ニュースリリース

2022年05月

2022.05.13

◆モリサワ  山形県山形市・事業構想大学院大学との共同プロジェクト 「やまがた創生プロジェクト研究」を発足

 株式会社モリサワ(代表取締役社長:森澤彰彦 本社:大阪市浪速区敷津東2-6-25Tel:06-6649-2151代表、以下モリサワ)は、山形県山形市(市長:佐藤孝弘)と事業構想大学院大学(学校法人先端教育機構、学長:田中里沙)との山形市の地域経済の活性化および創造都市の推進を目的とした共同プロジェクト「やまがた創生プロジェクト研究」を、このほど発足した。

■「やまがた創生プロジェクト研究」 について

やまがた創生プロジェクト研究は、山形市の経済活性化および創造都市の推進に資する新規事業を構想する研究会。事業の根本となるアイデア発想から、具体的な事業計画まで策定します。事業構想大学院大学 修士課程のカリキュラム要素を活かした講義と最先端分野の有識者から得られる知見が研究員の事業構想を支援する。
 参加者は一般から募集し、組織の枠を越えた異業種の企業やパートナーとの知の共有・探索、コラボレーションによる事業創出活動を実現する。モリサワは、自社の製品・サービスを通して地域活性化や共生社会の推進に積極的に取り組んできた知見を活かし、「情報のユニバーサルデザインの解説・作成支援」など「情報発信の質向上」を中心としたプロジェクト参加者への支援を通して、山形市が目指す地域活性・創造都市の実現に貢献していく。

■「やまがた創生プロジェクト研究」 開催概要
期 間:20225月〜20232  20回・各回半日程度(発表会などは全日)

研究員:10名     

会 場:山形市内・オンライン

共 催:山形市/学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学 事業構想研究所

協 力:株式会社モリサワ

共同プロジェクトに至った背景

(1)山形市と事業構想大学院大学による連携協定
山形市と事業構想大学院大学は、山形市の「山形市まち・ひと・しごと創生推進計画」に則した、地域経済の活性化および創造都市の推進を目的とする「地方創生の推進に係る包括連携に関する協定」を2022214日付で締結した。

https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/shiseijoho/seisaku/1006984/1009027.html

(2)山形市とモリサワによる連携協定
山形市と株式会社モリサワは、「地方創生の推進に係る包括連携に関する協定」を202231日付で締結。相互に連携を図り、双方の保有する資源を有効に活用することにより、山形市における地方創生に資することおよび市民サービスの向上を図ることを目的としている。

https://www.morisawa.co.jp/about/news/6736

●同件に関する問合せ先 
 株式会社モリサワ 東京本社 営業企画部 公共ビジネス課

 
E-mail:public-biz@morisawa.co.jp
 
Tel:03-3267-1378
 SNSでも最新情報を公開している

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Facebook@MorisawaJapan

※記載されている内容は、予告なく変更する場合がある。

※記載されている会社名・商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標である。

 

2022.05.12

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ    デジタルプレス活用による経営変革事例――株式会社コームラ デジタルプレス活用を中心とした生産改革で時間・人材の余力を創出 風土改革との相乗効果で社員の意識も変化。新規事業展開の原動力に

「印刷会社の持続的な成長を支えるソリューション」として、FFGSが提案をすすめる「最適生産ソリューション」。これは、生産工程の現状分析により課題を抽出し、設備運用などを見直すことで経営資源に余力を創出、その余力を新たな成長戦略に活用するというもの。その原型ともいえる事例が、岐阜県の株式会社コームラ(本社:岐阜県岐阜市三輪ぷりんとぴあ3、代表取締役:鴻村健司氏)の取り組みだ。旧富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション)との協働による生産工程の最適化を軸に、営業改革や組織風土改革などを複合的に推し進め、みごと業績V字回復を果たした。その具体的な取り組み内容や成果などについて、鴻村社長に伺った。
  

