ニュースリリース
2023.03.23
◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ SUPERIA ZX導入事例――日経印刷株式会社 理想の完全無処理環境が実現し、製版・印刷両部門でメリットを実感 「視認性の高さ」「キズのつきにくさ」が安心感をもたらし、生産効率アップにも寄与
2024年に創業60周年を迎える日経印刷株式会社(本社:東京都千代田区飯田橋2-15-5/代表取締役社長:廣瀬 智氏)は、その大きな節目を前にした2022年7月、「刷版工程の完全無処理化」を達成した。テスト期を含め、およそ2年をかけてじっくりと進めた無処理プレートの導入プロセスには、どんな紆余曲折があり、結果的にどのような工程改革が成されたのか。製版部部長・松岡哲也氏と印刷部 G2 印刷1課課長・大森健一氏に、製版部門・印刷部門それぞれの観点から、SUPERIA ZX採用の経緯や、現場に生まれたメリットについて伺った。
■プレートセッター更新を機に、一気に無処理化への機運が高まる
個人経営の謄写印刷所『日経プリント』として1964年に創業して以来、冊子・書籍などページ物の仕事を中心に“こだわりの技術と信頼性”で着実に業容を拡大し続け、いまでは企画・デザインから仕分け・発送までワンストップで完結できる都内有数の総合印刷会社へと成長した日経印刷。出版・製薬・金融・各種メーカー等々、幅広いクライアントの多様な仕事を手がけ、中でも、国の行政機関である中央省庁が刊行する“白書”については「白書の日経」と異名をとるほどの実績がある。近年では、配信サポートや映像制作を主とした『NP CREATION』という新事業も展開し、印刷物とデジタルコンテンツの両構えでクライアントのニーズに応える同社だが、企業前進の原動力となっているのは、長年にわたり磨き上げてきた印刷技術である。
日経印刷のフラッグシップ工場『グラフィックガーデン』
その象徴、集大成とも言えるのが、2008年に竣工したフラッグシップ工場『グラフィックガーデン』だ。これにより、もともと 3カ所に分かれていた製造拠点が、このグラフィックガーデン(板橋区)と浮間工場(北区)の2工場体制に。そして、「印刷のエキスパートとしてお客さまのために何ができるのか」をさらに深く追究する、日経印刷の新たな挑戦が始まった。その挑戦の一つに「環境対応の再強化も含まれていた」と松岡部長は言う。
「環境負荷低減には早くから取り組んでいたのですが、グラフィックガーデンの開設を機に、よりいっそう徹底しようと。工場設計段階から排出物の抑制やリサイクルなどに徹底的に配慮し、綿密にデータを取りながら成果を高めていきました」
最新のデータを見ると、何とリサイクル率は97%。実際、グラフィックガーデンは、優れた環境対応設備や積極的な企業活動が認められ、2012年にグリーンプリンティング工場認定を取得。その後、「印刷産業環境優良工場表彰」で最高位となる経済産業大臣賞を受賞している。そして2021年。「製版工程廃液ゼロ」に向け、完全無処理化への取り組みが始まった。
「初期の無処理プレートが登場した頃からつねに注目し、何回かテストも行なっていました。ただこれまでは、環境性能は文句なしでも、実用面ではまだまだ発展途上の技術であると判断し、つねにアンテナを張りながら、意に適う無処理プレートの登場を心待ちにしてきたわけです」(松岡部長)
無処理化を推し進めるきっかけとなったのは、2020年、プレートセッターの更新だった。
「グラフィックガーデンのプレートセッター 3台のうち 2台が更新の時期を迎え、無処理プレート対応機に置き替えることになりました。浮間工場にある1台はすでに対応済みでしたから、これを機に両工場とも無処理化を進めようと。長い間、導入を見送ってきた無処理プレートでしたが、セッターの更新によって一気に機運が高まったんですね。早速、各社の最新プレートを比較検討した結果、総合性能の高さから『SUPERIA ZD-II』 を選択し、さまざまな絵柄、台数、通し枚数、所有している印刷機との相性などを徹底的にテストしました」
約半年のテストを経て、2021年5月、満を持して、無処理プレートの本格運用が始まった。
完全無処理化により「廃液ゼロ」「大幅な省スペース化」を実現した刷版室
■視認性の大幅アップで、「無処理」を意識せず使えるレベルに
製品性能をシビアに見極め、高いレベルでの活用にこだわる日経印刷の現場で、初めての無処理プレートはどのように評価されたのだろうか。松岡部長は当時の印象をこう語る。
松岡部長
「無処理プレートの中では最先端を行っていたSUPERIA ZD-II ですが、どうしても我々が求めてしまうのは、有処理と変わらないレベルのプレート性能なんですね。ですから現像工程がなくなることによる数々のメリットを実感しつつも、視認性や刷りやすさなどについては、まだまだこれから進化していく余地があると、次世代のプレートへの期待を抱きながらの運用でした」
