ニュースリリース

2022.08.02

◆モリサワ  新たなフォントサービス「Morisawa Fonts」を発表 「MORISAWA PASSPORT」の後継サービスとして10月4日にリリース

  株式会社モリサワ(代表取締役社長:森澤彰彦 本社:大阪市浪速区敷津東2-6-25 Tel:06-6649-2151 代表、以下モリサワ)は、クラウド型の新たなフォントサービス「Morisawa Fonts」を 2022104()にリリースする。

●フォント利用の自由度が高まる「Morisawa Fonts
 Morisawa Fontsは、1,500書体以上のフォントが好きなだけ使えるライセンス製品「MORISAWA PASSPORT」の書体ライブラリーを引き継ぎ、デバイスに依存しないユーザー単位のライセンスで利用できるフォントサービスである。
 近年急速に業務のクラウド化が進む中、テレワークをはじめデザインの作業環境も変化してきている。「文字とつながる。世界がひろがる。」をタグラインに掲げるMorisawa Fontsでは、新たにユーザーライセンスを採用し、例えばオフィスと自宅で異なるPCを使う場合でも、同一アカウントでログインすることで、同じフォント環境の再現が可能である。フォントやライセンス情報はクラウド上で管理されており、Morisawa FontsWebサイト上で使いたいフォントをアクティベートすることで簡単にインストールできる。

  また、利用するフォントは、制作物やプロジェクトに合わせて複数のフォントコレクションを設定してまとめることもできる。このほか、サービスで提供されるフォントを使用して制作したロゴなどの商標登録も可能となっている。
 Morisawa Fontsにはすべてのフォントと機能が利用できるスタンダードプランと、5書体のフォントが無料で試せるフリープランがある。今後、フォントや機能の追加はもちろん、さまざまなユーザーの用途に対応したプランも拡充していく予定である。
 フォント製品「MORISAWA PASSPORT」は2028年度にサービスを終了。モリサワでは2005年にMORISAWA PASSPORTの提供を開始し、それまでの1書体ごとのライセンスではなく、豊富な書体ライブラリーを定額で使える画期的なライセンス製品として、広く利用されてきた。長きにわたり、新書体の追加はもちろん、制作データのやりとりの簡便化や明確なコスト管理など、フォントを扱うための“パスポート”
として、サービスの充実に努めてきた。
 Morisawa Fontsでは、クラウドサービスへと移行することで、時代のニーズにマッチした快適なフォント環境をスピーディーに提供していく。これに伴い、MORISAWA PASSPORTは、202211月以降順次、新規契約・契約更新の受付を終了し、2028年度にサービスの提供を終了する予定である。
モリサワは、引き続きユーザーの声に耳を傾け、シームレスなデザイン環境の実現に向けてサービスを改善し、進化させていくとのことだ。

Morisawa Fonts「スタンダードプラン」の詳細
・ モリサワグループのフォントはもちろん、ヒラギノシリーズ、昭和書体など他社フォントを含む1,500書体以上のライブラリーが利用可能 (※1
・ ユーザー単位のライセンスにより同一アカウントでPC2台まで登録可能(同時利用はできない)
Webサイト上でフォントをアクティベートすることで簡単にインストールでき、異なる端末であってもログインすれば、同一のフォント環境を再現
・ 制作物やプロジェクト単位で利用するフォントをグループ化できるフォントコレクション機能
・ サービスで提供されるフォントを使用して制作したロゴなどの商標登録が可能
・ 複数ライセンスを契約している際のライセンスの割り当てができるライセンス管理機能
1ライセンスにつきiPad 1台の利用が可能 (※2
・ 自動更新設定で、毎年の更新手続きが不要 (※3
(※1MORISAWA PASSPORTに搭載されているFont Bureau社(The Font Bureau Inc.)の欧文フォント、
   HANYI社(北京漢儀科印信息技術有限公司)の中国語(簡体字)フォント、TrueTypeフォントは
   Morisawa Fontsには搭載されない。
(※2 MORISAWA PASSPORT for iPadでの提供となる。
(※3 Webサイト上で契約手続きの場合。
●キャンペーン価格
1
ライセンスあたり48,180円(税込)
 2022104日(火)~2023103日(火)までMorisawa Fontsリリースキャンペーンを実施し、通常価格(64,240円)の25%オフとなる。10ライセンス以上の契約で、さらなる割引を用意している。詳しい価格はサービス紹介ページを参照。
 MORISAWA PASSPORTを契約中のユーザーには、移行特典価格で契約が可能である。
以下の「MORISAWA PASSPORTに関するご案内」を参照。
●契約期間:1
●提供開始日:2022104日(火)
Morisawa Fonts
サービス紹介ページは以下より
https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/morisawa-fonts/
MORISAWA PASSPORTに関する案内
MORISAWA PASSPORT
2028年度にサービスの提供終了を予定している。
 これに伴い、順次各種手続きを終了し、また、2024 年以降は新書体が追加されない。詳しくは、以下の「MORISAWA PASSPORT今後の予定」を参照。
 なお、MORISAWA PASSPORT契約者向けに、契約開始から 2 年間通常価格から25%オフの48,180 円(税込)となる「MORISAWA PASSPORTご契約者様向け移行特典」を用意している。また、フォント環境の移行ができる便利なツールを利用することが可能である。
 特典の詳細や、Morisawa Fontsへの移行(ご契約の切り替え)についてはサービス紹介ページで案内している。不明な点は、契約者様専用のサポートサイトより問い合わせを。
MORISAWA PASSPORT今後の予定

  

業界別MORISAWA PASSPORT(アカデミック版、教育機関向け、公共団体向け)の予定は別途案内する。
MORISAWA PASSPORT
契約者様向けMorisawa Fonts移行サポートサイト
https://mf-migration.morisawa.co.jp/hc/ja
モリサワについて
 1924年に世界に先駆けて「邦文写真植字機」を発明して以来、「文字を通じて社会に貢献する」を社是に研究・開発を続けているフォントメーカーです。1,500 書体以上が使えるフォントライセンス製品「MORISAWA PASSPORT」をはじめ、Webフォントや組込みフォント、多言語ユニバーサル情報配信ツールMCCatalog+(エムシーカタログプラス)などを提供している。また、文字のかたちがわかりやすく読み間違えにくいことをコンセプトにユニバーサルデザイン(UD)フォントを開発・提供、第三者機関と共同で可視性・可読性に関する比較研究報告を実施している。

●同件に関する問い合わせ先
 株式会社モリサワ 東京本社 ブランドコミュニケーション部 広報宣伝課
 
Tel:03-3267-1318
 E-mail:pr@morisawa.co.jp
SNS
でも最新情報を公開している
Twitter
@Morisawa_JP
Facebook
@MorisawaJapan
※記載されている内容は、予告なく変更する場合がある。
※記載されている会社名・商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標である。

2022.07.11

◆コニカミノルタ   デジタル印刷で人と企業のコミュニケーションを革新する共創プラットフォーム「AccurioDX」を立ち上げる

  コニカミノルタ株式会社は、このほど、デジタル印刷で人と企業のコミュニケーションを革新する共創プラットフォーム「AccurioDX(アキュリオディーエックス)」を立ち上げた。AccurioDX」は、印刷を発注したいと考える全ての人や企業、印刷会社、物流会社、ソリューションプロバイダーといった多様なプレイヤーが参加できるプラットフォーム。参加する人々の専門性やアイデアで、デジタル印刷ならではの価値を共創し、新たな市場拡大を目指していく。

