ニュースリリース

2023.03.13

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ  生産工程最適化事例――株式会社広済堂ネクスト  プリプレス工程の自動化・見える化で、工数を半分以下に削減 大幅な生産効率アップにより、成長戦略に向けたリソースの再配分が可能に

  広済堂グループで情報ソリューション事業を担う株式会社広済堂ネクスト(本社:東京都港区芝浦1-2-3、代表取締役社長:根岸千尋氏)は、重要課題として取り組んでいる生産工程改革の一環として、2020年、FFGSのサポートのもと、プリプレス工程の自動化・省力化・見える化に着手。新たな工程管理システムを中核に据え、スキルレスで効率的、かつ柔軟性に優れた生産環境を実現している。取り組みの経緯と具体的な効果、今後の戦略などについて、プリントソリューション事業部 生産本部 プリプレス部の部長・佐藤祐志氏、次長・吉田貴裕氏、製版課 課長・藤井大祐氏に伺った。

      
    左から佐藤部長、𠮷田次長、藤井課長

■全体最適に向けた工程改革に着手

 広済堂ネクストは、1949年、「櫻井謄写堂」として創業し、72年に「廣済堂印刷株式会社」へと改名。90年代からは、業界に先駆けて培ってきたデジタル情報加工技術をベースに、IT分野にもフィールドを拡大し、印刷とIT2本柱として事業を展開してきた。99年に株式会社関西廣済堂と合併し「株式会社廣済堂」に。202110月、持株会社体制への移行に伴い、「株式会社広済堂ホールディングス」の100%子会社として「株式会社広済堂ネクスト」が設立。印刷・ITに加え、BPOサービスも含めた情報ソリューション事業を継承し現在に至っている。

  生産拠点としては、出版印刷をメインとするさいたま工場(埼玉県さいたま市)、新聞印刷の有明工場(東京都江東区)、デジタル印刷に特化した入間工場(埼玉県入間市/NTT印刷・福島印刷とのシェア生産)を持つ。

  今回、最適化の取り組みを行なったのは、さいたま工場。雑誌や書籍、コミックスなどの出版物を中心に手がけ、入稿から製版、枚葉・輪転印刷、製本加工、配本までの一貫体制を持つ主力拠点だ。同工場では、最新の生産設備を備える一方で、とくにプリプレス工程において、人手に依存した作業が多く、前後工程との情報連携も充分にとれていないなどの課題があり、昨今の小ロット・短納期ニーズに確実に対応するには思い切った工程改革が必要だったという。

 「出版物のプリプレス工程には、定型作業がかなりあり、そこには多くの人手とコストがかかっていました。しかも、それらはお客さまから対価をいただきにくい部分。ですから、可能な限りタッチポイントを減らし、作業の負荷軽減・標準化を図るとともに、工程の見える化も進めることで、プリプレス全体の生産効率を高めようと考えたのです」(佐藤部長)

  同社はすでにMISや印刷工程管理システムを導入するなど、デジタル基盤の整備を積極的に進めてきたが、生産工程全体の最適化のためには、プリプレスのさらなる効率化が不可欠だった。そこで、2020年、プリプレス工程最適化のプロジェクトが始動。関係するメーカーとの調整も含めた全体のサポートをFFGSが担った。プロジェクトのパートナーとしてFFGSを選んだ理由について、佐藤部長はこう話す。

 「3社のベンダーさんに声をかけさせていただき、それぞれ、システム再構築の提案をいただきました。他のベンダーさんからは、ほとんど人手を介さずに製版処理が行なえ、自動で出力されるような仕組みの提案もありましたが、FFGSさんの提案は、従来の作業の流れを活かしながら、可能な部分を自動化していくというもので、私たちの意向に最もマッチしていたのです」

