ニュースリリース

2022.05.11

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ ディターニティ   オンサイト アーカイブ導入事例――図書印刷株式会社 増え続ける在版データを磁気テープで効率的に長期保管 データ出し入れにかかる時間・作業負荷、保管コストが大幅に低減

 近年、データの長期保管手段として、さまざまな業界で「磁気テープを活用したストレージシステム」が注目され、導入が進んでいる。磁気テープはディスクメディアに比べ、「耐久性が高く長期保管性に優れる」「オフライン保管によりウィルス攻撃などのリスクを回避できる」「常時通電の必要がなくランニングコストを抑制できる」などのメリットがある。このテープストレージを印刷業界でいち早く採り入れたのが図書印刷(本社:東京都北区東十条3-10-36、代表取締役社長:川田和照氏)だ。20201月に富士フイルムの『ディターニティ オンサイト アーカイブ』を導入し、在版データ管理の大幅な効率化を図っている。では具体的にどんなメリットが得られているのか。導入に至った経緯なども含め、技術開発本部 技術開発部 製造システムグループ 係長・井原美奈子氏に伺った。
   

      図書印刷本社
ディターニティ オンサイト アーカイブとは
富士フイルムの『ディターニティ オンサイト アーカイブ』(以下 ディターニティ)は、HDDと磁気テープを組み合わせたハイブリッド型のストレージシステム。アクセス性に優れたHDDストレージと、長期保管に最適な磁気テープを組み合わせることで、データ保管コストが抑えられ、また、テープライブラリを拡張することで大容量のデータ保管が可能になる。利用頻度の高いデータはHDDへ、利用頻度の低いデータは磁気テープへと、自動で保存先が選択されるため(GUIで条件設定が可能)、データの仕分けの手間が削減でき、プライマリストレージの容量圧迫も防ぐことができる。こうしたメリットが評価され、ディターニティはすでにメーカーの情報システム部門や映像制作会社、研究施設などさまざまな分野で導入が進んでおり、重要データの長期保管における課題解決に貢献している。



■テープの優位性と「基幹システムとの連携運用」の提案が決め手に
図書印刷では、年々増え続ける在版データを、より効率的、より安全に保管するための新たなシステムを数年前から検討し、コストパフォーマンス・安全性・拡張性に優れたディターニティを選択した。導入前の状況について井原係長はこう振り返る。「これまで、在版データはDVD-ROMなどのメディアに書き込み、専用の倉庫で保管していましたが、最近は1つのジョブあたりのデータ量が大きくなっていることもあり、メディアの枚数は増える一方でした。」

   井原係長
 メディアが膨大な枚数に上っていたため、データの取り出しにも多くの時間や労力がかかっていたという。
「再製造(再版)の際には、使用するデータを保管倉庫から取り寄せ、印刷工場に渡すのですが、当然、倉庫では人がメディアを取り出して内容を確認し、工場に送るという物理的な作業が発生します。以前はそれが当たり前のことになっていましたが、近年、急速にネットワーク環境が発達してきている中、データの取り寄せもオンラインでできないかと考えたわけです」(井原係長)
新たなデータ保管方法については、78年前から検討を進めていたが、当時は、オンプレミス(自社導入)サーバーでの保管を考えていたという。しかし、すべての在版データを収めるには、10台以上のサーバーが必要となり、コスト的にもスペース的にも実現が難しかった。
「最近になって、ディスクの大容量化や書き込み速度の高速化も進み、サーバーへの移行も現実味を帯びてはきたのですが、56年ごとにディスクを更新しなければならないのがネックでした。そのたびにデータを新しいディスクにコピーするとなると、それだけで何カ月もかかってしまいます。その間にもデータの保管や引き出しは頻繁に発生するので、やはり現実的ではなく、サーバー保管は断念しました」(井原係長)

 他にも、クラウドやNASなどさまざまな方法を検討した結果、保管容量や経済性・信頼性の高さからテープストレージを選んだ。

「コストを試算したところ、ディターニティとその他のシステムでは、最大で3倍以上の開きがありました。やはりテープシステムのコストパフォーマンスの良さは圧倒的ですね。また、当時、ちょうどテープの世代がLTO7からLTO8に切り替わる時期で、タイミングも良かったと思います。LTO8では、1巻あたりの容量が非圧縮で12TBと、LTO72倍になり、保管効率がぐっと上がるからです」(井原係長)