   


【パーソナライズ印刷販促物の発注と効果測定を容易に】
 デジタル印刷の特長の一つに、印刷物の内容や受け取るタイミングを、受け手一人一人に合わせることができるパーソナライズ(個別最適化)があり、この方法をダイレクトメールやチラシに導入することで、より効果的な販促活動が期待できます。しかし、その導入には企画、データマネジメント、物流などで生じる手間やコスト、効果測定のノウハウの不足が課題となっていた。
 コニカミノルタは「AccurioDX」による共創で、パーソナライズされた印刷物の発注工程の簡易化と効果測定を実現した。この効果測定では、マーケティング活動における顧客満足度向上への効果を可視化している。


     
 
  また、パーソナライズされた印刷物は必要な情報を必要な人だけに届けることができ、限られた資源の有効活用やCO2削減にも貢献する。「AccurioDX」で発注を簡便にすることでデジタル印刷の利用の場を広げ、地球環境に配慮したマーケティング活動を支援する。

【印刷発注者から始まる「価値共創プログラム」】
 AccurioDX」では、新たな共創を始めるための「価値共創プログラム」を運用している。このプログラムでは印刷発注者を起点として、コニカミノルタがともにマーケティング活動のコミュニケーション手段をデザインし、プログラムに参加しているさまざまなパートナーとともに、共創の連鎖を生みだすことを目指している。既に20社以上の企業が「価値共創プログラム」に参加しており、共創活動を実践している。ここから創りだされる大小のソリューションの組み合わせが「AccurioDX」を構成し、応用によって広く展開される。

【「価値共創プログラム」事例:チラシ同梱でWEBアクセス率が1.67倍に】

 コニカミノルタがEコマース事業者と物流倉庫の双方をつないで共創の場を構築し、パーソナライズチラシの同梱でWEBアクセス率を短期間で1.67倍に向上させるという販促施策を実現した。
 冷凍おかずの定期便サービス「三ツ星ファーム」を展開するイングリウッド社は、顧客の好みやライフスタイルに合わせてメニューをカスタマイズして商品を配送しているが、安定的に注文を確保するためには、より顧客に魅力的な提案が必要と考えていた。パーソナライズされた印刷物を商品に同梱する案はあったが、過去の注文履歴に連動した印刷データ生成の手間や、印刷物を同梱する物流倉庫での作業が煩雑になることが予想され、実施に踏み切れずにいた。
 一方、物流企業のアイズ社は、同梱物の種類を増やしたいというクライアントからの要望に対して、作業負荷を増やさず、かつ作業スピードを損なわずにミスのない同梱、検品を実現するための具体的な方策を探していた。

 そこで、コニカミノルタは両社に共創活動を提案し、販促企画、梱包物流双方の印刷利用に関わる課題に向き合い、ともに効率的な作業手順の検討や、販促施策効果を検証した。その結果、自動化システムと人的オペレーション双方の活用で、冷凍おかず発送時のパーソナライズ印刷物同梱を構想から3か月という短期間で実現した。さらに、印刷されたQRコードからのWEBサイトアクセス率が従来の1.67倍に向上したという効果を立証することで、Eコマース事業者と利用者との新たなコミュニケーション手段を確立することができた。


【コニカミノルタが目指す印刷業界の姿】
 近年、消費行動や労働環境の変化、気候変動や限られた資源といった環境問題への関心の高まりに伴い、印刷物やその生産に対する要求も変化しており、受発注者をはじめ印刷に関わる人々全体の変革がより強く求められている。
 コニカミノルタは、デジタル印刷こそがその変革の中心において役割を発揮するという信念のもと、これまで提供してきた自動化やスキルレスといった「生産プロセス効率化」と、売上利益向上を支援する「付加価値創造」の両輪をさらに追求している。そして、より多用化するニーズに応え、印刷物を企画・発注する人々、印刷物の生産・物流に関わる人々、印刷物を利用する全ての人々に新しい印刷の世界を広げていく。

【問い合わせ先 】

コニカミノルタ AccurioDX 共創事務局:https://accuriodx.konicaminolta.com/contact

 

2022.07.04

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ   代表取締役社長に山田周一郎氏が就任

 富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社は、630日に開かれた取締役会で、代表取締役社長に山田周一郎氏を選任した。辻 重紀氏(辻は一点しんにょう)は取締役会長に就任した。

  

    山田周一郎社長

経 歴

氏  名 : 周一郎(やましゅういちろう)
生年月日 昭和41831

出 身 地 兵庫県

現 住 所 東京在住

最終学歴 平成23関西学院大経済学部卒

    平成24富士写真フイルム株式会入社

     平成154富士フイルムグラフィックシステムズ株式会社(出向)
                  平成182
グラフィックシステム事業マネージャー
                  平成202富士星光印刷機材(上海)有限公司(出向)
                  平成226
富士フイルム(中国)投資有限公司

                  平成2410富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社(移籍/
                      中国在籍中)

                  平成257メディカルシステム事業マネージャー(再入社)

                  平成2810メディカルシステム事業統括マネージャー

                  令和21グラフィックコミュニケーション事業統括マネージャー

                  令和44富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社(移籍)

                     執行役取締役会室長

                  令和46代表取締役社就任

                  現在に至る

新役員は次のとおり。
取締役会長・執行役員 辻 重紀氏
代表取締役社長・執行役員 山田 周一郎氏
取締役・常務執行役員    安田 庄司氏
取締役 浜 直樹氏(非常勤)
取締役 下坂 裕昭氏(非常勤)
監査役 伊村 直也氏(非常勤)
専務執行役員 河合 久仁浩氏
常務執行役員 藤嶋 克則氏
常務執行役員 柳川 尚氏
執行役員 公盛 茂氏
執行役員 増井 龍太氏
執行役員 西川 博史氏
執行役員 前田 弘毅氏
執行役員 鬼山 信夫氏


2022.06.22

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ  最適生産ソリューション採用事例――サクラグループ オフセット/デジタル共存運用で枚葉機に余力を生み、内製化を推進 現場の意識改革、部門間の協力体制強化などで生産基盤をより盤石なものに

 名古屋を拠点に、印刷を中心とした販促支援ビジネスを展開するサクラグループ(代表取締役社長:野々村昌彦氏、本社:愛知県名古屋市南区千竈通6-35)は、FFGS、富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)のサポートのもと、オフセット印刷とデジタル印刷の最適な運用体制を確立し、内製化率向上、利益アップを果たしたほか、現場の意識改革や、部門間のコミュニケーション改善などの社内改革も実現している。最適生産環境の構築に着手した背景や具体的な取り組み内容、現時点での効果などについて、株式会社サクラホールディングス 専務取締役・小鹿晃義氏、製造部 生産管理課 課長・鈴木秋弘氏、株式会社サクラアルカス制作部 グループリーダー ディレクター・大西征二氏に伺った。

■オフセット機のオペレーター確保が喫緊の課題だった
サクラグループは、製造(刷版・オフセット印刷・加工)および生産管理を担う「株式会社サクラホールディングス」、デザイン・制作および営業をメインとする「株式会社サクラアルカス」、デジタルメディアを活用したプロモーションの企画・制作を手がける「株式会社ボーダー・アンド・ポーター」の3社から成り、企業の販促活動を多角的にサポートしている。

