚えていたという。

 「そもそも社内で印刷を続けるべきか、というところから議論を始めたのですが、印刷物の製造をやめてしまうということは考えられなかった。では、持つべき印刷機はオフセットかデジタルか。オフセット機を入れると大きな投資になり、営業は機械を回すために『印刷物の仕事を取る営業』をせざるを得なくなる。それは本末転倒。であれば、デジタル印刷機で差別化を目指すべきだという結論に至りました」(本田社長)

  

   本田社長

 オフセットの代替としてデジタル印刷機を活用するのではなく、「デジタル印刷ならではの新しい価値を生み出す」という観点から、同社は社内生産をデジタルに一本化することを決断した。では、その生産機としてPC1120を選んだのはどんな理由からだったのか。

4社のデジタル印刷機を候補に挙げ、展示会などで各社さんのデジタル機を見学させていただきましたが、その中でPC1120は、筐体のつくり、内部構造が他の機種とまったく違うと感じました。搬送系も含めてオフセット印刷機のように堅牢に設計されているのが、パネルを開けて中を覗いただけでわかる。この先5年、10年と使っていく上で一番安心できるのはどれかと考えると、これしかないと思いましたね」(山本専務)

 また、本田社長はサポート対応のきめ細かさも決め手の一つになったと語る。

「従来機の運用でも感じていましたが、富士フイルムさんのサポートはやはり安心感があります。新機種の導入にあたっては、立ち上げの際にオペレータートレーニングなどで頻繁に来ていただくことになりますから、この点も非常に重要な要素でした」

 

 

   現在5種のトナーを活用。静電気除去装置も装備しており、PETなどの素材でも

 安心した出力が可能だ

■名刺だけでも実感できる、表現力の高さ

 PC1120の導入によって、同社の印刷設備はデジタル印刷に特化したシンプルなものになったが、表現の幅は飛躍的に広がっている。ゴールド、シルバー、ホワイト、クリア、TX(テクスチャード)といった特殊トナーを活用することで、質感や奥行きのある印刷表現が可能になり、従来とは明確に異なる価値提案ができるようになった。このことは、社内にさまざまな変化をもたらしている。

「特殊トナーと用紙の組み合わせによって、どんな表現が可能になるのか、デザイナーと印刷オペレーターが一緒になって日々研究しています。正解が一つではないので、その過程自体が勉強になりますし、当社独自のノウハウにもなっていくと思います」(山本専務)

 こうした検証の中から生まれた象徴的な表現の一つが、社員の名刺に採用しているプラチナホワイトだ。黒や濃紺などの色紙にシルバーを敷き、その上からホワイトを重ねることで、通常の白とは違った、メタリック感のある上質な印象を与えている。この名刺は、単なる自己紹介ツールにとどまらず、営業の現場で大きな役割を果たしているという。

「名刺交換をしたときに、一目で違いを感じていただける。そこから『当社ではこういう印刷もできるんですよ』と自然に話が広がっていきます」(本田社長)

 営業の現場で名刺そのものが訴求力のあるサンプルとなり、説明のきっかけになっているのだ。

「『かっこいいね』とまず言ってもらえる。それは営業にとって本当にありがたいですし、お客さまとの距離も縮まります。『自分たちも同じような名刺をつくりたい』と言っていただけることもあり、特殊トナーを使った名刺の引き合いは、確実に増えています」(山本専務)

 また、エシカルペーパーを使ったSDGs名刺作成サービス『WELL KAMI』でもPC1120を活用しているが、ここではトナーの定着性の高さが発揮されているという。

「エシカルペーパーは表面に凹凸のあるものが多いのですが、PC1120で出力すると色の乗りがとてもいい。紙によってはTXトナーを使いますが、使わなくてもきれいに出力できることが多いですね」(山本専務)

 

 

    特殊トナーを効果的に用い、素材の風合いを活かしながら付加価値の高い
 印刷物を創り出している

■品質や表現を起点とした付加価値提案が可能に

単にオフセットジョブをデジタルに切り替えるだけでなく、デジタル印刷ならではの付加価値を生み出し、提供する。この考え方は、営業のアプローチに大きな変化をもたらしているという。


