ニュースリリース
2025年10月
2025.10.09
◆富士フイルムグラフィックソリューションズ Revoria XMF PressReady導入事例 株式会社帆風 デジタル印刷ジョブのリードタイムの短縮により機動力がさらに向上 基幹システムとの連携で生産工程全体の自動化も視野に
橋田次長 森川課長
東京都内に拠点を持ち、印刷からノベルティ制作、デジタルコンテンツ制作まで幅広く手がける株式会社帆風(本社:東京都新宿区下宮比町2-29、代表取締役社長:須藤高幸氏)は、2025年3月、富士フイルムのデジタルワークフローシステム『Revoria XMF PressReady』(以下、PressReady)を導入し、デジタル印刷ジョブの面付け作業の省力化などにより、リードタイムの短縮を図っている。今後、基幹システムとの連携によってさらなる生産効率アップを実現する計画だ。導入の背景や現時点での効果、今後の活用などについて、生産拠点である竹橋プリンティングセンターの次長・橋田和人氏、POD課 総合職課長・森川幸久氏に伺った。
■都心の大規模工場で超短納期生産を実現
帆風は、1980年に設立された『株式会社養誠社』を前身とする。91年にMac出力センターを開設、96年にオンデマンド印刷サービスを開始するなど、デジタル技術をいち早く採り入れながら業容を拡大してきた。現在、皇居にほど近い千代田区一ツ橋に2,100坪の大規模な生産拠点『竹橋プリンティングセンター』を設け、プリプレスから印刷・加工、配送までを同センター内で完結できる一貫体制を確立。東京23区内であれば入稿から2時間以内に納品というスピード対応を実現している。
受注窓口としては、営業・店舗(オフライン)と、Web(オンライン)を持つ。Web受注サイトは、帆風直営の『Vanfu Online Shop』と、グループ会社が運営する『Suprint(スプリント)』(株式会社ugo)、『イロドリ』(株式会社プリマリール)の計3サイトを設けており、それぞれ、取り扱い商材や価格帯などで特色を持たせている。現状、デジタル印刷ジョブの約65%がWebからの受注だという。
印刷設備は、枚葉オフセット印刷機が5台と、トナーのデジタル印刷機が5台。他に、名刺専用のデジタル印刷機2台と、封筒専用の軽オフセット印刷機21台を備える。加工から梱包、仕分けの工程では、独自の自動化ラインを構築。1日300件近くに及ぶ多種多様なジョブを、正確かつスピーディーに出荷する体制を整えている。
「東京都心に24時間稼働の生産ラインと自社のデリバリー部隊を持ち、都内のお客さまを中心に、高品質な印刷物を小ロット・超短納期でご提供できるところが、当社の大きな強みになっています」(橋田次長)
■属人的な面付け作業をいかに自動化するかが課題だった
同社ではこれまで、刷版の自動仕分け装置やAGV(印刷物自動搬送装置)など、自動化システムを積極的に採り入れ、生産工程全体の効率化を進めてきたが、ここ数年、デジタル印刷のジョブが増加する中で課題となっていたのが、プリプレス工程の省力化だ。入稿データを1件ずつ開いて面付けし、印刷機に送信するという作業に人手がかかり、しかも、ある程度経験を要するケースもあるため属人化していたという。
「従来は、面付け前のデータチェックもすべて人手で行なっていたのですが、独自に『ロボチェック』という仕組みを開発し、Web受注ジョブに関してはデータチェックを自動化しました。ただ、チェック済みのデータを面付けし、仕様に応じて5台あるデジタル印刷機に振り分けるという工程はオペレーターの手作業になっていたため、これを何とか自動化する方法はないかと考えていたのです」(橋田次長)
名刺やチラシなど、シンプルな仕様の面付けは、InDesignのスクリプトなどを使ってスムーズに行なえるようになっていたが、可変データが含まれているものや、複雑な加工を行なうジョブなどは、ポストプレスまで含めた知識が必要になり、作業者が限定されてしまっていたという。また、人が介在する以上、ヒューマンエラーが起こる可能性もあるため、タッチポイントをできるだけ減らすことによってそのリスクをなくしたいという意向もあった。そうした課題の解決策として着目したのがPressReadyだった。橋田次長は「導入に迷いはなかった」と語る。
「FFGSさんのショールームで開催されたイベントで、PressReadyをご紹介いただいたときに、『これだ!』と直感しました。まさに望んでいたソフトが出てきてくれたと。しかも、サブスクで導入できるとのことで、初期費用を抑えられるのはもちろん、環境の変化に柔軟に対応しやすいという点でも、非常に魅力的だと感じました」
2025年3月に導入し、第一段階として、ジョブ件数の多い定型サイズの面付けワークフローを設定し、運用を開始した。
PressReadyによって、属人性の高かった面付け作業がスキルレス化でき、
デジタル印刷の生産性が高まった
■リードタイムが1ジョブあたり10分短縮