同グループの強みの一つである制作部門は、約60名のスタッフを擁し、スピードが求められるチラシの制作や、紙メディアとデジタルメディアを組み合わせた販促施策などにも柔軟に対応。撮影スタジオも完備する。印刷部門には、オフセット輪転機(B2両面4色機)2台と枚葉機(菊半裁4色機)1台、フルカラーデジタル印刷機(IridesseTM Production Press2021年導入)2台を持ち、チラシやPOP、カタログなどの商業印刷物から、封筒・帳票類まで幅広く手がけている。

そんなサクラグループが、印刷工程を中心とした生産改革に着手したのは、2019年のこと。人材確保の難しさや作業の属人化などにより、印刷設備を柔軟に活用できていないという課題が、その背景にあった。

オフセット機については、輪転機・枚葉機ともオペレーターの高年齢化が進んでおり、一方で、新しい人材を募集してもなかなか応募が集まらず、人材の確保が困難な状況でした。加えて、枚葉機については、1ジョブあたりの平均通し枚数が3,000弱になっており、生産効率の面からもデジタル印刷への移行が必要だと感じていたのです」(小鹿専務)

しかし、当時(Iridesse導入前)使用していたデジタル印刷機は、POP出力の専用機として経済性優先で導入したものだったため、他の用途で生産機として使うには、安定性などの面で課題があったという。さらに、大西氏は「デジタル印刷機の運用体制も見直す必要があった」と語る。

「デジタル機によるPOP出力は、一人のオペレーターが専任で行なっていたため、小ロットジョブをデジタル機に移行するにも、その余裕がなかった。そのため、もっと柔軟にオペレーションできる体制をつくり、属人化を解消する必要がありました」

こうした課題を解消するため、同グループでは、オフセットと同等の生産機として使えるデジタル印刷機を新たに導入することで小ロットジョブのデジタル移行を進め、オフセット機(枚葉機)とデジタル機のより効率的な運用環境を整えようと考えた。

■ジョブ分析に基づくオフセット/デジタルの分岐点は2,000通し
オフセット/デジタル共存運用の構築にあたっては、枚葉機のジョブ内容や運用状況などの現状分析、デジタル移行による効果のシミュレーションなどを、富士フイルムBI(当時の富士ゼロックス)・FFGSと共に実施。印刷工程の課題をあらためて明確にするとともに、どれだけのジョブをオフセット印刷からデジタル印刷に移行できるかを検証した。

  小鹿専務
「当時Excelで管理していた枚葉機の稼働実績データを4カ月分、富士ゼロックスさんにお渡しし、分析していただきました。その結果、500件あまりのジョブのうち、2,000通し以下のジョブが3割以上を占めており、そうした小ロットのジョブや、両面印刷のジョブが集中すると残業時間が発生していることなどが、あらためて把握できたのです。以前から、各日の通し数・ジョブ数・版数などは日報上で確認しており、1ジョブあたりの平均通し数が3,000弱まで下がっていることなど、大まかな傾向はわかっていましたが、この分析によって、現状の課題をより正確に認識し、社内共有することができました」(小鹿専務)
枚葉機のジョブ分析結果をもとに、サクラグループでは、枚葉機とデジタル機の新たな運用方針について検討。当時POP専用機として使用していたデジタル印刷機3台の代わりに、より汎用的に使用できる生産機として『IridesseTM Production Press』を2台導入し、枚葉機で非効率になっていた小ロットジョブをIridesseに移行する形で、印刷工程の最適化を図ることにした。

「富士ゼロックスさんからご提案いただいた“オフセット印刷とデジタル印刷の振り分け基準”は、約2,000通しでした。それまで私どもは1,000通し前後と考えていたので、意外と分岐点が高いなという印象でしたが、時間やコストのシミュレーション結果を見せていただくと、『なるほど』と。明確な根拠となるデータを示していただけたことで、現場も『これならデジタル印刷に切り替えた方がいい』と納得感を持つことができました」(鈴木課長)

新規のデジタル印刷機としてIridesseを選んだのは、「品質・生産性・稼働安定性を高いレベルで兼ね備えていると判断したから」と大西氏は語る。

「実は以前、同じ富士ゼロックスさんの『Color 800 Press』を使用していたことがあり、品質安定性や堅牢性の高さはそこで実証済みでした。その後継機であるIridesseなら、無駄な機械停止時間が抑えられ、オペレーターの負荷も減り、デジタル印刷機ならではのメリットが最大限に得られると考えたわけです」(大西氏)
                                  
4カ月分の枚葉機稼働実績データの分析結果
                            

■現場の意識改革を促すことで、デジタル移行をスムーズに

 ところで、サクラグループでは前述の通り、サクラアルカスが主にデザイン・制作・営業を、サクラホールディングスが刷版以降の製造工程を担っており、印刷設備に関しても、デジタル印刷機はサクラアルカスの制作部門、オフセット印刷機はサクラホールディングスの製造部門がそれぞれ所有している。そのため、単純にオフセット印刷からデジタル印刷への移行を進めるだけでは、製造部門(サクラホールディングス)の仕事量が減り、売上も下がってしまうことになる。この点について小鹿専務はこう説明する。
枚葉機の担当者は定年に近い年齢のため、今後雇用契約を継続していくには、これまでよりも作業負荷を減らし、残業も極力なくしていくことが必要でした。ですから、小ロットジョブをデジタル印刷に移行することは、より働きやすい環境になるという意味で、目的にかなっているわけです。また、枚葉機に余力が生まれれば、これまで外注に出していたロットの大きい仕事を内製化することができますから、デジタルへの移行を進めても枚葉機の仕事がなくなるということはありませんし、足の長いジョブが集まることで、付帯作業の軽減が図れます

加えて、現場の意識改革も促すことで、デジタル移行をスムーズに進めたという。

「当グループでは部門採算性をとっているので、製造部門では自分たちの売上だけを考えると『仕事をデジタル印刷に渡したくない』という意識が働いてしまいます。そこで、現場には、枚葉機に余力が生まれることで内製化率の向上につながること、平均ロットが大きくなることで回転数を上げられること、各部門の評価指標として『売上』だけでなく『回転数』も重視することなどを説明し、最終的に会社としてのメリットにつながるということを理解してもらいました」(小鹿専務)

さらに、サクラグループでは、最適な設備運用を実現するために、生産管理のあり方も見直した。

今年に入ってから、ジョブの振り分けをすべて生産管理部門で一元的に行なうことにしました。それまでは、受注時に営業がお客さまとの間で印刷方法を決めてしまうことが多く、現場もそれに従って流していたのですが、そのやり方ではコストや効率の面で必ずしも最適とは言えないケースも出てきます。ですから、生産管理部門の“統制”を強化することで、ジョブをより適切に振り分ける体制に改めたのです」(鈴木課長)

こうして、ハードだけでなく、人の意識や社内体制などのソフト面でも、オフセット印刷機・デジタル印刷機を柔軟に共存運用できる環境をつくり上げていった。

            小ロットジョブ用の生産機として、品質・安定性に優れたIridesseTM Production Press』を2台運用。
■枚葉機の余力を活かし、中~大ロットの仕事を内製化
 オフセット/デジタルの共存運用により、現在、小ロットジョブの多くはデジタル印刷に移行している。基本的に、各ジョブのコストと、納期やサイズ、紙種などの条件を加味して生産管理部門が振り分けを判断しており、概ね2,000通し前後が分岐点になっているが、場合によっては、3,000通しのジョブでもIridesseで出力するケースがあるという。
    
