ニュースリリース

2024.08.21

◆富士フイルムグラフィックソリューションズ   Revoria Press PC1120導入事例――共同印刷工業株式会社 安定性の高さと特殊トナーによる表現力が導入の決め手に 書籍のデザインから販促ツール制作まで、出版社の多様なニーズに応える

    京都を拠点に出版印刷を手がける共同印刷工業株式会社(本社:京都市右京区西院清水町156-1、代表取締役社長:江戸孝典氏)は、20243月、富士フイルムのプロダクションカラープリンター『Revoria Press PC1120』(以下、PC1120)を導入し、書籍の小ロット対応の体制を強化すると同時に、従来外注していたカバー・表紙・帯といった「付き物」の内製化を進めている。さらに、販促ツール制作や美術印刷などの領域でも積極的に活用。特殊紙を使ったアイテムや、オフセット並みの高い品質が求められる仕事もこなしている。そんな中でPC1120はどのようなメリットを発揮しているのか。導入の背景や活用戦略なども含めて江戸社長に伺った。また今回、具体的な活用例として、フォトグラファー・竹村麻紀子氏(@takemura_photo)の写真集にフォーカスし、写真家目線で見た仕上がりの印象などについて、竹村氏に語っていただいた。

■カラーの内製化を進めるも、非効率なジョブが増加
 
共同印刷工業は、1948年に京都市上京区で活版書籍印刷業として創業。以来70年以上にわたり、書籍印刷を事業の主軸に据え、京都の出版業界とともに成長を続けてきた。同社が得意とするのは、学習参考書や専門書、学会誌といった、1色~2色刷りの文字ものだ。可読性を追求した美しい文字組版と、書籍用の薄紙への安定した印刷を実現するノウハウが、長年培ってきた大きな強みの一つになっている。
 

          江戸社長
 
2015年に江戸孝典氏が社長に就任してからは、それまで書籍本文の組版・印刷に特化していた業態を見直し、表紙やカバーなどのデザインから製本加工まで一貫対応できる環境を整備。近年高まっているという出版社の一括発注ニーズに応えている。

「これまで出版社さんは、用紙の手配、印刷、製本を、書籍のパーツごとにそれぞれ分割発注するケースがほとんどでしたが、最近はこうした発注業務を合理化する傾向にあるため、印刷会社は『原稿が入稿されたら本にして納める』というワンストップの対応が求められます。このようなニーズの変化に応えられるよう、人材や設備をそろえているところです」(江戸社長)

 現在、印刷設備としては、オフセット機4台(本社に菊全判4色機2台、四六全判2色機1台、子会社の(株)エーシーティーに菊全判4色機1台)に、新戦力であるPC1120を加えた体制。さらに、小ロット製本用に無線綴じ機・三方断裁機・ラミネーターも設備している。4色機を3台備えているのは、協力会社に外注していた表紙やカバーなどの内製化を進めるためだった。
 一方、出版物の部数減少という流れは、専門書の分野でも顕著に表れており、同社でも小ロットへの対応が必須となっている。その背景について、江戸社長はこう説明する。
「当社が手がける専門書の中には、大学の講義でテキストとして使用されるものも多いのですが、最近は講義の内容が細分化され、大人数で行なわれるものが減りつつあります。つまり、一つの講義で必要とされるテキストの部数が減少しているのです。また、コロナ禍以降、教授がオンライン授業を前提にレジュメを用意するケースが増え、学生が参考書などを購入する機会が少なくなっていることも、一つの要因として挙げられます」内製化を推し進める中で、小ロット化も進行。その結果、同社では非効率なジョブが増加し、大きな課題となっていた。

■薄紙1,000枚連続出力で安定性を見極める

 小ロットジョブが増え続ける中で、品質を担保しながらいかに生産効率を高めるか。そんな観点から、同社は新たな生産機としてデジタル印刷機の導入を検討。その際、最も重視したのは、作業効率を左右する「安定性」だと江戸社長は語る。

