ニュースリリース
2023.02.22
◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ 4月1日から「富士フイルムグラフィックソリューションズ」に社名変更
富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社(山田周一郎社長、以降FFGS)は、このほど、子会社である富士フイルムGSテクノ株式会社を、2023年4月1日をもって吸収合併することを発表した。これにより、FFGSが富士フイルムGSテクノの権利義務を一切継承し存続会社となり、富士フイルムGSテクノは解散する。
また、FFGSは2023年4月1日をもって、「富士フイルムグラフィックソリューションズ株式会社」に社名を変更する。新社名は、富士フイルムグループの「事業活動を通じて社会課題の解決を目指す」という企業姿勢を体現すべく、印刷業に携わる顧客の課題解決となるソリューションを提供し続ける会社であることを示している。
2023.02.15
◆モリサワ 「やまがた創生プロジェクト研究」への貢献により「紺綬褒章」を受章
株式会社モリサワ(代表取締役社長:森澤彰彦 本社:大阪市浪速区敷津東2-6-25 Tel:06-6649-2151 代表、以下モリサワ)は、2022年2月、山形県山形市の「事業構想プロジェクト研究事業」および「山形市売上増進支援センター Y-biz運営事業」へ、企業版ふるさと納税制度を利用し寄附した。この活動が認められ紺綬褒章を受章し、2023年2月14日(火)に山形市役所にて伝達式が執り行われた。
今回の寄附は、山形市、事業構想大学院大学と協働で発足した「やまがた創生プロジェクト研究」に活用されたもの。同プロジェクト研究は、山形市の経済活性化および創造都市の推進に資する新規事業を構想するものである。
同プロジェックトは、2022年5月から2023年2月の約10ヶ月間にわたり、地元山形市のほか、東京や仙台などから集まった10名の研究員が参加して行われた。モリサワは研究員がプレゼン資料を作成する過程で、同社サービスや、レイアウトに関するノウハウの提供といった支援を行った。
その締めくくりとなる「やまがた創生プロジェクト研究発表会」が同日、山形市内において開催され、山形市佐藤市長やその他関係者らの前で、その研究成果が発表された。発表は10名の研究員からそれぞれ行われ、地元の産業に関わることや、子育て支援、海外からの人材受け入れに関することなど、さまざまな角度から山形市の創生のアイデアが提案された。今後は、具体的な事業化に向け、それぞれの研究員が地元企業やパートナーらとの調整を検討していく予定である。
紺綬褒章とは、国が国家や公共に対する貢献を表彰する褒章制度の一つで、「公益のために私財を寄附した者」へ授与される褒章である。
モリサワは、山形市と2022年3月に締結した「地方創生の推進に係る包括連携に関する協定」を通じて、今後も地域経済の活性化や創造都市の推進に関する取り組みなどについて連携していく。
https://www.morisawa.co.jp/about/news/6736
モリサワ、山形市、事業構想大学院大学との共同プロジェクト「やまがた創生プロジェクト研究」について
https://www.morisawa.co.jp/about/news/6753
「やまがた創生プロジェクト研究」において、モリサワが実施した講義について
https://www.morisawa.co.jp/about/news/8631
「文字を通じて社会に貢献する」を社是に研究・開発を続けているフォントメーカー。1,500書体以上が使えるフォントライセンス製品「Morisawa Fonts」や、全55書体のユニバーサルデザイン(UD)フォントが使える「MORISAWA BIZ+」のほか、Webフォント「TypeSquare」や組込みフォントなど、利用環境に合わせたフォントサービスを提供している。また、多言語ユニバーサル情報配信ツールMCCatalog+(エムシーカタログプラス)の開発、提供をしており、自治体などを中心に情報発信に活用されている。
株式会社モリサワ 東京本社 営業企画部 公共ビジネス課
E-mail:public-biz@morisawa.co.jp
Tel:03-3267-1378
SNSでも最新情報を公開している
Twitter:@Morisawa_JP
Facebook:@MorisawaJapan
※記載されている内容は、予告なく変更する場合がある。
※記載されている会社名・商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標である。
2023.01.30
◆モリサワ 表現や特徴から、使いたいフォントが見つかる「モリサワ総合書体見本帳 2022–2023」が完成! Twitterにてプレゼントキャンペーンも実施
株式会社モリサワ(代表取締役社長:森澤彰彦 本社:大阪市浪速区敷津東2-6-25、Tel:06-6649-2151 代表、以下モリサワ)は、1,500書体以上に及ぶMorisawa Fonts搭載書体を網羅した「表現・特徴で見つけるフォントBOOK モリサワ総合書体見本帳 2022–2023」を、このほど制作・刊行した。従来の「明朝体」「デザイン書体」といった書体分類だけではなく、「つくりたい表現」や「特徴」といった親しみやすい独自のカテゴリで書体が見つかる、使い手目線にこだわった見本帳になっている。
この見本帳は、モリサワが開催・参加するイベントで渡すほか、Morisawa Fontsスタンダードプランを契約中で送付希望のユーザーに無料で届ける予定である(※1)。また、より多くのユーザーに書体の魅力を知ってもらうために、全国の書店でも特製カバーつき別装丁版を購入することができる。(※2)ページをめくるたびに新しい書体と出会い、創作のアイデアが広がる書体見本帳として、同社ではぜひ手にとってその魅力を確かめてもらいたいとのことだ。
※2 発売日:2023年2月10日(金)
株式会社マイナビ出版「表現・特徴で見つけるフォントBOOK モリサワ総合書体見本帳 2022–2023」
1,320円(税込) ISBN:978-4-8399-8239-3
詳細はこちら https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=135247
「モリサワ総合書体見本帳」のコンセプト
実際にユーザーが書体を探すシーンを考慮し、より最適な書体にアクセスしやすく、各書体の個性を活かした使い分けができるように3つの検索方法を採用している。検索方法を複合的に使いながら目的の書体を探すことで、より制作物にマッチした書体が直感的に見つかるようになっている。
「かわいい」、「楽しい」、「レトロ」、「物語性」など、表現したい作風やイメージにマッチする11種類のキーワードから書体を絞り込める。書体の使用シーンを彷彿とさせる組見本によって、ライブラリーの世界観を楽しみながら書体を見つけることができる。
「ペン字・手書き」、「コンデンス」、「教育用」など、形や仕様、用途といった具体的な特徴から関連する書体同士を比較できる。細分化された書体ジャンルによって、制作物に合った特徴を持つ書体を探すことができる。
1,500書体を超えるMorisawa Fontsのライブラリーを、モリサワ、タイプバンク、字游工房、ヒラギノ、昭和書体の5つのブランドや多言語書体、および「明朝体」「ゴシック体」などの書体分類に基づいて網羅的に一覧できる。
