ニュースリリース
2022.09.08
◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ Jet Press 750S導入事例――有限会社樋口印刷所 「超高画質・小ロット対応」のメリットを活かし新規市場開拓 オフセットでできなかったことを「できる」に変え、ワクワクの連鎖を生む
油性オフセットによる下請け専業の印刷会社として50年以上の歴史を持つ有限会社樋口印刷所(本社:大阪市東住吉区桑津1-6-12、取締役:樋口裕規氏)は、2021年12月、新たな成長戦略の柱として富士フイルムのB2インクジェットデジタルプレス『Jet Press 750S』を導入。サンプル印刷や本紙校正といった極小ロット対応、広色域を活かしたRGB画像の高画質再現など、インクジェットデジタルプレスならではのメリットを訴求し、受注拡大を図っている。導入に至った経緯や、具体的な活用戦略・効果について、取締役・樋口裕規氏、デジタルプレス事業部・鉛口(かなぐち)茂雄氏に伺った。
■市場を広げるための最も有力な選択肢
樋口印刷所は1970年、先代社長・樋口義一氏が創業。大阪の地で下請け専業としてオフセット印刷技術を磨き、100社を超える印刷会社との厚い信頼関係を築き上げてきた。樋口印刷所が得意とするのは、特殊紙・特色を使った印刷物。「紙の印刷なら何でも」のキャッチフレーズを掲げ、極薄紙から0.8mmまでの厚紙まで対応。さらには、和紙や不織布、フォイル、ユポなどの特殊原反への印刷も手がける。また、オペレーター全員が特色の調色技術を持ち、パッケージ印刷などで強みを発揮している。
樋口取締役
「最近は、普通紙を使った商業印刷物よりも、紙器パッケージやシール・ラベルなどの依頼が多いですね。中には、特色9色を使った商品パッケージといった、かなり難易度の高い仕事もあります。他の印刷会社さんではなかなか受けられないような仕事をお任せいただけるというのが、当社の大きな強みになっています」(樋口取締役)
卓越した技術力と、「難しい仕事を率先して引き受け、顧客の期待を超える仕上がり品質を短納期で提供する」という姿勢が、樋口印刷所のブランドを揺るぎないものにしているのだ。
現在、同社は油性オフセット機を4台(2色機・4色機を各2台)保有し、すべて菊半裁機で統一している。昨年までは4色機がもう1台あったが、今回、これをJet Press 750Sに置き換えた。約半世紀にわたってオフセット印刷一筋で企業価値を高めてきた同社が、デジタル印刷に着目したのは、どんな理由からだったのだろうか。
「自社の将来について考えたとき、現状のまま何もしなければ伸び悩むことが明らかなので、新たな市場を開拓していく必要があると感じていました。それには、何か新しい強みを身につけなければいけない。その選択肢の一つとして、3年ほど前からインクジェットデジタル印刷技術に注目していたのです。一定以上のロットの場合は、オフセット印刷はいまでも生産効率などの面で非常に優れた印刷方式ですが、一方で、廃液・廃版・損紙を出してしまうという課題もあり、これを変えようとする動きが今後加速していくはず。つまり業界は間違いなくデジタル印刷の方にベクトルを向けており、これからさらに技術進化が重ねられていくと考えたわけです」(樋口取締役)
成長戦略の方向性としては、デジタル印刷の他にもいくつかの選択肢を検討したという。
「オフセット印刷の領域で新たな技術を採り入れるという選択肢もありました。具体的には、UV印刷や水なし印刷などです。しかし、市場を広げていけるパワーがどれだけあるか、という観点で考えると、やはり進むべき道はデジタル印刷しかないという結論に至ったわけです」(樋口取締役)
また、鉛口氏がこう付け加える。
「いま、1社のお客さまから大きなボリュームの仕事をコンスタントにいただける時代ではなくなっています。ロットは小さくても、より多くのお客さまと繋がった方が、安定した経営を持続できますし、小ロットの潜在ニーズはまだまだあるだろうと。その意味でも、小ロットに強いデジタル印刷を導入することが最も有効だと考えたのです」
