ニュースリリース
2023.07.09
◆富士フイルムグラフィックソリューションズ Revoria Press PC1120導入事例――株式会社井上総合印刷 多彩な特殊色と機動力の高さを活かし、新たな付加価値の提供を目指す 発想が広がり、現場のモチベーションアップにも大きな効果
1966年の創業以来、“共存共栄の精神”を大切に、栃木県で地域に根差した事業を展開する井上総合印刷(本社:宇都宮市岩曽町1355番地、代表取締役社長:井上加容子氏)は、2020年の『Jet Press 750S』に続き、今年3月、トナー機の新戦力として『Revoria Press PC1120』を導入し、デジタル印刷の生産体制の強化を図った。持ち前の発想力と企画力で、これまでもさまざまなアイデアを生み出してきた同社が、最新POD機をどのように活用し、どんな価値を提供していくのか。井上社長に、導入の背景や現時点でのメリット、そして今後の活用戦略などを伺った。
井上総合印刷は、宇都宮市内に本社工場と2つのオフセット印刷・製本加工の工場、東京都内に営業所を持ち、商業印刷物のほか、図録や記念誌、写真集、ノベルティ、自費出版の書籍などを幅広く手がける。また、『ミウラ折り』のライセンスを取得し、印刷・折り加工から管理まで一貫して行なえる体制を確立しているのも特色の一つだ。印刷の枠を超えた地域振興活動にも積極的に取り組んでおり、2017年にレンタルスペース&カフェ『Cafe ink Blue』を宇都宮市内中心部に開設、2020年には観光地支援の一環として、観光名所である大谷石採掘場跡地に『そば倶楽部稲荷山』をオープンさせた。
井上社長
デジタル印刷については、Jet Press 750Sと、Revoria Press PC1120を含むPOD機3台を本社工場に配置し、優れた機動力と高品質・バリアブルといった特徴を活かした多彩な提案を行なっている。その成果もあり、コロナ禍の影響や、原材料費や物流費・光熱費の高騰といった厳しい環境下でも、堅調に受注を得ている。井上社長は、昨今の市場ニーズの傾向についてこう語る。
「単に情報を伝えるだけの印刷物というのは、かなり厳しい状況になってきていると感じます。この傾向は以前から続いていますが、コロナ禍で拍車がかかり、加えていまはあらゆるものの値段が高騰しているので、情報を伝えるだけの手段としては、紙はますます選ばれにくくなってきています。ではどんな『紙』なら必要とされるのかと考えると、たとえばパッケージやオリジナルカレンダーなど、広告宣伝やビジネス書類とは違った『機能』を持ったモノとしての紙が注目され始めているように思います。つまり『それ自体を使える印刷物』。そしてそこにお金を出すからには、デザインや形状・素材などにもこだわりたいという方も増えていると感じています」
飲食店などで使われる紙マットや油避けの紙など、いままで「機能だけが求められていた紙」に、新たに付加価値をつけたいといった印刷需要も増えているという。
「これから、『多少高価でも付加価値の高いモノを』と考える方がもっと増えてくると思います。そうしたお客さまの価値観にどれだけマッチした商品を創り出せるかが大事ですね。いま、多くの企業が『いかにコストをかけずに商品を売るか』ということを考えていますが、本当に価値を伝えたいとか、高級なものを売りたいというときには、Webやメールではなく紙の印刷を選ばれるお客さまが多いので、そのニーズに対してどんな提案ができるか。そこがデジタル印刷機の重要な使いどころにもなってくると思います」
本社工事に設置されたRevoria Press PC1120。付加価値創出の要となる新戦力だ
■機械の設計面でもサポート面でも、信頼性の高さを確信
同社では現在、Jet PressとPOD機3台を、オフセット印刷機とカラーマッチングを図った上で、仕事内容に応じて使い分けている。Jet Pressは、B2サイズ対応・高画質・バリアブルといった特徴を活かしてコロナ禍でも新たな需要の創出に活躍してきたが、井上社長は、これからの印刷需要を考える中で、より小回りが利き、かつ高い付加価値を生み出せるデジタル機が必要だと感じていたという。
「ちょうど、PODの主力機であったColor 1000 Pressが入れ替えの時期を迎えていたこともあり、他社機も含めて新たな機種の検討を進めていました」
付加価値提供の観点から、シルバーやゴールドなどの特殊色の使用を前提として選定することに。複数のメーカーからプレゼンを受け、実機デモも確認し、さまざまな角度から検討した。
「最終的にRevoria Press PC1120に決めた理由は、機械と人への信頼ですね。まず機械の信頼性については、これまでいろいろなメーカーのPOD機を見てきているので、蓋を開けて内部構造を見せていただくとだいたいわかるんです。その点、PC1120は、大事な部分をしっかりとつくり込んでいるというのが一目瞭然でした。開発担当の方のプレゼンも、非常に熱意がこもっていて、プリンターの延長ではなく生産機として考え抜いてつくられているということが、はっきりと伝わってきました」