特集企画は、ブックデザイナー松田行正氏による、モリサワフォントを使った6パターンの装丁作例を掲載。「文芸作品」、「ホラー&サスペンス」など、テーマに沿った書体の使い分けと組み方のアイデアが生み出す多様なデザインは必見。また、注目のUD書体の解説や、文字セットといったフォントに関する基本情報のほか、OpenType機能を使った字形の切り替え、カーニング設定など、フォントを使う上で役立つTips記事も掲載している。
この「モリサワ総合書体見本帳」の完成を記念して、応募期間中、モリサワ公式Twitterをフォローし、対象のキャンペーンツイートをリツイートしていただいた人の中から、抽選で30名様にプレゼントする。皆さまの応募をお待ちしています。
タイトル:モリサワ総合書体見本帳がもらえる!Twitterフォロー&RTキャンペーン
期間:2023年1月30日(月)〜2023年2月12日(日)23:59
賞品および当選者数:「表現・特徴で見つけるフォントBOOK モリサワ総合書体見本帳 2022–2023」…30名様
(1)モリサワ公式Twitterアカウントをフォロー
「@Morisawa_JP(https://twitter.com/morisawa_jp)」
※すでにフォロー済みの方は、追加の対応は不要です。
(2)本キャンペーン対象のツイートをリツイート
キャンペーン期間終了後、当選者にTwitterのダイレクトメッセージにて当選通知を連絡する。
・応募の際に預かった個人情報の保護方針に関しては、同社プライバシーポリシー(https://www.morisawa.co.jp/privacy-policy/)を確認のうえ、応募を。
・預かった個人情報は、当選の連絡および賞品の発送に使用する。
※賞品の画像は、実際に送付するデザインと異なる場合がある。
※応募は、期間中1人1回限りとする。
※同キャンペーンについての連絡や発送に関して、連絡をする場合がある。
※賞品の発送は2023年2月下旬を予定しているが、諸事情により遅れる場合がある。
また、送付先は日本国内に限る。
※当選の連絡後、3日以内に正確な送付先などの必要な情報を提供されない場合、当選を無効とするので了承を。
※賞品発送の日時は指定できない。
※同キャンペーンによって生じたトラブルや損害に、株式会社モリサワは一切の責任を負わないので、あらかじめ了承を。
※アカウントが非公開設定の方は、抽選の対象外になる。また、今回のキャンペーンはリツイートキャンペーンのため、引用ツイートは抽選の対象外となる。
※賞品に不良がある場合を除き、返品・交換には応じかねる。また賞品に不良がある場合は、到着後7日以内に連絡すること。
Morisawa Fontsは、2022年10月4日より提供開始している、クラウド型のフォントサービスである。MORISAWA PASSPORTの書体ライブラリーを引き継ぎ、定番書体からデザイン書体まで、あらゆる創作活動を支える1,500書体以上のフォントをどれでも好きなだけ使うことができる。フォント管理はもちろん、契約手続きもオンラインで完結でき、場所を選ばない新時代のワークスタイルをサポートしている。
Morisawa Fontsサービスサイトはこちら https://morisawafonts.com/
株式会社モリサワ 東京本社 ブランドコミュニケーション部 広報宣伝課
E-mail:pr@morisawa.co.jp
SNSでも最新情報を公開している
Twitter:@Morisawa_JP
Facebook:@MorisawaJapan
※記載されている会社名・商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標である。
2023.01.11
◆サイバーテック マニュアル作成プラットフォームを手軽に導入出来るパッケージを用意 ~マニュアルCMS「PMX」導入時に障壁となっていた、初期導入コストをリーズナブルに設定
株式会社サイバーテック(東京都渋谷区円山町20-1 新大宗道玄坂上ビル7階、橋元賢次社長)は、このほど、マニュアルのDX対応を実現し、Webマニュアル作成とPDF組版のワンソース化や、多言語マニュアル作成にも強い、国産のマニュアル作成プラットフォーム「PMX」の導入をリーズナブルに実現する、2種類の「PMXスターターパッケージ」の提供を開始した。
◎「スターターパッケージ for エンドユーザー」概要
・初級トレーニング
・テンプレートサンプル作成
・スタイルシート作成
・プロフェッショナルサポート
◎「スターターパッケージ for 制作会社」概要
・テンプレート提供
・初級トレーニング
・プロフェッショナルサポート
「PMXスターターパッケージ」は、製品のことを熟知したエンジニアによる手厚いサポートや、クリエイティブ担当・自社オフショア拠点が効率よく初期コンテンツを準備することにより、業界内でも非常にリーズナブルな費用でマニュアル用CMSの導入を実現できるのが特長である。
◎「PMXスターターパック」プレスリリースおよび詳細内容は以下より。
https://x.bmd.jp/70/489/707/1423146
2022.12.28
◆年頭所感 富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社 代表取締役社長 山田周一郎
富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社
代表取締役社長 山田周一郎
明けましておめでとうございます。印刷業界の皆さまにおかれましては、令和5年の初春を決意も新たにお迎えのこととお慶び申し上げます。
さて、新型コロナウイルスの感染拡大が未だ予断を許さない状況ではありますが、この数年間のコロナ禍の経験から、感染予防と経済活動との両立が進み、徐々にですが社会全体に活気も戻りつつあります。一方で、コロナ禍前から続く人手不足や、昨今の原材料費・物流費の高騰など、依然として市場環境は先を見通せない状況が続いていており、業界の皆さまも、これからの企業経営について日々模索されているかと思います。こうした変化の激しい状況においては、まずは足下の生産環境を見直し、「さまざまな仕事内容に柔軟に対応でき、持続的に利益を生み出せる生産体制」を構築することがますます重要になってきます。
FFGSではこれまでも、オフセット印刷とデジタル印刷を共存させながら最適な生産環境を構築する「最適生産ソリューション」をご提案してまいりました。さらに昨年11月のIGAS2022では、「スマートファクトリー化による最適な生産環境」を、具体的なデモンストレーションを交えてご紹介し、大きな反響をいただきました。富士フィルムが考えるスマートファクトリーとは、単なる工程の自動化ではなく、売上の主力となるオフセット印刷機をはじめとした既存設備を活かしながら、デジタル印刷も効果的に活用することで生産工程全体の最適化を実現するご提案です。入稿から出荷までを一元管理する『Revoria One Production Cockpit』を中心に、AGVや人協働ロボットといったさまざまなメーカーの自動化システムとも連携したオープンなプラットフォームで、お客さまの環境に合わせた最適化を実現していきます。
