ニュースリリース

2022年11月

2022.11.21

◆富士フイルムグローバルグラフイックシステムズ XMF Remote導入事例――アインズ株式会社 XMF Remote導入で業務フローの課題解決を図り、営業戦略でも大きな成果 「非接触型校正システム」という新たな価値提案により新規受注獲得

 1877年創業の総合印刷会社、アインズ株式会社(本社:滋賀県蒲生郡竜王町鏡2291-3、代表取締役社長:谷口彰氏)は、全体最適化プロジェクト(20171月スタート)の一環として、20185月に『XMF』『XMF Remote』を導入した。当初から営業部門を含む全社での活用を目的に導入し、計画的な活用定着を進め、制作部門の業務効率化やミスの減少に加えて、営業部門でも本来の営業活動のための時間創出などを実現している。導入に至った経緯や具体的な活用方法、成果、クライアントにおける活用・定着のポイントなどについて、経営企画本部 副本部長・三林照幸氏、プリプレス部 部長・鈴川清一氏、プリプレス部 プリプレス工程課 課長・木内和弘氏、プリプレス部 プリプレス工程課 主任・村方学氏、本社営業 主任・畑元気氏に伺った。

    
   
左から三林副本部長、鈴川部長、木内課長

     

 左から村方主任、畑主任 

FFGSによる業務フローの現状分析レポート結果と操作性の高さが導入の決め手に

 アインズは1877年(明治10年)に山田兵三郎商店として創業、今年(2022年)で創業145年の歴史を持つ総合印刷会社である。1961年に山田印刷株式会社に改組し、1998年、総合情報企業への新たな躍進の決意を込め、アインズ株式会社へと社名変更した。滋賀県を中心に全国12カ所に支社・営業所を展開。売上高は406,000万円(2021年度実績)で、現状は、売上構成のほとんどが印刷によるものであるが、新規事業開発にも積極的に取り組んでおり、「時代が求めるコミュニケーションツールでお客様に唯一無二の価値を提供します」を経営理念に掲げる。また、各地の代表的な中堅印刷企業による事業協同組合EPC-JAPANや全国農協印刷連盟などの業界ネットワークに参加する。
 「当社では、コミュニケーション・プラットホーム・カンパニーを目指して、社会問題の解決に貢献すべく、カタログやパンフレット、伝票類といった印刷事業から、自社製品の開発、地元滋賀県の方々をサポートするクラウドファンディング事業まで、幅広く展開しています」(三林副本部長)

 中核となる印刷事業では、20171月から「営業活動の時間創出」や「入稿から生産までの時間短縮」などを目的とした全体最適化プロジェクトを推進。同社はこのプロジェクトの成功にXMFXMF Remoteが不可欠だと判断し、20185月に導入した。

 この導入判断を後押ししたのは、FFGSによるエスノグラフィ分析(業務フローの現状分析)であった。この分析によって営業・間接部門・生産工程の課題が可視化され、それらの課題を解決する上でXMFXMF Remoteが大きく役立つということが明確になった。

FFGSさんの分析をもとに当社の業務フローの課題解決を進めた結果、XMFによって効率的な生産体制・業務フローを構築できることがわかりました。また、XMF Remoteを活用することで、営業のデスクワークの工数削減により時間を創出でき、ソリューション営業に注力したり、リモート校正によるお客さまとの関係強化、顧客接点の増加を図るなど、営業改革の促進にもつながるということが明らかになりました」(三林副本部長)

 当時、アインズは他社製ワークフローシステムを使用していたが、Webポータルシステムの導入検討のため複数のメーカーのシステムを評価した。その結果、前述の理由に加え、XMF Remoteの操作性の高さにより、多くの顧客に使用していいただけると直感的に判断できたことで、XMF Remoteの導入に踏み切ったという。