PressReadyは、デジタル印刷のデータ入稿からプリプレス、印刷までを一括管理するソフトウェアである。複数台のデジタル印刷機向けのジョブを一元的に管理することができるほか、作業指示書を見ながら人が行なっている面付けや印刷指示などのプリプレス工程の作業を自動化することが可能で、オペレーターの負荷軽減、作業の標準化(属人化の解消)、ヒューマンエラーの削減、生産効率向上といったメリットをもたらす。
帆風ではまず、3つのWebサイト(印刷通販サイト)で受注するデジタル印刷ジョブについて、PressReady上で面付けし、各ジョブに適した印刷機に振り分けて印刷するという運用からスタートしている。
「面付け・印刷指示は、デジタル印刷機のオペレーターが行なっているので、PressReadyによってこれらの作業をスキルレス化できたことは、オペレーターにとって大幅な負荷軽減になっています。入社1カ月ぐらいの若手でも、グルーピングされたジョブを印刷機のプリセットと紐付いたフォルダに入れるだけで簡単に印刷できますから、印刷機での紙の入れ間違いさえなければ、誰でも確実にジョブを流すことができるようになりました。面付けのイージーミスもなくなっています」(森川課長)
24時間、多種多様なジョブが次々と入ってくる中で、デジタル印刷ジョブの65%にあたるWeb受注案件のスキルレス化が図れたことは、生産効率の面でも大きなメリットにつながっているという。
「PressReadyを通すジョブに関しては、リードタイムが1件あたり平均10分ほど短縮されています。入稿から納品まで2時間というスピードを追求している中で、10分の短縮は非常に大きいですね。その積み重ねで、月単位では何十時間、何百時間もの短縮になっています。また、定型サイズジョブの生産効率が上がったことで、カスタムサイズなどの付加価値の高い仕事に使える時間が増えたことも大きな効果です」(橋田次長)
デジタル印刷機の稼働効率もさらに向上している。
「PressReadyによって仕事がよりスムーズに流れるようになったことで、デジタル印刷部門の生産能力が一段と高まりました。この効果を活かし、オフセットで印刷していた小ロットジョブのデジタル印刷への切り替えを進めています。その結果、デジタル印刷機の出力量はPressReady導入前の1.5倍ほどになっています。受注件数そのものが増加していることもありますが、現在、デジタル機のカウンター数は1台につき月25万を超え、5台で100万カウンターに届きそうな状況です」(森川課長)
帆風では5台のデジタル印刷機を、紙種やサイズ、ロットなどによって使い分けている
■基幹システムとの連携で、受注から印刷までの完全自動化を目指す
現在、部分的な活用を始めている段階ではあるが、早くも明確な導入効果が得られているという帆風。今後は、Web受注だけでなく、オフラインで受注するジョブについても、PressReadyの運用フローに組み込み、デジタル印刷工程全体の効率化を進めていく考えだ。
「営業経由、あるいは店舗窓口で受注するジョブは、お客さまのデータが不完全なケースも多いため、現状、本社で人の目によるデータチェックを行なってからPDF化し、デジタル印刷のサーバーに入れる形をとっているのですが、これらのジョブも、ファイル名をルールに則って確実にリネームすれば、PressReadyを通すことができると思います。人手による入力を挟むとエラーのリスクが出てくるので、自動リネームツールなどを使ってミスをなくせば、すべてのデジタル印刷ジョブをPressReady経由で流すことが可能になるでしょう。ぜひ実現して、デジタル印刷の生産性をさらに高めていきたいですね」(橋田次長)
また、PressReadyと基幹システムとの連携フローの構築も進行中だ。入稿から印刷までのタッチポイントを最小化し、リードタイムのさらなる短縮を目指す。
「デジタル印刷の部門内に関しては、理想的なフローがかなりのレベルまでつくれるという手応えは感じています。特定のサイズ・紙種のオーダーが入ったときに自動で出力できるところまでは検証できているので、あとは基幹システムが書き出したCSVデータをPressReadyで受け取る環境が構築できれば、次の段階に進めると思います。CSVを書き出すときに、言葉や項目などを、PressReadyやデジタル印刷機と互換性がとれるようルール付けすれば、オーダーが入った瞬間に自動でジョブが流れる仕組みが実現できるのではないかと。将来的には、基幹システムの受注情報をもとにPressReady上で配送の自動振り分けも行ない、後工程まで含めた効率化を図れればと考えています」(森川課長)
導入当初の「面付けを中心としたプリプレス作業の効率化」という狙いは、受注から配送までの工程全体を見据えた自動化の取り組みへと発展している。橋田次長は最後に、「PressReadyを運用しながらさまざまな機能を知り、想像以上に多くのメリットが得られることがわかってきた。今後も、FFGSさんにアドバイスをいただきながら、より効果的な活用方法を見出していきたい」と期待を込めた。
- 1 / 1