ニュースリリース

2022.12.11

◆富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ SUPERIA ZX導入事例――大洋印刷株式会社  本機も平台校正も無処理で一本化し、一段と向上した「使いやすさ」を実感。国内生産・安定供給による安心感も大きな魅力

  90年を超える社歴を誇り、豊富な人材、高度な印刷技術により、品質重視のクライアントから全幅の信頼を得ている大洋印刷株式会社(本社:東京都大田区昭和島1-6-31 代表取締役社長:林 健司氏)。同社は2021年2月、完全無処理プレート『SUPERIA ZD-II 』の導入後いち早く次世代プレート『SUPERIA ZX』のテストを開始し、全面切り替えを敢行した。この一気呵成の無処理化にはどんな狙いがあったのか。SUPERIA ZXに何を期待し、思い通りの効果が生まれているのか。取締役 生産本部長・白井光男氏、執行役員 製造部担当・松本勝之氏、執行役員 プリプレス部S&D部担当・齋藤孝之氏に、それぞれの立場からお話を伺った。

    

  白井取締役         松本執行役員       齋藤執行役員

■ハイブランドのお客さまの高い環境意識に応えるために

1930年(昭和5年)に東京・京橋区築地で創業してから92年。激動の時代の波を乗り越え勝ち残ってきた大洋印刷は、いまや既成の印刷事業にとどまらず「サイン&ディスプレイ」から「Web ・ 動画制作」「企画」「イベントプロモーション」、さらに「スタジオ運営」に至るまで大幅に業容を拡げ、それらを一手に受注できる自在のワンストップ体制を確立している。



  最大の武器は、企業の原点「印刷」である。著名デザイナーから指名されるほど訴求力のある印刷物を、いつでも安定して提供できる優れた感性と技術力。実際、さまざまな作品展において多数の受賞歴を持ち、全国カレンダー展をはじめとする国内での実績はもちろん、87年『ニューヨーク・アートディレクターズクラブ国際展』で日本初の金賞、89年に2度目の金賞を獲得するなど海外での評価も高い。クライアントからの大きな期待に応え続けるため絶対に品質を落とせない状況の中で、使用機材、とりわけ刷版・印刷資材にはこだわりの強い大洋印刷が、使い慣れた有処理から無処理CTP への移行を考えたきっかけは何だったのだろうか。理由の一つを、白井取締役が説明する。

 「弊社の取引先にはアパレルや百貨店の中でもとくにハイブランドのお客さまが多いのですが、そうした企業は社会への影響力も大きいわけですから、品質意識だけでなく、皆さん環境に対する意識も非常に高いんですね。当然、我々も志を高く持ち、つねに“いまできる最高の環境対策”を実施していかなければいけません。ですから無処理CTP についても、登場した頃から注目はしていました。ただし、網点再現性や立ち上がりなど本当に実用レベルなのか、品質に厳しいお客さまからいただいている絶大な信頼を損なうようなことはないのか、かえって生産性を落とすことはないのかという懸念もあり、これまでは慎重に各社の製品を比較検討していた、という経緯があります」

無処理CTP への要望レベルが極めて高い同社の目に、ようやく適ったプレートの一つがSUPERIA ZD-II だった。松本執行役員が、導入当時の流れを振り返る。

20212月から、まずは枚葉機で使い始め、使い込んでいくうちにZD-II の優れた総合性能、信頼性の高さを実感することができたので、その秋から全枚葉機の無処理化を進めました。そんな中、22年に入り、視認性が大幅にアップしたSUPERIA ZXが発売されるという話を耳にしたんです。それならすぐにでもテストしてみようと。評判通りに次世代性能を備えたプレートなら、一日も早く切り替えたいですからね」
 

■視認性、校正適性、傷つきにくさすべてにおいて予想以上

 「視認性とともに、とくに注目したのは平台校正機の処理適性だった」と、齋藤執行役員が、テスト導入のチェックポイントについて補足する。
品質追求の一環として平台校正を重視する当社にとって、枚葉機も校正機も無処理版で一本化できるかどうかは、重要なポイントの一つだったんです。結果は期待以上のものでした。気になっていた視認性は大幅に向上しており、部分的な差し替えがあるときでもこれなら安心して使えると、現場からの評価も高く、校正機の適性も問題ありませんでしたので、思い切って枚葉・平台校正を含めて全面的にZXへの切り替えを実施しました

白井取締役によれば、導入後、意外なほど多かったのが「校正の無処理化」についての問い合わせだったという。

「本当に校正刷りで無処理版を使えるのかと、見学に来る人もいらっしゃいました。実際、視認性もよくなり、平台校正の機上現像も実用的なスピードに達しているのを目の当たりにすると、皆さんびっくりします。校正屋さんでも、まだ有処理版を使用しているところがほとんどでしょうから」