鈴木課長
3,000通しというと、システム上のコスト計算ではオフセットの方が安くなりますから、以前なら間違いなく枚葉機で印刷していたと思います。しかし、トータルの運用原価で見ると、デジタル印刷の方が安く抑えられるケースもあるということがわかりました」(鈴木課長)

インキやトナーなどの材料費だけでなく、印刷の前後工程も含め、人や時間などの要素まで加味して原価を算出することで、実質的な経営コストに基づいた「最適な振り分け」が可能になっているのだ。

一方、デジタル印刷への移行が進んだことにより、枚葉機においては稼働に余裕が生まれ、狙い通り、中~大ロットジョブの内製化が実現している。しかも、印刷だけでなく後加工の内製化にも寄与しているという。

「枚葉機のオペレーターは、折りや断裁も兼務しているので、印刷の作業に余裕ができると、その分、後加工に充てる時間を増やすことができます。加工設備の更新も併せて行ない、いままで外注に出していた全判のジョブの後加工も内製化しました。社内でこなせる仕事の幅が広がっているわけです」(鈴木課長)

デジタル印刷機の運用体制も大きく変わった。従来、専任者が一人で担当していたオペレーションを、現在は、プリプレスのスタッフも含めて5名ほどで分担している。

「属人化の解消に向けた第一歩が踏み出せたと感じています。『皆でやろう』という意識が高まり、部門を超えた協力体制ができつつある。また、複数名がオペレーションを担当することで、若いオペレーターの教育に時間を割くことも可能になり、人を育てる環境も徐々に整ってきました」(大西氏)

そして、小鹿専務が最適化の効果として最も実感しているのが、意識面の変化だ。

ジョブ分析やシミュレーションの結果を社内で共有したことによって、『設備や時間の余力を生み、その余力を他の作業に充てる』という考え方が定着してきたと感じます。枚葉機の仕事をデジタル機に回したことで、『売上が減る』ではなく、『空いた時間を何に使い、何を生み出すか』という発想ができるようになった。こうした意識改革があったからこそ、生産改革がスムーズに進められたのではないかと思います。また、オフセットとデジタルの使い分けについても、『各ジョブを経営コストの観点で見たときにどちらが最適か』という考え方ができるようになってきました。それぞれの部門が、自分たちの売上だけでなく『会社全体の効率化』に向かって取り組むという意識にシフトできたことは、非常に大きな成果だと思っています」(小鹿専務)

■この生産基盤を活かして、紙の価値を高めていく
 今後は、この生産改革の成果を、いかにしてサクラグループとしての成長戦略につなげていくかが課題だ。その方向性について、大西氏は「本業である“紙の印刷”を、いままで以上に大事にしていく」と力を込める。

大西氏
「約1年前、50期を迎えたのを機に、“デジタルシフト”をテーマに掲げてさまざまな取り組みを始めたのですが、その中で気づいたのは、やはり印刷物には他に代えがたい価値があるということ。もちろん、デジタルの方向にも領域を拡げていきますが、紙の印刷も、もっと盛り上げていきたい。そのための具体策について、いま、私たち制作部門と製造部門、さらには営業部門も巻き込んで議論を重ねているところです」
鈴木課長も、「デジタルシフトに取り組んだことで、『印刷』の重要性にあらためて気づいた」と語り、こう続ける。

「紙媒体の需要は下り坂というのが業界の共通認識ですが、その常識を覆すために何ができるか、皆で意見を出し合っています。今回の最適化の取り組みで、印刷物の生産環境はかなり強化できました。この基盤をどう活かし、どんな価値を創り出していくかが、これからの会社の成長のカギになると考えています」

紙を大事にしながら、デジタル分野にも領域を拡げていく。まさに、紙とデジタルの両メディアに自在に対応できるサクラグループならではの強みを活かした戦略だ。今後、さまざまなビジネスアイデアを具現化していく過程では、生産改革の中で醸成された「部門を超えた協力体制」が、如何なく発揮されるに違いない。

 

2022.06.20

◆ビジュアル・プロセッシング・ジャパン 「CIERT0 v2022」上半期パージヨンのリリーススケジュールを発表 販促媒体・ コンテンツ制作におけるリモートワーク対応機能とワークフローの強化を実現

 株式会社ビジュアル・ プロセッシング・ ジャパン(本社:東京都渋谷区、代表取締役三村博明) は、このほど、開発・ 販売しているデジタルアセツトネジメントシステム CIERT0 2022年度上半期パージヨンにおける既に出荷済機能及び6月末のリリース予定の機能を発表した。

CIERT0 v2022」上半期パージョンでは、特にコロナ禍における利用拡大が期待されるコンテンツ制作のリモートワークとワークフローの強化を実現している。 製品ガタログやWeb/ECサイト等の企業における販促活動の媒体制作では大規な画像ファイルや動画データを扱う事が多く、リモートワークが困難とされている。 今回リリースされた「CIERT0 v2022」上半期パージヨンでは大幅にリモートワークフローの改善が強化された。
 

<CIERT0 v2022 上半期パー ジヨン主な機能>

1.アセツトパー ジヨン管理機能  (出荷済)

既に同名のファイルが登録済みの場合、上書きでアップロードすると既存のファイルがパー ジョンとして保存/管理することが可能になる。 ジョンファイルはCIERT0のプレビュー画面からパー ジヨン履歴を閲覧し過去パー ジヨンを簡単にダウンロードできる。また、最新バージョンを過去バージョンに戻せるため、制作工程における履歴の確認、修正ミス対応や変更に柔軟に対応することが可能である。

2.ダイレクトビューワー機能(出荷済)

HTMLPDFJPEG、動画などブラウザで表示可能なアセットをCIERT0の画面上でダイレクトに開き表示できるようになった。WebサイトのHTMLファイルやCSS、利用されている画像をCIERT0に登録するだけでコンテンツの内容を確認することができるので、制作中のWebサイトの進行状況や過去データの関覧、収集によりコンテンツの再利用がより簡単になった。

3.アセットコメント(コミュニケーション)機能(20226月末出荷予定)

CIERT0に登録されているアセットを開きコメント対象の箇所を指定してコメントする事ができる。 動画ファイルに関しては、コメント対象のタイムコードを指定してコメントを行う。指定されたタイムコードを選択すると、自動シークしてコメントを確認できる。 さらにコメントに添付ファイルを登録することができるので、指示された添付ファイルの差替画像や指示書を確認しコメントに従って対応する事が可能である

4.コメント@メンション機能(20226月末出荷予定)

CIERT0に登録されているユーザーに対しで'@' メンシヨンでコメントを通知できる。通知を受け取ったユーザーは印座にコメント内容をメールやCIERT0の画面上で確認することができ、円滑なコミュニケーションが行える。

 その他、コメント通知センター機能(20226月末出荷予定)CIERO0 Link一括画像リンク機能(出荷済)CIERT0 Linkパージヨン管理機能対応 (出荷済)、管理者向け機能強化(出荷済)、ユーザーマニュアルの多言語対応(出荷済)

 

製品・リリースに関する問い合わせ先

株式会社ビジュアル・プロセッシング・ジャパン

150-0002東京都渋谷区渋谷l -2-5MFPR渋谷ビルll

Tel:03-6418-5111 Fax:03-6418-5118  Mail: info@vloj.cojp(岩田宛)

 

 