 また、吉田次長はこう付け加える。

 「今回のプロジェクトでは、オフセット印刷のワークフローや製版作業に関する知見があり、MISとプリプレス・印刷工程とのシステム連携などにおいても信頼できるパートナーが必要でした。その点、FFGSさんは非常に安心感がありますし、日頃から当社の仕事内容や課題も把握していただいているので、サポートをお願いすることにしました」

                         今回構築したプリプレス工程管理システムのイメージ 

■自動化可能な作業を洗い出し、工程管理システムを新規設計
 FFGSが提案したプリプレス工程の改革案は、既存のMISおよび印刷工程管理システムと連携させた「プリプレス用の工程管理システム」を新たに導入し、そこに面付けや検版などの機能を組み込むことで、人手による作業を自動化・省力化するというもの。作業の流れは従来工程を踏襲するが、使用するシステムを一本化し、前後工程と情報連携をとることにより、スキルレスで効率的に製版処理が行なえる環境を実現するという考え方だ。

 実際のシステム設計にあたっては、FFGSの技術担当が広済堂ネクストの生産現場に入り、使用しているシステムやオペレーターの作業内容を詳細に調査。自動化可能な工程の洗い出しを行ない、受注から刷版出力までの26工程のうち14工程を自動化・省力化するという目標を設定。現場の意見・要望をヒアリングしながら、システムに求められる要件を整理し、具体的な仕様を固めていった。

「プリプレス工程特有のソフトウェアや作業内容がいろいろある中で、どの作業に人が必要で、どこを自動化できるのか、FFGSさんにアドバイスをいただきながら判断していきました」(藤井課長)

 同社が目指したのは、完全なフルオートメーションのラインではなく、定型作業を可能な範囲で自動化・省力化しながら、作業指示の確認や出力結果の検版など、最低限必要なポイントで人を介在させることにより、柔軟性と効率性を高いレベルで両立させることだった。その背景について、吉田次長はこう説明する。

「出版印刷の場合、個々の作業は定型的なものが多いのですが、入稿物によって工程の流れが微妙に異なってきます。入稿後に急な仕様変更が入ることもあるため、さまざまなケースに対応できるよう、柔軟性を持たせる必要がありました。また、すべて自動で一貫処理してしまうと、万が一トラブルが起きた際の後戻りが大変なロスになってしまいますので、トータルの効率性を考えると、当社にとってはこの形がベストだったわけです」

 新たなワークフローの中核となるプリプレス工程管理システムは、FFGSが広済堂ネクストの要望を取りまとめ、それを反映したオリジナルシステムとして、富士フイルムビジネスイノベーションが開発を担当。『Control Station』の名称で、20223月から実運用を開始した。

「工程管理システムとしてはかなり短期間で開発していただきましたが、この種のシステムにつきものの初期不良もなく、立ち上がりはスムーズでしたね。オペレーションについては、やはりまったく新しい作業環境になるので、約1カ月のトレーニング期間を設け、プロジェクトチームのメンバーがオペレーター一人ひとりに操作方法などを丁寧にレクチャーしながら定着させていきました」(佐藤部長)

 こうした現場へのきめ細かいフォローの結果、運用開始の1カ月後には、主力商材である文庫系の仕事の約95%を新システムのフローに移行し、初期の目的をほぼ達成できたという。

   
     主要なプリプレス作業がControl Stationの上で効率的に処理できるようになった。(左)
  印刷工程管理システムでは、刷版出力のステータス確認が可能に(右)

■プリプレスの工数が57割削減、残業時間も3割減
 新フロー運用開始から約1年。同社が目指していたオペレーションの負荷軽減・標準化・見える化といった効果は明確に表われている。

「これまで、面付けや検版などは専用のソフトウェアを使用していましたが、これらの機能がControl Stationに集約されたため、多くのジョブはControl Stationのブラウザ画面のみでプリプレス作業が完結できるようになりました。面付けに関しては、あらかじめテンプレートを用意しておき、製本仕様などの情報はMISからControl Stationに取り込む形にしています。ですからMISの情報に従ってテンプレートを選択すれば、専門知識やスキルがそれほどなくても正確に面付けが行なえます」(藤井課長)

