ニュースリリース
2025年07月
2025.07.09
◆富士フイルムグラフィックソリューションズ Revoria Press PC1120導入事例――門那シーリング印刷株式会社 除電機能により作業効率が大幅に向上し、こなせるジョブの量が約3倍に 優れた品質・用紙対応力を活かし、シールのみならずパッケー
大阪を拠点に多種多様なシール・ラベルの製造を手がける門那シーリング印刷株式会社(本社:大阪市西淀川区大野3-7-18/代表取締役社長:門那宏徳氏)は、2023年9月に富士フイルムのプロダクションプリンター『Revoria Press PC1120』(以下、PC1120)を導入し、除電機能を活用して生産効率アップを図るとともに、優れた用紙対応力・色再現性を活かしてパッケージなどの新規ジョブの獲得にも取り組んでいる。導入の経緯や具体的なメリットなどについて、代表取締役社長・門那宏徳氏、常務取締役兼製造部工場長・山﨑渉氏、製造部・髙山潤也氏に伺った。
■社内一貫生産によるスピード対応で厚い信頼を獲得
門那シーリング印刷は、1976年、門那宏徳社長の父、門那進氏が奈良県で「門那シーリング印刷所」として創業したのが始まり。79年に大阪市へと拠点を移し、82年に法人化。以来、設備を拡充しながら堅調に成長を続けてきた。現在手がける製品としては、食品パッケージなどに貼付する商品表示シールから、販促用POPシール、キャラクターシール、案内表示ステッカー、フロアマットまで多岐にわたり、使用するメディアも上質紙からフィルム系までさまざま。生産設備も、間欠凸版輪転印刷機、枚葉オフセット印刷機、デジタル印刷機(トナー機)、各種加工機を揃え、デザインから印刷、加工、梱包、発送までを社内で完結する一気通貫体制を確立している。今年3月には、本社を現住所に移転するとともに、それまで3カ所に分かれていた工場を1拠点に集約し、生産環境のさらなる効率化を図った。
左から門那社長、山崎常務、高山氏
「私どもの強みは、製造から梱包・発送までの全工程を短納期で完結できるよう、人や設備の体制を整えているところだと考えています。アイテムによっては、人手による封入作業などを行なうこともありますが、これらもすべて社内でこなすことができ、スピード対応が可能です。こうした点をご評価いただいて多くのお客さまからお仕事をいただけていると思っています」(門那社長)
デジタル印刷への取り組みも、業界に先駆けて積極的に進めてきた。近年は他の印刷物と同様、シール・ラベル分野でも小ロット・短納期のニーズが確実に高まってきているが、同社では、そんな市場の流れに先んじて、かなり早い時期からデジタル印刷機を活用している。
「2008年にモノクロ機を入れ、大手家電メーカーさんの仕事などで活用し始めたのが最初です。その後カラー機に入れ替え、徐々に活用の幅を広げていきました」(門那社長)
一方で、ここ数年は、品質に対する要求も厳しくなる傾向にあるという。
「最近、アニメキャラクターなどを使った小ロットのステッカーの受注が急激に増えてきました。コレクションアイテムとしてシリーズで販売するものや、イベント会場で来場者に配布するものなど、用途はさまざまですが、キャラクターものは色再現などにかなりシビアですから、生産効率も追求しながら、いかに高い品質を提供できるかが重要になっています」(門那社長)
静電気除去装置を装備したPC1120。出力後の作業負荷が激減し、生産効率が
大幅に高まった
■圧倒的な除電効果の高さが導入の決め手に
こうした背景から、「小ロット・短納期・高品質」の要望に応えられる新たな生産機を検討していた同社。当初は、ロールタイプのデジタル印刷機を検討していたという。そこからどのような流れでPC1120の導入に至ったのだろうか。
「シール印刷はロールメディアを使う仕事が多いので、実はPC1120を導入する直前まで、ロールタイプの機種を考えていました。ところが、ある大手のお客さまから、枚葉で月間10万ショット単位の受注をいただき、既存のPOD機ではこなしきれない状況になったため、急遽、枚葉タイプの導入が必要になったのです。そこで、タック紙などが安定して出力でき、スピードと品質に優れ、さまざまな付加価値がつけられるマシンはないだろうかと検討している中で、最有力候補に挙がったのが、以前FFGSさんのショールームで見せていただいたPC1120でした」(山﨑常務)
他メーカーの同クラスのデジタル機も比較検討したそうだが、最終的にPC1120を選んだ理由について、山﨑常務はこう説明する。
「決め手になったのは、静電気除去装置です。当社ではタック紙だけでなくアルミ蒸着のフィルムなども通すことが多いのですが、いままでは帯電の影響で紙詰まりが起きたり、出力されたフィルム同士が貼りついたりして、かなりの手間がかかっていたのです。それだけに、PC1120の除電機能は大きな魅力でした。実際にデモを見せていただきましたが、同様の機能を持った他メーカーの機種と比べても、効果の高さは圧倒的でしたね」
現場の課題となっていた静電気トラブルを解消できそうであること、そして、品質や生産性、用紙対応力などにおいても同社の要件を充分に満たせるとの判断から、PC1120の導入を決定した。
さらに、導入にあたっては、生産効率を最大限に高めるため、FFGSからの提案でジョブ分析を実施。受注している仕事の内容や現場での作業時間などをあらためて把握し、改善点を見える化した。
