ニュースリリース
2023.11.09
◆富士フイルムグラフィックソリューションズ Jet Press 750S導入事例――株式会社彩匠堂 圧倒的高画質と小ロット対応力を活かし、新たな市場開拓に挑む POD機に代わる主力生産機として活用、オフセットジョブの内製化も実現
大阪と東京を拠点に、デジタルプレスを駆使して多様な印刷需要に応える株式会社彩匠堂(本社:大阪市中央区道修町2-2-6、代表取締役:伊達則幸氏)は、2022年3月に富士フイルムのB2判インクジェットデジタルプレス『Jet Press 750S』を導入し、それまでPOD機(トナー機)に特化していた生産体制を一新。新規受注の獲得や、外注していたオフセットジョブの内製化といった成果を挙げている。導入の経緯や具体的なメリットなどについて、代表取締役・伊達則幸氏、取締役・龍田浩平氏に伺った。
■デジタル機に特化し、短納期対応を強みとして成長
彩匠堂は、もともと複写業に携わっていた伊達社長が2009年に独立し立ち上げた新進気鋭の印刷会社だ。2012年に生産拠点として「深江橋プリントセンター」(大阪市東成区)を開設して以降、POD機を中心に積極的な設備導入を進め、当時のメインクライアントであった学習塾の仕事をはじめとして、バリアブルを含む小ロット・短納期の印刷物を手がけながら着実に成長を遂げてきた。
現在でも社内の印刷設備はデジタル機に特化。比較的部数の多い仕事はオフセットで対応するが、その場合は近隣の協力会社に依頼する形をとっている。
伊達社長
一方、個人情報を扱うDMなども受注するためプライバシーマークを取得するなど、万全の情報管理体制を構築。さらに、富士フイルムの高機能バリアブルソフト『FormMagic』の導入により、大部数のバリアブルジョブも効率的かつ高精度に処理できるシステムを確立した。2016年には「富士ゼロックス カラーマネジメントプロフェッショナル認定」(現在のFUJIFILM Business Innovation Color Management認定)を取得。高い品質を担保しながら超短納期要求にも応える体制を整えた。この生産基盤は現在に至るまで同社の大きな強みとなっている。
また2019年には、大阪市鶴見区に「鶴見フルフィルメントセンター」を開設。POD出力だけでなく、封入、アセンブリ、梱包・発送も含めた一貫対応が可能になった。
「PODを中心に据えてビジネスを展開していく中で、流通加工についてのご要望も多くいただいたことから、その工程を内製化することにしました。印刷から発送までの一貫サービスはもちろん、特定の工程のみの個別対応も可能で、たとえば検品のみの依頼などもあります。印刷とセットでなくてもお客さまの課題に応じて柔軟に対応しています」(伊達社長)
このようにクライアントの最新のニーズに応じて自社で持つ設備や工程を吟味し、協力会社とも密な連携を図りながら仕事の幅を広げてきた彩匠堂。「高品質・短納期・適正価格での提供」を徹底し、幅広い業種のクライアントから厚い信頼を得ている。
■導入の決め手は品質と信頼性の高さ
そんな同社が『Jet Press 750S』を導入したのは、2022年3月のこと。設立以来PODによるビジネスを主軸としてきた同社がJet Pressに着目したのは、どんな理由からなのか。伊達社長はこう説明する。
「これまでは、サイズ的にも品質的にもPOD機で対応できる仕事がメインでしたが、お客さまとの関係性が深まってくる中で、より高品質なものを望まれる声も増えてきたのです。ただ、当社にとって、いまからオフセット印刷機を導入するというのは現実的ではないため、デジタル機で我々の要件を満たすシステムを検討した結果、辿り着いたのがJet Press 750Sでした」
龍田取締役
龍田取締役もJet Pressに可能性を感じていた一人だ。
「私自身、実は720Sの時代からJet Pressに注目していたのですが、750Sへと進化して品質や生産性がさらに上がり、実用性が一段と増したと感じていました。一方で、当社の事業環境もコロナ禍による受注内容の変化、お客さまの品質要求の高まりといった要因から、POD特化型の設備を見直し次のステップへ進む必要性を感じる状況になってきました。具体的には、これまでの品質面の課題を解決しながら、より大きなサイズに対応することで仕事の幅を広げていこうと。そのための新たな戦力として最も適していると確信したのがJet Press 750Sでした」
導入の決め手になったのは、印刷品質とサポート面を含む信頼性の高さだったという。品質に関しては「POD機のトナー特有のテカリを解消したい」という思いから、オフセット印刷に近い、より自然な仕上がりを重視。また信頼性については、伊達社長はこう語る。
「Jet Pressは国内外で10年以上の実績がありますし、富士フイルムさんとのこれまでのお付き合いで、アフターサポートの対応も素晴らしいと感じていました。今後の当社の主力生産機として導入することを考えると、こうしたハード・ソフト両面の安心感は非常に重要な要素でした」
深江橋プリントセンターに設置されたJet Press 750s 主に500通し以下のジョブで活用している