 オペレーションを特定の担当者に依存することがなくなり、属人化の解消にもつながっているという。もちろん、作業効率も大きく向上している。

「新しいフローでは、一つの作業にかかる時間が従来より短くなり、一人のオペレーターが複数の作業を同時並行で進められるようになりました。いくつかのジョブが重なっても、無理なくこなすことができます」(佐藤部長)

 また、Control Stationの導入と同時に、刷版工程では、完全無処理版への全面切り替えを実施。自動現像機に関わる付帯作業を排除し、従来より大幅に少ない人数で回せる体制を整えた。

 こうした複合的な工程改革によって、プリプレス工程全体で見るとオペレーターの工数は従来に比べて一気に半減し、残業時間は約3割減(昨年度実績)になっているという。さらに、作業指示などの紙でのやり取りをデジタル化した効果も大きいと吉田次長は強調する。

「人が口頭で伝えたり、紙で渡したりという不確実な部分がほとんどなくなったため、無駄な確認作業が削減できたほか、作業履歴も効率的に管理できるようになり、ミスの防止にもつながっています。こうしたメリットは、とくに管理者が強く実感していますね。私の感覚では、管理者の工数は7割ほど減っていると思います」
 
  一方、今回の工程改革は、プリプレスのみならず印刷現場にもメリットを生み出している。以前から運用している印刷工程管理システムと、Control StationMISを連携させたことにより、印刷工程管理システム上で下版状況(刷版出力のステータス)を確認することが可能になった。MISに入っている印刷スケジュールと、Control Stationから送られる実際の刷版出力の情報が、印刷工程管理システム上で把握できるため、印刷オペレーターは、次のジョブをどのタイミングで印刷できるかを確認しながら作業を進めることができるのだ。さらに、印刷オペレーターが印刷工程管理システム上で自ら版出力の指示を出すことも可能になり、刷版担当者の負荷軽減にもつながった。 

 
刷版工程の見える化、作業指示の確実な伝達により、印刷現場の作業効率も向上している

■工程のさらなる「見える化」を目指す

 広済堂ネクストがこのように生産工程の全体最適化に注力する背景には、短納期対応やコスト削減といった課題の解決にとどまらず、全事業を俯瞰した「リソースの再配分」を進めることで、会社としての強みをさらに伸ばしていくという成長戦略がある。今回約2年がかりで取り組んだプリプレス工程の最適化は、そのための基盤づくりの一環と言える。

「いま、出版物の需要が伸び悩み、人材の確保や諸資材・エネルギーのコストアップなど、さまざまな課題がある中で生き残っていくには、あらゆる無駄を極限まで排除していかなければなりません。同時に、無駄の削減によって生み出したリソースを再配分し、成長分野に投資していくことが重要です。成長分野というのは、お客さまにしっかりと寄り添って、印刷・ITといった当社のコア技術・ノウハウを組み合わせながら最適なサービスやプロダクトをタイムリーに提供し続けること。自動化・省力化の取り組みは、すべてそこにつながっていきます」(佐藤部長)

 限られたリソースを最大限に活かすための工程改革。佐藤部長は、次のステップとして「生産工程全体の見える化」をさらに推し進める考えだ。

「営業からプリプレス、印刷工程まではある程度見える化できましたが、現状、印刷以降の工程との連携が充分にとれていないところがあります。生産工程全体を通してタイムリーに状況を把握できる環境を整えることによって、どこに無駄があるのか、課題を明確化し、さらなる改善を進めていかなければいけないと考えています」(佐藤部長)

 同社の社名にある「ネクスト」には、「成長・発展・未来」の意味が込められている。クライアントと共に成長・発展していくための、未来を見据えた改革への挑戦は、これからも続いていく。

 

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