ニュースリリース

2025.07.24

◆FFGS Jet Press 750S導入事例――株式会社リンクス 店頭ディスプレイのシビアなニーズに応える高画質・安定性が新たな強みに オフセットからの切り替えで現場の大幅な作業効率化・スキルレス化が実現

岐阜県を拠点に、店頭ディスプレイや商品パッケージなどの製作を手掛ける株式会社リンクス(本社 : 岐阜県関市倉知2639-1、代表取締役社長 : 吉田哲也氏)は、202411月に富士フイルムのインクジェットデジタルプレス『Jet Press 750S』を導入。小ロット・小サイズのディスプレイを中心に、オフセットからJet Pressへ切り替えを進めるとともに、パッケージなどの新規受注にも活用している。新たな主力生産機として、なぜJet Pressを選んだのか。そして、どんなメリットが得られているのか。代表取締役会長 吉田房生氏、本社 統括マネージャー 市原裕徳氏、製造部 マネージャー 猿渡真也氏に伺った。

 

   

左から、吉田会長、市原マネージャー、猿渡マネージャー

 

■簡単・コンパクトを追求した独自設計のディスプレイ

 リンクスは、19503月に、「吉田印刷社」として創業。今年で75周年を迎える老舗だ。同社が本社を置く岐阜県関市は、ドイツのゾーリンゲン、イギリスのシェフィールドと並ぶ「世界三大刃物産地」の1つとして知られ。市内には刃物産業に関わる企業が約400社集まっている。そんな環境にあって、リンクスは長年、包丁やハサミといった刃物のパッケージ製作をメインに手掛けた。

 1977年には東京にも拠点を設け、首都圏での新規開拓に着手するとともに、パッケージに特化していた事業内容をディスプレイ(販促什器)の分野にも拡大。高いアイデア力や設計・開発力が市場から評価され、順調に受注を伸ばし、現在は約8割をディスプレイが占めるまでになっている。

 設備面では、映画関係の看板など大サイズのアイテムにも対応するべく、A倍判の印刷機・加工機を導入し、効率的な生産環境を構築。さらに、デザイン・設計から印刷、加工、アッセンブリ、配送までの一貫体制を整え、短納期のニーズにも応えてきた。

 同社が手掛けるディスプレイは、フロアに自立させて使用するフロアディスプレイ、卓上に設置するカウンターディスプレイ、棚にかけて使用するハンガーディスプレイなど、サイズも形状もさまざまだが、いずれにも「組み立て簡単、コンパクト、環境に配慮」のコンセプトを貫いている。

 「いま、どのお店も人手が不足しており、ディスプレイの組み立てが煩雑だと使わずに廃棄されています。そこで私どもは『1秒、3秒、5秒で組み立てられる』というコンセプトに畳める構造にすることで運搬コストを抑えているほか、可能な限り紙を多用することで、脱プラ・減プラのニーズにもお応えしています」(吉田会長)

 こうしたクライアントの厳しい要件を満たし、かつ独創的で目を引く同社のディスプレイは、多くのメーカーや小売店から高く評価されており、また、『クリエイティブ・ソリューション・アワード』(日本プロモーショナル・マーケティング協会)、『日本パッケージングコンテスト』(日本包装技術協会)などで多数の賞を受賞している。

 

  

    簡単・コンパクトを追求したアイデア什器「秒シリーズ」

 (同社Webサイトから)

■印刷品質の高さ・安定性、加工適性などが決め手に

 そんな同社では、20年以上前に、当時珍しかったA倍判オフセット印刷機を導入し、長らく主力機として運用してきたが、老朽化が進み、品質トラブルも増えてきたことから、新たな印刷機の導入を検討することに。当初は最新のオフセット機への入れ替えも選択肢にあったというが、近年のさまざまな環境変化を鑑み、デジタル印刷機へのシフトを決断した。その背景として挙げられるのが、オペレーター人材の確保が困難になってきたことだ。吉田会長は現状をこう説明する。