最適生産のためのソリューションの拡充も進めています。デジタルプレスでは、オフセットライクな印刷品質で定評のある『Jet Press 750S』や、スキルレスで運用可能なトナー方式の『Revoria Pressシリーズ』といった幅広い機種を、またオフセット印刷分野では、刷版工程の省力化・自動化を実現する完全無処理プレート『SUPERIA ZX』や、印刷品質の安定化・維持管理をサポートする『GA Smile Navi』などを、お客さまのお仕事内容や生産環境に合わせてご提案し、印刷ビジネスの変革を全力でご支援いたします。
本年もFFGSは、お客さま一社一社の課題と向き合い、その解決をお手伝いさせていただきながら、皆さまの持続的な企業成長、そして業界全体の発展に貢献してまいります。
最後になりましたが、皆さま方のご健勝とますますのご発展をお祈りし、新年のごあいさつとさせていただきます。
2022.12.28
◆年頭所感 富士フイルムホールディングス株式会社 代表取締役社長 CEO 後藤禎一
富士フイルムホールディングス株式会社
代表取締役社長 CEO 後藤禎一
新春を迎え、印刷業界の皆さまのご健勝とご繁栄を心からお慶び申し上げます。旧年中は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。
コロナ禍の制約が徐々に解消される一方で、地政学的リスクや自然災害、エネルギー問題など、世界経済を取り巻く環境は不透明な状況が続いています。さらに追い打ちをかけるように原材料や燃料の価格が高騰し、印刷業界の皆さまにも影響が及んでいることと思います。
富士フイルムグループは2000年代、デジタル化の加速を背景とする写真フィルム市場の急激な縮小により、本業である写真関連事業消失の危機に直面しましたが、写真で培ったさまざまな先進・独自の技術を基盤に事業を多角化させ、強固な事業ポートフォリオを構築することで危機を克服してきました。こうした経験を踏まえ、昨今の不透明な経済環境においても「ピンチの中にチャンスがある」と信じ、つねに先を読み機会を逃さずダイナミックに手を打っていくことで、お客さまやパートナーの皆さまと共に成長し続けていきたいと考えています。
印刷領域においては、2021年7月に富士フイルムと富士フィルムビジネスイノベーションの印刷関連事業を統合し、オフセット印刷からゼログラフィーおよびインクジェットのデジタル印刷機まで、お客さまの多様なニーズに応える幅広い製品ポートフォリオを揃えました。そして、印刷業界の課題解決への貢献として、革新的な製品の提供のみならず、DX推進による生産工程の改善や業態変革の支援にも力を入れています。昨年11月に開催された『IGAS2022』では、無処理CTPプレートやプロダクションプリンターなど強力な新製品を発表したほか、スマートファクトリー化を実現する幅広いソリューションをご紹介しました。印刷会社をはじめとする多様な業態のお客さまにワンストップで価値を提供できる富士フイルムグループの新たな体制を体感いただけたのではないかと思います。
富士フイルムグループが企業文化として大切にしていることは、「誠実」と「信頼」です。社会からの要請や期待に「誠実」に応え、事業を通じて社会課題の解決に貢献する新たな価値を提供し続けることによって、いつの時代にもなくてはならない存在として社会から「信頼」される企業であり続けます。そして持続可能な社会の実現に向けて“NEVER STOP”の精神で挑戦を重ねていきます。
最後になりましたが、皆さまの本年の益々のご多幸とさらなるご繁栄を祈念いたしまして、新年のごあいさつとさせていただきます。
2022.12.11
◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ SUPERIA ZX導入事例――大洋印刷株式会社 本機も平台校正も無処理で一本化し、一段と向上した「使いやすさ」を実感。国内生産・安定供給による安心感も大きな魅力
90年を超える社歴を誇り、豊富な人材、高度な印刷技術により、品質重視のクライアントから全幅の信頼を得ている大洋印刷株式会社(本社:東京都大田区昭和島1-6-31 代表取締役社長:林 健司氏)。同社は2021年2月、完全無処理プレート『SUPERIA ZD-II 』の導入後いち早く次世代プレート『SUPERIA ZX』のテストを開始し、全面切り替えを敢行した。この一気呵成の無処理化にはどんな狙いがあったのか。SUPERIA ZXに何を期待し、思い通りの効果が生まれているのか。取締役 生産本部長・白井光男氏、執行役員 製造部担当・松本勝之氏、執行役員 プリプレス部S&D部担当・齋藤孝之氏に、それぞれの立場からお話を伺った。
白井取締役 松本執行役員 齋藤執行役員
■ハイブランドのお客さまの高い環境意識に応えるために
1930年(昭和5年)に東京・京橋区築地で創業してから92年。激動の時代の波を乗り越え勝ち残ってきた大洋印刷は、いまや既成の印刷事業にとどまらず「サイン&ディスプレイ」から「Web ・ 動画制作」「企画」「イベントプロモーション」、さらに「スタジオ運営」に至るまで大幅に業容を拡げ、それらを一手に受注できる自在のワンストップ体制を確立している。
最大の武器は、企業の原点「印刷」である。著名デザイナーから指名されるほど訴求力のある印刷物を、いつでも安定して提供できる優れた感性と技術力。実際、さまざまな作品展において多数の受賞歴を持ち、全国カレンダー展をはじめとする国内での実績はもちろん、87年『ニューヨーク・アートディレクターズクラブ国際展』で日本初の金賞、89年に2度目の金賞を獲得するなど海外での評価も高い。クライアントからの大きな期待に応え続けるため絶対に品質を落とせない状況の中で、使用機材、とりわけ刷版・印刷資材にはこだわりの強い大洋印刷が、使い慣れた有処理から無処理CTP への移行を考えたきっかけは何だったのだろうか。理由の一つを、白井取締役が説明する。
「弊社の取引先にはアパレルや百貨店の中でもとくにハイブランドのお客さまが多いのですが、そうした企業は社会への影響力も大きいわけですから、品質意識だけでなく、皆さん環境に対する意識も非常に高いんですね。当然、我々も志を高く持ち、つねに“いまできる最高の環境対策”を実施していかなければいけません。ですから無処理CTP についても、登場した頃から注目はしていました。ただし、網点再現性や立ち上がりなど本当に実用レベルなのか、品質に厳しいお客さまからいただいている絶大な信頼を損なうようなことはないのか、かえって生産性を落とすことはないのかという懸念もあり、これまでは慎重に各社の製品を比較検討していた、という経緯があります」
無処理CTP への要望レベルが極めて高い同社の目に、ようやく適ったプレートの一つがSUPERIA ZD-II だった。松本執行役員が、導入当時の流れを振り返る。
「2021年2月から、まずは枚葉機で使い始め、使い込んでいくうちにZD-II の優れた総合性能、信頼性の高さを実感することができたので、その秋から全枚葉機の無処理化を進めました。そんな中、22年に入り、視認性が大幅にアップしたSUPERIA ZXが発売されるという話を耳にしたんです。それならすぐにでもテストしてみようと。評判通りに次世代性能を備えたプレートなら、一日も早く切り替えたいですからね」
■視認性、校正適性、傷つきにくさすべてにおいて予想以上
「視認性とともに、とくに注目したのは平台校正機の処理適性だった」と、齋藤執行役員が、テスト導入のチェックポイントについて補足する。