現場は柔軟に適応し、わずか1カ月ほどで9割程度の仕事をZD-IIでこなせるようになったというが、それでも一気に「全面切り替え」は断行せず、しばらく慎重に有処理の『XP-F』との併用を継続。完全に自現機を撤去したのはおよそ1年後、2022年の夏だった。ちょうどこのタイミングで、無処理プレートをZD-IIから次世代の『SUPERIA ZX』へと移行した。
「7月に、グラフィックガーデンの残り1台のセッターを無処理プレート対応機に更新し、翌8月からすぐにSUPERIA ZXの本格運用を開始しました。この時点で100%完全無処理化が達成できたわけです。11月には浮間工場も含めて全社ZXで統一しました」(松岡部長)
ZXに移行したことで、現場の評価はどう変わったのか。印刷部の大森課長は、「まず感じたのは、視認性が格段によくなったこと」と語る。
「製版現場からも『すごく見やすくなった』という声がありましたが、印刷現場では、さらにインパクトが強かったように思います。初めに有処理のXP-FからZD-II に替わって慣れるのに苦労したあと、今度は一気に元の有処理のレベルに近づいたわけですから、非常に安心感がありますよね。実際、視認性の改良がZX開発の大きなテーマだったと聞いていますが、それも納得できる大幅改良だと感じました」
松岡部長が付け加える。
「XP-Fとまったく同じとまでは言えませんが、無処理プレートであることを意識せずに使える充分なレベルです。この版がどのジョブの何色の版なのかを、ストレスなく判別して作業を進められますから。視認性の向上は製版現場・印刷現場どちらにもメリットがある、最大の進化だと思います」
SUPERIA ZXは、製版現場だけでなく印刷現場にも恩恵をもたらしており、それは視認性の向上だけにとどまらないという。
「XP-FやZD-II と比べてもキズがほとんど発生しなくなり、版キズのトラブルはほぼ解消され、作業効率が確実にアップしています。以前は、キズが発生するとプレートを再出力したり消去ペンで処理したりといった作業がつきものでしたが、最近ではほとんどありません」(大森課長)
効率面で言えば、SUPERIA ZXは、刷り出しの早さも申し分ないレベルだという。
「ZD-II では、紙面にインキが乗るまでにそこそこの枚数を通していたのですが、ZXでは1枚目からインキが乗ってきます。また、地汚れが出にくくなった分、水目盛りを下げられるようになったので色の安定性も高まり、ドットゲインの振れ幅も以前よりかなり小さくなっています。色合わせも断然やりやすくなりました」(大森課長)
LED-UV機が並ぶ印刷現場。SUPERIA ZXは優れたUV適性を発揮している
■刷版工程自動化など、さらなる改革への足がかりに
最後に、SUPERIA ZD-II との比較ではなく、無処理プレート共通のメリットである「自現機レス」による効果について、松岡部長に総括していただいた。
大森課長
「2021年の導入時、最もインパクトがあったのは刷版室の省スペース化でした。もともとそれほど狭い部屋でもなかったのですが、実際に自現機を撤去してみたら『こんなに広くなるのか』と驚きましたね。自現機に付帯する機器も一緒に撤去したので、空きスペースがさらに広々と感じられました」
不要になったのは、自現機の「スペース」だけではない。
「実務上のメリットとして、定期的なメンテナンスの時間や手間がゼロになったことも大きいですね。また、現像廃液がゼロになることで直接的にコストの削減につながっていますし、現像液のマニュフェスト伝票を発行する必要もなくなりました。工場の環境対応レベルが一段とアップしたことも、会社として重要なメリットだと考えています」(松岡部長)
松岡部長は、もう一つ、現像工程カットによる「品質管理面でのメリット」を付け加えた。
「ゴミの付着、現像液の劣化による影響など、有処理ではどうしても現像段階でのトラブルのリスクがありました。厄介なのは、印刷でトラブルがあった場合、現像なのか、露光なのか、プレートそのもののせいなのか、原因の切り分けが難しいんです。いろいろな要素が絡んでくる。しかし無処理であれば、はじめから現像トラブルという要因を取り除けます。おかげで、万が一の際の原因究明がよりスピーディーに進められるようになりました」
自現機の設置スペースゼロ、廃液ゼロ、メンテナンスの負担ゼロ。そうして生まれた余力を、どのように活用していくのか。松岡部長は今後の展望も含めてこう結んだ。
「人に関しては、機器管理の負荷が減った分、他の生産的な作業に時間を使えるようになりました。省スペースについては、自現機 3台分の空間が増えたので、そこに新たな生産機を導入することも可能ですし、自動搬送装置などの設置によってプレート出力のオートメーション化に取り組むこともできます。無処理化をきっかけに、より効率的に、より高品質なものづくりが行なえるよう改革を進めていきたいと思います」
日経印刷はこれからも、「地球にやさしい」「人にやさしい」印刷会社として進化を遂げながら、クライアントの企業価値アップに貢献するべく、自らの革新に挑み続けていく。