 導入後は半年ほどかけてXMF(RIP)CTP版出力のためのテンプレートの作成などの運用環境の準備を進め、20189月からXMF Remoteの実運用を開始した。

■ジョブファイル転送、デジタル検版が制作業務の効率化に大きく寄与

 アインズでは現在、本社・東京支社・中部営業部3拠点に30名以上の制作スタッフがおり、全員がXMF Remoteを活用している。制作部門への導入・定着に当たっては、当時全体最適化プロジェクトにおけるXMFXMF Remoteの担当であった、三林副本部長と鈴川部長が中心となって説明会を開催し、使い方を周知しながら、すべての制作データをXMF Remoteに登録する全ジョブ運用を推進したという。
「ただ機能を説明するだけでなく、実際に使ってもらいながら個別の問い合わせにも対応し、便利さを理解してもらい、定着を図っていきました」(三林副本部長)

 現在、XMF Remoteに登録されているジョブ数は約1,200件。毎月200件ほどのジョブが新規に登録されている。

 XMF Remoteの導入を機に、同社では営業だけでなく制作スタッフもクライアントと直接やり取りをするようになった。その結果、校正の際、クライアントが求めていることを制作部門で直接把握できるようになり、スムーズな対応が可能に。また、修正結果を制作データに反映させるまでのタイムラグも大幅に削減できた。

「印刷用の素材データなどのやり取りには、ジョブファイル転送の機能が重宝しています。お客さまと営業、制作の3者でファイル共有が簡単に行なえ、また大容量のデータにも対応できるため非常に便利です。外注先や外部デザイナーなどもメンバーに加えておけば、従来のように全員に転送する手間が削減でき、ミスの防止も図れます」(木内課長)

 さらに、修正箇所が自動的に比較・表示されるXMF Remoteの自動検版機能も、制作業務の効率化に大きく寄与している。

「自動検版機能の最大のメリットは、制作スタッフ本人が意図していないデータの変更があった場合に、それを確実に発見できる点です。アナログの検版ではやはり限界があります。この機能により、修正指示があった箇所以外も含めた全体の検版が確実に行なえるようになったことで、安心して次工程に回せるようになり、ミスも減りました」(鈴川部長)

 これらの相乗効果により、XMF Remote導入後、製版部門の生産性が従来の約2倍に向上しているという。


     
ジョブごとに原稿や素材データを管理できるため、メール整理などの負荷も軽減されている

■「本来の営業活動」に、より多くの時間を使えるようになった

 営業部門については、すべてのジョブに対して、営業担当者が各営業所のプリンターで本社のXMFRIP済のデータによる校正紙を出力して、クライアントに届けるという運用を想定し、XMF Remoteの運用定着を進めた。校正紙の出力には、XMF Remote導入前から各拠点に設置していたプロダクションプリンター『DocuColor 1450 GA』を使用する。
「当社の生産工程はJapan Colorに準拠した環境を構築しており、『DocuColor 1450 GA』もそれに合わせて調整しています。毎週キャリブレーションを行ない、校正の信頼性を維持しています」(三林副本部長)

 XMF Remote導入による営業部門のメリットとして、畑主任は、「様々なお客さまへの提案など本来の営業活動に、より多くの時間を充てることができるようになったこと」を挙げる。進捗状況を社外からでも確認できるようになり、校正や入稿対応のために外出時間を遅らせたり、営業拠点に戻ったりする必要がなくなったためだ。紙ベースでの校正のやり取りが必要な仕事でも、事前にXMF Remoteでデータを共有しておくことで、よりスムーズな進行が可能になったという。

 さらに、データ管理などの作業も大幅に効率化できた。

「これまで、お客さまからメールで原稿を受け取ることが多く、複数の案件が重なった時など、データの整理に多くの手間と時間がかかっていましたが、XMF Remoteでは、ジョブごとの共有フォルダにデータを入れて関係者で共有できるので、その手間が省けました。この共有フォルダは、入稿だけでなく、スケジュール表などの共有管理や、撮影写真・Web用データなどの納品などにも使っています」(畑主任)


   
関係者間でのデータのやり取りが大幅に効率化され、ミスの削減にも繋がっている

■オンライン校正が、クライアントへの新たな価値提供になる

 XMF Remoteは現在、アインズにとって重要なコミュニケーションインフラとして定着しており、クライアントの登録件数は約130社・約400アカウントに上る。
「たとえば、過去にメールでのやり取りで不都合を感じられていたお客さまなどには、大きなメリットを実感していただいています」(木内課長)