「品質追求の一環として平台校正を重視する当社にとって、枚葉機も校正機も無処理版で一本化できるかどうかは、重要なポイントの一つだったんです。結果は期待以上のものでした。気になっていた視認性は大幅に向上しており、部分的な差し替えがあるときでもこれなら安心して使えると、現場からの評価も高く、校正機の適性も問題ありませんでしたので、思い切って枚葉・平台校正を含めて全面的にZXへの切り替えを実施しました」
白井取締役によれば、導入後、意外なほど多かったのが「校正の無処理化」についての問い合わせだったという。
「本当に校正刷りで無処理版を使えるのかと、見学に来る人もいらっしゃいました。実際、視認性もよくなり、平台校正の機上現像も実用的なスピードに達しているのを目の当たりにすると、皆さんびっくりします。校正屋さんでも、まだ有処理版を使用しているところがほとんどでしょうから」
テスト時には実感しにくかった“予想以上のメリット”もあったのだろうか。松本執行役員は真っ先に「傷の付きにくさ」を挙げた。
「現場で大量の版を扱う上で、これは本当に助かっています。表面に強力な保護層が追加されたそうですが、その効果がはっきり出ているんでしょうね。傷やゴミに対する強さは、ほとんど有処理と変わらないのではないでしょうか。逆に、現像工程がなくなった分、有処理よりもリスクが減って格段に運用しやすくなっています」
平台校正において優れた適性を発揮することが採用の決めての1つになった
視認性や扱いやすさの向上など現場からの評価に対し、経営的な視点で、どんな効果を感じているのか。白井取締役に伺った。「何と言っても無処理ならではのコストメリットが大きいですね。自現機に付随する薬品類の費用が掛からず廃液が大幅に減った分、有処理の頃に比べて明らかなコストダウンが実現しています。それと、もっと大きな観点から実感しているのが、プレート供給体制の信頼性です。近年のコロナ禍を始め世界的に不安定な情勢の中で、国内生産というのは本当に心強い。我々にとってお客さまの納期を守ることは絶対的な使命の一つなんですが、富士フイルムがいつでも安定的に供給してくれるので、安心感が違いますね」
安心感と言えば、肝心の再現品質についてはどうなのか。「ZD-II のときから高く評価している」と話すのは、現在もプリンティングディレクターとして顧客からの要望を直接受け現場を指揮している齋藤執行役員。
「ZXに切り替えてからも、仕上がり品質に厳しい目を持つアートディレクターやクライアントの担当者に、これまで通り充分ご満足いただいています。品質・運用性・供給体制、すべてに“安定している”ということが、トータルに見たときの、富士フイルム無処理プレートの最大の魅力なのではないでしょうか」
画像認識性が向上し、キズや汚れのリスクが減ったことで
作業時の安心感が高まった
■全体の効率化やスキルレス化でさらに個々のスキルを高めていく
短期間のうちに極めてスムーズに完全無処理化を達成し、狙い通りの工程変革を成し遂げた大洋印刷。無処理化のその先に、何を見据えているのだろうか。白井取締役が今後の展望について語ってくれた。
「無処理化によって自現機のメンテナンスもなくなり、経験者にしか任せられなかったことが、ある程度数値化できて誰にでもこなせるようになり、人材活用の幅が広がってきました。最近は刷版を印刷部門で行なっている会社や、スマートファクトリーを目指して工場全体の自動化に取り組んでいる会社も増えているようですが、いずれ当社もそういう方向に進めていきたいですね。その一歩になるのが完全無処理化だと考えています」
無処理化も数値化も、あくまで手段であり、決して目的ではない。企業にとって重要なのは、スキルレス化で現場に生まれた余力で、“人”をどう育てどう活かすかである。大洋印刷が、著名なデザイナーから繰り返し指名されるほど厚い信頼を得ているのは、技術力の高さは言うまでもなく、クリエイターの高度な要望を正確に理解し印刷表現に落とし込める“人の力”“感性の力”によるものだ。それらの力をハイレベルに維持できているのは「プリンティングディレクターの存在が大きい」と白井取締役は言う。
「私も松本も齋藤も皆プリンティングディレクターを経験しているのですが、先方のこだわりが強ければ強いほど、数値化とか標準化という問題ではなく、人と人の感性のぶつかり合いになってくるんですね。その経験を積みながら鍛えられていく。お客さまに育てていただく、と言えるのかもしれません。今後、どんどん自動化や効率化を進めていかなければいけないとは思いますが、スキルレス化の一方で、数値化できない職人的なスキルの部分も追求していく必要があるのではないかと。スマートファクトリー化を図るにしても当社ではつねに“人と機械、感性と技術”、どちらも重視し2つを融合させた変革に取り組んでいきたいと考えています」
そうした“社内的な変革”に対し、社会貢献に繋がる“対外的な企業活動”が、無処理化の目的の一つでもあった“環境対応”である。同社は無処理プレート導入以前から、使用する機器や資材の省エネ性能を徹底追求しCO2 削減に努めるなど、印刷会社視点で積極的にエコファーストの姿勢を貫いてきた。現在の活動状況を、齋藤執行役員がまとめてくれた。
「国際社会で注目されているSDGsにも、すでに全社的に取り組んでいます。SDGsの推進において弊社では、営業活動、生産活動、働き方改革、パートナーシップの4項目に焦点を当てているのですが、この“パートナーシップによる目標達成”を進める中で、富士フイルムさんが提唱するカーボンオフセット活動『Green Graphic Project 』に参加しています。このような取り組みの意義や、その中での完全無処理化の位置づけなどを社員一人ひとりがしっかり理解しお客さまに伝えていけるよう、社員教育にもさらに力を入れていきたいと思っています」
2022.11.21
◆富士フイルムグローバルグラフイックシステムズ XMF Remote導入事例――アインズ株式会社 XMF Remote導入で業務フローの課題解決を図り、営業戦略でも大きな成果 「非接触型校正システム」という新たな価値提案により新規受注獲得
1877年創業の総合印刷会社、アインズ株式会社(本社:滋賀県蒲生郡竜王町鏡2291-3、代表取締役社長:谷口彰氏)は、全体最適化プロジェクト(2017年1月スタート)の一環として、2018年5月に『XMF』『XMF Remote』を導入した。当初から営業部門を含む全社での活用を目的に導入し、計画的な活用定着を進め、制作部門の業務効率化やミスの減少に加えて、営業部門でも本来の営業活動のための時間創出などを実現している。導入に至った経緯や具体的な活用方法、成果、クライアントにおける活用・定着のポイントなどについて、経営企画本部 副本部長・三林照幸氏、プリプレス部 部長・鈴川清一氏、プリプレス部 プリプレス工程課 課長・木内和弘氏、プリプレス部 プリプレス工程課 主任・村方学氏、本社営業 主任・畑元気氏に伺った。
左から三林副本部長、鈴川部長、木内課長
左から村方主任、畑主任
■FFGSによる業務フローの現状分析レポート結果と操作性の高さが導入の決め手に