10年前、営業戦略を付加価値重視型に転換
 コームラは、1937年(昭和12年)に事務用品・雑貨を扱う「鴻村維一商店」として創業。終戦後、共通様式の帳票類を製品化し、全国4,000カ所の国の出先機関などに向けて販売を開始。その実績を活かし、国立大学や国立病院、裁判所などから印刷物を受注するようになり、近年では、大学向けのサービスに注力し、クライアントの8割を大学関係が占めている。事業内容としては、「プリント」「Web・システム」「学会サポート」を柱としており、中でも最近とくに力を入れているのが、『学会スマート』のサービス名で展開している学会サポート事業だ。ポスターやチラシ、Webサイトなどの制作から、名札や看板などの制作・設営、当日の受付業務、抄録集の作成・発送まで、学会開催に関わる業務をワンストップでサポートする。ここ2年ほどは、コロナ禍に対応したオンライン開催の需要が増えているという。

    鴻村社長
 プリント事業においては、デザインから印刷、製本加工までの社内一貫体制を活かし、短納期・コスト削減などの要望に応えている。印刷設備は現在デジタル印刷機に統一されており、モノクロ9台、カラー3台の計12台が稼働している。後加工は、無線綴じ機2台のほか、中綴じ機、折り機、穴あけ機を設備。また、印刷物を効率的に在庫管理できる最新の自動倉庫も装備する。

 そんなコームラを率いる鴻村健司社長は、2014年に就任した3代目。長い歴史の中で培ってきた同社の強みを活かしながら、社内の改革を推し進めてきた。

 いまから10年ほど前、鴻村社長が専務の時代に着手したのが、営業戦略の見直しだ。それまでの「売上重視」から「付加価値重視」へと舵を切り、加工高向上を目指す方針を打ち出した。

「当時、売上の低迷が続き、営業、生産現場、そして社員の意識面も含めた改革が必要だと感じていました。そこでまず、『付加価値重視営業』『セルフマネージメントの強化』『営業プロセス管理の徹底』という3つの施策を掲げ、営業改革に取り組んだのです」(鴻村社長)

 生産工程では、長らくオフセット印刷とデジタル印刷を併用していたが、鴻村氏は社長就任時、デジタル印刷への段階的移行を決断。その背景として、もともと小ロット多品種の仕事が多かったことに加え「当時、オフセット印刷を中心に品質に課題があった」と鴻村社長は振り返る。

 「オフセット印刷では、文字化けやピンホール、色のバラつきなど、品質に関するクレームが多かったため、その解決策としても、デジタル印刷への移行は有効だと考えたのです」

 さらに、デジタル印刷に適した小ロットジョブが増加したことや、クライアントの短納期要求が高まり、より効率性が求められるようになったことも決断の追い風となった。

 鴻村社長は、1998年、富士ゼロックスのユーザー会『ドキュメントサービスフォーラム』(DSF)のアメリカ視察に参加した際、フルデジタル化された印刷工場を見学し、そこでデジタル印刷の大きな可能性を感じたという。現在のデジタル印刷へのシフトは、この体験から鴻村社長が描いた“自社の生産工程の未来像”の具現化でもある。
 
   フルデジタル化された印刷現場。カラー3台、モノクロ9台のデジタル印刷機がフル稼働している

■人件費も含めたトータルコストを算出し、オフからデジタルへ移行
 コームラでは、2013年頃からオフセット印刷機とデジタル印刷機の共存運用(両者を同列の生産機として捉え、ジョブに応じて使い分ける運用)を行なっていたが、当時は約300部を分岐点として切り分けることを基本としていた。鴻村社長が打ち出したデジタル印刷への移行は、この運用基準を改めて見直し、オフセットでは非効率なジョブをデジタルに切り替えることで、コストやリードタイムなどの最適化を図るという考え方で進められた。

 具体的には、富士ゼロックスにも協力を要請し、オフセット印刷における刷版・印刷前準備作業・丁合作業などの材料費および人件費、デジタル印刷におけるカウンター料金・トナー代・保守料金など、前後工程も含めた原価をジョブ単位で算出。さらに、紙質や部数など、さまざまな要素を加味しながら、どのジョブをデジタル印刷に移行できるかを検証していった。

