ニュースリリース
2023.07.20
◆富士フイルムグラフィックソリューションズ SUPERIA ZX導入事例――共立印刷株式会社 国内最大規模のオフ輪生産ラインで、期待どおりの品質性能・信頼性を発揮 完全無処理化により環境負荷・作業負荷が激減、より働きやすい環境に
オフセット輪転機を中心とした国内最大規模の印刷工場を持ち、数百万部単位の大ロットニーズにも卓越した機動力で応える共立印刷株式会社(本社:東京都板橋区清水町36-1、代表取締役社長:景山 豊氏)は、2020年から環境対応の一環としてCTPの無処理化を進め、2022年10月、輪転・枚葉ともに無処理プレートへの全面切り替えを果たした。どのような経緯で富士フイルムの無処理プレートを選択し、また、無処理化によってどんなメリットが得られているのか。取締役 製造統括・舩木敏勝氏、製造本部 副本部長 兼 工場管理部長・田中和美氏に伺った。
■クライアントの環境意識の高まりに応える
共立印刷は、1980年創業以来、着々と生産設備の拡充を図りながら、商業印刷・出版印刷を中心に手がける総合印刷会社。現在、東京の本社のほか、札幌・名古屋・大阪・高松に営業所を置き、生産拠点は埼玉県の本庄市・児玉郡に集約している。中でも、本庄第1・第2工場では、合わせて27台ものオフセット輪転機が24時間体制で稼働しており、1拠点としては国内最大級の生産能力を誇る。同じ敷地内には枚葉印刷の工場もあり(本庄第3工場)、小~中ロット、ニスコーティングや特色などのニーズに対応する。一方、本庄工場からほど近い児玉地区には、製本工場や物流倉庫を配置。刷版から印刷、製本加工、発送までが半径1km圏内で完結する、効率的な生産体制を確立している。
舩木取締役
2017年には、DM専門の拠点として新たに「情報出力センター」を開設。万全のセキュリティ環境に、富士フイルムの高速ロール紙インクジェットプリンター『11000 Inkjet Press』2台と各種後加工設備を備え、圧着ハガキタイプから封筒一体型まで、多種多様なDMの生産を担っている。
また、生産能力の追求だけでなく、社会的要請である環境負荷の低減にも注力。印刷工場においては、排出物の削減はもちろん、独自開発の省エネ設備の導入、太陽光パネルの設置、屋内照明のLED化などにより、エネルギー消費量の節減にも努めている。
今回、CTPの完全無処理化を図ったのも、「刷版工程の廃液をゼロにする」という環境対応に主眼を置いた決断だった。
「最近、お客さまの環境意識が明らかに高まってきたと感じています。社会全体でSDGsの動きが広まっていることとも関係していると思いますが、印刷物の製造工程に関しても、“どれだけ環境に配慮しているか”を気にされるお客さまが増えてきました。こうした環境対応ニーズに応えるためにも、CTPの無処理化は重要な課題と捉えていたのです」(舩木取締役)
品質や生産性を担保しながら、環境対策として何ができるか。そんな観点から、無処理プレートについて検討を進めてきた共立印刷。しかし、これまでは、「メリットよりもリスクの方が高い」と導入を見送ってきた。生産規模も大きいだけに、版材の切り替えには慎重な判断が求められる。満を持して導入に踏み切ったのは、2020年。枚葉UV機で、当時の最新無処理プレート『SUPERIA ZD-II』の運用を開始した。
田中副本部長
「UV印刷適性なども含めた検証の結果、プレート性能が実用レベルに達していると判断し、まずは枚葉機での採用を決めました」(田中副本部長)
導入にあたっては、オペレーターに対しきめ細かいレクチャーを行ない、現場全体で無処理化の意義やメリットの共有を図ったという。
「FFGSさんにもご協力いただきながら、無処理CTPの原理や特長などについて周知するとともに、すでに運用されている印刷会社さんを見学させていただく機会も設け、オペレーターに理解を深めてもらいました。やはりスムーズに切り替えを進めるには、実際に使用するオペレーターに納得感を持ってもらうことが何より大事ですからね」(田中副本部長)
同社は従来、他社の有処理プレートをメインで使用してきたが、無処理化にあたっては、富士フイルムのプレートを選択した。この理由について、田中副本部長はこう語る。
「オフ輪で重要になってくる耐刷性をはじめ、プレート性能をさまざまな角度から検証し、総合的に判断しました。そのほかにも、輪転機と枚葉機をお持ちの複数の会社さんにヒアリングさせていただき、その中で圧倒的に高く評価されていたのが富士フイルムさんのプレートでした。これが最大の決め手になりましたね」(田中副本部長)
■重労働がなくなり、女性も働きやすい作業環境に
シビアな目で検証を重ね、社内での目的意識の共有を図った上で運用を開始した無処理プレート。現場の感触はどうだったのだろうか。
「印刷現場ではやはり不安もあったようです。たとえば機上現像による印刷機への影響など、実運用を始めてみないとわからない部分もありましたから。しかし結果的には、懸念していたような悪影響などは見られず、問題なく運用できています」(田中副本部長)
「当初導入したZD-IIは、有処理プレートに比べると視認性が低いため、その点でも戸惑いの声はありましたね。ただ、当社の場合、もともと検版作業をプレート上での確認に依存していなかったため、印刷機への“掛け間違い”にさえ注意すれば、これまでの作業手順を大きく変える必要はありませんでした」(舩木取締役)