2022.06.20

◆サイバーテック   Acquiaとパートナー契約を締結 ~大規模Webサイトに適したCMS「Drupal」を活用したマネージドサービスの提供を開始

  ITで企業のDXをサポートする株式会社サイバーテック(代表取締役社長:橋元 賢次 本社:東京都渋谷区)は、このほど、Acquia Inc.(本社:米国ボストン、代表取締役:Michael Sullivan、以下Acquia(アクイア))とパートナー契約を締結し、Acquiaが提供する「Drupal(ドゥルーパル)」のプラットフォーム「Acquia Drupal Cloud」の国内販売、および顧客企業向けの「Drupal導入支援サービス」を開始することを発表した。
 多くの企業において、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実践するための様々な取り組みが行われているが、情報発信を行う企業のWebサイトはDXの実践には欠かせない基本的なプラットフォームになる。したがって、Webサイトにはさまざまなユーザーからの閲覧を想定した最新のデバイス対応や、改ざん防止などの高いセキュリティレベル、アクセスの集中に対応した可用性の高いプラットフォームなど、さまざまな要件が求められる。
  そのような中、Webサイトを構築・運用するために使われるCMSContent Management System)にも、
グローバルレベルで上記の要件を満たす製品や情報基盤が必要とされている。今回、サイバーテックでは、フィリピン セブ島に有する自社オフショア拠点を中心に展開しているWebソリューション事業において、大規模Webサイトに適したCMSであり、多機能ながらオープンソースのCMSDrupal」の導入支援サービスを新たに開始するとともに、「Drupal」のプラットフォームをエンタープライズ向けに提供する「Acquia Drupal Cloud」の取り扱いを開始することにより、企業の大規模Webサイトの構築および運用代行を支援することになった。

CMSDrupal」をベースとした「Acquia Drupal Cloud」の概要
  オープンソースのCMSである「Drupal」をベースに、堅牢なデータプラットフォームを基盤とする「Acquia Drupal Cloud」は、小規模からグローバルレベルのWebサイトの構築・運用、コンテンツ管理、Webマーケティングまで対応できるクラウドサービスです。「Drupal」に最適化されたマネージドサービス環境をPaaSPlatform as a Service)で提供することにより、ユーザーのDXを加速させる。

■「Drupal」に最適化されたPaaS環境「Acquia Drupal Cloud」主な特徴

1)大規模サイトにも利用可能

Drupal」はCMSに求められる基本機能に加えて、高い拡張性や汎用性を有しているため、多様なコンテンツの作成が可能であり、管理者画面で詳細な設定が可能。また、「Drupal」のディストリビューション機能を活用することで、各企業特有の設定や拡張機能をパッケージングして配布することが可能である。この機能を活用することで、例えば、企業の各支社で利用するWebサイト基盤の統一化やWebサイトの早期立ち上げを可能にする。
 さらに「Acquia Drupal Cloud」は「Drupal」に適したクラウドサービスを活用しているため、大規模サイトの構築に適している。

2)高いセキュリティ

 Drupal自体もセキュリティに対応したCMSであるが、Drupalに最適化したマネージドサービス環境

Acquia Drupal Cloud」は、24時間365日稼働し、99.95%SLAService Level Agreement)を誇る高度なセキュリティ認証を取得した※1クラウド・ソリューションである。SLAService Level Agreement99.95%で、安定したサービス提供を実現している。
1ISO-27001PCI-DSSFedRampSOC1SOC2HIPAAIRAPの各認証を取得している。
3Webサイトの早期立ち上げが可能

 サイバーテックはさまざまなWebサイトにおいて、CMSの構築~運用をトータルで行っている。「Drupal」および「Acquia Drupal Cloud」においても、導入~運用だけに限らず、自社オフショア拠点にてリーズナブルにWebコンテンツ自体の更新代行まで実施することが可能である。

Acquiaについて
 Acquiaは、オープンソーステクノロジーによるデジタル体験を提供する企業です。Webから店舗まですべての顧客接点をヘッドレスに、オープンソースによる柔軟な拡張性と、世界最高峰のセキュリティをAcquiaCMSプラットフォームは提供している。Acquiaで企業が思い描く未来を自由に創造する。

URL 
https://www.acquia.com/jp
■サイバーテックによる、Drupalへの取り組みについて

 サイバーテックがフィリピン セブ島に有する自社オフショア拠点である「セブITアウトソーシングセンター」では、日本の企業クライアントに定額Webサイト運用代行サービス「サブスクWeb運用」やAIアノテーションによる画像加工サービスをはじめ、さまざまなITサービスやオフショア開発サービスを提供している。

「セブITアウトソーシングセンター」では、現地日本人ディレクターによる100%日本語コミュニケーションを保証しつつ、公用語が英語であることを活かし、グローバルに対応することが可能となる、ネイティブレベルの英語力を活用したさまざまなプロジェクトを実施している。高い英語力は、英語による情報公開が大半となるCMSDrupal」の技術習得に大きなアドバンテージを発揮する。

【問い合わせ先】
株式会社サイバーテック 管理部 広報担当 薮田

  所:〒150-0044 東京都渋谷区円山町20-1 新大宗道玄坂上ビル7

  話:03-5457-1770 
FAX03-5457-1772
メール:
info@cybertech.co.jp
Web
https://www.cybertech.co.jp/

 

 

2022.05.13

◆モリサワ  山形県山形市・事業構想大学院大学との共同プロジェクト 「やまがた創生プロジェクト研究」を発足

 株式会社モリサワ(代表取締役社長:森澤彰彦 本社:大阪市浪速区敷津東2-6-25Tel:06-6649-2151代表、以下モリサワ)は、山形県山形市(市長:佐藤孝弘)と事業構想大学院大学(学校法人先端教育機構、学長:田中里沙)との山形市の地域経済の活性化および創造都市の推進を目的とした共同プロジェクト「やまがた創生プロジェクト研究」を、このほど発足した。

■「やまがた創生プロジェクト研究」 について

やまがた創生プロジェクト研究は、山形市の経済活性化および創造都市の推進に資する新規事業を構想する研究会。事業の根本となるアイデア発想から、具体的な事業計画まで策定します。事業構想大学院大学 修士課程のカリキュラム要素を活かした講義と最先端分野の有識者から得られる知見が研究員の事業構想を支援する。
 参加者は一般から募集し、組織の枠を越えた異業種の企業やパートナーとの知の共有・探索、コラボレーションによる事業創出活動を実現する。モリサワは、自社の製品・サービスを通して地域活性化や共生社会の推進に積極的に取り組んできた知見を活かし、「情報のユニバーサルデザインの解説・作成支援」など「情報発信の質向上」を中心としたプロジェクト参加者への支援を通して、山形市が目指す地域活性・創造都市の実現に貢献していく。

■「やまがた創生プロジェクト研究」 開催概要
期 間:20225月〜20232  20回・各回半日程度(発表会などは全日)

研究員:10名     

会 場:山形市内・オンライン

共 催:山形市/学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学 事業構想研究所

協 力:株式会社モリサワ

共同プロジェクトに至った背景

(1)山形市と事業構想大学院大学による連携協定
山形市と事業構想大学院大学は、山形市の「山形市まち・ひと・しごと創生推進計画」に則した、地域経済の活性化および創造都市の推進を目的とする「地方創生の推進に係る包括連携に関する協定」を2022214日付で締結した。

https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/shiseijoho/seisaku/1006984/1009027.html