樋口印刷所ではデジタル印刷を新たな成長戦略の柱として位置付けている
■見学申し込みが殺到。注目度の高さは予想以上
樋口取締役は、Jet Press 750Sの導入について「当社にとって大きな賭けでもあった」と振り返る。
「従来のオフセット印刷とは違う領域であり、新規事業としてゼロからのスタートとなるので、やはり導入には相当の覚悟が必要でした。ただ、進もうとしている方向は絶対に間違っていない。そこには100%の自信を持っていました」
機種選定については、ほとんど迷うことなくJet Press 750Sに決めたという。
「私どもの中で富士フイルムさんのメーカーとしての信頼感はかなり大きく、他社のデジタル機を比較検討しようという考えはまったくありませんでした。辰巳のショールームでJet Press 750Sの実機を見学させていただき、その帰り道にはもう導入を決めていましたね」(樋口取締役)
また、現場目線で採用の決め手になったのは、フィーダーやデリバリー、用紙搬送機構など、オフセット機と共通のメカニズムを多く採用していること。
「仕組みがオフセット枚葉機に近いので、第一印象として、馴染みやすそうだという感覚がありましたね。これまで培ってきたオフセット印刷の知識・ノウハウが、かなり活かせるのではないかと。とくに、フィーダーがオフセットライクな機構で、さまざまな用紙を安定して給紙できる機構になっているのは大きなポイントでした。その点も含め、機械全体を見たときに“オフセット印刷の未来”を感じましたね」(鉛口氏)
こうした好感触が得られたことから導入を即決。その半年後には実機を設置する運びとなった。
一方、実際の運用にあたっては課題もあった。それは、「顧客のインクジェットに対する不安をいかに払拭するか」。鉛口氏はこう語る。
「当社のお客さまは品質へのこだわりが非常に強く、『インクジェットで大丈夫なの?』という不安を持つ方が多い。しかし私どもとしては、『品質にこだわる方にこそJet Pressをお勧めしたい』という思いがある。その隙間を埋める作業が必要でした。それには、とにかくテスト出力して見ていただくのが一番。実際に見ていただくことで、オフセットよりも色の再現力や安定性が高まり、かつコストが抑えられるということを理解していただく。まずそこに注力することにしました」
WebサイトやSNSなどで積極的に情報発信を行ない、見学やテスト出力の申し込みを募るとともに、内覧会も実施し、より多くの顧客に「見て・触れて・知ってもらう」場を設けた。こうしたプロモーションの反響は、予想を上回るものだという。
「毎日のようにお問い合わせをいただくようになりました。やはり皆さん、デジタル印刷に対する関心は非常に高い。中には、自社での導入を検討される方もいらっしゃいます。実際の出力を見ていただくと、不安を持たれていたお客さまからも『ぜひ活用したい』と仰っていただけることが多いですね」(鉛口氏)
鉛口氏は、内覧会や個別見学でJet Press 750Sのメリットを説明する際、「RGB画像の高画質再現」「驚異的な色安定性」「小ロット対応」の3点をとくに強調しているという。
「お客さまは、この3つのいずれかで困っていらっしゃることが多い。ですから、これらの課題をどのように解決できるかをご説明すると、どこかで必ず響くんですね。Jet Pressのご提案を重ねていくうち、より効果的な訴求方法が徐々に掴めてきました」(鉛口氏)
Jet Press 750Sで出力した印刷物。高品位
な画像再現が顧客から高く評価されている。
■Jet Pressには、営業マンをワクワクさせる力がある
Jet Press 750Sの導入から半年あまり。積極的なプロモーションの効果もあり、Jet Press 750Sの認知度は着実に高まり、新規の受注も増加。「Jet Press指定」の仕事も少なからずあるという。
鉛口氏
「たとえば、スイーツ店の名刺・ショップカード、絵本、幼稚園のパンフレットなど、RGB画像の色を鮮やかに出したいというお客さまは、Jet Pressを指定されることが多いですね。また、リピート時の色の一貫性を重視する商品パッケージなども、Jet Pressを希望されるケースがあります」(鉛口氏)