オペレーターの高齢化が進む一方で、募集をかけてもなかなか人が集まらない。この状況は、当社だけでなく近隣の会社でも同様で、『仕事はあるが機械が回せない』という声をよく聞きます。また、オフセット機のオペレーターは育成にも時間がかかります。最近のオフセット機は自動化・スキルレス化が進んでいるとは言え、やはり機長として回せるようになるには数年単位の経験が必要になりますからね。しかし、デジタル印刷機であればそのハードルはぐっと下がります」。

 さらに、受注内容にも変化が起きているという。それは、小ロット・小型アイテムの増加だ。

「フロアディスプレイよりも、比較的小サイズのカウンターディスプレイやハンガーディスプレイの割合が増えてきましたからね。また、共通のアイテムを全国展開するケースは減り、エリアマーケティングに基づいて特定の地域で使用する、あるいは、一部の店舗でテストマーケティングを実施したいといった小ロットのニーズが高まっており、特にコロナ禍以降はその傾向が顕著になっています。こうした点でもデジタル印刷機の必要性を感じていたのです(吉田会長)

 オペレーターの確保、そしてディスプレイの小ロット化・小型化、オフセットからデジタルへのシフトは、こうした課題を踏まえた決断だった。では、数あるデジタル印刷機の中でJet Press 750Sを選んだ理由は何だったのか。

まず、ディスプレイやパッケージの厚紙にオフセットと同等の品質で安定した印刷ができること。そして、水性インクであること。これが大きな決め手になりました。当社では化粧品や食品、医薬品などのディスプレイを多く手掛けているのですが、これらの分野では、印刷品質はもちろん、臭いに対しても非常にシビアです。その点、UVインクでは臭気が残ってしまう不安がありました。また、UVインクの場合、折り曲げた際に割れやすくなること、貼り合わせた際に接着性を確保しにくく、剥がれてしまうリスクがあることなどから、水性インクの方が適していると判断しました(吉田会長)

 臭気の少なさや優れた加工適性、そして、オフセット機と遜色のない印刷品質。これらJet Press 750Sの特長に加え、補助金活用のサポートも導入を後押ししたという。

「タイミングよく省エネ補助金を活用することができました。これまで機資材メーカーさんに補助金の申請をお手伝いいただくことはあまりなかったのですが、今回、富士フイルムさんが非常に手厚くサポートしてくださり、とてもスムーズに手続きを進めることができました」(吉田会長)

 



 オフセットに代わる主力機として導入されたLet Press 750S
  現場のスキルレス化・効率化に寄与している。

 

■現場・クライアント双方の安心感が高まった

 リンクスに導入されたJet Press 750Sは、最大0.6mm厚まで通紙仕様。印刷スピードは標準機と変わらず、毎時3,600枚の生産性を発揮する。品質面では、世界的に評価されている『SAMBAプリントヘッド』と水性顔料インク『VIVIDIA』、インクの滲みを防止する『Rapic技術』の相乗効果により、さまざまな用紙で鮮明かつ自然な仕上がりが得られる。そのメリットは、さまざまな面で表れているようだ。品質面の評価について、吉田会長はこう語る。

「オフセットに全く引けをとらない色再現性はもちろんですが、最もメリットを感じているのは安定性の高さです。刷り出しから刷了まで色の変動がなく、日が替わってもブレることはありません。これは特にリピートの仕事で活きてきます。オフセットで前回の色に合わせるのは大変ですが、Jet Press 750Sなら手間をかけずに正確に再現できます。作業効率が格段に上がりますし、予備紙の削減にもつながります

 さらに、見当精度の高さも品質・生産性向上に寄与しているという。

Jet Pressはフィーダーなどにオフセット印刷機と同様の構造を採用しているので、それが効いていめのだと思います。ディスプレイの製作では、印刷後に複数の加工プロセスを経るため、見当が甘いと不良品の発生に直結します。ですから、見当精度は我々にとって非常に重要な要素です(吉田会長)