(2)山形市とモリサワによる連携協定
山形市と株式会社モリサワは、「地方創生の推進に係る包括連携に関する協定」を202231日付で締結。相互に連携を図り、双方の保有する資源を有効に活用することにより、山形市における地方創生に資することおよび市民サービスの向上を図ることを目的としている。

https://www.morisawa.co.jp/about/news/6736

●同件に関する問合せ先 
 株式会社モリサワ 東京本社 営業企画部 公共ビジネス課

 
E-mail:public-biz@morisawa.co.jp
 
Tel:03-3267-1378
 SNSでも最新情報を公開している

Twitter@Morisawa_JP

Facebook@MorisawaJapan

※記載されている内容は、予告なく変更する場合がある。

※記載されている会社名・商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標である。

 

2022.05.12

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ    デジタルプレス活用による経営変革事例――株式会社コームラ デジタルプレス活用を中心とした生産改革で時間・人材の余力を創出 風土改革との相乗効果で社員の意識も変化。新規事業展開の原動力に

「印刷会社の持続的な成長を支えるソリューション」として、FFGSが提案をすすめる「最適生産ソリューション」。これは、生産工程の現状分析により課題を抽出し、設備運用などを見直すことで経営資源に余力を創出、その余力を新たな成長戦略に活用するというもの。その原型ともいえる事例が、岐阜県の株式会社コームラ(本社:岐阜県岐阜市三輪ぷりんとぴあ3、代表取締役:鴻村健司氏)の取り組みだ。旧富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション)との協働による生産工程の最適化を軸に、営業改革や組織風土改革などを複合的に推し進め、みごと業績V字回復を果たした。その具体的な取り組み内容や成果などについて、鴻村社長に伺った。
  

10年前、営業戦略を付加価値重視型に転換
 コームラは、1937年(昭和12年)に事務用品・雑貨を扱う「鴻村維一商店」として創業。終戦後、共通様式の帳票類を製品化し、全国4,000カ所の国の出先機関などに向けて販売を開始。その実績を活かし、国立大学や国立病院、裁判所などから印刷物を受注するようになり、近年では、大学向けのサービスに注力し、クライアントの8割を大学関係が占めている。事業内容としては、「プリント」「Web・システム」「学会サポート」を柱としており、中でも最近とくに力を入れているのが、『学会スマート』のサービス名で展開している学会サポート事業だ。ポスターやチラシ、Webサイトなどの制作から、名札や看板などの制作・設営、当日の受付業務、抄録集の作成・発送まで、学会開催に関わる業務をワンストップでサポートする。ここ2年ほどは、コロナ禍に対応したオンライン開催の需要が増えているという。

    鴻村社長
 プリント事業においては、デザインから印刷、製本加工までの社内一貫体制を活かし、短納期・コスト削減などの要望に応えている。印刷設備は現在デジタル印刷機に統一されており、モノクロ9台、カラー3台の計12台が稼働している。後加工は、無線綴じ機2台のほか、中綴じ機、折り機、穴あけ機を設備。また、印刷物を効率的に在庫管理できる最新の自動倉庫も装備する。

 そんなコームラを率いる鴻村健司社長は、2014年に就任した3代目。長い歴史の中で培ってきた同社の強みを活かしながら、社内の改革を推し進めてきた。

 いまから10年ほど前、鴻村社長が専務の時代に着手したのが、営業戦略の見直しだ。それまでの「売上重視」から「付加価値重視」へと舵を切り、加工高向上を目指す方針を打ち出した。

「当時、売上の低迷が続き、営業、生産現場、そして社員の意識面も含めた改革が必要だと感じていました。そこでまず、『付加価値重視営業』『セルフマネージメントの強化』『営業プロセス管理の徹底』という3つの施策を掲げ、営業改革に取り組んだのです」(鴻村社長)

 生産工程では、長らくオフセット印刷とデジタル印刷を併用していたが、鴻村氏は社長就任時、デジタル印刷への段階的移行を決断。その背景として、もともと小ロット多品種の仕事が多かったことに加え「当時、オフセット印刷を中心に品質に課題があった」と鴻村社長は振り返る。

 「オフセット印刷では、文字化けやピンホール、色のバラつきなど、品質に関するクレームが多かったため、その解決策としても、デジタル印刷への移行は有効だと考えたのです」

 さらに、デジタル印刷に適した小ロットジョブが増加したことや、クライアントの短納期要求が高まり、より効率性が求められるようになったことも決断の追い風となった。

 鴻村社長は、1998年、富士ゼロックスのユーザー会『ドキュメントサービスフォーラム』(DSF)のアメリカ視察に参加した際、フルデジタル化された印刷工場を見学し、そこでデジタル印刷の大きな可能性を感じたという。現在のデジタル印刷へのシフトは、この体験から鴻村社長が描いた“自社の生産工程の未来像”の具現化でもある。
 
   フルデジタル化された印刷現場。カラー3台、モノクロ9台のデジタル印刷機がフル稼働している

■人件費も含めたトータルコストを算出し、オフからデジタルへ移行
 コームラでは、2013年頃からオフセット印刷機とデジタル印刷機の共存運用(両者を同列の生産機として捉え、ジョブに応じて使い分ける運用)を行なっていたが、当時は約300部を分岐点として切り分けることを基本としていた。鴻村社長が打ち出したデジタル印刷への移行は、この運用基準を改めて見直し、オフセットでは非効率なジョブをデジタルに切り替えることで、コストやリードタイムなどの最適化を図るという考え方で進められた。

 具体的には、富士ゼロックスにも協力を要請し、オフセット印刷における刷版・印刷前準備作業・丁合作業などの材料費および人件費、デジタル印刷におけるカウンター料金・トナー代・保守料金など、前後工程も含めた原価をジョブ単位で算出。さらに、紙質や部数など、さまざまな要素を加味しながら、どのジョブをデジタル印刷に移行できるかを検証していった。

「現場の責任者を中心に、詳細なシミュレーションを重ねた結果、分岐点を約1,000部まで引き上げられることがわかりました。また、デジタル印刷機の品質や生産性、用紙対応力などが高まってきたこともあり、デジタル印刷のジョブの割合は確実に上がっていきました」(鴻村社長)

 これに対応して、印刷設備も、オフセット印刷機を新たなデジタル印刷機に置き換える形で、デジタル印刷主体の環境へとシフトしていった。設備の更新にあたっても、富士ゼロックスと共に、投資回収シミュレーションを徹底的に行なった。

「投資の原資は“足元の改善”によって生み出す。材料費やカウンター料金などの直接原価だけでなく、プリプレスから後加工までの工程をトータルに見た上で、生産効率、人件費などを加味し投資可否を判断しました。」(鴻村社長)

    
 こうして、ジョブと設備のデジタルへの移行を着々と進め、最終的に行き着いたのは、「印刷設備のフルデジタル化」という決断だった。その決め手になったのは、プロダクションカラー機『Iridesse Production Press』だったという。

「仕上がり品質が、それまでのデジタル印刷機に比べて格段に向上し、オフセットとまったく遜色のない水準になったので、これならフルデジタル化が可能だろうと確信しました。オフセットとデジタルの共存を続けていくよりも、デジタルに一本化するメリットの方が大きいということは、分析から見えていたので、思い切って完全移行を決めたのです」(鴻村社長)

 2019年、同社は『Iridesse Production Press』とモノクロのデジタル印刷機2台を続けて導入し、オフセット印刷機を全廃。印刷工程のフルデジタル化を果たした。