 磁気テープを使用したストレージシステムとして、富士フイルムを含めて2社の製品が候補に挙がったが、最終的にディターニティを採用した理由について井原係長はこう語る。

「私どもとしては、基幹システムからのオンライン指示でデータの出し入れが行なえる仕組みを構築したいと考えていました。富士フイルムさんは、単に装置を入れるだけでなく、基幹システムとの連携も含め、当社に合ったフローを提案してくださり、導入から運用まで、スムーズに進められそうだと感じたのです。それが一番の決め手になりましたね。実際の導入の際には、基幹システムと連携する上でのコマンドラインの検証など、細かい機能面のフォローまで、きめ細かく対応していただけました」(井原係長)

   
ディターニティではテープからのデータ取り出しも短時間でストレス
     なく行える

 ■同一構成で2セット設置し最大限の冗長性を確保
 図書印刷では、ディターニティを同じ構成で2セット導入し、冗長化を図っている。

「システム構成に関しては、最大限の安全性を担保するべく、関係部門間で慎重に検討を重ねました。ディターニティは、一つの筐体内で正副の二重保管ができるので、本来は1セットでも冗長化が可能なのですが、万が一、筐体自体に何か障害が起きると、データが取り出せなくなり、製造が止まってしまいますので、同じ構成のシステムを2セット設置して両者を同期することにしました。データを1台目に保存する際に、同期ツールでまったく同じデータをもう1台にもコピーするという形をとっています」(井原係長)

 また、ディターニティには、データのアクセス頻度などに応じて保存先をHDDとテープに自動で振り分ける機能を搭載しているが、同社では、最終アクセス後1日でHDDからテープに移行する設定としている。テープに保存されたデータも、HDDと変わらない感覚でスムーズに取り出すことができるため、より安全性の高いテープでの保管を基本としているのだ。データの読み出しは、ディターニティからの直接操作ではなく、同社の基幹システムから行なえるようカスタマイズしている。

 なお、メディアに収められた在版データのディターニティへの移行は、データ量が膨大なため、再版がかかったものから順次進めているという。

「再製造のタイミングでデータをディターニティに移すというフローを組んでいるので、データ移行のための新たな作業負荷はほとんど発生していません」(井原係長)
■毎日のデータ取り出しが格段に効率化
 ディターニティからのデータの取り出しは毎日行なっているというが、その際のテープからのデータの書き戻し速度について、井原係長は「予想以上に速い」と評価する。

「1件あたりの書き戻し速度は予想以上に速いです。件数がある程度たまると待ち時間が発生しますが、待っていれば処理は進むので、そこまでストレスを感じることはありません」

 もちろん、倉庫からメディアを取り出していた従来の方法に比べれば、圧倒的な時間短縮が実現している。

「以前は、倉庫からデータを取り出す専任の部隊がいて、データ取り出しリストをもとにメディアをピックアップして連絡便で印刷工場に送るということを毎日行なっていました。まだメディア保管のデータは残っていますが、ある程度ディターニティに移行したことによって、こうしたデータの出し入れにかかる工数や時間は大幅に軽減されました。とくに、データ受け渡しの窓口になっているシステム管理部門のメリットは大きいですね。倉庫からメディアを取り出す専従者の人数も減っています」(井原係長)

 さらに井原係長は、将来的なメリットとして、「システム更新時の作業負荷・コストが抑えられる」点も挙げる。

「オンプレミスのサーバーを更新するとなると、データをディスク間コピーしなければならず、その作業に相当な時間が必要になりますが、テープメディアは長期にわたって使用できますから、筐体だけ更新してメディアをキャリーオーバーするということもできます。また、データ量に合わせてテープライブラリを追加することで、簡単に容量を拡張できるのも魅力ですね。こうしたメリットは、長く使っていく上での安心感につながります」

 導入から約2年の現時点でも、データ管理やジョブ進行管理などの面で作業負荷軽減、時間短縮といった明確な効果が得られているが、やはり最大の導入目的は、データの長期保管と効率的な活用にある。将来にわたる継続利用を見据え、井原係長は、ディターニティの今後、そして富士フイルムへの期待をこう語った。

「ディターニティは、先ほどもお話ししたように拡張性の高さも魅力の一つですが、テープメディアも今後さらに大容量化が進むと聞いており、メディアとハードウェアの両面でまだまだ進化が期待できるシステムだと思っています。富士フイルムさんにはこれからも、システムのアップデートのサポートや、新しいデータ管理フローの提案、情報提供などを通じて、当社の業務改善を支援していただければと思います」

 


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