枚葉機で1年あまりZD-IIの運用実績を積み上げた後、輪転機についても、2021年8月から切り替えを開始。2022年10月までに工場全体で完全無処理化を果たした。現在は一部を除き最新の『SUPERIA ZX』に移行している。
無処理化のメリットについて舩木取締役は、「経営面でも、現場の作業面でも、明確に実感できている」と手応えを語る。経営的なメリットとして挙げられるのは、生産工程の環境負荷低減をさらに推し進められたことだ。
「刷版工程の薬品類・現像廃液を、削減レベルではなく完全に“ゼロ”にできたことは大きいですね。当社は処理量が非常に多いので、CSRの観点でも、コスト面から見ても、これは重要な成果だと思います」
対外的なアピールも積極的に行なっている。
「自社のWebサイトや会社案内への掲載はもちろん、カンパニープレゼンや、新規のお客さまを訪問する際などにも、環境対応の一環として無処理CTPのメリットをご紹介しています。最近はこうした取り組みに高い関心を示されるお客さまが多くなっていますね」(舩木取締役)
一方、刷版工程の現場については、「現像に関わる作業負荷が大幅に減り、労働環境の改善につながっている」と田中副本部長は強調する。
「やはり一番は、自現機の大がかりなメンテナンスから解放されたことでしょう。1回につき半日以上、機械を止めなければならず、生産性のロスにもなっていましたから、これがなくなったのはありがたいですね。現像廃液も、自分たちで汲み取り、台車で廃液タンクまで運搬していたので、その作業が不要になったのも大きなメリットです。こうした重労働がなくなったことで、女性にも働きやすい職場になりました。現在、刷版部門の人員は約半数が女性になっています。無処理化は、働き方改革という意味でも時代にマッチしており、有意義な取り組みだと感じています」
完全無処理化により、クリーンな作業環境が実現した刷版室。オペレーターは約半数が女性だ
■ZD-IIからZXへ移行し、安心感がさらに高まった
品質面の効果について尋ねると、田中副本部長は「現像液という変動要因がなくなったことで、網点再現の安定性が以前より高まった」と評価。さらに、こんな間接的な効果も出ているという。
「無処理プレートの場合、有処理に比べ、仕上がり品質が印刷機のコンディションに左右されやすい、という違いがあります。機械の状態が良くないと、機上現像が遅くなったり、網点再現性が悪化したりする。そのため、印刷オペレーターはいままで以上に印刷機のメンテナンスをきめ細かく行なうようになりました。結果、汚れなどのトラブルも起きにくくなり、品質の安定化につながっています」(田中副本部長)
これらの効果は、ZD-IIの段階から表れていたが、現在メインで使用しているZXについては、どう評価しているのだろうか。
「ZD-IIと比べて明らかに変わったのは、何と言っても視認性ですね。これまでもとくに不自由はありませんでしたが、やはり絵柄が鮮明に見えると安心感が違います。この点は、有処理プレートと遜色ないレベルになったと思います」(田中副本部長)
安心感をもたらしているのは、視認性だけにとどまらない。田中副本部長が続ける。
「これはZD-IIでも感じていたことですが、キズ汚れの発生は、以前使用していた他社の有処理プレートに比べて明らかに減りました。やはりオーバーコート層の効果が出ているのではないでしょうか。ZXに移行してから、プレートが原因として疑われる品質トラブルは、ほとんどなくなりましたね」
さらに、同社が重視しているポイントでもある耐刷性については、「期待通りの性能が発揮されている」と田中副本部長。
「紙の種類によって多少の変動はありますが、少なくとも、検証時に確認できた部数は問題なく安定して通せています。もちろん、トラブル防止のためギリギリまで通すことはせず、平均30万通し前後で版替えを行なうようにしています」
輪転機27台がフル稼働する本庄第1工場・第2工場。数百万部の大ロットジョブも圧倒的生産性でこなす
■無処理のメリットを活かし、さらなる自動化・省力化を目指す
現在、CTPは第1工場に3台(輪転機用)、第3工場に1台(枚葉機用)の計4台が設置され、オペレーションは第1工場で集中的に行なっている(第3工場へはリモート出力)。今後はこの体制を見直し、さらに効率化を進めていく考えだ。
「オフセット輪転機は第1工場と第2工場に分かれていますが、CTPは第1工場に集中配置しているため、現状、第2工場の輪転機で使用するプレートは、出力後に台車で運搬しています。また、印刷機ごとのプレートの仕分けも人手で行なっているので、時間と手間がかかり、ミスのリスクもある。そこで、CTPセッターを一部、第2工場に移設し、併せて刷版自動振り分け装置も導入することで、プレート出力後の作業効率を一気に高めようと考えています。無処理化によって自現機がなくなり、CTPセッターの設置場所の制約が少なくなったおかげで、自動化・省力化の取り組みが、より進めやすくなりました。このメリットを活かし、生産現場をさらに“働きやすい環境”へと進化させていきます」(舩木取締役)
いま、人材の確保や、そのための労働環境の改善は、環境対応と並び、多くの印刷会社にとって重要な経営課題となっており、共立印刷も例外ではない。同社において、2年がかりで進めてきたCTPの無処理化は、これらの課題に対する有効な解決策の一つとして、確かな成果をもたらしている。