アインズは1877年(明治10年)に山田兵三郎商店として創業、今年(2022年)で創業145年の歴史を持つ総合印刷会社である。1961年に山田印刷株式会社に改組し、1998年、総合情報企業への新たな躍進の決意を込め、アインズ株式会社へと社名変更した。滋賀県を中心に全国12カ所に支社・営業所を展開。売上高は40億6,000万円(2021年度実績)で、現状は、売上構成のほとんどが印刷によるものであるが、新規事業開発にも積極的に取り組んでおり、「時代が求めるコミュニケーションツールでお客様に唯一無二の価値を提供します」を経営理念に掲げる。また、各地の代表的な中堅印刷企業による事業協同組合EPC-JAPANや全国農協印刷連盟などの業界ネットワークに参加する。
「当社では、コミュニケーション・プラットホーム・カンパニーを目指して、社会問題の解決に貢献すべく、カタログやパンフレット、伝票類といった印刷事業から、自社製品の開発、地元滋賀県の方々をサポートするクラウドファンディング事業まで、幅広く展開しています」(三林副本部長)
中核となる印刷事業では、2017年1月から「営業活動の時間創出」や「入稿から生産までの時間短縮」などを目的とした全体最適化プロジェクトを推進。同社はこのプロジェクトの成功にXMF・XMF Remoteが不可欠だと判断し、2018年5月に導入した。
この導入判断を後押ししたのは、FFGSによるエスノグラフィ分析(業務フローの現状分析)であった。この分析によって営業・間接部門・生産工程の課題が可視化され、それらの課題を解決する上でXMF・XMF Remoteが大きく役立つということが明確になった。
「FFGSさんの分析をもとに当社の業務フローの課題解決を進めた結果、XMFによって効率的な生産体制・業務フローを構築できることがわかりました。また、XMF Remoteを活用することで、営業のデスクワークの工数削減により時間を創出でき、ソリューション営業に注力したり、リモート校正によるお客さまとの関係強化、顧客接点の増加を図るなど、営業改革の促進にもつながるということが明らかになりました」(三林副本部長)
当時、アインズは他社製ワークフローシステムを使用していたが、Webポータルシステムの導入検討のため複数のメーカーのシステムを評価した。その結果、前述の理由に加え、XMF Remoteの操作性の高さにより、多くの顧客に使用していいただけると直感的に判断できたことで、XMF Remoteの導入に踏み切ったという。
導入後は半年ほどかけてXMF(RIP)のCTP版出力のためのテンプレートの作成などの運用環境の準備を進め、2018年9月からXMF Remoteの実運用を開始した。
■ジョブファイル転送、デジタル検版が制作業務の効率化に大きく寄与
アインズでは現在、本社・東京支社・中部営業部の3拠点に30名以上の制作スタッフがおり、全員がXMF Remoteを活用している。制作部門への導入・定着に当たっては、当時全体最適化プロジェクトにおけるXMF・XMF Remoteの担当であった、三林副本部長と鈴川部長が中心となって説明会を開催し、使い方を周知しながら、すべての制作データをXMF Remoteに登録する全ジョブ運用を推進したという。
「ただ機能を説明するだけでなく、実際に使ってもらいながら個別の問い合わせにも対応し、便利さを理解してもらい、定着を図っていきました」(三林副本部長)
現在、XMF Remoteに登録されているジョブ数は約1,200件。毎月200件ほどのジョブが新規に登録されている。
XMF Remoteの導入を機に、同社では営業だけでなく制作スタッフもクライアントと直接やり取りをするようになった。その結果、校正の際、クライアントが求めていることを制作部門で直接把握できるようになり、スムーズな対応が可能に。また、修正結果を制作データに反映させるまでのタイムラグも大幅に削減できた。
「印刷用の素材データなどのやり取りには、ジョブファイル転送の機能が重宝しています。お客さまと営業、制作の3者でファイル共有が簡単に行なえ、また大容量のデータにも対応できるため非常に便利です。外注先や外部デザイナーなどもメンバーに加えておけば、従来のように全員に転送する手間が削減でき、ミスの防止も図れます」(木内課長)
さらに、修正箇所が自動的に比較・表示されるXMF Remoteの自動検版機能も、制作業務の効率化に大きく寄与している。
「自動検版機能の最大のメリットは、制作スタッフ本人が意図していないデータの変更があった場合に、それを確実に発見できる点です。アナログの検版ではやはり限界があります。この機能により、修正指示があった箇所以外も含めた全体の検版が確実に行なえるようになったことで、安心して次工程に回せるようになり、ミスも減りました」(鈴川部長)
これらの相乗効果により、XMF Remote導入後、製版部門の生産性が従来の約2倍に向上しているという。
ジョブごとに原稿や素材データを管理できるため、メール整理などの負荷も軽減されている
■「本来の営業活動」に、より多くの時間を使えるようになった
営業部門については、すべてのジョブに対して、営業担当者が各営業所のプリンターで本社のXMFでRIP済のデータによる校正紙を出力して、クライアントに届けるという運用を想定し、XMF Remoteの運用定着を進めた。校正紙の出力には、XMF Remote導入前から各拠点に設置していたプロダクションプリンター『DocuColor 1450 GA』を使用する。
「当社の生産工程はJapan Colorに準拠した環境を構築しており、『DocuColor 1450 GA』もそれに合わせて調整しています。毎週キャリブレーションを行ない、校正の信頼性を維持しています」(三林副本部長)
XMF Remote導入による営業部門のメリットとして、畑主任は、「様々なお客さまへの提案など本来の営業活動に、より多くの時間を充てることができるようになったこと」を挙げる。進捗状況を社外からでも確認できるようになり、校正や入稿対応のために外出時間を遅らせたり、営業拠点に戻ったりする必要がなくなったためだ。紙ベースでの校正のやり取りが必要な仕事でも、事前にXMF Remoteでデータを共有しておくことで、よりスムーズな進行が可能になったという。
さらに、データ管理などの作業も大幅に効率化できた。
「これまで、お客さまからメールで原稿を受け取ることが多く、複数の案件が重なった時など、データの整理に多くの手間と時間がかかっていましたが、XMF Remoteでは、ジョブごとの共有フォルダにデータを入れて関係者で共有できるので、その手間が省けました。この共有フォルダは、入稿だけでなく、スケジュール表などの共有管理や、撮影写真・Web用データなどの納品などにも使っています」(畑主任)
関係者間でのデータのやり取りが大幅に効率化され、ミスの削減にも繋がっている
■オンライン校正が、クライアントへの新たな価値提供になる
XMF Remoteは現在、アインズにとって重要なコミュニケーションインフラとして定着しており、クライアントの登録件数は約130社・約400アカウントに上る。
「たとえば、過去にメールでのやり取りで不都合を感じられていたお客さまなどには、大きなメリットを実感していただいています」(木内課長)
また、同社では日頃の営業活動で新しい提案を行なう際には、必ずXMF Remoteの活用を盛り込んでおり、とくに若い世代の担当者には受け入れられやすいという。
「企画書を使わずにXMF Remoteの画面をお見せしながら説明した後、マニュアルとアカウント登録のメールをお送りしただけで、そのまま使っていただいたケースもあります」(畑主任)