■前後工程も含めた生産効率が大幅に向上、人材確保にも大きなメリット
 デジタル印刷への移行による効果について、鴻村社長は「予想以上に生産効率が上がった」と語る。

 「オフセットの場合、刷版や色合わせ、印刷中の抜き取り検品、印刷後の丁合といった工程が必要になりますが、デジタル印刷ではそれらが不要になり、工程が大幅に短縮されます。また、オフセット印刷機ではオペレーターが1台に1人必要でしたが、デジタル化した現在は、1人が4台のマシンを回しており、製本部門のスタッフもオペレーションできるようになっています。さらに、デジタル印刷機は自動稼働が可能ですから、昼休みや夜間でも出力を続けることができ、時間を最大限に活用できるようになりました」(鴻村社長)

 もちろん、効率化だけでなく、大きな課題であった「品質の安定化」も実現。事故やクレームの削減につながっているという。
デジタル移行の効果は、印刷工程だけにとどまらない。たとえばプリプレス。「オフセットとデジタルでは面付けが変わるため、従来はプリプレスのフローを別々に考えなければなりませんでしたが、デジタルに移行したことで、作業を一本化できました。しかも、デジタル印刷用の面付けは、『FreeFlow Core』を使えば、ホットフォルダにデータを入れるだけで自動処理されるので、大幅な時間短縮が図れています」(鴻村社長)
 面付けの効率化による効果を検証したところ、月100時間ほどの作業時間短縮が実現しているという。このほかに刷版や丁合などの工程が削減されたことを加味すれば、トータルでは相当な“時間的な余力”が生み出されていることになる。

 さらに、管理部門でも、労力軽減などの効果が出ているという。

「いままでは、ジョブの内容によって、オフセット印刷、デジタル印刷、外注という3つの選択肢から最適なフローを判断しなければなりませんでしたが、現在はほぼ“社内のデジタル印刷”の一択になっています。また、紙のサイズや種類がデジタル印刷用に絞られ、発注業務の簡略化にもつながっています」(鴻村社長)

 また、鴻村社長は、「フルデジタルの環境は人材確保の面でもメリットがある」と強調する。

「オフセット印刷の職人的な作業がなくなったことで、人材採用のハードルがぐっと下がりましたね。人手不足は業界共通の課題だと思いますが、その中で若い人材を確保しやすくなったことは、非常に大きなメリットです。オフセットに比べて教育期間も短縮できるので、作業時間短縮などとの相乗効果で、人件費の抑制にもつながっています」(鴻村社長)

 こうした変革の効果は、業績にもしっかりと反映されている。10年前との比較で生産高は2倍以上、売上はコロナ禍の影響を受ける先期まで9期連続増収を達成。付加価値率(加工高)は約53%を確保している。鴻村社長は「10年前は本当に危機的状況だった」と言うが、その危機感をバネにした経営改革によって、みごとV字回復を果たしたのだ。
 
    

     デジタル印刷ワークフロー『FreeFiow Core』により、面付けも自動化 
■今後はさらなる自動化・見える化に注力

 同社がこのように業績回復を実現した背景には、鴻村社長がやはり10年前から力を入れてきた組織風土改革も大きく寄与している。部門を超えた社員間のコミュニケーションを活性化し、情報共有や意思統一を図りやすい環境をつくり上げていった。

「当時は業績だけでなく社内の雰囲気も悪かった。社員にアンケートをとったところ、不満の声ばかりで(笑)。ですから、社員旅行や飲み会なども含めて、コミュニケーションの場を定期的に設けるようにしました。その結果、部門間の意思疎通や、仕事の進捗状況の共有などもスムーズに行なえるようになりましたし、社員の意識も変わってきましたね。『やらされている』という感覚から、自分たちで考えて行動するという自発的な姿勢に変わってきた。こうした意識面の変化も業績アップにつながっているのではないかと思います」(鴻村社長)

 今後は、これらの改革によって生まれた時間・人材の余力や、社内のコミュニケーション環境を、成長戦略にどのような形で活かしていくかがカギとなる。そのための活動として、年3回、全社員で新規事業を考案する経営勉強会を開催しているほか、『Iridesse Production Press』のメタリックトナーを活かした商品を企画する取り組みなども行なっている。一方で、鴻村社長は「人材の再活用が大きな課題」と語る。

「オフセット印刷機を担当していたオペレーターは現在、製本や配送などの業務に就いていますが、今後は、当社の強みの一つでもある帳簿製本の技術保存・継承で活躍してもらうことも考えています。雇用を守りながら人材をどう再配置し活かしていくかというのは、DXを推進する多くの企業が直面する難しい課題ではないでしょうか。」

 生産工程の変革も、すでにさまざまな成果が出ているが、鴻村社長はさらに先を見据える。今後は自動化を大きなテーマとして取り組んでいく考えだ。

「たとえば工程管理の部分で言えば、各ジョブの最適な出力機への振り分けなど、人手を必要とする作業を可能なところから自動化し、同時に工程全体の見える化も進めていきたいと考えています。そのためのツールとして、統合型ワークフローシステム『Production Cockpit』のテスト運用・効果検証もスタートする予定です。自動化によってさらなる余力を生み出し、それを新たなサービス展開、お客さまとの関係強化に結びつけていきたいですね」(鴻村社長)

 設備環境の進化は、社員のモチベーションアップや働き方改革にもつながり、サービス向上の原動力になるに違いない。

 創業から85年。コームラは、印刷に軸足を置きながら、「ICSカンパニー」をコンセプトに、情報コミュニケーションサービス企業へと進化を遂げてきた。ICSとは、Information(情報)、Communication(伝達)、Services(支援)の略で、クライアントの要望に合わせて最適な提案を行ない、柔軟な発想で課題解決に貢献するという姿勢を表わしたものだ。同社は今後も、クライアントのコミュニケーションを支えるパートナーとして、時代の先を読みながら、さらなる変革に挑戦し続ける。

 

 

2022.05.11

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ ディターニティ   オンサイト アーカイブ導入事例――図書印刷株式会社 増え続ける在版データを磁気テープで効率的に長期保管 データ出し入れにかかる時間・作業負荷、保管コストが大幅に低減

 近年、データの長期保管手段として、さまざまな業界で「磁気テープを活用したストレージシステム」が注目され、導入が進んでいる。磁気テープはディスクメディアに比べ、「耐久性が高く長期保管性に優れる」「オフライン保管によりウィルス攻撃などのリスクを回避できる」「常時通電の必要がなくランニングコストを抑制できる」などのメリットがある。このテープストレージを印刷業界でいち早く採り入れたのが図書印刷(本社:東京都北区東十条3-10-36、代表取締役社長:川田和照氏)だ。20201月に富士フイルムの『ディターニティ オンサイト アーカイブ』を導入し、在版データ管理の大幅な効率化を図っている。では具体的にどんなメリットが得られているのか。導入に至った経緯なども含め、技術開発本部 技術開発部 製造システムグループ 係長・井原美奈子氏に伺った。
   