「現場の責任者を中心に、詳細なシミュレーションを重ねた結果、分岐点を約1,000部まで引き上げられることがわかりました。また、デジタル印刷機の品質や生産性、用紙対応力などが高まってきたこともあり、デジタル印刷のジョブの割合は確実に上がっていきました」(鴻村社長)

 これに対応して、印刷設備も、オフセット印刷機を新たなデジタル印刷機に置き換える形で、デジタル印刷主体の環境へとシフトしていった。設備の更新にあたっても、富士ゼロックスと共に、投資回収シミュレーションを徹底的に行なった。

「投資の原資は“足元の改善”によって生み出す。材料費やカウンター料金などの直接原価だけでなく、プリプレスから後加工までの工程をトータルに見た上で、生産効率、人件費などを加味し投資可否を判断しました。」(鴻村社長)

    
 こうして、ジョブと設備のデジタルへの移行を着々と進め、最終的に行き着いたのは、「印刷設備のフルデジタル化」という決断だった。その決め手になったのは、プロダクションカラー機『Iridesse Production Press』だったという。

「仕上がり品質が、それまでのデジタル印刷機に比べて格段に向上し、オフセットとまったく遜色のない水準になったので、これならフルデジタル化が可能だろうと確信しました。オフセットとデジタルの共存を続けていくよりも、デジタルに一本化するメリットの方が大きいということは、分析から見えていたので、思い切って完全移行を決めたのです」(鴻村社長)

 2019年、同社は『Iridesse Production Press』とモノクロのデジタル印刷機2台を続けて導入し、オフセット印刷機を全廃。印刷工程のフルデジタル化を果たした。

■前後工程も含めた生産効率が大幅に向上、人材確保にも大きなメリット
 デジタル印刷への移行による効果について、鴻村社長は「予想以上に生産効率が上がった」と語る。

 「オフセットの場合、刷版や色合わせ、印刷中の抜き取り検品、印刷後の丁合といった工程が必要になりますが、デジタル印刷ではそれらが不要になり、工程が大幅に短縮されます。また、オフセット印刷機ではオペレーターが1台に1人必要でしたが、デジタル化した現在は、1人が4台のマシンを回しており、製本部門のスタッフもオペレーションできるようになっています。さらに、デジタル印刷機は自動稼働が可能ですから、昼休みや夜間でも出力を続けることができ、時間を最大限に活用できるようになりました」(鴻村社長)

 もちろん、効率化だけでなく、大きな課題であった「品質の安定化」も実現。事故やクレームの削減につながっているという。
デジタル移行の効果は、印刷工程だけにとどまらない。たとえばプリプレス。「オフセットとデジタルでは面付けが変わるため、従来はプリプレスのフローを別々に考えなければなりませんでしたが、デジタルに移行したことで、作業を一本化できました。しかも、デジタル印刷用の面付けは、『FreeFlow Core』を使えば、ホットフォルダにデータを入れるだけで自動処理されるので、大幅な時間短縮が図れています」(鴻村社長)
 面付けの効率化による効果を検証したところ、月100時間ほどの作業時間短縮が実現しているという。このほかに刷版や丁合などの工程が削減されたことを加味すれば、トータルでは相当な“時間的な余力”が生み出されていることになる。

 さらに、管理部門でも、労力軽減などの効果が出ているという。

「いままでは、ジョブの内容によって、オフセット印刷、デジタル印刷、外注という3つの選択肢から最適なフローを判断しなければなりませんでしたが、現在はほぼ“社内のデジタル印刷”の一択になっています。また、紙のサイズや種類がデジタル印刷用に絞られ、発注業務の簡略化にもつながっています」(鴻村社長)

 また、鴻村社長は、「フルデジタルの環境は人材確保の面でもメリットがある」と強調する。

「オフセット印刷の職人的な作業がなくなったことで、人材採用のハードルがぐっと下がりましたね。人手不足は業界共通の課題だと思いますが、その中で若い人材を確保しやすくなったことは、非常に大きなメリットです。オフセットに比べて教育期間も短縮できるので、作業時間短縮などとの相乗効果で、人件費の抑制にもつながっています」(鴻村社長)