印刷物の種類別に見ると、とりわけ広報誌関係の仕事では早い段階から活用が進んでいる。ある自治体の広報誌コンペでは、XMF Remoteによるオンライン校正を提案に盛り込んだことが採用の決め手になった。この案件では、担当営業ではなく、制作スタッフを直接の窓口としたことで校正の遅延や校了下版などに柔軟に対応でき、また営業の負担も軽減できたという。
「もちろん、広報誌だけでなく、パンフレットも多いですし、最近では帳票も増えています。他にも、ページものやチラシなど、さまざまな仕事でシステムを採用し、ご利用いただいています」(村方主任)
最近では、デジタルブックの案件でもオンライン校正が採用されているという。
「XMF Remoteの導入によって受注できる仕事の幅が広がり、また既存のお客さまの中でも、いままで入り込めていなかった部署の仕事を獲得できるようにもなりました」(木内課長)
コロナ禍となってからは、社会的に「非接触」「非対面」が求められるようになったことから、同社はXMF Remoteを「非接触型校正システム」という名称で提案している。興味を持ったクライアントには、まずテスト使用でメリットを体感してもらった上で、営業から改めて具体的な運用などについて説明するという流れで提案を行ない、着々とユーザー数を増やしている。
しかしながら、XMF Remoteを使って制作スタッフやデザイナーが直接クライアントとコミュニケーションをとることは非常に有効である一方、必ずしも十分な対応ができない場合もある。そこで、アインズでは村方主任を中心にXMF Remote対応の専門部署を組織した。
「この部署は、制作部門とお客さまの間に立って制作のサポートなどを行ないます。ただ、校正の指示が細かい場合などには、営業がお客さまからお伺いした内容を、この部署で一度整理して制作に伝えるようにしています」(木内課長)
この部署では、クライアントに対して定期的にXMF Remoteの満足度調査も行なっている。
「XMF Remoteの使い勝手や当社の対応などについて、満足度と併せて、不満な点もお伺いしています。調査結果は営業とも共有し、とくに不満の多い点があれば、改善に注力しています。こうした取り組みの結果、お客さまの満足度は70%を上回っています」(村方主任)
■「利益」と「社会貢献」の両立を実現する重要なツール
アインズは創業140周年を迎えた2017年に「アインズ“SDGs宣言”」を発表。社会貢献の観点からSDGsの取り組みにも力を入れている。
「営業的な動きに加えて、地域社会との繋がりを深めたり、社員満足度を向上させたりすることにも力を入れています。SDGsの目標達成に貢献しながら自社の成長も図るため、今年から『利益』と『社会貢献』の両立を目指すESG経営にも取り組んでいます」(木内課長)
三林副本部長によれば、XMF・XMF Remoteはその「利益」と「社会貢献」の両立を実現する重要なツールであるという。
©2022 SANRIO CO., LTD.APPROVAL NO.L634978
アインズはいち早くSDGs活動に注力。"17の目標"を子ども
向けに分かりやすく紹介する絵本も発行している
「コロナ禍で校正業務の非接触化・オンライン化が進みましたが、それ以前からXMF Remoteの活用に取り組んでいた当社は、他社に先んじて差別化を図ることができました。また、顧客満足度調査などを通じて、お客さまとのやり取りがスムーズになり、お客さまの要望をしっかりと理解した上で的確な対応ができるようにもなったと思います。その結果、お客さまからの信頼が得られているのだと考えています」
最後に三林副本部長は、「XMF・XMF Remoteは、生産工程、営業部門を含めた全体最適化を実現しながら、お客さまから求められる確かな品質の製品・サービスを提供するのに不可欠なツールになっている」と語り、今後もクライアントとの関係性強化に活かしていく考えを改めて強調した。
2022.11.10
◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ 生産工程最適化事例― ―株式会社第一印刷所 MISから印刷工程までのJDF連携フローにより、生産効率を一気にアップ システム・組織の両面から最適化。世界トップクラスの品質と生産性を実現
新潟に本社を置き、印刷を中心に情報加工を幅広く手がける株式会社第一印刷所(代表取締役社長:遠山 亮氏、本社:新潟市中央区和合町2-4-18)は、生産改革の一環として、完全自動運転コンセプトの最新オフセット印刷機の導入に加え、MISと『XMF』を連携させたJDFワークフローの構築により、かねてから追求してきた「生産性と品質の高水準の両立」に磨きをかけている。印刷機メーカーのハイデルベルグ、MISベンダーの両毛システムズ、ワークフロー全体のコーディネートを担うFFGS、そして第一印刷所グループという4社の協働によるプロジェクトとなった今回の取り組み。その経緯と具体的な効果について、代表取締役社長・遠山 亮氏、代表取締役専務 製造本部長・小出博信氏、製造本部 プロダクトD’sNET推進室 室長・南清人氏に伺った。
■ジョブチェンジを極限まで効率化するために
第一印刷所は、新潟県内・東京都内合わせて18カ所に拠点を持つ総合印刷会社。グループ会社7社と独自のネットワーク『D’s NET』を構築し、各社との相互連携により、プランニングから印刷・加工、配送、さらにはBPOサービス、イベントの企画運営、デジタルメディア制作に至るまで、幅広い領域を網羅したワンストップサービスを提供する。
印刷事業の製造拠点は新潟市江南区曙町の本社工場に集約。プリプレスおよびポストプレス工程は、いずれもグループ会社の株式会社プレスメディア、株式会社あけぼのがそれぞれ担っているが、いずれも第一印刷所の本社工場と近接しており、運用上も密な連携によって一体化したワークフローが構築されている。
左から遠山社長、小出専務、南室長
第一印刷所の大きな強みの一つは、スピードと品質を極めて高い次元で両立する生産体制にある。オフセット印刷においては、AM230線による高精細印刷を基本とし、LED-UV仕様の最新オフセット印刷機と、インライン品質検査装置、1級・2級技能士の資格を持つオペレーターによる徹底した品質管理により、同社が掲げる“極み印刷”のコンセプトを具現化している。また、小ロットジョブについては、富士フイルムのインクジェットデジタルプレス『Jet Press 750S』により、オフセットと同等の高品質な印刷物を短納期かつ最適なコストで提供するオフセットとデジタルを融合したハイブリットワークフローを確立している。
そんな同社が今回取り組んだ生産工程の最適化は、これまで追求してきた効率化をさらに高い次元へと昇華させる、自動化への挑戦でもあった。
「小ロット化が進む環境下で、オフセット印刷の現場で課題になっていたのが、ジョブチェンジをいかに効率化するか、ということでした。ジョブ間の準備時間を極限まで短縮したかった。最新マシンの自動化技術でその実現を目指しました」(小出専務)
■MISの入力精度を高めることで印刷機の自動化を活かす
ただ、この「印刷機の自動化」を最大限に活かし、生産工程全体の効率アップに結びつけるには、前工程の見直しが必要だった。具体的には、MISへの受注情報(印刷物の仕様など)の正確な入力と、その情報を生産工程で活用するデータ連携の仕組みの確立である。
