ニュースリリース
2023.12.14
◆富士フイルムグラフィックソリューションズ Revoria Press PC1120導入・生産工程最適化事例 ――とうざわ印刷工芸株式会社 小ロットジョブのデジタル移行により、作業時間や予備紙のムダを削減
富山を拠点に、地域に根差した印刷ビジネスを展開するとうざわ印刷工芸株式会社(本社:富山県富山市婦中町広田5210、代表取締役社長:東澤善樹氏)は、2023年6月に新たな生産機として富士フイルムのカラープロダクションプリンター『Revoria Press PC1120』(以下、PC1120)を導入し、小ロットジョブのオフセットからデジタルへの移行など、生産体制の最適化を図るとともに、新たな成長戦略の一環として、PC1120を活用したオリジナル商品の開発も進めている。こうした取り組みの背景や、現時点での成果などについて、東澤社長に伺った。
■コロナ禍を機に小ロット化が加速
とうざわ印刷工芸は、1947年に富山市で創業し、今年で77年を迎える総合印刷会社。富山県内の官公庁、製造業、新聞社・出版社、広告代理店など、幅広い業種・業界のクライアントを持ち、ポスターやチラシ、カタログなどの商業印刷物をメインに手がけている。企画・デザインから印刷・加工までの一貫体制を活かし、短納期の要望にも柔軟に対応。写真などの色を美しく再現する技術力にも定評がある。また、社内に専属のカメラマンが在籍しており、観光ポスターやイベント関連のパンフレットなどでは写真撮影から印刷物制作まですべて内製できることも強みの一つだ。
東澤社長
一方、コロナ禍に入ってからは、印刷物とARや電子ブックなどを組み合わせた新たな付加価値創出にも取り組んでいる。
「たとえば、立山連峰の写真を使ったオリジナル年間カレンダーに、ARで山の名前を表示できる仕掛けを組み込んだり、地元の新聞社様と一緒に、デジタルスタンプラリーの企画に携わらせていただいたりと、印刷物を起点にデジタルツールも活用しながら、新しいニーズの掘り起こしに挑戦しています」(東澤社長)
2020年6月には、オンラインショップ『とうざわ商店』を開設し、カレンダーやファインアートプリントなどのオリジナル商品の販売も開始。着々とそのラインアップを拡充し、全国にファンを増やしている。
また、印刷物の受注状況も、コロナ禍を機に変化しているという。
「観光やイベントに関連する印刷物の受注は、一時激減しました。最近は徐々に戻ってきていますが、全体的な傾向として、コロナ前に比べてロットが小さくなっています。以前は一度に5,000部刷っていたものでも、『とりあえず1,000部だけ印刷し、足りなくなったら追加』というケースが多くなりましたね」(東澤社長)
■ジョブ分析によりオフセット機の生産効率を見える化
同社では、多品種・小ロット対応の一環として、2007年からトナータイプのデジタル印刷機を運用してきたが、生産の主力はその後もオフセット印刷機が担っていた。コロナ禍以降、小ロット化に拍車がかかり、“デジタル印刷向きのジョブ”が急増したが、デジタル機への移行は思うように進められなかったという。
「従来使用していたデジタル機は、品質や用紙適性などの面で制約があり、あまり汎用的に活用できるものではなかったため、小ロットのジョブでもオフセット機で対応せざるを得ないケースが、少なからずあったのです」(東澤社長)
オフセット機での小ロット対応は、頻繁なジョブ切り替えによるオペレーターの作業負荷増大、生産効率の悪化につながっていたため、この状況をいかに改善するかが、同社にとって大きな課題だった。さらに東澤社長はこう続ける。
「もう一つ課題になっていたのは、人材の採用です。とくに印刷オペレーターは、募集をかけても人が集まらず、なかなか新規採用ができずにいました。人材確保のためには、印刷オペレーターの仕事を“誇りの持てる仕事”にしなければならない。それにはまず、準備や片付けなどの作業に追われている状況を変えなければいけないと感じていました」
小ロット対応の強化、そして作業環境改善の要となる、新たな生産機の必要性を痛感していた東澤社長。導入の検討にあたっては、まず現状把握からスタートした。
「コロナ禍の影響で受注状況も厳しい中での設備投資ですから、確実に効果が出るものを選びたい。それには、現状の生産効率などを正確に把握した上で、導入効果を検証することが必要だと考え、FFGSさんにジョブ分析を実施していただきました」(東澤社長)
同社が保有する3台のオフセット印刷機について、2022年3月度の実績をもとに、ジョブ数、通し枚数、作業時間などを分析。その結果、3,000通し以下のジョブが全体の約80%を占めていることがわかり、小ロット化の傾向が明らかに。また、印刷前準備などの付帯作業時間を見ると、1ジョブにつき30~60分ほどかかる傾向にあり、総作業時間に占める付帯作業時間の割合が大きいことも判明。オフセット機の実質的な生産時間の割合を示す「可(べき)動率」は20%前後にとどまっていた。
「前準備や片付けに費やしている時間が思っていた以上に多く、驚きました。当社の場合、さまざまな仕様のジョブが混在しており、しかも大部数のものが少ないという事情もあると思います。逆に言えば、デジタル機の強みが発揮されやすい環境だということ。実際に、オフセット機が苦手とするジョブをデジタル機に振り分けることによって可働率が大きく改善するというシミュレーション結果も見せていただきました」(東澤社長)