 また、同社では日頃の営業活動で新しい提案を行なう際には、必ずXMF Remoteの活用を盛り込んでおり、とくに若い世代の担当者には受け入れられやすいという。

「企画書を使わずにXMF Remoteの画面をお見せしながら説明した後、マニュアルとアカウント登録のメールをお送りしただけで、そのまま使っていただいたケースもあります」(畑主任)

 印刷物の種類別に見ると、とりわけ広報誌関係の仕事では早い段階から活用が進んでいる。ある自治体の広報誌コンペでは、XMF Remoteによるオンライン校正を提案に盛り込んだことが採用の決め手になった。この案件では、担当営業ではなく、制作スタッフを直接の窓口としたことで校正の遅延や校了下版などに柔軟に対応でき、また営業の負担も軽減できたという。

「もちろん、広報誌だけでなく、パンフレットも多いですし、最近では帳票も増えています。他にも、ページものやチラシなど、さまざまな仕事でシステムを採用し、ご利用いただいています」(村方主任)

 最近では、デジタルブックの案件でもオンライン校正が採用されているという。

XMF Remoteの導入によって受注できる仕事の幅が広がり、また既存のお客さまの中でも、いままで入り込めていなかった部署の仕事を獲得できるようにもなりました」(木内課長)

 コロナ禍となってからは、社会的に「非接触」「非対面」が求められるようになったことから、同社はXMF Remoteを「非接触型校正システム」という名称で提案している。興味を持ったクライアントには、まずテスト使用でメリットを体感してもらった上で、営業から改めて具体的な運用などについて説明するという流れで提案を行ない、着々とユーザー数を増やしている。

 しかしながらXMF Remoteを使って制作スタッフやデザイナーが直接クライアントとコミュニケーションをとることは非常に有効である一方、必ずしも十分な対応ができない場合もある。そこで、アインズでは村方主任を中心にXMF Remote対応の専門部署を組織した。

「この部署は、制作部門とお客さまの間に立って制作のサポートなどを行ないます。ただ、校正の指示が細かい場合などには、営業がお客さまからお伺いした内容を、この部署で一度整理して制作に伝えるようにしています」(木内課長)

 この部署では、クライアントに対して定期的にXMF Remoteの満足度調査も行なっている。
XMF Remoteの使い勝手や当社の対応などについて、満足度と併せて、不満な点もお伺いしています。調査結果は営業とも共有し、とくに不満の多い点があれば、改善に注力しています。こうした取り組みの結果、お客さまの満足度は70%を上回っています」(村方主任)

■「利益」と「社会貢献」の両立を実現する重要なツール

 アインズは創業140周年を迎えた2017年に「アインズ“SDGs宣言」を発表。社会貢献の観点からSDGsの取り組みにも力を入れている。
「営業的な動きに加えて、地域社会との繋がりを深めたり、社員満足度を向上させたりすることにも力を入れています。SDGsの目標達成に貢献しながら自社の成長も図るため、今年から『利益』と『社会貢献』の両立を目指すESG経営にも取り組んでいます」(木内課長)
  三林副本部長によれば、XMFXMF Remoteはその「利益」と「社会貢献」の両立を実現する重要なツールであるという。
 

 ©2022 SANRIO CO., LTD.APPROVAL NO.L634978
 アインズはいち早くSDGs活動に注力。"17の目標"を子ども
向けに分かりやすく紹介する絵本も発行している


「コロナ禍で校正業務の非接触化・オンライン化が進みましたが、それ以前からXMF Remoteの活用に取り組んでいた当社は、他社に先んじて差別化を図ることができました。また、顧客満足度調査などを通じて、お客さまとのやり取りがスムーズになり、お客さまの要望をしっかりと理解した上で的確な対応ができるようにもなったと思います。その結果、お客さまからの信頼が得られているのだと考えています」
 最後に三林副本部長は、「XMFXMF Remoteは、生産工程、営業部門を含めた全体最適化を実現しながら、お客さまから求められる確かな品質の製品・サービスを提供するのに不可欠なツールになっている」と語り、今後もクライアントとの関係性強化に活かしていく考えを改めて強調した。