   
山本専務

「価格や納期ありきの提案ではなく、品質やデザイン表現を起点とした会話ができるようになってきました。しかも、自分たちが『これはいい』と本気で思えるものを提案できるようになったので、営業としての自信が以前とはまったく違いますね」(本田社長)

「価格に関しては正直に『安くはない』ことをお伝えしますが、品質の高さや独創性に価値を感じて納得していただけることが多いです。価格面で無理せずに差別化が図れるようになったのは大きな成果ですね」(山本専務)

 価格競争に巻き込まれるのではなく、「価値」で選ばれる。そのための営業スタイルが、PC1120導入をきっかけに実現しつつあるのだ。

 一方、同社では、熊本市近郊のデザイン会社・制作会社にPC1120の無料トライアルサービスを案内するなど、「デジタル印刷の可能性」を広く伝える取り組みも進めている。

PC1120でどんなことができるのか、ご存じでない方も多いので、実際に見て、知っていただくことが必要だと考えました。デジタル印刷ならではの表現を体感していただければ、デザイナーさんの発想もさらに広がると思いますし、これをきっかけとして、より価値のある印刷物を一緒につくっていけたらと思っています」(山本専務)

 PC1120は、営業・提案の質を底上げするなど、アートプロセス社内に大きな変化をもたらしながら、外部のクリエイターに新たな刺激を与える存在としても機能しているのだ。

 

「効果」という付加価値を提供し続ける存在へ

 同社のこれまでの歩みは、変革と挑戦の歴史でもあった。製版会社としてスタートし、デザイン制作、サイン&ディスプレイ、Web事業へと領域を広げ、時代の変化に合わせて業態を変えながら成長を続けてきた。そして今回、PC1120の導入を機に、生産環境も、営業スタイルも大きく変化した。

「ニーズに合わせて組織や設備などを柔軟に変えていけるのは、私どもの強みの一つだと思っています。振り返ると、当社は20周年、30周年といった節目ごとにスタイルを変えてきました。そしてPC1120を導入したのが50周年を目前に控えたタイミング。まさに新しい変化・挑戦の始まりだと捉えています」(本田社長)

 いま再びスタートラインに立ったアートプロセス。目指しているのは、「特殊トナーを活かした高付加価値印刷」と「顧客データを活用したパーソナライズ印刷」を軸としたビジネス展開だ。

「大量消費型ではない、個々のターゲットに届く紙メディアの価値を、いかに高めていくかが重要なテーマです。紙はこれからも必要なメディアであり続けるはずですし、一番のユニバーサルデザインでもあると思っています。デジタルメディアと対立するものではなく、組み合わせて使われる存在。その中で、パーソナライズされた紙の役割は、もっと広がっていくと考えています」(山本専務)

 AI技術やマーケティングツールの活用も視野に入れ、印刷を刷る工程から伝える仕組みへと進化させていく考えだ。本田社長は次の50年を見据え、こう締めくくった。

「富士フイルムさんの『Revoria Cloud Marketing』のようなツールも含め、印刷の前後まで含めた提案ができるようになれば、私たちの役割もさらに広がるでしょう。販売促進に携わるお客さまにとって価値ある印刷物、すなわち効果が上がるツールを提供し続けられる会社でありたいと思っています」

 

2026.03.05

◆富士フイルムグラフィックソリューションズ   Revoria Press PC1120 導入事例――サンメッセ株式会社  特色を用いた高付加価値印刷からバリアブルの大量生産まで幅広く活用

構成の異なる 2台を柔軟に使い分け、それぞれ月産20万枚を安定的にこなす


  