「私は2015年に製造本部長に就任しましたが、当時、『既存の設備では今後勝ち残っていけない』と感じていました。競争力を高めるには、大砲とレーダーが必要だと。そこでまず大砲としてJet PressとハイデルベルグのXL106を導入したわけですが、大砲の弾を当てるにはレーダーが要る。そのレーダーに相当するのが、MISや『XMF』を軸とするワークフロー。今回最適化を図った部分です。これによって、『職人の手で紙にインキを乗せる』というオールドビジネスを、ニュービジネスに変えることができると考えました」(小出専務)
従来のフローの大きな課題の一つは、MISへの入力情報が標準化されていないことだった。営業部門での使いやすさを優先してMISをカスタマイズしていたため、結果として「手書き伝票をPCに置き換えたレベル」のものになっていたという。
「自由入力が可能だったので、確かに営業にとっては使いやすかったのですが、個人によって入力する項目にバラつきがありました。そのため、生産管理部門であらためて製品仕様などを確認し、工程管理システムに入力し直すという二度手間が生じていたのです。当然、受注と実績もリンクしていない状態でした。自動化フローを実現するには、この入口から変えていく必要があったわけです」(遠山社長)
そこで、MISと工程管理システム・ワークフローシステムとの連携フローを構築するべく、新たなMISとして、両毛システムズの『PrinTact』を導入。営業による受注情報の入力項目も統一を図った。さらに、ワークフローシステム側は、2014年から使用している『XMF Complete』『XMF Remote』の環境に、MIS連携ツール『XMF Controller』を追加。これにより、MISの受注情報からXMFジョブを自動生成するフローが実現し、面付け作業含む各種プリプレス設定の効率化および印刷工程へのジョブデータ継承も可能になった。
MIS上で印刷機の予定を管理し稼働状況の見える化も実現している
■属人化していた作業を見える化し、フローを再構築
この連携フローの構築にあたっては、FFGSがコーディネーター役として全面的にサポートを行なったが、南室長は「とくに、課題を見える化し解決策を見出していくプロセスを、客観的な視点でサポートいただいたのが成功の要因になった」と評価する。
「たとえば、『XMF』でのジョブ作成の作業。従来は熟練した担当者が手がけており、他の者から見るとどれだけ手間がかかっているのかもわからず、ブラックボックスの状態でした。そこで、客観的に見て改善できる部分がないかを検証し、問題点を洗い出した上で、当社の業務フローや現実的にできる範囲、作業負荷などを加味しながら解決策を見出していった。この一連の作業を、FFGSさんとディスカッションしながら進めたことで、あらゆるジョブのパターンにおいて前後工程と連携した、より有効なフローを構築できたと思っています」(南室長)
さらに、MISから『XMF』、印刷機へのデータ連携についても、実際のジョブを想定した処理の流れの確認、課題の見える化とその解決方法の検討を、FFGS、両毛システムズ、ハイデルベルグと協働で進めていった。
「さまざまなベンダーとの連携実績が豊富なFFGSさんにコーディネート役を担っていただいたからこそ、4社ワンチームで取り組むことができ、マルチベンダーのワークフローを完成させることができたのだと思います。私どもが各ベンダーさんと個別にコンタクトをとりながら進めていたら、全体をまとめるのに相当苦労したでしょう」(遠山社長)
■プリプレス工程ではジョブ作成の工数が4割削減
では、今回の生産工程最適化により、どのような効果が生まれているのだろうか。南室長によると、プリプレス工程においては、『XMF』でのジョブ作成を中心に、大幅な工数削減が図れているという。
「MISの情報から『XMF』のジョブを自動作成できるようになったことが大きいですね。通常のページ物制作では70ほどのタッチポイントがありましたが、新しいフローでは、それを4割ほど削減できています」(南室長)
従来のタッチポイントの数が多かったのは、プリプレス段階からカラーマネージメントを徹底している同社ならではの事情もある。
「これまでは、使用する印刷機や紙の種類、インキの組み合わせに応じて、CTP出力担当者が1件ずつ、CTPカーブの設定を行なっていました。とくに、ページ物で複数種の紙を使うようなジョブでは、タッチポイントの数は膨大になります。今回、MIS-XMF連携によってカーブ設定も自動で行なえるようになったことで、作業効率が上がったのはもちろん、ミスの削減にもつながり、オペレーターの安心感も高まっています」(南室長)
また、営業部門でのMISへの入力作業の標準化により、生産管理部門での確認・作業負荷も軽減された。
「MISへの入力の手間は増えることになるので、営業からは当初、不満の声も出ましたが、いまでは当たり前のこととして定着していますし、受注情報の正確な入力を徹底することで、営業の知識習得にもつながっています」(遠山社長)
さらに、システム面だけでなく組織体制も見直し、第一印刷所(印刷工程)とプレスメディア(プリプレス工程)の連携も強化。業務的には両社を事実上統合した形となり、プリプレス~印刷工程間のよりシームレスなフローが実現した。
こうしたシステムの再構築や組織戦略の相乗効果により、プリプレス工程だけで1~2名分の工数削減が図れており、多能工化と合わせて人員配置の柔軟性が増したという。
MIS-XMF連携により、ジョブ作成の工数が大幅に削減された
■戦略課題だった準備時間は「平均9.0分」まで短縮
一方、印刷工程においては、準備時間の削減効果が明確に表われている。XL106導入前、の2014年の主力オフセット機では43分ほどかかっていたが、XL106の2台体制構築後の2021年の平均準備時間は10.8分(XL106の2台平均)と約75%減。さらに、JDFの運用を始めた半年間の実績では17%削減され、なんと9分。これは、特色・プロセス4色の色替えなども含めた平均値であることを考えると、驚異的な数字であり、機材メーカーからも世界トップクラスの生産性と評価されている。
「簡易なジョブでは5分を楽に切ります。とくに、JDF運用は一つのジョブを刷り終わってから次の刷版がセットされるまでの時間短縮効果が大きいですね。そのセットアップにJDFを使うことによって、用紙やインキなどの情報の手入力が不要になっており、この部分だけで比較すると3割以上の時間短縮になっています」(南室長)
JDF運用の応用として、MIS側でも、印刷準備に必要なデータ(JDF+PPF)がすべて揃っていることを印刷予定表上にて一目で確認し送信できる仕組みをつくることによって、現場での余計な確認作業を不要にするといった工夫も行なっており、これも印刷準備時間の削減に大きく寄与している。
また、同社は小ロットのジョブを『Jet Press 750S』に、中~大ロットのジョブをオフセット機に振り分ける「オフセット・デジタル共存のハイブリッド運用」を行なっており、これによってオフセット枚葉部門全体の稼働効率を高めている。
こうしたさまざまな最適化の相乗効果により、枚葉印刷における生産性は、小ロット化が進んだにもかかわらず、2014年比で約1.8倍と大幅に向上(約4,000枚/時向上)し、その改善効果は、印刷機の間接時間も含め、約14,658時間/年を見込んでいるという。
小ロットジョブをJet Press750Sに振り分けることでオフセット機
の稼働率を高めている
■働き方のイノベーション、企業としての魅力アップを目指す