「単に出力スピードが速いだけでなく、品質や表裏見当が安定していること。これによって、無駄な工数が削減でき、出力中にオペレーターが他の作業を並行して行なうことも可能になります。生産効率を追求する上では非常に重要なポイントでした」

 安定性の高さを見極めるため、FFGSのショールームで連続出力の検証を行なったという。

「書籍でよく使用する薄紙を、カラー両面で1,000枚以上通していただきました。機械にとってかなりシビアな条件だと思いますが、出力中にシワが入ったり、色や見当がズレたりといったトラブルはなく、予想以上に安定していたので驚きました。表面に凹凸のある用紙もテストしましたが、いずれも問題なく出力でき、非常に好印象でしたね」(江戸社長)

 もう一つ、導入の決め手になったのは、「特殊トナーによる表現力」だ。江戸社長はここに大きな可能性を感じたと語る。

「小ロットの仕事を効率よくこなすことも重要ですが、それはあくまでも社内の課題。それだけでなく、いままでにないデザイン表現などを生み出し、提案の幅を広げることで、お客さまに新しいメリットを提供できるようになると考えたのです」

     色再現や表裏見当の安定性、特殊トナーによる表現力は、さまざまな仕事で活かされている。今後はオフ
       セット機とのカラーマッチングを突き詰め、印刷設備運用の柔軟性を高めていく。

特殊紙・特色を使用したジョブにも強みを発揮

 まだ導入からわずか数カ月だが、PC1120のメリットはすでにさまざまな面で発揮されている。まず安定性については、「導入前の検証でも確かめられた通り、薄紙をかなりの枚数通しても、色味や表裏見当の変動がなく、安心感がある」と江戸社長。

「比較的ボリュームのある仕事で、出力時間が長いときには、オペレーターは他の作業を並行して行なっており、つねに張り付いている必要がありません。狙い通り、効率的な運用ができています」

 また、制作部門においては、仕上がりのシミュレーションを即座に行なえる点が好評だという。

「たとえば、ファンシーペーパーなどの風合いのある紙にデザインを乗せたときに、どんな仕上がりになるのか、やはり実際に出してみないとわからない。その点、PC1120では手軽にテスト出力して確認することができるので、デザイン的なトライアルがやりやすくなったと思います。また、PC1120で印刷するジョブに関しては“高精度な本機校正を短納期で出せる”ということでもあるので、お客さまのメリットにもつながります」(江戸社長)

 特殊トナーの活用も積極的に提案し、着々と実績を重ねている。
「ある書籍の仕事で、表紙にシルバートナーを使用したところ、『オフセットで刷るよりも銀色が鮮明に見え、期待以上の仕上がりになった』と、出版社さんだけでなく装丁家の方からも喜んでいただけました」(江戸社長)
 書籍以外では、小ロットの食品ラベルにゴールドトナーを効果的に使用して高い評価を得たケースもあり、「部数は少ないがデザイン性を重視したい」というニーズにマッチしているようだ。
 さらには、PET素材やタック紙を使用した仕事にもチャレンジ。PC1120の優れた用紙適性と、静電気除去装置による除電効果が活かされ、いずれも「問題なく出力し、納品できている」という。

■フォトグラファー・竹村麻紀子氏からも高い評価

 PC1120の品質性能の高さが活かされた仕事の一つに、フォトグラファー・竹村麻紀子氏の写真集がある。雑誌・アパレル・広告撮影などで活躍する竹村氏が20年にわたり撮り溜めた作品を1冊にまとめたものだ。同じ京都の印刷会社、(有)修美社経由で受注した。

 部数は200部。用紙は、「写真によって質感を変えたい」という竹村氏の意向から、表裏で風合いの異なるエスプリコート紙を採用した。PC1120による本紙校正を見た第一印象を、竹村氏はこう語る。
 