サンメッセ株式会社(岐阜本社:岐阜県大垣市久瀬川町7-5-1、代表取締役社長:田中信康氏)は、20255月に創業90周年を迎え、「印刷を、超えた『総合コミュニケーション企業』」を目指して変革を推進している。同社は、2022年に富士フイルムのプロダクションカラープリンター『Revoria Press PC1120』(以下PC11201号機を、さらに2024年には需要増加の対応を目的に同2号機を導入し、「デジタルとオフセットの共存運用」を実現。急速に高まる「小ロット・短納期・高付加価値ニーズ」への対応力を大幅に強化してきた。2台のPC1120の導入に至った経緯や、それぞれの活用状況、メリットなどについて、プレス部 部長 松岡克英氏、デジタルプレス課の臼井章娘氏、立川弘樹氏に伺った。

 
  

印刷品質の高さを活かし、オフセットとの共存運用へ

 サンメッセは、1935年(昭和10年)に田中印刷所として創業以来、90年の歴史を誇り、中部地区最大規模の生産力を持つ印刷会社として知られる。現在は従業員約640名を擁し、一般商業印刷を中心に、「IPS事業」、「パッケージ事業」、「コーポレート・コミュニケーション事業」の専門性の高いフィールドを中心に事業領域の拡大に向けた積極的な経営改革にも果敢に挑んでいる。近年は市場の変化に対応するため、生産設備のデジタル化を積極的に推進するとともに、新しい価値創造にも取り組んでいる。

 松岡部長が現職に就いたのは、PC1120の2号機導入のタイミングであった。デジタルプレス課長となって初めてPC1120の出力物を目にしたとき、「オフセットにかなり近い仕上がりだ」という印象を持ったという。

「その品質の高さを見て、これならPC1120を中心とした『デジタル機とオフセット機の効率的な共存運用』ができるはずだと確信を得ました」(松岡部長)

  
     松岡部長

 しかし当時、社内では「デジタル機はコピー機の延長」という認識が根強く残っており、先に導入されていたPC1120の1号機も上手く活用できておらず、稼働率が伸び悩んでいる状況であった。そこで、2号機導入の際、富士フイルムのクラウド型CMS『Revoria One Remote Color Management Service』とインクジェットプルーファー『PRIMOJETを活用し、オフセット機・デジタル機のカラーマッチングを図り、PC1120とオフセット機で同じ印刷品質が得られる環境を整えた。

 さらに、PC1120の色再現性を詳しく検証した結果、特殊トナー対応・6色仕様の1号機は、90%以上の特色を再現できることが確認できたことから、小ロットの特色ジョブをPC1120に移行することとした

現在、PC1120はオフセット印刷と同等の位置づけとなっています。お客さまから『オフセットでは再現できないため、PC1120で対応してほしい』というご依頼をいただくことも、まれにあります」(松岡部長)

 

■1台あたり月20万枚を安定生産

 デジタル機とオフセット機の色を合わせたことで、たとえば、オフセット輪転機で印刷したチラシが300部追加で必要になった場合に、PC1120でその追加分をすぐに印刷するといった柔軟な対応が可能になった。

300部程度の追加分をオフセット機で印刷するよりもデジタル機で印刷する方がコスト面で有利なため、とても助かっています」(松岡部長)

 同社では現在、原則として規定の部数以下はPC1120、それ以上はオフセット機という形で、生産機を使い分けている。

 オフセットからPC1120への切り替えによって準備時間や待機時間の削減が図れた分、納期も短縮できている。また、同社のPC1120には中綴じフィニッシャーやトリマーなどのオプションも装備。中綴じ製本のインライン処理が可能になったため、後加工工程での待機時間の削減も実現できた。

「オフセット機ではどれだけ頑張っても15分以上かかる準備時間が、PC1120では5分で完了します。稼働効率が高いので待ち時間も少ない。UVオフセット機が空くのを3時間待つならPC1120で印刷した方が早い、というケースもあります」(松岡部長)

PC1120の稼働率を高めるため、松岡部長は「まずは社内の仕事の取り込みを優先してPC1120の稼働を上げる」ことをプレス部で宣言した。すなわち、クライアントからの新規受注を増やす前に、社内の営業部門に働きかけて、これまで外注に出していた仕事を内製化していこうという取り組みだ。これにより、徐々に内製化率が向上するとともに、小ロットの仕事でオフセット機を使用するケースも減少し、コスト面での無駄も削減できたという。