 こうした変革の効果は、業績にもしっかりと反映されている。10年前との比較で生産高は2倍以上、売上はコロナ禍の影響を受ける先期まで9期連続増収を達成。付加価値率(加工高)は約53%を確保している。鴻村社長は「10年前は本当に危機的状況だった」と言うが、その危機感をバネにした経営改革によって、みごとV字回復を果たしたのだ。
 
    

     デジタル印刷ワークフロー『FreeFiow Core』により、面付けも自動化 
■今後はさらなる自動化・見える化に注力

 同社がこのように業績回復を実現した背景には、鴻村社長がやはり10年前から力を入れてきた組織風土改革も大きく寄与している。部門を超えた社員間のコミュニケーションを活性化し、情報共有や意思統一を図りやすい環境をつくり上げていった。

「当時は業績だけでなく社内の雰囲気も悪かった。社員にアンケートをとったところ、不満の声ばかりで(笑)。ですから、社員旅行や飲み会なども含めて、コミュニケーションの場を定期的に設けるようにしました。その結果、部門間の意思疎通や、仕事の進捗状況の共有などもスムーズに行なえるようになりましたし、社員の意識も変わってきましたね。『やらされている』という感覚から、自分たちで考えて行動するという自発的な姿勢に変わってきた。こうした意識面の変化も業績アップにつながっているのではないかと思います」(鴻村社長)

 今後は、これらの改革によって生まれた時間・人材の余力や、社内のコミュニケーション環境を、成長戦略にどのような形で活かしていくかがカギとなる。そのための活動として、年3回、全社員で新規事業を考案する経営勉強会を開催しているほか、『Iridesse Production Press』のメタリックトナーを活かした商品を企画する取り組みなども行なっている。一方で、鴻村社長は「人材の再活用が大きな課題」と語る。

「オフセット印刷機を担当していたオペレーターは現在、製本や配送などの業務に就いていますが、今後は、当社の強みの一つでもある帳簿製本の技術保存・継承で活躍してもらうことも考えています。雇用を守りながら人材をどう再配置し活かしていくかというのは、DXを推進する多くの企業が直面する難しい課題ではないでしょうか。」

 生産工程の変革も、すでにさまざまな成果が出ているが、鴻村社長はさらに先を見据える。今後は自動化を大きなテーマとして取り組んでいく考えだ。

「たとえば工程管理の部分で言えば、各ジョブの最適な出力機への振り分けなど、人手を必要とする作業を可能なところから自動化し、同時に工程全体の見える化も進めていきたいと考えています。そのためのツールとして、統合型ワークフローシステム『Production Cockpit』のテスト運用・効果検証もスタートする予定です。自動化によってさらなる余力を生み出し、それを新たなサービス展開、お客さまとの関係強化に結びつけていきたいですね」(鴻村社長)

 設備環境の進化は、社員のモチベーションアップや働き方改革にもつながり、サービス向上の原動力になるに違いない。

 創業から85年。コームラは、印刷に軸足を置きながら、「ICSカンパニー」をコンセプトに、情報コミュニケーションサービス企業へと進化を遂げてきた。ICSとは、Information(情報)、Communication(伝達)、Services(支援)の略で、クライアントの要望に合わせて最適な提案を行ない、柔軟な発想で課題解決に貢献するという姿勢を表わしたものだ。同社は今後も、クライアントのコミュニケーションを支えるパートナーとして、時代の先を読みながら、さらなる変革に挑戦し続ける。

 

 

2022.05.11

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ ディターニティ   オンサイト アーカイブ導入事例――図書印刷株式会社 増え続ける在版データを磁気テープで効率的に長期保管 データ出し入れにかかる時間・作業負荷、保管コストが大幅に低減

 近年、データの長期保管手段として、さまざまな業界で「磁気テープを活用したストレージシステム」が注目され、導入が進んでいる。磁気テープはディスクメディアに比べ、「耐久性が高く長期保管性に優れる」「オフライン保管によりウィルス攻撃などのリスクを回避できる」「常時通電の必要がなくランニングコストを抑制できる」などのメリットがある。このテープストレージを印刷業界でいち早く採り入れたのが図書印刷(本社:東京都北区東十条3-10-36、代表取締役社長:川田和照氏)だ。20201月に富士フイルムの『ディターニティ オンサイト アーカイブ』を導入し、在版データ管理の大幅な効率化を図っている。では具体的にどんなメリットが得られているのか。導入に至った経緯なども含め、技術開発本部 技術開発部 製造システムグループ 係長・井原美奈子氏に伺った。
   