■小ロット・高品質ニーズへの対応が可能に
Jet Press 750S導入にあたっては、それまで4台保有していたPOD機のうち3台を搬出し、「Jet Press 750S+POD機1台」という思い切った生産体制へとシフトした。
Jet Press 750Sは、さまざまな方式のデジタルプレスの中ではオフセット機に近い機構を持つことから、龍田取締役は「オペレーションの面でPOD機と勝手の違う部分が多く、当初は戸惑いもあった」と語るが、この点は実運用の中で克服し、現在では問題なく活用できているという。
同社がまずJet Press 750S活用のターゲットとしたのは、外注していたオフセット印刷のジョブだ。従来、売上の50%以上を占めていたオフセット印刷の仕事(外注)のうち、比較的ロットの小さいものをJet Pressに切り替え、内製化を進めた。
「たとえば高級分譲マンションのパンフレットなどは小ロット化が顕著で、デジタル印刷向きのものが多くなってきていますが、品質はかなり高いレベルが求められるため、従来のPOD機では難しかったのです。しかしJet Pressなら品質面もまったく問題ないので、色校正も含めて内製化することができました」(伊達社長)
こうした「部数は抑えたいが品質は落としたくない」というニーズへの対応が可能になったことは、大きな営業メリットの一つだ。クライアントによっては、オフセットからJet Pressに切り替えたことで色味への評価がさらに高まり、リピート受注につながるケースもあるという。
■アーティストの作品集など、新たな市場へアプローチ
一方で同社は、Jet Pressの高い色再現性などを活かし、新たな領域へのアプローチも進めている。その一つがアート系の印刷物だ。いま売り出し中の若手アーティストの作品集や図録、ポスターなどを手がけている。
「印刷通販を利用されるアーティストさんもいますが、紙の選択肢が少なかったり、サイズが限られたりといった制約が多いため、なかなかイメージ通りのものがつくれないという声も聞きます。そういう方にJet Pressは非常にフィットしやすいですね。POD機に比べて特殊紙への適応力もありますし、色味についても、アーティストさんの意向をより忠実に反映することができます」(伊達社長)
Jet Press 750Sで制作した印刷物は、同社のコーポレートサイトやSNSで事例として紹介しており、アーティストのプロモーション、彩匠堂自身のブランディングの両面で効果を挙げている。
Jet Press 750Sの品質の高さについては、龍田取締役も「仕事の幅を広げる上で大きなメリットになる」と評価する。
「オフセットに比べて色域が広く、RGBデータの鮮やかな色を再現することもできます。富士フイルムさんの『オフセット印刷を凌駕する圧倒的な高画質』という謳い文句に嘘偽りはないですね。後加工適性も高く、折り加工によるインクの割れなどもありません。Jet Press 750Sによって、いままでオフセットの独壇場だった領域にデジタルで入っていくことが可能になりました」
ただ同社は基本的に、敢えて「Jet Pressを活かせる仕事」を狙う営業はせず、受注した仕事の内容に応じてJet Press 750Sを活用するというスタンスをとっている。
「あくまでお客さまの課題を最適な方法で解決するというのが私どものミッションであり、そのための新たな手段として、今回Jet Press 750Sが加わった形です。しかしそのおかげで、社内での対応力が格段に高まったことは間違いありません」(伊達社長)
■市場の変化を見据え、B2デジタルをメインに
創業以来、小回りのきく「A3サイズのPOD機」を駆使し、抜群の瞬発力を強みとしてビジネスを展開してきた彩匠堂だが、今後は主戦場をB2(菊半裁)以上の領域に移していく計画だという。
「A3のPOD市場は競合が多く、すでに値崩れが始まっている状況。デジタル印刷のノウハウを持っていても価格競争に巻き込まれかねません。一方で、オフセット印刷からデジタル印刷への移行がさらに加速することは世界の動向を見ても明らかで、実際に受注する仕事内容も小ロット・多品種・短納期の方向にシフトしています。そう考えると、B2あるいはB1サイズのデジタル機に軸足を移していくべきだろうと。Jet Press 750Sの導入はその第一歩と捉えています」(伊達社長)
デジタル機で事業を展開していく姿勢に変わりはないが、デバイスの種類については、インクジェットに絞ることはしない。つねにアンテナを張り、技術の進化と市場の変化を見極めながら、最良と判断したものを柔軟に採り入れていく考えだ。伊達社長は最後に富士フイルムへの期待を込めてこう結んだ。
「どんなデバイスでも生産機として使う以上、いかに安心して安定的に運用できるかが重要です。その点、富士フイルムさんのシステム自体の信頼性はもちろん、アフターサポートの丁寧さ、的確さも大きな魅力だと感じています。今後も良きパートナーとして、実践的なシステム提案、情報提供などを通じて、当社のビジネスを支えていただければと思います」