このコロナ禍でも投資を止めず、着々と生産改革を進めてきた第一印刷所。その結果、製造を担うグループ4社の利益率は、最適化の活動を始めた当初から6.9ptと大きく向上した(2022年8月現在)。また、生産工程全体の効率化により、印刷機オペレーターが後加工の作業に携わるなど、“人員配置の最適化”も実現している。しかし、同社の挑戦はこれがゴールではない。小出専務は「今回構築した新しいワークフローをさらに磨き上げ、生産性アップだけでなく、働き方のイノベーションにもつなげていきたい」と今後を見据える。
「たとえば、印刷機のワンオペ体制を実現し、週4日、5~6時間勤務といった多様な働き方を可能にする。こうした環境整備を推し進めることで、企業としての魅力を高め、若い方々に“第一印刷所で働きたい”と思ってもらえる存在を目指したいですね」(小出専務)
その上で、FFGSをはじめとするベンダーとのパートナーシップを引き続き大切にしたいと語る小出専務。最後にこう締めくくった。
「今後も私どもの課題に対してさまざまな提案をいただき、一緒にディスカッションしながら、さらなる変革の道を探っていければと思っています。また、今回の生産工程最適化の成果については、きちんとデータをとり、皆さんにフィードバックしていきます。当社だけが利益を享受するのではなく、結果を共有してお互いの成長につなげるということも、ビジネスパートナーとして大切なことだと考えています」
2022.10.16
◆富士フイルム 「IGAS2022」出展で記者発表会を開催 「SUPERIA ZX」を出展、乾式トナーB2機の技術出展も 富士フイルム、富士フイルムBIとFFGSの3社の総合力で迎える
■メッセージは「つながる」「流れる」「広がる」
富士フイルム株式会社は、10月7日、六本木の東京ミッドタウン本社で、11月24日(木)から28日(月)まで有明の東京ビッグサイトで開催される国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展「IGAS2022」への出展に伴い、出展概要の記者発表会を開催した。
今回の「IGAS2022」は、昨年7月の富士フイルムと富士フイルムビジネスイノベーション(以下、富士フイルムBI)の印刷関連事業統合後、初のIGASとなる。富士フイルム、富士フイルムBI、FFGSの各社からのメッセージとともに展示概要を説明した。IGAS2022で富士フイルムグループは「BELIEVING IN PRINT~つながる。流れる。広がる。新たな印刷ビジネスの魅力を、ここから。」のテーマで出展。無処理版の新製品「SUPERIA ZX」、「JetPress 750S」高速化モデルを出展する他、乾式トナーを採用したB2サイズ機Revoria Press B2の技術展示も行うなど、最新鋭機を紹介する。
左から、富士フイルム グラフィックコミュニケーション事業部長 下坂 裕昭氏、
富士フイルムBI グラフィックコミュニケーション事業本部長 木田 裕士氏、
FFGS 代表取締役社長 山田 周一郎氏
記者発表では最初に、富士フイルムグラフィックコミュニケーション事業部長の下坂 裕昭氏があいさつに立ち、富士フイルムブースの出展位置づけについて説明を行った。
下坂事業部長
「今回のIGASで掲げたキーメッセージは「つながる」「流れる」「広がる」でございます。このメッセージに私どもは、システムや工程、人や会社がシームレスにつながり、ジョブやデータがスムーズに流れ、印刷ビジネスが大きく広がっていく姿をイメージしています。オフセットからゼログラフィーとインクジェットの両面の技術でデジタル印刷を幅広くカバーする製品ポートフォリオを揃えて参りました。今回も新しい無処理のプレートやゼログラフィーのプリンター等で極めて強力な新製品を発表させていただきます今回のIGASでは、FF、FBとFFGSの3社の総合力でお客さまをお迎えします。印刷工程を考える上で最適なパートナー会社様のシステムとの組み合わせ、オフセットもデジタルも境目なく統合する実践的なワークフロー構成をご覧いただきます。印刷のお仕事とビジネスの『つながる』『流れる』『広がる』を多角的に訴求してまいります」という趣旨を述べた。
■「FUJIFILM Smart Factory」と最新のデジタルプレスの技術展示
続いて、富士フイルムビジネスイノベーション執行役員・グラフィックコミュニケーション事業本部長の木田 裕士氏が、ブースで展開するスマートファクトリー化について説明した。
木田執行役員
「FFブースのテーマ「Believing in Print『スマートファクトリー化(自動化でつなげる)』『工程変革(効率化でながれる)』『スキルレス化(働き方変革で価値をひろげる)』を中心に、入稿・印刷・後加工とそれぞれの工程間をも自動化でつなぐことで最適な生産環境を提案します。具体的には生産工程の見える化を実現する「Revoria One Production Cockpit」(技術展示)を核に、個々のお客様の環境や人員、ジョブの内容に応じてオフセット印刷やデジタルプレスの併用、後加工機はもちろん、搬送や仕分など、これまで難しかった各工程間の継ぎ目までも含めて一元管理できる「真の統合ワークフロー」によるスマートファクトリーを構築するということです」と、新たな印刷ビジネスの魅力を発信していくと述べた。
■新完全無処理CTPプレート「SUPERIA ZX」や印刷の魅力を再発見する企画も
最後は、富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ 代表取締役社長の山田周一郎氏が全体の出展概要について説明を行った。
山田社長
「オフセットラインやデジタルラインを問わず、さまざまなメーカーのシステムをオープンにつないだ実機デモを交え、新たな印刷の価値を生み出す効率的で実践的な近未来の生産現場を、ご来場された皆様に体感していただきます。昨年来、オフセット印刷とデジタルプレスの共存により最適な生産環境を構築する「最適生産ソリューション」の提案活動を展開してきました。具体的な提案として、印刷の全行程にわたる自動化・効率化・可視化を実現する「Revolia One Production Cockpit」を中心に、入稿から加工、発送まで自動化された運用を、協業メーカーと連携しオフセット印刷とデジタル印刷のそれぞれで実演します。また、「使いやすさ」を全面的にレベルアップした次世代の完全無処理プレート「SUPERIA ZX」を出展します。視認性が大幅に向上したのに加え、刷り易さや耐刷性などの基本性能も向上しており、印刷業界全体の無処理化による環境対応や刷版工程の自動化へ貢献していきます。さらに、来場されたお客さまのビジネスのヒントとなるように、強みを活かして成長されている元気な印刷会社様にインタビューを行い、その企業が考える「印刷ビジネスの魅力」と、魅力を活かしたビジネスモデルについて、多数の事例をご紹介するコーナーを企画しています。「印刷の魅力」を再発見し、将来の成長戦略についてディスカッションできる場としたいと考えています」と、述べた。
今回の注目の新製品は、世界初・乾式トナー技術を採用したB2サイズ枚葉デジタルプレス「Revoria Press™ B2(仮称)」の技術展示と、10月11日にリリースした新完全無処理CTPプレート「SUPERIA ZX」である。「IGAS2022 富士フイルムブース特設サイト」を設けて展示の概要を詳しく説明している。