2022.11.10

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ   生産工程最適化事例― ―株式会社第一印刷所 MISから印刷工程までのJDF連携フローにより、生産効率を一気にアップ システム・組織の両面から最適化。世界トップクラスの品質と生産性を実現

  新潟に本社を置き、印刷を中心に情報加工を幅広く手がける株式会社第一印刷所(代表取締役社長:遠山 亮氏、本社:新潟市中央区和合町2-4-18)は、生産改革の一環として、完全自動運転コンセプトの最新オフセット印刷機の導入に加え、MISと『XMF』を連携させたJDFワークフローの構築により、かねてから追求してきた「生産性と品質の高水準の両立」に磨きをかけている。印刷機メーカーのハイデルベルグ、MISベンダーの両毛システムズ、ワークフロー全体のコーディネートを担うFFGS、そして第一印刷所グループという4社の協働によるプロジェクトとなった今回の取り組み。その経緯と具体的な効果について、代表取締役社長・遠山 亮氏、代表取締役専務 製造本部長・小出博信氏、製造本部 プロダクトD’sNET推進室 室長・南清人氏に伺った。

 

ジョブチェンジを極限まで効率化するために

 第一印刷所は、新潟県内・東京都内合わせて18カ所に拠点を持つ総合印刷会社。グループ会社7社と独自のネットワーク『D’s NET』を構築し、各社との相互連携により、プランニングから印刷・加工、配送、さらにはBPOサービス、イベントの企画運営、デジタルメディア制作に至るまで、幅広い領域を網羅したワンストップサービスを提供する。
  印刷事業の製造拠点は新潟市江南区曙町の本社工場に集約。プリプレスおよびポストプレス工程は、いずれもグループ会社の株式会社プレスメディア、株式会社あけぼのがそれぞれ担っているが、いずれも第一印刷所の本社工場と近接しており、運用上も密な連携によって一体化したワークフローが構築されている。

      
    左から遠山社長、小出専務、南室長
  第一印刷所の大きな強みの一つは、スピードと品質を極めて高い次元で両立する生産体制にある。オフセット印刷においては、
AM230線による高精細印刷を基本とし、LED-UV仕様の最新オフセット印刷機と、インライン品質検査装置、1級・2級技能士の資格を持つオペレーターによる徹底した品質管理により、同社が掲げる“極み印刷”のコンセプトを具現化している。また、小ロットジョブについては、富士フイルムのインクジェットデジタルプレス『Jet Press 750S』により、オフセットと同等の高品質な印刷物を短納期かつ最適なコストで提供するオフセットとデジタルを融合したハイブリットワークフローを確立している。

  そんな同社が今回取り組んだ生産工程の最適化は、これまで追求してきた効率化をさらに高い次元へと昇華させる、自動化への挑戦でもあった。その第一弾として、2018年、ハイデルベルグのピークパフォーマンスモデル『スピードマスターXL106-8-P DryStarLED』を導入。この最新鋭機は、『Push to Stop』コンセプトに基づく自動化技術により、人手の介入(タッチポイント)を極限まで削減し、完全自動運転を可能にするものだ。
「小ロット化が進む環境下で、オフセット印刷の現場で課題になっていたのが、ジョブチェンジをいかに効率化するか、ということでした。ジョブ間の準備時間を極限まで短縮したかった。最新マシンの自動化技術でその実現を目指しました」(小出専務) 

   