 現在、同社のPC11201台あたり月約20万枚をコンスタントに生産しており、フル稼働状態だ。臼井氏は、「これだけの生産量を安定的にこなせるのは、富士フイルムのサポートによるところも大きい」と語る。

PC1120を使用する仕事には、印刷したその日にすぐ出荷というケースもあるため、いつでも高い瞬発力を発揮できることが重要です。その点、富士フイルムさんには、定期的な保守に加えて、万が一のトラブルの際もほぼ当日中に対応していただけるので、安心感がありますね」(臼井氏)

 

臼井氏

■2台のPC1120で仕事の幅を広げ、高い稼働率を実現

 サンメッセでは、2台のPC1120を異なるシステム構成で運用し、それぞれに特徴を持たせることで、対応できる仕事の幅を広げている。1号機は、特殊トナー対応の6色機で、シルバー、クリア、カスタムレッドなどの特色を用いた付加価値の高い仕事や、色に厳しい仕事に対応できる構成。オペレーションを担当するのは、プリプレス部でデータ制作の経験を持つ臼井氏だ。

 臼井氏は、特殊トナーの活用を広げるべく、2025年春の社内報で、表紙4ページ分を4色+クリア+シルバーの6色(本文は4色)で印刷を担当した。当時、社内のデザイナーもクリアトナーやシルバートナーを使った経験がなく、データ制作の段階ではどのような表現になるかわからない状態であったことから、何回も色校正を出して確認しながら進めたという。



 また、2台体制になってからは、生産性を考慮したジョブの振り分けも行っている。臼井氏は他社製カラーデジタル機も担当しており、基本的には工務部が作成した予定に沿って作業を進めているが、静電気が発生しやすい薄手のコート紙を使ったジョブなど、「他社機よりPC1120の方が適している」と判断した場合には、松岡部長などと相談した上で適宜PC1120に切り替えている。こうした柔軟な運用により、「色に厳しい仕事が中心」の1号機であっても高い稼働率を維持できているという。

 一方、2号機は、4色機・ダブルデリバリー装備(重連用大容量給紙トレイオプション付き)の構成で、大量生産機という位置づけ。オペレーションを担当する立川氏は、もともとオフセット機のオペレーターで、3年前にデジタルプレス課に異動するまで、デジタル機にまったく触れたことがなかった。しかし、異動当初設置されていた富士フイルムの『Color 1000 Press』を初めて操作した際、刷り出しの早さや色の安定性、損紙の少なさなどに大きな魅力を感じたという。

  
   
立川氏

2号機は主に、ナンバリングやバーコードなどの可変要素を含んだ大ロットのモノクロ印刷などに使用される。導入の際、ダブルデリバリー仕様にすることを提案したのは立川氏であった。

「大量生産機として運用すると聞いていたので、長時間ノンストップで印刷できる仕様にすれば、作業効率が上がるだろうと考えました。実際、かなりの生産性を発揮できているので、正解だったと思っています」(立川氏)

 また、2号機も1号機やオフセット機と色を合わせているため、定期的に入るフルカラーのPOP色再現性、安定性の面で他の印刷機では対応しにくいカラーの仕事などにも幅広く対応している。最近では、比較的ロットの大きいカラーの仕事を2号機で印刷するケースも増えているという。

 

 

      2台の PC1120がフル稼働。それぞれのシステム構成に合わせたジョブ振り分けにより、生産効率を高めている

システム連携や自動化により、生産工程のさらなる進化を目指す

 サンメッセでは、オフセット機と同等の生産機としてPC1120をフル活用することで、「印刷品質の安定化」「短納期対応力の大幅な向上」「段取り削減による生産性アップ」「提案力の強化(特色や特殊加工を活かした付加価値提案)」などを実現し、社内はもちろん顧客からも高い評価を得ている。