 一方、前準備や乾燥などが不要になることにより、効率面でもメリットが。猿渡マネージャーは「特にジョブ切り替えの作業負荷や時間の削減効果は大きい」と実感を語る。

「オフセット印刷では、4色分の版の装着、見当合わせ、色出しといった作業でね30分から1時間ほどかかっていましたが、Jet Pressなら、紙サイズが変わらなければジョブ切り替え時間はほぼゼロになります。そして、印刷後はすぐに後加工に回すことができる。小ロットジョブを多くこなしていく上で、この効率の良さは大きな魅力ですね

 さらに、スキルレス化という点でも効果が出ている。従来使用していたA倍判オフセット機にはベテランオペレーター3名がついていたが、Jet Press 750Sは、もともとDTPを担当していたという若手オペレーターが1人で使いこなしている。

2台、3台のデジタル機を1人でオペレーションできる体制が理想ですが、Jet Pressはそれを可能にする機会だと思います」(吉田会長)

 品質安定性や生産性の高さは、色校正においても活かされているという。

高精度な本機・本紙校正が手軽に行えるのは、社内だけでなくお客様にとっても大きなメリットになります。オフセットの場合、お客様が1日がかりで立ち会われることも多かったのですが、色変動のないJet Pressによる本機校正なら、それが不要になります。校了の色が本刷りでも約束されることで安心感も高まります。また、現場にとっては、色ムラなどによる刷り直しの不安がなくなり、作業面だけでなく精神的な負荷もかなり低減できると思います(市原マネージャー)

 

  

  

  Jet Press 750Sで印刷されたディスプレイ、パッケージの数々。
  高い品質と組み立て精度を要求されるものが多い

 

■パッケージなどの分野にも注力し、さらなる活用拡大を目指す

 導入からわずか半年あまりの運用で、多面的なメリットを実感しているというリンクス。今後は、Jet Press 750Sの強みを活かして紙器パッケージの分野にも再び力を注ぐとともに、展示会ビジネスにも取り組んでいく考えだ。

「ネットビジネスの普及に伴って、モノを売るスタイルは今後も大きく様変わりしていくでしょう。その中で当社としては、ディスプレイ製作だけにこだわらず、そこで培った技術を違う形で活かし、事業領域を広げていく必要があると感じています。その1つとしてアプローチを始めているパッケージ分野では、Jet Pressの色安定性がリピートの際のメリットになると思いますし、小ロット対応によって在庫を持つ必要がなくなることも売りになると考えています。展示会関係では、什器だけでなくグッズの製作なども含めた総合的な提案に取り組んでいく計画です」(吉田会長)

 こうしてJet Press 750Sの活用の可能性に期待を寄せる一方で、「課題もある」と吉田会長は語る。それは「インクジェットに対する先入観の払拭」だ。

「お客様の中には、まだ『インクジェットの品質はオフセットに劣る』というイメージを持ち、オフセットからJet Pressへの切り替えに抵抗を示す方も少なからずいらっしゃいます。その認識をいかに変え、Jet Pressのメリットを理解してもらうかが課題ですね。その一環として、昨年末から今春にかけて3回にわたってオープンファクトリーを実施し、200名ほどのお客様に来ていただきました。そこでJet Pressとオフセットの印刷物と見比べていただいたところ、『ほとんど区別がつかない』という声が多く、品質の高さを実感していただけたのではないかと、手ごたえを感じています。実際に一度Jet Pressを試されてお客様の多くは、その後も継続して使っていただいていますので、こうした地道な取り組みを通じて、Jet Pressの活用をもと広げていけると思っています(吉田会長)

 現在、同社では『リンクス デジタルファクトリー』の名称を掲げ、本社工場のデジタル化・自動化を推し進めており、Jet Press 750Sはその中核を担う存在だ。その実力がより広く認知されれば、新たな市場へのアプローチ、事業領域拡大に、さらに弾みがつくことだろう。

 

 

 

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