   ハイデルベルグ製「スピードマスターXL106-8-P」。2021年に1台追加導入し、現在は2台体制

MIS
の入力精度を高めることで印刷機の自動化を活かす

 ただ、この「印刷機の自動化」を最大限に活かし、生産工程全体の効率アップに結びつけるには、前工程の見直しが必要だった。具体的には、MISへの受注情報(印刷物の仕様など)の正確な入力と、その情報を生産工程で活用するデータ連携の仕組みの確立である。
「私は2015年に製造本部長に就任しましたが、当時、『既存の設備では今後勝ち残っていけない』と感じていました。競争力を高めるには、大砲とレーダーが必要だと。そこでまず大砲としてJet PressとハイデルベルグのXL106を導入したわけですが、大砲の弾を当てるにはレーダーが要る。そのレーダーに相当するのが、MISや『XMF』を軸とするワークフロー。今回最適化を図った部分です。これによって、『職人の手で紙にインキを乗せる』というオールドビジネスを、ニュービジネスに変えることができると考えました」(小出専務)
 従来のフローの大きな課題の一つは、MISへの入力情報が標準化されていないことだった。営業部門での使いやすさを優先してMISをカスタマイズしていたため、結果として「手書き伝票をPCに置き換えたレベル」のものになっていたという。
「自由入力が可能だったので、確かに営業にとっては使いやすかったのですが、個人によって入力する項目にバラつきがありました。そのため、生産管理部門であらためて製品仕様などを確認し、工程管理システムに入力し直すという二度手間が生じていたのです。当然、受注と実績もリンクしていない状態でした。自動化フローを実現するには、この入口から変えていく必要があったわけです」(遠山社長)
 そこで、MISと工程管理システム・ワークフローシステムとの連携フローを構築するべく、新たなMISとして、両毛システムズの『PrinTact』を導入。営業による受注情報の入力項目も統一を図った。さらに、ワークフローシステム側は、2014年から使用している『XMF Complete』『XMF Remote』の環境に、MIS連携ツール『XMF Controller』を追加。これにより、MISの受注情報からXMFジョブを自動生成するフローが実現し、面付け作業含む各種プリプレス設定の効率化および印刷工程へのジョブデータ継承も可能になった。
  
 

   MIS上で印刷機の予定を管理し稼働状況の見える化も実現している

■属人化していた作業を見える化し、フローを再構築

 この連携フローの構築にあたっては、FFGSがコーディネーター役として全面的にサポートを行なったが、南室長は「とくに、課題を見える化し解決策を見出していくプロセスを、客観的な視点でサポートいただいたのが成功の要因になった」と評価する。
「たとえば、『XMF』でのジョブ作成の作業。従来は熟練した担当者が手がけており、他の者から見るとどれだけ手間がかかっているのかもわからず、ブラックボックスの状態でした。そこで、客観的に見て改善できる部分がないかを検証し、問題点を洗い出した上で、当社の業務フローや現実的にできる範囲、作業負荷などを加味しながら解決策を見出していった。この一連の作業を、FFGSさんとディスカッションしながら進めたことで、あらゆるジョブのパターンにおいて前後工程と連携した、より有効なフローを構築できたと思っています」(南室長)
  さらに、MISから『XMF』、印刷機へのデータ連携についても、実際のジョブを想定した処理の流れの確認、課題の見える化とその解決方法の検討を、FFGS、両毛システムズ、ハイデルベルグと協働で進めていった。
「さまざまなベンダーとの連携実績が豊富なFFGSさんにコーディネート役を担っていただいたからこそ、4社ワンチームで取り組むことができ、マルチベンダーのワークフローを完成させることができたのだと思います。私どもが各ベンダーさんと個別にコンタクトをとりながら進めていたら、全体をまとめるのに相当苦労したでしょう」(遠山社長) 

■プリプレス工程ではジョブ作成の工数が4割削減

 では、今回の生産工程最適化により、どのような効果が生まれているのだろうか。南室長によると、プリプレス工程においては、『XMF』でのジョブ作成を中心に、大幅な工数削減が図れているという。
MISの情報から『XMF』のジョブを自動作成できるようになったことが大きいですね。通常のページ物制作では70ほどのタッチポイントがありましたが、新しいフローでは、それを4割ほど削減できています」(南室長)
 従来のタッチポイントの数が多かったのは、プリプレス段階からカラーマネージメントを徹底している同社ならではの事情もある。
「これまでは、使用する印刷機や紙の種類、インキの組み合わせに応じて、CTP出力担当者が1件ずつ、CTPカーブの設定を行なっていました。とくに、ページ物で複数種の紙を使うようなジョブでは、タッチポイントの数は膨大になります。今回、MISXMF連携によってカーブ設定も自動で行なえるようになったことで、作業効率が上がったのはもちろん、ミスの削減にもつながり、オペレーターの安心感も高まっています」(南室長)
 また、営業部門でのMISへの入力作業の標準化により、生産管理部門での確認・作業負荷も軽減された。
MISへの入力の手間は増えることになるので、営業からは当初、不満の声も出ましたが、いまでは当たり前のこととして定着していますし、受注情報の正確な入力を徹底することで、営業の知識習得にもつながっています」(遠山社長)
 さらに、システム面だけでなく組織体制も見直し、第一印刷所(印刷工程)とプレスメディア(プリプレス工程)の連携も強化。業務的には両社を事実上統合した形となり、プリプレス~印刷工程間のよりシームレスなフローが実現した。
 こうしたシステムの再構築や組織戦略の相乗効果により、プリプレス工程だけで12名分の工数削減が図れており、多能工化と合わせて人員配置の柔軟性が増したという。 