 同社は今後もデジタル化に積極的に取り組み、工場としても「受注産業から脱却し、より能動的に提案できるようになる」ための変革を推進していく計画である。松岡部長はその一環として、印刷機のラインアップ拡充を検討している。たとえば、顧客の課題解決に必要な部数・仕様の印刷物を効率的に生産できる、デジタル印刷機とオフセット輪転機・枚葉機を組み合わせた生産設備構成の実現を検討している。このように変革を続けていく中でも、PC1120には、印刷部門全体を支える大きな柱としての役割が期待されている。

PC1120は生産機としての活用だけでなく、たとえば色校・色見本を印刷して、それにオフセット機の色を合わせるといったこともできます。また、表紙はPC1120、中身はオフセットという生産スタイルも、これから増えていくのではないかと思っています」(松岡部長)

 ワークフロー全体としては、すでにMISとデジタルプリンターを含む印刷機、後加工機の連携強化に取り組んでおり、工程全体の自動化や生産効率のさらなる向上を進めている。

松岡部長は、これらの取り組みを推進するうえで、富士フイルムとの継続的な連携を重要な要素と考え、次のように語った

「これまでも、生産設備のデジタル化や、工程の自動化・効率化などで、富士フイルムさんにさまざまなご提案・ご支援をいただいてきました。今後も引き続き、ソフトウェア連携に関する技術支援や、安定稼働を続けるための提案などをいただきながら、生産環境の変革を一緒に進めていければと思っています」

 

 

2026.02.12

◆富士フイルムグラフィックソリューションズ Revoria XMF PressReady導入事例 後編――株式会社ムレコミュニケーションズ面付け・出力設定などの自動化により作業負荷を抑える

ミスを排除データの信頼性が高まり、無駄・ロスのないデジタル印刷フローが実現

■データ起因のトラブルや手戻りを回避

 実際に運用をスタートすると、そのメリットは明確に表れた。PressReadyによって、指示書に基づく設定が自動で面付け・出力条件に反映されるため、オペレーターは最終確認だけを行なえばよく、専門的なスキルや判断が不要になった。結果、新たな作業負荷がほとんど発生することなく、PC1120の効率的な安定稼働が実現したのだ。

「実は、昨年10月に、プリプレス部の担当オペレーターが急に退職してしまい、引き継ぎの時間もあまり取れなかったのですが、PressReadyでほとんどの作業が自動化されていたおかげで、問題なく生産を継続することができました。後任の者も、とくに負担を感じることなく作業できているようです」(西山取締役)

   井上グループ長

 また、井上グループ長は、出力担当の立場から、「PressReadyはデータの最終チェックツールとしての役割も大きい」と実感を語る。

「自動化により指示書の内容が確実に印刷されるため安心感がありますね。まれに、営業からのテスト出力依頼などで、PressReadyを通さずに直接データを受け取るケースもあるのですが、設定ミスにより、再出力が必要になったことが何回かあります。こうした出力トラブルを回避できるのはとてもありがたいです」(井上グループ長)

 また、PressReadyでは、ジョブの進行状況をリアルタイムで把握できるため、急な変更や、データ準備が完了するまでの待機時間が最小限に抑えられているという。こうした“工程の見える化”の効果は大きいと西山取締役は評価する。

「進捗確認だけでなく、『どのジョブが、いつ、誰によって、どのような設定で処理されたか』という履歴も確認できるので、万が一問題が発生した際の原因究明も迅速に行なえます」(西山取締役)

  

   提案の幅を広げるべく、PC1120の特殊トナーや長尺出力機能などを活用し、多彩なサンプルを制作

■プリプレス工程のフルオートメーション化も視野に

 PressReadyによってスキルレスなデジタル印刷フローを構築し、PC1120の安定稼働を実現しているムレコミュニケーションズ。今後は、社内の基幹システムとPressReadyの連携を図ることで、さらなる効率化を進めていく考えだ。

「現状、基幹システムの指示書データから、PressReadyに読み込ませるCSVデータを作成する作業を一部手動で行なっており、転記ミスなどのリスクが残っているので、この部分を自動化することで、負荷軽減、リスク削減を図りたいと考えています」(西山取締役)