まさに、Jet Press 750Sの特長である色域の広さ、色安定性の高さが顧客に広く認知されつつあることの表れと言えるだろう。もちろん、デジタル印刷ならではの小ロット対応力も活かされている。その一つが、本紙校正だ。
「多くの印刷会社さんにとって大きなネックになっているのが本紙校正です。クライアントから『ちょっと1枚出して見せて』と言われると、本機か平台校正機で出すしかなく、とくにパッケージや特殊紙の仕事では多大なコストがかかってしまう。しかしJet Pressであれば、簡単に低コストで、しかも一度に何種類も出すことができます。お客さまのご要望によっては、校正の段階でRGBとJapan Colorそれぞれの色域で出力して選んでいただくということも可能です。Jet Pressは、悩みの種だった校正の問題も見事に解決できるわけです」(鉛口氏)
こうしたメリットを実感した顧客が、口コミで同社のJet Press 750Sを広めてくれることもあるという。
もう一つ、Jet Press 750Sの大きな導入効果として挙げられるのが、「お客さまである印刷会社の営業マンにワクワクしてもらえること」だと鉛口氏は語る。
「先日、60歳代のお客さまがこんな風に仰ってくださいました。『印刷にはもう将来性を感じられなくなっていたけれど、樋口印刷所さんのJet Pressのおかげで、また印刷が面白くなってきた。この歳になって印刷でワクワクできるとは思わなかったよ』と。その方は、小ロットのさまざまな印刷物を企画提案されているのですが、そうした立場の方から見ても、Jet Pressは大きな可能性を持った機械なのだと思います」
Jet Press 750Sによって、いままでできなかったことが「できる」に変わる。それを知った印刷会社の営業マンが、ワクワク感をもってそれぞれのクライアントに提案する。そこで面白い仕事が生まれ、樋口印刷所自身のワクワクにもつながっていく。そんな好循環ができているのだ。
「Jet Pressは熟練職人の技をいとも簡単にこなしてしまう」と、現場の驚き
も大きかったという。
■顧客のクリエイティブ・企画力との相乗効果に期待
同社のJet Press 750Sの活用はすでに大きな広がりを見せているが、樋口社長は「まだスタート地点に立ったばかり」と今後を見据える。
「お客さまがどんなところに興味を持ってくださるのか、どうしたら喜んでくださるのかが、ようやくわかってきたところです。これからも引き続き、さまざまな形でお客さまにJet Press 750Sの魅力をお伝えしていきたいと思います」(樋口取締役)
同社は創業以来、“印刷会社のための印刷のプロ”というスタンスで、専ら印刷技術を究めてきたが、顧客の中には、企画・制作部門を持つ印刷会社も多い。樋口社長は、今後、そうした顧客のクリエイティブや企画力とJet Press 750Sとの相乗でさまざまな化学反応が生まれることを期待している。
「お客さまには、ぜひ、自社にJet Pressが入ったつもりでどんどん活用していただきたいですね。デジタル印刷ならではのメリットはたくさんありますし、いままでできなかったことができるようになる。皆さんのアイデアで、Jet Pressの魅力をもっともっと引き出していただきたいと思っています」(樋口取締役)
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去る7月28日・29日の両日、樋口印刷所では、富士フイルムデジタルプレス(FFDP)主催による「Jet Press 750S見学会」を開催。2日間で13社28名が参加した。
見学会はFFDP・宮本美奈子の司会で進行。Jet Press 750Sの主な機能について動画で紹介した後、実機による出力デモンストレーションに移り、RGBフルガマットとJapan Colorでの出力比較や、複数種類のグレースケールの出力などにより、卓越した色再現性・安定性を披露した。さらに、CMYKの掛け合わせによる特色作成、AI技術を応用した描画品質検査機能についても実演し、生産機としての用途の幅広さ、信頼性の高さを紹介した。