      図書印刷本社
ディターニティ オンサイト アーカイブとは
富士フイルムの『ディターニティ オンサイト アーカイブ』(以下 ディターニティ)は、HDDと磁気テープを組み合わせたハイブリッド型のストレージシステム。アクセス性に優れたHDDストレージと、長期保管に最適な磁気テープを組み合わせることで、データ保管コストが抑えられ、また、テープライブラリを拡張することで大容量のデータ保管が可能になる。利用頻度の高いデータはHDDへ、利用頻度の低いデータは磁気テープへと、自動で保存先が選択されるため(GUIで条件設定が可能)、データの仕分けの手間が削減でき、プライマリストレージの容量圧迫も防ぐことができる。こうしたメリットが評価され、ディターニティはすでにメーカーの情報システム部門や映像制作会社、研究施設などさまざまな分野で導入が進んでおり、重要データの長期保管における課題解決に貢献している。



■テープの優位性と「基幹システムとの連携運用」の提案が決め手に
図書印刷では、年々増え続ける在版データを、より効率的、より安全に保管するための新たなシステムを数年前から検討し、コストパフォーマンス・安全性・拡張性に優れたディターニティを選択した。導入前の状況について井原係長はこう振り返る。「これまで、在版データはDVD-ROMなどのメディアに書き込み、専用の倉庫で保管していましたが、最近は1つのジョブあたりのデータ量が大きくなっていることもあり、メディアの枚数は増える一方でした。」

   井原係長
 メディアが膨大な枚数に上っていたため、データの取り出しにも多くの時間や労力がかかっていたという。
「再製造(再版)の際には、使用するデータを保管倉庫から取り寄せ、印刷工場に渡すのですが、当然、倉庫では人がメディアを取り出して内容を確認し、工場に送るという物理的な作業が発生します。以前はそれが当たり前のことになっていましたが、近年、急速にネットワーク環境が発達してきている中、データの取り寄せもオンラインでできないかと考えたわけです」(井原係長)
新たなデータ保管方法については、78年前から検討を進めていたが、当時は、オンプレミス(自社導入)サーバーでの保管を考えていたという。しかし、すべての在版データを収めるには、10台以上のサーバーが必要となり、コスト的にもスペース的にも実現が難しかった。
「最近になって、ディスクの大容量化や書き込み速度の高速化も進み、サーバーへの移行も現実味を帯びてはきたのですが、56年ごとにディスクを更新しなければならないのがネックでした。そのたびにデータを新しいディスクにコピーするとなると、それだけで何カ月もかかってしまいます。その間にもデータの保管や引き出しは頻繁に発生するので、やはり現実的ではなく、サーバー保管は断念しました」(井原係長)

 他にも、クラウドやNASなどさまざまな方法を検討した結果、保管容量や経済性・信頼性の高さからテープストレージを選んだ。

「コストを試算したところ、ディターニティとその他のシステムでは、最大で3倍以上の開きがありました。やはりテープシステムのコストパフォーマンスの良さは圧倒的ですね。また、当時、ちょうどテープの世代がLTO7からLTO8に切り替わる時期で、タイミングも良かったと思います。LTO8では、1巻あたりの容量が非圧縮で12TBと、LTO72倍になり、保管効率がぐっと上がるからです」(井原係長)

 磁気テープを使用したストレージシステムとして、富士フイルムを含めて2社の製品が候補に挙がったが、最終的にディターニティを採用した理由について井原係長はこう語る。

「私どもとしては、基幹システムからのオンライン指示でデータの出し入れが行なえる仕組みを構築したいと考えていました。富士フイルムさんは、単に装置を入れるだけでなく、基幹システムとの連携も含め、当社に合ったフローを提案してくださり、導入から運用まで、スムーズに進められそうだと感じたのです。それが一番の決め手になりましたね。実際の導入の際には、基幹システムと連携する上でのコマンドラインの検証など、細かい機能面のフォローまで、きめ細かく対応していただけました」(井原係長)