      図書印刷本社
ディターニティ オンサイト アーカイブとは
富士フイルムの『ディターニティ オンサイト アーカイブ』(以下 ディターニティ)は、HDDと磁気テープを組み合わせたハイブリッド型のストレージシステム。アクセス性に優れたHDDストレージと、長期保管に最適な磁気テープを組み合わせることで、データ保管コストが抑えられ、また、テープライブラリを拡張することで大容量のデータ保管が可能になる。利用頻度の高いデータはHDDへ、利用頻度の低いデータは磁気テープへと、自動で保存先が選択されるため(GUIで条件設定が可能)、データの仕分けの手間が削減でき、プライマリストレージの容量圧迫も防ぐことができる。こうしたメリットが評価され、ディターニティはすでにメーカーの情報システム部門や映像制作会社、研究施設などさまざまな分野で導入が進んでおり、重要データの長期保管における課題解決に貢献している。



■テープの優位性と「基幹システムとの連携運用」の提案が決め手に
図書印刷では、年々増え続ける在版データを、より効率的、より安全に保管するための新たなシステムを数年前から検討し、コストパフォーマンス・安全性・拡張性に優れたディターニティを選択した。導入前の状況について井原係長はこう振り返る。「これまで、在版データはDVD-ROMなどのメディアに書き込み、専用の倉庫で保管していましたが、最近は1つのジョブあたりのデータ量が大きくなっていることもあり、メディアの枚数は増える一方でした。」

   井原係長
 メディアが膨大な枚数に上っていたため、データの取り出しにも多くの時間や労力がかかっていたという。
「再製造(再版)の際には、使用するデータを保管倉庫から取り寄せ、印刷工場に渡すのですが、当然、倉庫では人がメディアを取り出して内容を確認し、工場に送るという物理的な作業が発生します。以前はそれが当たり前のことになっていましたが、近年、急速にネットワーク環境が発達してきている中、データの取り寄せもオンラインでできないかと考えたわけです」(井原係長)
新たなデータ保管方法については、78年前から検討を進めていたが、当時は、オンプレミス(自社導入)サーバーでの保管を考えていたという。しかし、すべての在版データを収めるには、10台以上のサーバーが必要となり、コスト的にもスペース的にも実現が難しかった。
「最近になって、ディスクの大容量化や書き込み速度の高速化も進み、サーバーへの移行も現実味を帯びてはきたのですが、56年ごとにディスクを更新しなければならないのがネックでした。そのたびにデータを新しいディスクにコピーするとなると、それだけで何カ月もかかってしまいます。その間にもデータの保管や引き出しは頻繁に発生するので、やはり現実的ではなく、サーバー保管は断念しました」(井原係長)

 他にも、クラウドやNASなどさまざまな方法を検討した結果、保管容量や経済性・信頼性の高さからテープストレージを選んだ。

「コストを試算したところ、ディターニティとその他のシステムでは、最大で3倍以上の開きがありました。やはりテープシステムのコストパフォーマンスの良さは圧倒的ですね。また、当時、ちょうどテープの世代がLTO7からLTO8に切り替わる時期で、タイミングも良かったと思います。LTO8では、1巻あたりの容量が非圧縮で12TBと、LTO72倍になり、保管効率がぐっと上がるからです」(井原係長)

 磁気テープを使用したストレージシステムとして、富士フイルムを含めて2社の製品が候補に挙がったが、最終的にディターニティを採用した理由について井原係長はこう語る。

「私どもとしては、基幹システムからのオンライン指示でデータの出し入れが行なえる仕組みを構築したいと考えていました。富士フイルムさんは、単に装置を入れるだけでなく、基幹システムとの連携も含め、当社に合ったフローを提案してくださり、導入から運用まで、スムーズに進められそうだと感じたのです。それが一番の決め手になりましたね。実際の導入の際には、基幹システムと連携する上でのコマンドラインの検証など、細かい機能面のフォローまで、きめ細かく対応していただけました」(井原係長)

   
ディターニティではテープからのデータ取り出しも短時間でストレス
     なく行える

 ■同一構成で2セット設置し最大限の冗長性を確保
 図書印刷では、ディターニティを同じ構成で2セット導入し、冗長化を図っている。

「システム構成に関しては、最大限の安全性を担保するべく、関係部門間で慎重に検討を重ねました。ディターニティは、一つの筐体内で正副の二重保管ができるので、本来は1セットでも冗長化が可能なのですが、万が一、筐体自体に何か障害が起きると、データが取り出せなくなり、製造が止まってしまいますので、同じ構成のシステムを2セット設置して両者を同期することにしました。データを1台目に保存する際に、同期ツールでまったく同じデータをもう1台にもコピーするという形をとっています」(井原係長)

 また、ディターニティには、データのアクセス頻度などに応じて保存先をHDDとテープに自動で振り分ける機能を搭載しているが、同社では、最終アクセス後1日でHDDからテープに移行する設定としている。テープに保存されたデータも、HDDと変わらない感覚でスムーズに取り出すことができるため、より安全性の高いテープでの保管を基本としているのだ。データの読み出しは、ディターニティからの直接操作ではなく、同社の基幹システムから行なえるようカスタマイズしている。

 なお、メディアに収められた在版データのディターニティへの移行は、データ量が膨大なため、再版がかかったものから順次進めているという。

「再製造のタイミングでデータをディターニティに移すというフローを組んでいるので、データ移行のための新たな作業負荷はほとんど発生していません」(井原係長)
■毎日のデータ取り出しが格段に効率化
 ディターニティからのデータの取り出しは毎日行なっているというが、その際のテープからのデータの書き戻し速度について、井原係長は「予想以上に速い」と評価する。

「1件あたりの書き戻し速度は予想以上に速いです。件数がある程度たまると待ち時間が発生しますが、待っていれば処理は進むので、そこまでストレスを感じることはありません」

 もちろん、倉庫からメディアを取り出していた従来の方法に比べれば、圧倒的な時間短縮が実現している。

「以前は、倉庫からデータを取り出す専任の部隊がいて、データ取り出しリストをもとにメディアをピックアップして連絡便で印刷工場に送るということを毎日行なっていました。まだメディア保管のデータは残っていますが、ある程度ディターニティに移行したことによって、こうしたデータの出し入れにかかる工数や時間は大幅に軽減されました。とくに、データ受け渡しの窓口になっているシステム管理部門のメリットは大きいですね。倉庫からメディアを取り出す専従者の人数も減っています」(井原係長)

 さらに井原係長は、将来的なメリットとして、「システム更新時の作業負荷・コストが抑えられる」点も挙げる。

「オンプレミスのサーバーを更新するとなると、データをディスク間コピーしなければならず、その作業に相当な時間が必要になりますが、テープメディアは長期にわたって使用できますから、筐体だけ更新してメディアをキャリーオーバーするということもできます。また、データ量に合わせてテープライブラリを追加することで、簡単に容量を拡張できるのも魅力ですね。こうしたメリットは、長く使っていく上での安心感につながります」

 導入から約2年の現時点でも、データ管理やジョブ進行管理などの面で作業負荷軽減、時間短縮といった明確な効果が得られているが、やはり最大の導入目的は、データの長期保管と効率的な活用にある。将来にわたる継続利用を見据え、井原係長は、ディターニティの今後、そして富士フイルムへの期待をこう語った。

「ディターニティは、先ほどもお話ししたように拡張性の高さも魅力の一つですが、テープメディアも今後さらに大容量化が進むと聞いており、メディアとハードウェアの両面でまだまだ進化が期待できるシステムだと思っています。富士フイルムさんにはこれからも、システムのアップデートのサポートや、新しいデータ管理フローの提案、情報提供などを通じて、当社の業務改善を支援していただければと思います」

 


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