  竹村氏 web : http://takemura-photo.com
instagramtakemura_photo


「色味といい、滑らかさといい、思った以上の仕上がりでしたね。実は当初、もし納得のいく色が出なければオフセットにした方がいいのかなという迷いもあったのですが、校正を見た瞬間、『このクオリティで出せるのであればぜひPC1120で!』と即決しました」
 品質面で竹村氏がとくに重視したのは、自身が大切にしている「青み」と「光」の再現だった。

「青は、今回の写真集のテーマでもあり、印刷でなかなか上手く表現できないこともある難しい色なのですが、PC1120の出力では、空気感や透明感を損なわず、きれいに再現できていましたし、自然の光が織りなす微妙なグラデーションも滑らかに表現できていたので、校正の段階で非常にいい印象を持ちました」(竹村氏)

 本番出力では、竹村氏の希望で現場に立ち会うことに。

「共同印刷工業さんからは『オンデマンド印刷で立ち会われる方は珍しいですよ』と言われたのですが(笑)、個人で初めて出す写真集ということもあり、できるだけ工程を自分で見届けたいと思いまして。PC1120のスピードの速さにも驚きましたが、色味についても、修正をお願いした箇所も含めてイメージ通りに再現されていて、文句なしの仕上がりでした」(竹村氏)

 この写真集の印刷を手がけ、竹村氏から高い評価を得られたことは、共同印刷工業の社内にも良い効果をもたらしているようだ。江戸社長は手応えをこう語る。

「竹村さんご本人に立ち会いに来ていただき、その場ですごく喜んでいただけたので、オペレーターも嬉しかったと思いますし、写真のプロの方からご評価をいただけたことで、PC1120の品質レベルの高さを、社内であらためて共有することができました。今後、こうした小ロットの美術印刷の分野にも仕事の幅を広げていけるのではないかと考えています」

  
      
       竹村麻紀子氏の写真集『aoi』。
        タイトルには、青みのある写真の「碧」、写真家として一歩踏み出す若者の「青」、
        若々しい草木の成長の「蒼」という意味が込められている。

     「写真を生活の中に取り入れてほしい」という想いから、“飾れる本”をコンセプトとし、
      針金などで綴じない「スクラム製本」を採用。好きなページを抜き取り、額などに入れ
      て飾ることができる。折り込んで作られた表紙は、開くとポスターになる。「写真集と
      して、インテリアとして、気軽に自由に生活の中に取り入れていただきたい」と竹村氏。

■本づくりから販促までのトータルサポートを目指す
 生産効率の面でも、小ロット対応力や付加価値提案などの面でも、PC1120導入の効果は確実に表れているが、江戸社長は、「やるべきことはまだたくさんある」と、さらなる変革を目指す。
「たとえば、現状、デジタル印刷用の面付けはPC1120のオペレーターが行なっていますが、これをDTP側でできるようにすれば、生産性はさらに上がるはず。PC1120でどんなことができるかをデザイナーがもっと知れば、デザインの幅も大きく広がるでしょう。また、いまオフセットで印刷している仕事をPC1120に切り替えることで、お客さまに本機校正を短納期で出せるようになる。制作や営業も含め、社内のいろいろな部分を変えていくことで、PC1120のメリットはより大きくなると思います」
 設備だけでなく、作業手順や社員の意識も変え、会社としての提案力・対応力をいっそう強化することで、クライアントのニーズにきめ細かく応えていく考えだ。仕事の幅も、専門書で培ったノウハウを活かしながら少しずつ広げていく。しかし、創業以来貫いてきた「出版とともに生きていく」というスタンスは変わらない。
「今後は、本をつくって終わりではなく、出版社さんのプロモーションに関してもいろいろな形でサポートしたいと考えています。たとえば、最近は書店に設置するPOPなどの販促ツールの依頼をいただくことが増えており、PC1120活用の場の一つになっています。今後、印刷会社としてできることをさらに増やし、『読んでみたい』と思ってもらえる本づくりはもちろん、書店に足を運んでもらうきっかけづくりなどもお手伝いできればと考えています」(江戸社長)


 

 

 



 

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