2023年6月に導入されたRevoria Press PC1120。生産機として高い品質と瞬発
力を発揮するとともに、アイデアを即座にカタチにする“Create On Demand”
も可能にしている。
■付帯作業時間や予備紙などに明確な削減効果
「オフセットジョブのデジタル機への移行」を視野に入れ、導入機種を検討。その結果、品質と生産性、信頼性を高いレベルで兼ね備えたRevoria Press PC1120に決定した。その理由について東澤社長はこう語る。
「デジタルの主力生産機として使うことを考え、出力品質はとくに重視しました。オフセットと遜色のない仕上がりが、多種多様な仕事で安定的に得られるかどうか。その点、PC1120は理想的でしたね。ショールームでテスト印刷をさせていただき、その仕上がりを見て『これしかない』と確信しました」
実際の導入は2023年6月。まだ半年弱の運用だが、すでにその効果はさまざまな面で表れているという。
「現場では、品質や安定性などの面で、大きなメリットを感じているようです。どんな絵柄でもオフセット並みの色再現が得られますし、両面出力の際も、表裏見当の精度・安定性が高いので、途中で機械を止めて確認することなく最後まで流せる。この安心感は、オペレーターのストレス軽減に大きく貢献しています」(東澤社長)
このメリットは、生産性にも直結する。「導入してすぐに、ある急ぎの仕事でそれを実感した」と東澤社長。
「内容的にはオフセットでも対応できるジョブでしたが、乾燥待ちの時間を加味すると最短でも翌日納品になってしまうため、思い切ってPC1120で出すことにしたのです。すると、朝からスタートしてお昼ごろには断裁まで完了し、これまでにない早さで納品できました。お客さまも『もうできたの!?』と驚かれていましたね」
こうした実績を重ねながら、オフセットからPC1120への切り替えも徐々に進めている。同社では導入当初からPC1120とオフセット機とのカラーマッチングを図っており、ジョブの内容に合わせて両者を柔軟に使い分けることが可能だ。
「現状、デジタル/オフセットのどちらで印刷するかは、営業の判断で決めるケースが多いのですが、PC1120導入前に比べ、デジタルの比率は明らかに上がっています」(東澤社長)
小ロットジョブのデジタル移行が進んだことで、ムダな時間やコストも低減。課題であった印刷部門全体の生産効率も向上しているという。
「ジョブ分析で見せていただいた準備時間や片付け時間、予備紙などのデータは、現在も定期的に集計しており、直近のデータでは、先期に比べ作業時間も予備紙も明確に削減できています。効果が数字で見えるので現場のモチベーションも上がっていますし、『ここはこう改善したらいいのではないか』という自発的な改善提案も生まれるようになってきました」(東澤社長)
特殊トナー、長尺出力、幅広い用紙適性といったPevoria Press PC1100の特長をフルに生
かし、さまざまなサンプルを制作。また、同社の会社案内は富山県各地の風景を紹介す
る写真集にもなっており(右写真)、PC1120の色再現の美しさ、描画の精細さが発揮され
ている。
■運用ポリシーの確立で、さらなる効率化を目指す
オフセットを含めた印刷工程の効率化が図れ、超短納期ジョブへのスピード対応も可能になるなど、着々と生産改革が進んでいる同社だが、PC1120導入によるもう一つの効果として、東澤社長は、「新商品開発への意欲の高まり」を挙げる。
「実は数年前から、社内で『オリジナルの商品を創り出そう』という機運が高まっており、今回のPC1120の導入によって、その動きが一気に加速したと感じています。現在はPC1120のテストを兼ねてサンプル制作を進めている段階なのですが、担当オペレーターはもともとモノづくりが好きなこともあり、楽しみながら自主的に取り組んでいます。メタリックカラー、長尺、さらにはカッティングプロッターも駆使して立体物なども制作しており、私が現場に足を運ぶたびに、どんどん新しいアイテムが増えています(笑)」(東澤社長)
PC1120の基本性能の高さはもちろん、特殊トナーによる表現力や幅広い用紙適性といった特徴も、新たな価値を生み出す力としてフルに活用しているのだ。
同社は今後、このPC1120を加えた生産体制にさらに磨きをかけ、効率化と付加価値創出の両面で変革を推し進めていく考えだ。
「差し当たっての課題は、デジタル機とオフセット機の使い分け基準(運用ポリシー)を確立することです。その基準に従って工務担当がジョブの振り分けを行なえるようになれば、生産工程全体の効率がさらに上がると思います。また、PC1120を活かした商品企画・開発においては、オペレーターだけでなく制作部門のメンバーにも、メタリックカラーやホワイト、クリア、長尺などの活用に慣れてもらい、皆でアイデアを出せるようになると、より独創的な商品づくりができるのではないかと思います。ゆくゆくは、それをお客さまへの提案にも活かしていきたいですね」(東澤社長)
ムダのない効率的な生産環境。そして、社員が誇りをもって働き、価値ある製品を生み出せる会社。東澤社長が目指す同社の将来像は、いま着実に実現しつつある。