   
ディターニティではテープからのデータ取り出しも短時間でストレス
     なく行える

 ■同一構成で2セット設置し最大限の冗長性を確保
 図書印刷では、ディターニティを同じ構成で2セット導入し、冗長化を図っている。

「システム構成に関しては、最大限の安全性を担保するべく、関係部門間で慎重に検討を重ねました。ディターニティは、一つの筐体内で正副の二重保管ができるので、本来は1セットでも冗長化が可能なのですが、万が一、筐体自体に何か障害が起きると、データが取り出せなくなり、製造が止まってしまいますので、同じ構成のシステムを2セット設置して両者を同期することにしました。データを1台目に保存する際に、同期ツールでまったく同じデータをもう1台にもコピーするという形をとっています」(井原係長)

 また、ディターニティには、データのアクセス頻度などに応じて保存先をHDDとテープに自動で振り分ける機能を搭載しているが、同社では、最終アクセス後1日でHDDからテープに移行する設定としている。テープに保存されたデータも、HDDと変わらない感覚でスムーズに取り出すことができるため、より安全性の高いテープでの保管を基本としているのだ。データの読み出しは、ディターニティからの直接操作ではなく、同社の基幹システムから行なえるようカスタマイズしている。

 なお、メディアに収められた在版データのディターニティへの移行は、データ量が膨大なため、再版がかかったものから順次進めているという。

「再製造のタイミングでデータをディターニティに移すというフローを組んでいるので、データ移行のための新たな作業負荷はほとんど発生していません」(井原係長)
■毎日のデータ取り出しが格段に効率化
 ディターニティからのデータの取り出しは毎日行なっているというが、その際のテープからのデータの書き戻し速度について、井原係長は「予想以上に速い」と評価する。

「1件あたりの書き戻し速度は予想以上に速いです。件数がある程度たまると待ち時間が発生しますが、待っていれば処理は進むので、そこまでストレスを感じることはありません」

 もちろん、倉庫からメディアを取り出していた従来の方法に比べれば、圧倒的な時間短縮が実現している。

「以前は、倉庫からデータを取り出す専任の部隊がいて、データ取り出しリストをもとにメディアをピックアップして連絡便で印刷工場に送るということを毎日行なっていました。まだメディア保管のデータは残っていますが、ある程度ディターニティに移行したことによって、こうしたデータの出し入れにかかる工数や時間は大幅に軽減されました。とくに、データ受け渡しの窓口になっているシステム管理部門のメリットは大きいですね。倉庫からメディアを取り出す専従者の人数も減っています」(井原係長)

 さらに井原係長は、将来的なメリットとして、「システム更新時の作業負荷・コストが抑えられる」点も挙げる。

「オンプレミスのサーバーを更新するとなると、データをディスク間コピーしなければならず、その作業に相当な時間が必要になりますが、テープメディアは長期にわたって使用できますから、筐体だけ更新してメディアをキャリーオーバーするということもできます。また、データ量に合わせてテープライブラリを追加することで、簡単に容量を拡張できるのも魅力ですね。こうしたメリットは、長く使っていく上での安心感につながります」

 導入から約2年の現時点でも、データ管理やジョブ進行管理などの面で作業負荷軽減、時間短縮といった明確な効果が得られているが、やはり最大の導入目的は、データの長期保管と効率的な活用にある。将来にわたる継続利用を見据え、井原係長は、ディターニティの今後、そして富士フイルムへの期待をこう語った。

「ディターニティは、先ほどもお話ししたように拡張性の高さも魅力の一つですが、テープメディアも今後さらに大容量化が進むと聞いており、メディアとハードウェアの両面でまだまだ進化が期待できるシステムだと思っています。富士フイルムさんにはこれからも、システムのアップデートのサポートや、新しいデータ管理フローの提案、情報提供などを通じて、当社の業務改善を支援していただければと思います」

 


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