「オフセット機とPC1120へのジョブの振り分けを最適化するために、まず現在の状況を詳しく調べてみませんか? というご提案をFFGSさんからいただきまして。それは私もしっかり知っておきたいところだったので、お願いすることにしました。オペレーターがどんな作業をどれぐらいの時間でこなしているか、といった記録を約2カ月分提出して、分析していただいたんです。その報告書を見ると、オフセット印刷のどんなところで生産性が落ちているのか、どの作業でオペレーターによる時間のバラツキが大きくなっているのか、どのジョブをオフセットからデジタルに切り替えると効率が上がるのか、といったことがわかりやすくまとめられていて、非常に勉強になりました」(山﨑常務)
■静電気で貼りついたシートを剥がす労力が激減
生産現場のさらなる効率アップを期して、2023年9月にPC1120を導入。その活用効果について尋ねると、山﨑常務は「除電機能で作業が効率化できたことが大きい」と評価し、具体的な作業の変化についてこう語った。
「たとえば、毎年やらせていただいているゴミ処理券のシール。以前はまず凸版輪転機で台紙を印刷してからデジタル印刷機でナンバリングするという工程でした。ロットが1万~2万枚になるのですが、断裁前に静電気で貼りついたシートを1枚ずつ手で剥がして100枚の束にするのに、1束30分~1時間、さらに断裁後の丁合作業でもまた剥がす作業が必要になり、本当に大変でした。しかも納期が短く、社員総出で取り掛かっても残業しないと間に合わないこともあったのですが、PC1120導入後は、その労力が一気に3分の1ぐらいまで減りました。出力した後は、オペレーターがトントンと軽く揃えるだけですぐに断裁に回すことができます。10年以上ずっと苦労していた作業が、こんなに簡単にできるのかと感動しましたね」
PC1120のオペレーションに携わる髙山氏も、除電効果の大きさを実感している。
「いままで、帯電しやすいメディアでは加工にも制約があったのですが、PC1120の除電機能のおかげでそれがかなり解消されました。とくにフィルム系の素材を使う仕事の効率が大幅に上がり、毎分120枚というPC1120の出力スピードとも相まって、体感的には生産効率が3倍ぐらいは上がっていますね。実際、一日にこなせるジョブ数も劇的に増えており、いままで10件ほどしかできなかったのが20~30件こなせるようになっています」
一方、用紙対応力についても「期待以上に優れている」と山﨑常務。多用途に使えるだけでなく、トラブルの削減にもつながっているという。
「これまでにいろいろな用紙を試していますが、ほとんど問題なく通すことができますね。最も頻繁に使用するのはタック紙です。タック紙は、原紙・糊・剥離紙という3層構造になっており、熱がかかりすぎるといろいろな影響が出てきます。他の出力機では、カールしたり糊が横からはみ出て紙詰まりの原因になったり、逆に温度を落とすと定着不良が出てきたりと、その調整が難しく、機械が途中で止まってしまうことも多かったのですが、PC1120は用紙に対するダメージが少なく、紙詰まりもほとんど起きないので安心して出力できます」(山﨑常務)
出力品質についても、同社の評価は高い。髙山氏は「色味がきれいで、しかも非常に安定している」と太鼓判を押す。
「以前使用していた機種では、100枚通すだけでも色が変動してしまうことがありましたが、PC1120はそうしたブレがありません。また、CMYKの4色はもちろん、シルバーやゴールドなどの特殊トナーの再現性も素晴らしく、お客さまからも非常に好評です。特色を使った仕事も徐々に増えてきています」(髙山氏)
また、オフセットからPC1120へ移行するジョブも増えているという。
「アニメやキャラクター関係のアイテムはとくに品質にシビアで、オフセットを指定されるお客さまが多かったのですが、PC1120の出力をお見せすると、問題なくOKをいただけることが多いですね。ですから、小ロットのものを中心にPC1120への切り替えが進んでいます」(山﨑常務)
PC1120で作成したサンプルの数々。仕上がりに対するクライアントの評価も高い
■設備拡充をさらに進め、新たな市場にもアプローチ
品質、生産性、汎用性など、さまざまな面でPC1120のメリットを実感しているという門那シーリング印刷。今後は、設備の拡充をさらに推し進めながら、新たな領域にもチャレンジしていく考えだ。
「枚葉のデジタル印刷機を本格的に活用しているシール印刷会社はおそらく他にないので、PC1120は当社の大きな差別化要素になっており、新規の受注が確実に増えています。PC1120がもう1台あってもいいぐらいですね。製造部門のビジョンとしては、将来的にデジタル印刷機だけで約40台、加工機なども含めた生産設備全体では100台規模の体制まで持っていきたいと考えています。質・量ともに生産能力を高めながら、仕事の幅をさらに広げていきたいですね」(山﨑常務)
仕事の領域拡大への取り組みは、PC1120を活用してすでにスタートしている。
「いま力を入れ始めているのが、小ロットのパッケージ印刷です。先日、PC1120を使って製作したサンプルを展示会に出展したところ、予想以上に評価の声を多くいただき、手ごたえを感じたのと同時に、小ロットのオリジナルパッケージのニーズの高さもあらためて実感しました。展示会でのPRだけでなく、オリジナル商品をSNSで紹介したり、ECサイトで販売したりと、さまざまな形でプロモーションに取り組んでいます。設備面でも、パッケージの印刷から後加工まで社内で一貫生産できるよう体制を整え、より幅広いニーズに応えていきたいと考えています」(門那社長)
50年近くにわたりシール・ラベル製造で培ってきた同社の技術力と、PC1120が持つ表現力との相乗で、パッケージ分野にどんな価値が生み出されるのか、今後の展開が注目される。
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