テスト時には実感しにくかった“予想以上のメリット”もあったのだろうか。松本執行役員は真っ先に「傷の付きにくさ」を挙げた。

「現場で大量の版を扱う上で、これは本当に助かっています。表面に強力な保護層が追加されたそうですが、その効果がはっきり出ているんでしょうね。傷やゴミに対する強さは、ほとんど有処理と変わらないのではないでしょうか。逆に、現像工程がなくなった分、有処理よりもリスクが減って格段に運用しやすくなっています」

   
 
平台校正において優れた適性を発揮することが採用の決めての1つになった
 

    視認性や扱いやすさの向上など現場からの評価に対し、経営的な視点で、どんな効果を感じているのか。白井取締役に伺った。「何と言っても無処理ならではのコストメリットが大きいですね。自現機に付随する薬品類の費用が掛からず廃液が大幅に減った分、有処理の頃に比べて明らかなコストダウンが実現しています。それと、もっと大きな観点から実感しているのが、プレート供給体制の信頼性です。近年のコロナ禍を始め世界的に不安定な情勢の中で、国内生産というのは本当に心強い。我々にとってお客さまの納期を守ることは絶対的な使命の一つなんですが、富士フイルムがいつでも安定的に供給してくれるので、安心感が違いますね
安心感と言えば、肝心の再現品質についてはどうなのか。「ZD-II のときから高く評価している」と話すのは、現在もプリンティングディレクターとして顧客からの要望を直接受け現場を指揮している齋藤執行役員。

ZXに切り替えてからも、仕上がり品質に厳しい目を持つアートディレクターやクライアントの担当者に、これまで通り充分ご満足いただいています。品質・運用性・供給体制、すべてに安定しているということが、トータルに見たときの、富士フイルム無処理プレートの最大の魅力なのではないでしょうか」
 


画像認識性が向上し、キズや汚れのリスクが減ったことで
作業時の安心感が高まった

■全体の効率化やスキルレス化でさらに個々のスキルを高めていく

 短期間のうちに極めてスムーズに完全無処理化を達成し、狙い通りの工程変革を成し遂げた大洋印刷。無処理化のその先に、何を見据えているのだろうか。白井取締役が今後の展望について語ってくれた。
無処理化によって自現機のメンテナンスもなくなり、経験者にしか任せられなかったことが、ある程度数値化できて誰にでもこなせるようになり、人材活用の幅が広がってきました。最近は刷版を印刷部門で行なっている会社や、スマートファクトリーを目指して工場全体の自動化に取り組んでいる会社も増えているようですが、いずれ当社もそういう方向に進めていきたいですね。その一歩になるのが完全無処理化だと考えています

無処理化も数値化も、あくまで手段であり、決して目的ではない。企業にとって重要なのは、スキルレス化で現場に生まれた余力で、“人”をどう育てどう活かすかである。大洋印刷が、著名なデザイナーから繰り返し指名されるほど厚い信頼を得ているのは、技術力の高さは言うまでもなく、クリエイターの高度な要望を正確に理解し印刷表現に落とし込める“人の力”“感性の力”によるものだ。それらの力をハイレベルに維持できているのは「プリンティングディレクターの存在が大きい」と白井取締役は言う。

「私も松本も齋藤も皆プリンティングディレクターを経験しているのですが、先方のこだわりが強ければ強いほど、数値化とか標準化という問題ではなく、人と人の感性のぶつかり合いになってくるんですね。その経験を積みながら鍛えられていく。お客さまに育てていただく、と言えるのかもしれません。今後、どんどん自動化や効率化を進めていかなければいけないとは思いますが、スキルレス化の一方で、数値化できない職人的なスキルの部分も追求していく必要があるのではないかと。スマートファクトリー化を図るにしても当社ではつねに“人と機械、感性と技術”、どちらも重視し2つを融合させた変革に取り組んでいきたいと考えています」

そうした“社内的な変革”に対し、社会貢献に繋がる“対外的な企業活動”が、無処理化の目的の一つでもあった“環境対応”である。同社は無処理プレート導入以前から、使用する機器や資材の省エネ性能を徹底追求しCO2 削減に努めるなど、印刷会社視点で積極的にエコファーストの姿勢を貫いてきた。現在の活動状況を、齋藤執行役員がまとめてくれた。

「国際社会で注目されているSDGsにも、すでに全社的に取り組んでいます。SDGsの推進において弊社では、営業活動、生産活動、働き方改革、パートナーシップの4項目に焦点を当てているのですが、このパートナーシップによる目標達成を進める中で、富士フイルムさんが提唱するカーボンオフセット活動『Green Graphic Project 』に参加しています。このような取り組みの意義や、その中での完全無処理化の位置づけなどを社員一人ひとりがしっかり理解しお客さまに伝えていけるよう、社員教育にもさらに力を入れていきたいと思っています」
 



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