 さらに西山取締役は、「将来的に、ジョブの特性に応じて最適なRIP設定や処理順序をAIが提案・実行するなど、プリプレス処理をフルオートメーション化できれば理想的」とし、FFGSのソリューションの進化に期待を寄せる。

 また、PC1120の活用については、「オフセットからの切り替えだけでなく、高付加価値の印刷物の提供にも注力していく」と力を込める。

「いま、特殊トナーも活用してさまざまなサンプルを制作し、お客さまへの提案を始めているところです。とくにピンクトナーを使ったサンプルなどはお客さまの反応もよく、手ごたえを感じています。今後、オフセット印刷とデジタル印刷を柔軟に使い分けながら、印刷事業の総合力を高め、新しい需要の創出にもつなげていきたいと考えています」(西山取締役)

 祖業であるオフセット印刷事業を大切にしながら、「印刷を核とした高付加価値製品の提供」という新しい領域へと踏み出した同社。一段と進化した生産基盤をしなやかに活かし、創業100年の歴史を次の100年へとつなぐべく、挑戦を続けていく。

 

2026.02.12

◆富士フイルムグラフィックソリューションズ Revoria XMF PressReady導入事例 前編 ――株式会社ムレコミュニケーションズ 面付け・出力設定などの自動化により作業負荷を抑え、ミスを排除データの信頼性が高まる

 香川県・高松を拠点に100年以上にわたり印刷事業を展開する株式会社ムレコミュニケーションズ(本社:香川県高松市朝日町5-3-85、代表取締役社長:牟禮昌史氏)は、2025年春、小ロットニーズへの対応および高付加価値戦略の一環として、富士フイルムのプロダクションプリンター『Revoria Press PC1120』(以下 PC1120)を導入。さらに、プリプレス業務の効率化・負荷軽減のため、デジタルワークフローソフト『Revoria XMF PressReady』(以下 PressReady)を併せて活用することで、品質と効率の高次元な両立を図り、より強固な生産体制を構築している。長年オフセット印刷を軸に据えてきた同社が、新たにデジタル印刷のフローを組み込むにあたり、PressReadyはどのようなメリットを発揮しているのか。導入の背景や、PC1120を活かした今後の展開なども含め、取締役 管理本部長 西山武宏氏、高松工場 デジタルプリントグループ長 井上幸代氏に伺った

■万全の品質保証体制でシビアなニーズに応える

 ムレコミュニケーションズは、2024年に創業100周年を迎えた老舗の総合印刷会社である。香川県高松市のほか、岡山、大阪、東京の4府県6カ所に拠点を置き、広告・情報誌・教材など幅広い印刷物を企画から製本まで一貫対応できる体制を築いてきた。20174月には、長年親しまれた『牟禮印刷』から『ムレコミュニケーションズ』へと社名を変更。「コミュニケーションを通じてお客さまの夢を実現し感謝される企業」を目指し、印刷事業だけに留まらず、Web・動画制作や、イベント・プロモーション企画、ノベルティグッズ制作などの新規事業を積極的に展開しながら、“ソリューションプロバイダー”としての機能強化に取り組んでいる。

 半世紀以上にわたる取引が続くベネッセコーポレーションをはじめ、高松三越など数多くの大手企業を主要クライアントに持つ同社の信頼を支えているのは、教材制作を通じて培ってきた高度な組版技術、そして最先端の検査装置などを駆使した万全の品質保証体制だ。都道府県ごとに内容の異なる多タイプ商材のような複雑なジョブも、正確かつスピーディーに対応する。

「当社が最も重視しているのは品質、とりわけ“情報の正確さ”です。教材関係のコンテンツなど、誤りが許されないシビアな仕事を確実に仕上げられることが大きな強みであり、お客さまからご評価いただけているポイントだと思っています」(西山取締役)