 
   MIS-XMF連携により、ジョブ作成の工数が大幅に削減された

■戦略課題だった準備時間は「平均
9.0分」まで短縮

 一方、印刷工程においては、準備時間の削減効果が明確に表われている。XL106導入前、の2014年の主力オフセット機では43分ほどかかっていたが、XL1062台体制構築後の2021年の平均準備時間は10.8分(XL1062台平均)と約75%減。さらに、JDFの運用を始めた半年間の実績では17%削減され、なんと9分。これは、特色・プロセス4色の色替えなども含めた平均値であることを考えると、驚異的な数字であり、機材メーカーからも世界トップクラスの生産性と評価されている。
「簡易なジョブでは5分を楽に切ります。とくに、JDF運用は一つのジョブを刷り終わってから次の刷版がセットされるまでの時間短縮効果が大きいですね。そのセットアップにJDFを使うことによって、用紙やインキなどの情報の手入力が不要になっており、この部分だけで比較すると3割以上の時間短縮になっています」(南室長)
 JDF運用の応用として、MIS側でも、印刷準備に必要なデータ(JDFPPF)がすべて揃っていることを印刷予定表上にて一目で確認し送信できる仕組みをつくることによって、現場での余計な確認作業を不要にするといった工夫も行なっており、これも印刷準備時間の削減に大きく寄与している。
 また、同社は小ロットのジョブを『Jet Press 750S』に、中~大ロットのジョブをオフセット機に振り分ける「オフセット・デジタル共存のハイブリッド運用」を行なっており、これによってオフセット枚葉部門全体の稼働効率を高めている。
 こうしたさまざまな最適化の相乗効果により、枚葉印刷における生産性は、小ロット化が進んだにもかかわらず、2014年比で約1.8倍と大幅に向上(約4,000/時向上)し、その改善効果は、印刷機の間接時間も含め、約14,658時間/年を見込んでいるという。 

  
   
小ロットジョブをJet Press750Sに振り分けることでオフセット機
 の稼働率を高めている


■働き方のイノベーション、企業としての魅力アップを目指す

 このコロナ禍でも投資を止めず、着々と生産改革を進めてきた第一印刷所。その結果、製造を担うグループ4社の利益率は、最適化の活動を始めた当初から6.9ptと大きく向上した(20228月現在)。また、生産工程全体の効率化により、印刷機オペレーターが後加工の作業に携わるなど、“人員配置の最適化”も実現している。しかし、同社の挑戦はこれがゴールではない。小出専務は「今回構築した新しいワークフローをさらに磨き上げ、生産性アップだけでなく、働き方のイノベーションにもつなげていきたい」と今後を見据える。
「たとえば、印刷機のワンオペ体制を実現し、週4日、56時間勤務といった多様な働き方を可能にする。こうした環境整備を推し進めることで、企業としての魅力を高め、若い方々に“第一印刷所で働きたい”と思ってもらえる存在を目指したいですね」(小出専務)
 その上で、FFGSをはじめとするベンダーとのパートナーシップを引き続き大切にしたいと語る小出専務。最後にこう締めくくった。
「今後も私どもの課題に対してさまざまな提案をいただき、一緒にディスカッションしながら、さらなる変革の道を探っていければと思っています。また、今回の生産工程最適化の成果については、きちんとデータをとり、皆さんにフィードバックしていきます。当社だけが利益を享受するのではなく、結果を共有してお互いの成長につなげるということも、ビジネスパートナーとして大切なことだと考えています」

 

 

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