もちろん、井上総合印刷にとって重要な戦力となる設備である以上、感覚的な判断だけでは決められない。
「出力品質については、私の独断ではなく、できるだけたくさんの目で検討しようと。最終的に候補に残った2社のメーカーさんに同じデータを同じ日に出力していただき、名前を伏せて印刷オペレーターやデザイナー、企画スタッフに見てもらって投票させたんです。結果、圧倒的にPC1120の方がいい! ということになりました。やはり、情熱を込めてつくられているだけの良さが、品質にも表れているのだと実感しましたね」
人への信頼という点では、従来機『Color 1000 Press』運用時からのサポート対応の安心感が大きかったという。
「Color 1000 Pressを10年近く使ってきたので、修理が必要になることもありましたが、富士フイルムのエンジニアの方は、こまめに状況を見に来てくださって、“転ばぬ先の杖”で大きなトラブルになる前にメンテナンスしてくださるんです。これはとても心強いですよね。機械の状態をつねに把握していただいているという安心感もあります。この信頼関係は、長く使っていく上で非常に重要だと思います」
■特殊トナーの活用で、クリエイティブの幅が大きく広がる
Revoria Press PC1120導入から約3カ月。立ち上がりはスムーズで、すでに期待どおりのメリットを実感しているという。
Revoria Press PC1120で出力したオリジナルラベル
「PC1120のインターフェイスはColor 1000 Pressと同様にわかりやすいもので、オペレーションに不安などはまったくなく、導入してすぐに本格稼働に入ることができました。つい先日は、地元の銀行様からのご相談で、あるパーティーの記念品のお酒をご用意したのですが、書道家・涼風花先生の書をPC1120でオリジナルラベルとして出力し、150本ほど作成しました。印刷品質も生産性も従来機より上がっているので、このような依頼にも難なく応えることができます」
トータルで数万部という大ロット・バリアブルのDMなども、安定して効率よく出力できているという。
「高品質のものが早く安定して生産できるというのは、当たり前のことではありますが、電気代が高騰し、働き方改革にも力を入れている現在の状況では、その重要性がいっそう増しています。1枚目から同じ色をキープでき、紙詰まりなどで機械が止まることもないので無駄な時間や労力を費やすことがない。ごく基本的な部分ですが、当社にとっては大きなメリットです」特殊トナーの本格活用については、取材時点ではまだ準備段階であったが、井上社長は幅広い用途展開に期待を寄せている。
「ちょうど明日、富士フイルムさんが特殊トナーの勉強会を開いてくださることになっているんです。デザイナーたちに、データの作成方法などをレクチャーしていただきます。運用はこれからですが、いろいろと構想は練っています。たとえば、コロナ禍以降、クーポン券などのニーズが増えているので、シルバーやクリアなどの高精細出力を活かして、偽造防止印刷をお客さまに提案できればと考えています。バリアブルソフトの『FormMagic』も併用すれば、ナンバリングやバリアブルQRコードなども入れられます。小回りが利いて特色もバリアブルも自在に活用できるマシンというのが、Revoria Press PC1120の立ち位置。これからイベントが増えてくる中でさまざまな面白い提案ができるのではと期待しています」
構想は平面的な印刷物にとどまらない。立体的なオブジェクトなども視野に入っている。
IGAS2022で展示されたライティングオブジェ
「umbel」、ミウラ折りをアートへと昇華させた
作品でもある。
「昨年、『IGAS2022』の富士フイルムブースで、Color 1000 Pressで製作したインテリアのサンプル(ライティングオブジェ「umbel」)を展示させていただきましたが、このような立体物にもどんどんチャレンジしていきたいですね。昨年のサンプルは4色でしたが、PC1120でシルバーやゴールドを使えば、デザイン性、付加価値をさらに高められると思います。印刷は平面というイメージが強いですが、立体で、インテリアという機能があって、デザイン性も高い、そんな新しい印刷物をつくっていきたいと思っています」
■新たな付加価値提案、そして地域の活性化にもつなげたい
井上社長が大きな期待を寄せる新戦力、Revoria Press PC1120は、社内の活性化にも貢献しているという。
「導入機種を決める段階から社員に参加してもらったこともあって、皆、愛着を持ってくれていると思います。また、デザイナーやオペレーターなどの専門職のスタッフが長く勤める上でも、PC1120の導入はいい刺激になり、効果的だと思っています。特殊色が4色もあって、いままでなかなか考えられなかったような表現ができる。発想の幅が広がるので、現場の士気も上がっていますね。これが、お客さまへのいい提案にもつながるのではないかと期待しています」
さらに、井上社長は、Revoria Press PC1120の導入効果を、社内だけにとどめず地域全体にも広げていきたい考えだ。