 生産拠点は高松と岡山の2カ所に集約。印刷設備としては、主に小~中ロット印刷を担う高松工場に5色・4色・2色のオフセット枚葉機を、大ロット印刷がメインの岡山工場にB全・B2のオフセット輪転機をそれぞれ備える。今回、PressReadyおよびPC1120が導入されたのは高松工場だ。

■初のデジタル機として、オフセット品質のPC1120を選択

     

    西山取締役

 一方で、ベネッセコーポレーションをはじめとするクライアントのニーズの変化に対応するためにも、デジタル印刷機導入の必要性は感じていたといい、10年以上前から検討を進めていた。しかし、品質面で納得できる機種がなく、導入の決断には至らなかったという。そんな中で、FFGSからPC1120の提案を受け、あらためて検討することに。

「オフセットと同等の品質を持つPC1120を活用して、これまで社内の枚葉機で印刷していた小ロットのジョブをデジタルに切り替え、生産効率を高めてはどうかというご提案でした。そこで、まずはPC1120の品質を確かめることにしたのです」(西山取締役)

 品質にシビアな実ジョブデータをFFGSのショールームに持ち込み、テスト出力。その仕上がりは好印象で、「非常に自然で美しいと感じた」と西山取締役は振り返る。

「予想以上にオフセットに近い再現性で、文字の描写なども含めてまったく違和感がありませんでした。これなら営業も自信を持ってお客さまに提供できるだろうと判断しました」

 さらに、オフセットとの最適な使い分けについて、FFGSから具体的なシミュレーションデータが提示されたことも、導入を後押しした。

「枚葉印刷機の稼働データを提出し、分析していただいた結果、ボトルネックになっていた部分が明確になり、約1,000通し以下のジョブをPC1120にシフトすることで大幅に効率化できることがわかりました。事前に実際の運用のイメージができたのは大きかったですね」(西山取締役)

 

  

    高松工場で稼働するPC1120。小ロット対応のほか、付加価値戦略の要としても重要な役割を担う

■運用面の懸念点をPressReadyで解消

 満を持して、初のデジタル印刷機導入。生産機がオフセット含めて4台に増強されることになるが、オペレーターの増員は現実的ではなく、基本的に既存体制のまま運用するというのが同社の方針だった。そこでいくつかの懸念点が挙がった。

     既存の業務にデジタル印刷の業務がアドオンされることで面付けや出力設定などの作業負荷が増加する恐れがある。

     小ロットジョブが増加することで、面付けミスや設定ミスの発生リスクが高まる。

     デジタル印刷機の操作や面付けなど専門的な業務を行なえるオペレーターが限られるため、作業が属人化する。

 こうしたオペレーション面の懸念を解消するためのツールとして、PC1120と併せて採用されたのがPressReadyだ。

PC1120の出力データを用意するのはプリプレス部のメンバーですが、彼らはオフセット印刷のプリプレス業務もいままでどおり担当するので、デジタル機が加わることによる作業負荷の増加は最小限に抑えたかったのです。PressReadyを通せば、デジタル印刷におけるプリプレス業務の大部分を自動化できるとのことだったので、『まさにこれだ!』と迷わず導入を決めました。サブスク方式が選択できるのもありがたいですね」(西山取締役)

 PC1120で出力するジョブのフローは、本来、オペレーターがデジタル印刷用の面付けを行ない、そのデータを特定のフォルダに書き出して出力側に渡すことになるが、その際、何十パターンにも及ぶ出力設定テンプレートの中から、指示書と照らし合わせて最適な設定を選ぶ必要がある。さらに出力側でも、コンソール上で部数や用紙、片面/両面などを選択して出力するという流れになる。このように多くのタッチポイントを経るためヒューマンエラーのリスクが高く、しかも面付けなどある程度の専門知識やスキルも求められ、作業が属人化しやすい。そこでPressReadyを活用すれば、こうした「人の判断やスキルを必要とする作業」を自動化することができるわけだ。(後編に続く)

PressReadyにより、作業負荷をほとんど増やすことなく、
既存体制でのデジタル印刷機運用が可能となった

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